ブレーキを踏んだつもりが、アクセルだったーー。ペダルの踏み間違い事故は、年齢に関係なく誰にでも起こりうるものです。交通事故総合分析センター(ITARDA)の分析では、2018〜2020年の3年間に軽乗用車・普通乗用車が第1当事者となったペダル踏み間違いの死傷事故は9,738件ありました。この記事では、公的機関のデータにもとづいて事故の実態を整理し、防止する技術・制度(性能認定、義務化、サポートカー限定免許)を解説します。
📋 この記事の要点
✔ ITARDA「イタルダインフォメーションNo.139」では、2018〜2020年の3年間で、軽乗用・普通乗用車が第1当事者の踏み間違いによる死傷事故は9,738件(うち死亡重傷797件)
✔ 死亡重傷事故は75歳以上が最多。一方、免許保有者10万人当たりでは、24歳以下と75歳以上のリスクが高い。高齢者だけの問題ではない
✔ 国土交通省は2020年4月から、新車と後付け装置の性能認定制度を開始。認定された装置は国交省のサイトで公表されている
✔ 2025年6月17日の保安基準等の改正で、AT乗用車(電気自動車を含む)への「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」の搭載が義務化。新型乗用車は2028年9月1日から(輸入車は2029年9月1日)
✔ サポートカー限定免許は2022年5月13日から。後付け装置は対象外で、装置は運転者のミスを補助するもの
1. ペダル踏み間違い事故の実態(ITARDAのデータから)
交通事故総合分析センター(ITARDA)は、2022年の「イタルダインフォメーションNo.139」で、ペダル踏み間違いによる事故を分析しています。以下の表は、第1当事者が軽乗用車または普通乗用車の事故で、2018〜2020年の3年間の数字です。
📊 ペダル踏み間違いによる事故件数(ITARDA「イタルダインフォメーションNo.139」表1)
| 事故の内容 | 車両相互 | 車両単独 | 人対車両 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 死傷事故 | 7,883件 | 1,247件 | 606件 | 9,738件 |
| うち死亡重傷事故 | 214件 | 370件 | 211件 | 797件 |
| うち死亡事故 | 14件 | 86件 | 22件 | 123件(車対列車を含む) |
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ITARDAは、3年間で1万件近くの死傷事故が踏み間違いで発生しており、これは人身事故だけの数なので、物損事故を含めるとさらに多くなると推定されると述べています。次に、運転者の年齢層別の状況です。
📊 年齢層別の踏み間違い事故(ITARDA No.139の図1・図2・図6から、事故類型の合計を当サイトで集計)
| 運転者の年齢 | 死亡重傷事故(件) | 死傷事故(件) | 免許保有者10万人当たり死傷事故(車両相互/車両単独/人対車両) |
|---|---|---|---|
| 24歳以下 | 41 | 1,613 | 9.6 / 0.2 / 0.2 |
| 25〜34歳 | 22 | 1,161 | 3.2 / 0.1 / 0.1 |
| 35〜44歳 | 21 | 931 | 2.0 / 0.0 / 0.0 |
| 45〜54歳 | 38 | 962 | 1.7 / 0.1 / 0.1 |
| 55〜64歳 | 85 | 1,119 | 2.2 / 0.4 / 0.2 |
| 65〜74歳 | 226 | 1,870 | 3.3 / 1.1 / 0.5 |
| 75歳以上 | 362 | 2,080 | 7.8 / 3.2 / 1.3 |
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📌 補足
ITARDAは、死亡重傷事故では高齢運転者による事故が多く、特に車両単独事故は65歳以上で多いと述べています。一方、軽傷を含む死傷事故全体では、追突などの車両相互事故が最も多く、高齢者に加えて若者も多いことがわかります。免許保有者10万人当たりでは、24歳以下と75歳以上の事故リスクが高く、ITARDAは、若者も踏み間違いをしないよう十分注意する必要があるとしています。
📊 踏み間違い死亡重傷事故の運転者行動類型(ITARDA No.139図5。2018〜2020年)
| 運転者の行動(死亡重傷事故) | 車両相互 | 車両単独 | 人対車両 |
|---|---|---|---|
| 直進 | 63% | 66% | 38% |
| 発進 | 23% | 19% | 24% |
| 後退 | 2% | 7% | 26% |
| 右折 | 5% | 5% | 11% |
| 左折 | 6% | 3% | 1% |
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ITARDAは、人対車両の事故では、直進・発進に加えて後退が26%と多い点を指摘し、駐車場などでは前進はもちろん後退する車の前方や後方にも入らないようにすることが必要だと述べています。
2. なぜ踏み間違え、なぜ加速し続けてしまうのか
JAFは、オートマチック車ではアクセルペダルが右側、ブレーキペダルがその左側に並んでおり、多くの場合は右足だけで両方を踏み替えて操作すると説明しています。どちらも「踏み込む」という同じ動作のため、年齢を問わず誰でも踏み間違える可能性があるとされています。
📊 踏み間違いが起こる場面と要因
| 場面 | 起こりやすい要因 | 出典 |
|---|---|---|
| 踏み間違えたまま加速する | 想定と逆に車が動いて気が動転し、正しい操作ができなくなる。反射的に、踏み間違えたアクセルをさらに踏み込んでしまうことがある | JAF |
| 後退時 | 体を後方にひねる動作、切り返しによる踏み替え回数の増加、急な後退などが指摘されている | JAF |
| 駐車場内・渋滞時の徐行 | ブレーキとアクセルを細かく踏み替えるため、頻繁なペダル操作に混乱することがある | JAF |
| 若い運転者 | 運転の習熟度が低いことや、運転している車に慣れていないことが考えられる | ITARDA |
| スマートフォンの通知など | 些細な出来事でも注意力が削がれるきっかけになりうる | JAF |
⚠️ 踏み間違い事故は多重衝突になりやすい
ITARDAによると、全事故では多重衝突は死亡重傷・死傷とも8%ですが、ペダル踏み間違いの場合は死亡重傷で37%、死傷で29%と高い割合で多重衝突になっています。踏み間違えて加速した車は、複数の車や人・建物を巻き込む可能性があるということです。
3. 防止する技術と制度:性能認定から義務化まで
ペダル踏み間違いを防ぐ技術は、進行方向の障害物をセンサーやカメラで検知し、アクセルを強く踏み込むと衝突のおそれがあると判断したときに、警告音を出してエンジンやブレーキを制御する仕組みが代表的です(JAFの解説)。国も制度を整えてきました。
📊 踏み間違い防止に関する国の制度(国土交通省の発表より)
| 区分 | 内容 | 時期 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 新車の性能認定制度 | ペダル踏み間違い急発進抑制装置(障害物検知機能付/検知機能なし)を、踏み間違いによる発進時等の加速抑制性能と警報の作動の要件で認定。対象は乗用車・軽貨物車 | 2020年3月31日公布、4月1日施行 | 国土交通省(2020年3月31日発表) |
| 後付け装置の性能認定制度 | 既販車に取り付ける後付け装置を認定。加速抑制性能と警報に加え、装置の機能要件、ユーザーへの説明・取付体制の要件を満たすこと | 2020年4月に創設 | 国土交通省(同) |
| 認定装置の公表 | 自動車メーカー等と、部品用品メーカー等の認定装置が、国土交通省のサイトの一覧で公表されている | 随時更新 | 国土交通省「ペダル踏み間違い急発進抑制装置性能認定結果一覧」 |
| 搭載の義務化 | オートマの乗用車(クラッチペダルのない乗用車。電気自動車を含む)に、「ペダル踏み間違い時加速抑制装置に係る協定規則」に適合する装置の装備を義務づける保安基準等の改正 | 2025年6月17日公布・施行。新型乗用車は2028年9月1日(輸入車は2029年9月1日)から | 国土交通省(2025年6月17日発表) |
※表は横にスクロールできます
📌 補足
義務化は、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)で、日本発の技術を国際基準とすることが2024年11月に合意されたことを受けた改正です。継続生産車の適用時期は、国土交通省の発表本文では確認できなかったため、詳細は同省の資料(別紙)で確認してください。
⚠️ 装置は「万能」ではありません
JAFは、道路状況や天候によって検知範囲が制限されるなど、これらの技術も万能ではないと説明しています。警察庁も、サポートカーの安全運転支援システムには、一定以上の速度で走行している場合には適切に作動しない場合があるなどの限界があると注意しています。装置は、運転者のうっかりミスを補助するもので、絶対的な防止装置ではありません。
4. サポートカー限定免許という選択肢
踏み間違い事故への不安がある方向けに、免許制度の側からも選択肢が用意されています。警察庁の案内による「サポートカー限定免許」の概要は次のとおりです(制度の開始は、大阪府警の案内によると令和4年、2022年5月13日)。
📊 サポートカー限定免許の概要(警察庁公式サイトより)
| 項目 | 内容(警察庁) |
|---|---|
| 対象の免許 | 条件を付与できるのは普通免許のみ。中型(8トン限定)免許や第二種免許など、普通免許の上位免許をお持ちの場合は、申請による免許の一部取消しで普通免許を取得したうえで、条件を付与できる |
| 申請 | 運転免許を受けている方の申請により付与。運転免許証の更新申請と併せて行うことも可能 |
| 運転できる車 | 衝突被害軽減ブレーキ(対車両・対歩行者)と、ペダル踏み間違い時加速抑制装置が搭載された普通自動車(サポートカー)のみ。MT車は衝突被害軽減ブレーキのみ |
| 後付けの装置 | 対象にならない(メーカーが搭載した装置に限る) |
| 対象車両の確認 | 自動車検査証の車台番号(車体番号)と、メーカー別の対象車両リストを照合して確認。リストは随時更新される |
| 違反 | サポートカー限定免許で、サポートカー以外の普通自動車を運転すると免許条件違反 |
| 限定の解除 | 公安委員会の審査が必要。指定自動車教習所で限定解除の教習を受けた場合は、運転技能の審査が免除される |
💡 年齢制限について
警察庁の案内では、普通免許を受けている方が申請でき、更新申請と併せて行えるとされていますが、年齢の条件は示されていません(JAFは「年齢制限はない」と紹介しています)。手続きの詳細は、お住まいの都道府県の公安委員会・警察署でご確認ください。
5. 今日からできる踏み間違い対策
📝 運転前後のチェックリスト
☑️ 発進する前に、ペダルの位置とシフトレバーの位置を落ち着いて確認している(JAFの推奨)
☑️ バックするときは、ミラー・カメラ・目視を組み合わせ、無理な体勢をとらない(一般的な注意)
☑️ レンタカーや代車など、慣れない車では、発進前に足元と操作を確認している(若い運転者は車に慣れていないことが要因の一つとされる)
☑️ 思いがけない加速を感じたら、慌てて踏み込まず、足の位置を確かめる(動転して反射的に踏み込むことが原因と説明されている)
☑️ 駐車場では、後退する車の前後に歩行者が入らないよう注意している(ITARDA)
☑️ 愛車にどの装置がついているか、どんな条件で作動するかを、取扱説明書や販売店で確認している
🧭 踏み間違い対策の進め方
いまの車の装備を確認する
取扱説明書や販売店で、ペダル踏み間違い時の加速抑制機能の有無と、作動する条件(速度・障害物の検知方法など)を確認します。
後付け装置を検討する場合は、認定の有無を確認する
国土交通省の「ペダル踏み間違い急発進抑制装置性能認定結果一覧」で、認定された装置を確認し、取付店で自分の車への対応を確認します。
免許更新の機会に、サポートカー限定免許を家族と話し合う
運転を続けながら不安を減らす選択肢の一つです。メリット・デメリットは、警察庁や公安委員会の案内で確認します。
車の買い替えでは、安全装備を比べる
2028年9月1日以降の新型乗用車には、装置の搭載が義務づけられる予定です。買い替えの際は、装備の有無と作動条件を確認します。
- 交通事故総合分析センター「イタルダインフォメーションNo.139 ペダル踏み間違いによる事故」
- 国土交通省「ペダル踏み間違い時加速抑制装置の搭載を義務づけます!」(2025年6月17日)
- 国土交通省「ペダル踏み間違い急発進抑制装置性能認定結果一覧」
- 警察庁「サポートカー限定免許について」
- JAFクルマ何でも質問箱「ペダルの踏み間違いを防止するには?」
6. よくある質問
まとめ
ITARDAの分析では、2018〜2020年の3年間に、軽乗用・普通乗用車が第1当事者となる踏み間違いの死傷事故は9,738件ありました。死亡重傷事故は75歳以上が最多ですが、免許保有者10万人当たりでは24歳以下も事故リスクが高く、誰にでも起こりうる事故です。国は性能認定制度を設け、2025年の保安基準改正で新型乗用車への装置の搭載を義務づけました(2028年9月1日〜)。サポートカー限定免許という選択肢もありますが、装置はあくまで補助です。発進前にペダルとシフトの位置を落ち着いて確認する習慣が大切です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。
参考: JAF「クルマ何でも質問箱」ペダルの踏み間違いを防止するには?(出典: 国土交通省「ペダル踏み間違い急発進抑制装置性能認定結果一覧」)


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