サスペンションのストラット式・トーションビーム式・マルチリンク式は何が違う?公式の諸元表の読み方【2026年11月】

※この記事で紹介している動画は、2026年11月30日(月)19:00に公開予定です。公開までは、記事の中の動画は再生できません。公開後に再生できるようになります。

歌いながら話す動画『サスペンションのストラット式・トーションビーム式・マルチリンク式は何が違う?公式の諸元表の読み方【2026年11月】』の解説記事です。動画で話した内容の出どころを、各社の公式の主要諸元(14枚)、JAFの説明、ホンダ・スズキ・トヨタ・マツダの公式資料、道路運送車両の保安基準 第14条と細目告示の緩衝装置の条で確かめ直して並べています。

この記事は、サスペンションの『表の言葉の読み方』に絞っています。どの形が良い・悪いとは言わず、諸元表に書かれていたこと、各社・JAFが説明していたこと、読んだ範囲に見当たらなかったことだけを並べます。細かい構造図は扱わず(載せている絵は、実際の構造そのものではないイメージ図です)、車高を変える部品などの改造の話も扱いません(点検や最低地上高の記事は、記事末の「あわせて読みたい」にあります)。

📋 この記事の要点

✔ 表の言葉は、会社ごとに少しずつ違う。欄の名前は、サスペンション方式(ホンダ N-VAN)・サスペンション形式(ダイハツ)・懸架方式(スズキ)・サスペンション(トヨタ・日産・スバル)と分かれ、前の形の書き方も「マクファーソン式」「マクファーソン・ストラット式」「マクファーソンストラット式」「ストラット式」「ストラット式独立懸架」と並ぶ。同じ構造を指すかは表だけでは分からない。ばねの種類(コイルスプリング)は、読んだダイハツ・スズキ・トヨタの表にあり、N-VAN・フェアレディZ・スバル WRX S4 の表には見当たらない。スバルの表には「社内型式名(方式名)」の注記がある。

✔ 大きな分け方は、車軸を固定した方式と、左右の車輪が別々に動く方式(JAFの説明)。トーションビーム式は、JAFの説明では車軸式の一種で、半独立懸架と呼ぶこともある。表のサスペンション欄の言葉は、読んだ範囲で、「独立懸架」と「車軸式」の両方がある表(ランドクルーザー300)、「独立懸架」がある表(WRX S4)、「車軸式」がある表(N-VAN・アトレー・ハイゼット カーゴ)、どちらもない表(例: クラウンは「マルチリンク式コイルスプリング」とだけ。ほかにエブリイ、ジムニー系3枚、ヤリス、GRヤリス、GR86、フェアレディZの計9枚。フェアレディZのPDFは装備欄に「4輪独立懸架サスペンション」の語があるが、サスペンション欄にはない)がある。

✔ 前・後ろ・駆動方式の注記も一緒に読む。N-VANの後ろはFF車が「車軸式」、4WD車が「ド・ディオン式」。ヤリスの後ろは「トーションビーム式」と、角かっこの中の「ダブルウィッシュボーン式」(角かっこは E-Four または 4WD)。ジムニー3車は前・後ろが一つの欄。N-VANの2018年の発表資料と今の表では、言葉が違う。

✔ 形の得意は、説明ごとに強みを置く場所が違う。JAF・スズキ・トヨタ・ホンダの説明を原文で紹介する。ホンダのページには「形式によって優劣が決まったりするものではない」とある。この記事は優劣を決めない。

✔ 国の基準は、緩衝装置を備えること。保安基準 第14条は、備えるのは、強度や緩衝性能について告示で定める基準に適合する、ばねその他の緩衝装置。ただし、大型特殊自動車などは省略できる場合がある、と定めている(原文は2-6)。条文の本文に、ストラット式・マルチリンク式などの形式の名前は見当たらなかった。告示の緩衝装置の条を三つ読んだが、使ってよい形式を決める文は読んだ範囲に見当たらなかった。

▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)

1. 動画の内容(要約)

動画は、聞き役の『かーぎーくん』と解説役のかけ合いです。冒頭と章の頭、まとめで歌い、本文はリズムに乗せた会話です。歌の歌詞には数字や条件を入れず(『サスペンション』『形の名前は』『何が違うの?』『公式の言葉で確かめよう』など)、車ごとの書き方と条件は、語りと画面の表で確認します。

サスペンションの表を読む。車軸でつなぐ方式・左右が別々に動く方式・左右をビームでつなぐ方式のイメージ図と、5つのポイント
図:動画で確かめること(自作の図。サスペンションの絵はイメージで、実際の構造そのものではありません)
章 開始 内容 使った資料
イントロ 00:00 歌のフックと、今日の5つのポイント(表の言葉・独立懸架と車軸式・車ごとの書き方・形の得意と優劣・国の基準) 各社の主要諸元、JAF、ホンダ・スズキ・トヨタの公式資料、保安基準
1. 表の言葉 00:48 欄の名前、前の形の書き方の違い、ばねの種類の語、スバルの注記 各社の主要諸元
2. 独立懸架と車軸式 01:48 JAFの説明による大きな分け方。表に独立懸架・車軸式の語がある車とない車。トーションビーム式は車軸式の一種 JAF クルマ何でも質問箱、トヨタ・スズキの主要諸元
3. 車ごとの書き方 02:51 前と後ろの書き方の例。駆動方式で変わる表(N-VAN・ヤリス)。N-VANの2018年の発表資料と今の表 各社の主要諸元、トヨタ ヤリス公式ページ、ホンダ ファクトブック
4. 形の得意と優劣 04:15 JAF・スズキ・トヨタ・ホンダの説明。ホンダのページの「形式によって優劣が決まったりするものではない」 JAF、スズキ・トヨタの公式ページ、ホンダ SPORTS DRIVE WEB
5. 国の基準 05:28 保安基準 第14条(緩衝装置)と、細目告示の三つの条。形式を決める文は見当たらなかった e-Gov法令検索、国土交通省の細目告示
まとめ 06:21 5つの確認と、締めの歌 (上記)
動画では、14枚の表のうち、画面の表で見せた書き方を語りでは一部しか読み上げていません。次の章で、読んだ表の言葉を全部並べます。マツダの公式ページの説明は、動画では紹介せず、この記事で扱います。

2. 動画で触れきれなかった補足

2-1. 14枚の諸元表の「サスペンション」欄(表の言葉のまま)

次の表は、各社の公式の主要諸元PDFから、サスペンションの欄を転記したものです。N-VAN・ジムニー系3枚・ヤリス・GR86・GRヤリス・ランドクルーザー300・フェアレディZ・WRX S4 は、PDFを画像にして該当の行を目視で読み、アトレー・ハイゼット カーゴ・エブリイ・クラウンは、画像と文字の抽出の両方で読みました。同じ書き方の車は1行にまとめています(アトレーとハイゼット カーゴ、ジムニー・ジムニー シエラ・ジムニー ノマド)。

車(版) 欄の名前 前 後ろ 表の注記・条件
ホンダ N-VAN(2026-03-19更新) サスペンション方式 マクファーソン式 FF=車軸式 / 4WD=ド・ディオン式 表の駆動方式の列ごとに後ろが分かれる。スタビライザー形式は 前/後=トーション・バー式/—
ダイハツ アトレー・ハイゼット カーゴ(2026-06-04更新) サスペンション形式 マクファーソン・ストラット式コイルスプリング トレーリングリンク車軸式コイルスプリング 駆動方式の列では分かれていない(前の欄・後ろの欄がそれぞれ一つ。前と後ろは別の書き方)
スズキ エブリイ バン(2026-10-23更新) 懸架方式 マクファーソンストラット式コイルスプリング I.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)式コイルスプリング スタビライザー形式(前)=トーション・バー式。JOINターボ・JOIN・PC・PAで共通の一つの欄
スズキ ジムニー・ジムニー シエラ・ジムニー ノマド(2026年5月現在) 懸架方式 3リンクリジッドアクスル式コイルスプリング (前・後ろが一つの欄)3リンクリジッドアクスル式コイルスプリング スタビライザー形式(前)=トーション・バー式
トヨタ ヤリス(2026年4月版) サスペンション フロント/リヤ マクファーソンストラット式コイルスプリング トーションビーム式コイルスプリング [ダブルウィッシュボーン式](ハイブリッド2WD/E-Four、ガソリン1.5L 2WD/4WD・CVT の欄)。1.0L・1.5L 6MT の欄は「トーションビーム式コイルスプリング」 表の注記「●[ ]はE-Fourまたは4WDです。」
トヨタ GRヤリス(2026年3月版) サスペンション フロント/リヤ ストラット式コイルスプリング ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング —
トヨタ GR86(2026年8月版) サスペンション フロント/リヤ マクファーソンストラット式コイルスプリング ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング 前・後ろを「/」で並べた一つのセル
トヨタ クラウン(2026年9月版。表題は「トヨタ クラウン」。公式ページ toyota.jp/crown/ のセダンの表と読んだ) サスペンション フロント/リヤ マルチリンク式コイルスプリング マルチリンク式コイルスプリング 前・後ろを「/」で並べた一つのセル。2.5Lハイブリッド Z・G と燃料電池車 Z の3列共通
トヨタ ランドクルーザー300(2026年10月版) サスペンション フロント / リヤ ダブルウィッシュボーン式独立懸架コイルスプリング トレーリングリンク車軸式コイルスプリング 表に「独立懸架」「車軸式」の語がある
日産 フェアレディZ(2026年8月版) サスペンション 前 / サスペンション 後 ダブルウィッシュボーン式 マルチリンク式 6列とも同じ。ばねの語はない
スバル WRX S4(PDF内 2025.10・2026.01) サスペンション[前輪/後輪]* ストラット式独立懸架 ダブルウィッシュボーン式独立懸架 *=「社内測定値および社内型式名(方式名)」。前・後ろを「/」で並べた一つのセル
14枚の諸元表を読んで11行にまとめた、サスペンション欄の前と後ろの書き方
図:サスペンション欄の前・後ろの書き方(自作の表。読んだ14枚を、同じ書き方の車をまとめて11行に並べた。上の表と同じ内容)

『ばねの種類』は、ダイハツ・スズキ・トヨタの表では「コイルスプリング」と続けて書かれています。ホンダ N-VAN・フェアレディZ・スバル WRX S4 の PDF 全体に、「コイル」の語は見当たりませんでした(文字の抽出で全文検索)。スタビライザー形式は、N-VAN・エブリイ・ジムニー系の表に別の欄があります。

『ストラット系』(マクファーソン・ストラット・ストラットの語を含む書き方。読んだ14枚のうち8枚の前)、『車軸式・リジッドアクスル式』などの分類は、動画と図で表の言葉を並べるために、こちらでつけた呼び名です。メーカーがその分類で書いているわけではありません。「マクファーソン式」と「ストラット式」が同じ構造かどうかも、表だけでは確認していません。

2-2. 同じ車でも、資料によって言葉が違う例(N-VAN)

ホンダ N-VAN の今の主要諸元(2026年3月19日更新)は、前が「マクファーソン式」、後ろがFF車「車軸式」・4WD車「ド・ディオン式」です。一方、2018年7月のホンダの発表資料(ファクトブック)には、次の文があります。

📜 ホンダ ファクトブック N-VAN(2018年7月)より

「N-VANはN-BOXと同様、マクファーソン・ストラット式フロントサスペンション、H型トーションビーム式リアサスペンションに高性能ダンパーを組み合わせる」とあります。この文に、FFと4WDの区別は書かれていません。

同じ構造を別の言葉で書いているのか、発売後に変わったのかは、この二つの資料からは分かりませんでした。JAFの説明では、トーションビーム式は車軸式の一種です(2-3)。表の「車軸式」を見たときは、車名・駆動方式・資料の日付を合わせて読むのが確実です。ド・ディオン式については、ホンダの別の車(2008年のライフ)の発表資料に「ド・ディオン式リジッドアクスル3リンクをベースとした」新設計のサスペンション、という言葉があります(N-VANの資料には説明が見当たりませんでした)。

2-3. JAFの説明(原文)

📜 JAF クルマ何でも質問箱「サスペンションの仕組みと種類について教えてください」(2024年11月現在)より

「左右の車輪をつなぐ車軸を固定した方式と、左右の車輪が別々に動く方式に大きく分類できる。」/「構造が簡易であるため、耐久性や整備性に優れていることなどがメリットとして挙げられます。」(リジッドアクスルについて)/「接地性に優れ、乗り心地が良いことが特徴です。」(独立懸架方式について)

📜 同じ回答の形式の説明(原文)

「形式としては、トレーリングアーム式、ダブルウィッシュボーン式、マクファーソンストラット式、マルチリンク式などがあり、小型車のフロントはマクファーソンストラット式、スポーツカーは前後ともダブルウィッシュボーン式が多くなっています。」/「小型車のリアサスペンションに多く使われるトーションビーム式は、車軸式の一種ですが、左右輪をつなぐビーム(梁)が車軸より前にあり、ビーム自体が捩れることで独立懸架に近い機能を有しているので、半独立懸架と呼ぶこともあります。」

車軸でつなぐ方式、左右が別々に動く方式、左右をビームでつなぐ方式のイメージ図と、表の言葉の例
図:JAFの説明とイメージ図(自作。実際の構造そのものではありません。表の言葉の例は、読んだ表から)

JAFは、マルチリンク式を独立懸架の形式の例に挙げています。クラウンの表は「マルチリンク式コイルスプリング」とだけ書かれ、独立か車軸かの語はありません。スズキ エブリイの「I.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)式」は、独立か車軸かを、読んだ表とスズキの公式ページ(エブリイの走行・環境性能・諸元)では確認できませんでした。

2-4. ヤリスの表の読み方(角かっこの注記)

トヨタ ヤリスの主要諸元は、1枚の表にハイブリッド車・ガソリン車の列が並び、表の上に「●[ ]はE-Fourまたは4WDです。」の注記があります。サスペンションの後ろの欄は、ハイブリッド(2WD / E-Four)とガソリン1.5L(2WD / 4WD)・CVT の欄に「トーションビーム式コイルスプリング [ダブルウィッシュボーン式]」、1.0L(2WD)・CVT と 1.5L(2WD)・6MT の欄に「トーションビーム式コイルスプリング」と書かれています。2WDはトーションビーム式、E-Fourまたは4WDは角かっこの中のダブルウィッシュボーン式、と読めます。

📜 トヨタ ヤリス 公式ページ(走行性能)より

「リヤサスペンションは、2WDにスペース効率に優れたトーションビーム式を、4WDとE-Fourにはコンパクトなダブルウィッシュボーン式を採用。」とあります。

ホンダ N-VANとトヨタ ヤリスの、後ろのサスペンションの書き方が駆動方式で分かれる例
図:駆動方式で変わる表(自作。ホンダ N-VAN と トヨタ ヤリスの主要諸元から)

2-5. メーカーの説明(原文)

📜 スズキ ジムニー 公式ページ(走行・環境性能)より

「左右の車輪をダイレクトにつなぐリジッドアクスル式サスペンションは、一般的な乗用車の独立懸架式サスペンションに比べて、凹凸路で優れた接地性と大きな対地クリアランスを確保できます。」とあります。ジムニーの説明で、リジッドアクスル全般の評価ではありません。

📜 ホンダ SPORTS DRIVE WEB(「いいサスって何?」Vol.4。掲載年の記載なし)より

「設計者として狙った特性を実現しやすいのはどちらか、と言われたらアームの本数が多くて設計の自由度が高いダブルウイッシュボーン。」と述べたうえで、「形式によって優劣が決まったりするものではないんです。」とあります。同じ回答の中で「何がそのクルマにとって重要なのかによっていろいろと使い分けています」とも書かれています。トーションビーム式については、「だから、トーションビーム式サスペンションに『弱点』があるとしたら、この『難しさ』なのだと言うことができるかもしれません」とあり、狙った特性を出すためにコンプライアンスブッシュを硬くすると「振動吸収とのトレードオフにはなってきます」とも書かれています(設計の難しさについての説明です)。同じ回答の続きには「私たちサスペンション設計者にとっては、ダブルウイッシュボーンよりもずっと難しくて、逆に言えば腕の見せ所になっているのが、トーションビームというサスペンション形式なんですよね。」とあり、設計者にとっての難しさと腕の見せどころを述べた文で、トーションビーム式の欠点を述べた文ではありません。Vol.1には「『トーションビームがスポーツに向かない』なんてことはないですよ。」とあります(ホンダの技術者の説明です)。

📜 マツダ CX-30 公式ページ(走行性能)より

「フロントにはマクファーソン式、リアにはトーションビーム式を採用。サスペンション形式の選定だけでなく、タイヤを取り付けるナックルの設計やロアアームの角度、ロールセンター高などの調整を通じて、路面からの入力を遅れなく、滑らかに伝えるように工夫しています。」とあります(確認日 2026年10月27日。この車の販売状況はこの記事では扱いません)。

📜 マツダ技報 2020 No.37 より

「TBAの特徴として駆動力の増減に対するタイヤのトー角変化が少ないため、旋回加速シーンにおいても限界挙動が予測しやすいというメリットがある。」とあります(マツダの技報での説明。TBAはトーションビームアクスルの略として、同じ技報の文中で使われています)。

ホンダの1997年のアコードの資料には、アームの本数と動きの方向を結びつけた説明があります(「5本のストレートアームによるマルチリンク化」「5リンクの場合 基本的に上下ストロークのみ変位。=1方向変位」)。リンクの数がアームの本数に当たる、という説明の一例です。1997年のアコードの資料のため、今の車や、ジムニーの『3リンク』の説明としては使っていません(スズキ自身の説明は、取得できた範囲にありません)。

2-6. 保安基準 第14条と、細目告示の緩衝装置の条(原文)

📜 道路運送車両の保安基準 第14条(緩衝装置)第1項(原文。e-Gov法令検索・施行日2026年10月20日の版)

「自動車には、地面からの衝撃に対し十分な容量を有し、かつ、安全な運行を確保できるものとして、強度、緩衝性能等に関し告示で定める基準に適合するばねその他の緩衝装置を備えなければならない。ただし、大型特殊自動車、農耕作業用小型特殊自動車、車両総重量二トン未満の被牽けん引自動車及び最高速度二十キロメートル毎時未満の自動車のうち、危険物を運送する自動車として告示で定めるもの以外のものにあつては、これを省略することができる。」

この条文(全文)を、「懸架」「ストラット」「マクファーソン」「ウィッシュボーン」「マルチリンク」「トーションビーム」「リジッド」「サスペンション」の語で検索しましたが、保安基準の全文に該当はありませんでした(「独立」「車軸」の語は別の条文に出てきますが、サスペンションの形式の話ではありません)。

📜 細目告示 緩衝装置の条(国土交通省公開のPDF。第17条・第95条・第173条。PDFの見出しの日付は「2007.11.9」)より

三つの条とも、第2項は「ばねその他の緩衝装置は、地面からの衝撃に対し十分な容量を有し、かつ、安全な運行を確保できるものでなければならない。この場合において、」で始まり、そのあとの言い方が条で少し違います。第17条は「次の各号に掲げるものはこの基準に適合しないものとする。」、第95条と第173条は「次の各号に掲げるばねその他の緩衝装置は、この基準に適合しないものとする。」です。第17条の各号には、第八号「ストラットに損傷があるもの又は他の部分との接触により損傷が生じるおそれがあるもの若しくは取付部に緩みがあるもの」、第九号「ショック・アブソーバに著しい液漏れ、ガス漏れ又は損傷があり、取付部に緩みがあるもの…」(以下略)などが並びます。第95条と第173条の号の文言は少し違い(第九号「ストラットに損傷があり、又は取付部に緩みがあるもの」、第十号「ショック・アブソーバに著しい液漏れ、ガス漏れ若しくは損傷があり、又は取付部に緩みがあるもの」)、改造に関する第十五号(ばねの一部又は全部を除去したものなど)もあります(第17条には見当たりませんでした)。どの条がどの種類の自動車に当たるかは、確認していません。

保安基準 第14条から細目告示の緩衝装置の条を経て、適合しないものの例へ進む流れの図
図:保安基準 第14条と細目告示の関係(自作。三つの条を読んだ範囲の整理)

細目告示には「ストラット」「サスペンション・アーム」という部品の名前が、損傷やゆるみの例として出てきます。使ってよい形式を決める文は、読んだ三つの条には見当たりませんでした。告示の別の節・別添・審査の事務規程などは読んでいないので、『国の基準に形式の指定はない』とまでは言えません。

3. 違った観点から整理する

3-1. 知りたいことから、見る資料を選ぶ

知りたいこと 見る資料・欄 読み方の注意
その車の前と後ろの形式 主要諸元の「サスペンション」「サスペンション方式」「懸架方式」の欄 欄の名前は会社で違う。前・後ろが別の行の表と、「/」で並ぶ表がある
駆動方式で変わるか 表の駆動方式の列、角かっこ・括弧の注記 N-VAN(FF/4WD)・ヤリス([ ]はE-Fourまたは4WD)の例。ジムニー系3車は前・後ろが一つの欄で同じ書き方。アトレー・ハイゼット カーゴは駆動方式の列では分かれないが、前と後ろは別の書き方
独立か車軸か 表の語(独立懸架・車軸式)、JAFの説明 言葉が書かれていない表もある(クラウン・エブリイなど)。形式名から推測した場合は、推測と分けて書く
形の特徴の説明 各社の公式ページ、JAF、ホンダ SPORTS DRIVE WEB 説明は会社・団体ごとに強みを置く場所が違う。宣伝文はその車についての説明
国の基準 保安基準 第14条、細目告示の緩衝装置の条 条文に形式の名前は見当たらなかった(読んだ範囲)
点検・改造・車検 サイト内の記事と、国の公式資料 この記事では扱わない(あわせて読みたいを参照)

3-2. よく聞く説を、読んだ範囲で確かめる

よく聞く説 読んだ範囲で分かったこと 確認できなかったこと
独立懸架なら、必ず乗り心地が良い JAFは独立懸架方式の特徴として「接地性に優れ、乗り心地が良い」を挙げている。ホンダのページは「形式によって優劣が決まったりするものではない」と書く 「必ず」と言える資料は、読んだ範囲に見当たらなかった
トーションビーム式は、スポーツに向かない ホンダの技術者は「『トーションビームがスポーツに向かない』なんてことはないですよ」と説明している(Vol.1) メーカーごとの考え方は、読んだ資料以外では確認していない
マルチリンク式が一番良い 読んだ資料に、形式の順位づけは見当たらなかった。ホンダは「アームの本数が多くて設計の自由度が高い」のはダブルウィッシュボーン式と説明している マルチリンク式についてのホンダの説明は、2-5の1997年の資料(アームの本数の説明)まで
トーションビーム式には弱点がある ホンダの技術者は『弱点』があるとしたら『難しさ』(狙った特性を出す設計の難しさ)と説明し、『振動吸収とのトレードオフ』に触れたうえで、設計者にとっては「ダブルウイッシュボーンよりもずっと難しくて、逆に言えば腕の見せ所になっている」と述べている 『弱点がある』という一般的な評価かどうかは、確認できなかった
ストラット式とマクファーソン式は別物 表の言葉は「マクファーソン式」「マクファーソン・ストラット式」「マクファーソンストラット式」「ストラット式」と分かれて並ぶ 同じ構造を指すかは、表だけでは確認していない
表に「独立懸架」と書いていなければ、車軸式 クラウンの表は「マルチリンク式コイルスプリング」とだけ書く。JAFはマルチリンク式を独立懸架の形式の例に挙げている エブリイの I.T.L. 式が独立か車軸かは、確認できなかった
同じ車名なら、サスペンションも同じ N-VAN(FF=車軸式・4WD=ド・ディオン式)とヤリス(2WDと、E-Four・4WD)は、駆動方式で後ろの書き方が分かれる ジムニー系3車は前・後ろが一つの欄で、同じ書き方。アトレー・ハイゼット カーゴは、駆動方式の列では分かれないが、前と後ろは別の書き方(前=マクファーソン・ストラット式、後ろ=トレーリングリンク車軸式)
保安基準が、サスペンションの形式を決めている 第14条は、備えるのは、強度や緩衝性能について告示で定める基準に適合する、ばねその他の緩衝装置。ただし、大型特殊自動車などは省略できる場合がある、と定める。本文に形式の名前は見当たらなかった 告示の別の節・別添・審査の事務規程は読んでいない

3-3. サスペンション欄を読む手順(6段)

順 見るところ そのとき見ること
1 資料の版 PDFの日付・更新日時、車名、グレード、駆動方式の列
2 欄の名前 サスペンション・サスペンション方式・サスペンション形式・懸架方式など。前・後ろが別の行か、「/」か
3 前と後ろ 形の名前を、表の言葉のまま写す(言い換えない)
4 駆動方式・注記 列ごとに分かれていないか。角かっこ・括弧・*印の注記
5 ばねの語 コイルスプリングなどの語があるか(ない表もある)
6 説明との照合 JAF・メーカーの説明は『誰がそう説明しているか』を付けて読み、優劣の断定にしない

4. よくある質問

Q. サスペンション欄の「マクファーソン式」と「ストラット式」は同じですか?

A. この記事では、同じとも違うとも言えません。表の言葉は「マクファーソン式」(N-VAN)・「マクファーソン・ストラット式」(アトレー)・「マクファーソンストラット式」(エブリイ・ヤリス・GR86)・「ストラット式」(GRヤリス)・「ストラット式独立懸架」(WRX S4)と並んでいて、同じ構造を指すかを確認できる資料は読んだ範囲にありませんでした。表の言葉のまま読み、気になるときは販売店やメーカーの公式資料で確かめてください。

Q. 表に「独立懸架」と書いていない車は、車軸式ですか?

A. 言えません。クラウンの表は「マルチリンク式コイルスプリング」とだけ書かれ、独立か車軸かの語がありません。JAFの説明では、マルチリンク式は独立懸架の形式の例です。エブリイの I.T.L. 式は、独立か車軸かを読んだ範囲では確認できませんでした。

Q. トーションビーム式は、独立懸架ですか?

A. JAFの説明では、トーションビーム式は車軸式の一種で、ビーム自体が捩れることで独立懸架に近い機能を持つため、半独立懸架と呼ぶこともあります。表の言葉としては、ヤリスの後ろの欄に「トーションビーム式コイルスプリング」と書かれています。

Q. 国の基準で、サスペンションの形式は決まっていますか?

A. 保安基準 第14条は、備えるのは、強度や緩衝性能について告示で定める基準に適合する、ばねその他の緩衝装置。ただし、大型特殊自動車などは省略できる場合がある、と定めています。条文の本文に、ストラット式・マルチリンク式などの形式の名前は見当たりませんでした。告示の緩衝装置の条を三つ読みましたが、使ってよい形式を決める文は見当たりませんでした。告示の別の節などは読んでいないので、『形式の指定はない』とまでは言えません。

Q. サスペンションの部品を替えたり、車高を変えたりするときの基準は?

A. この記事では扱いません。最低地上高の測り方と告示は、サイト内の『最低地上高は9cm以上?』の記事で確認できます。改造や部品の交換が基準に合うかは、国土交通省などの公式資料で確かめてください。

5. あわせて読みたい・まとめ・出典

あわせて読みたい

▶ サスペンションの仕組みと点検(点検・劣化のサイン・法定点検の記事。この記事は表の言葉の読み方に絞っています)

▶ 最低地上高は9cm以上?車高を下げたら車検でどう測る?空車・切り捨て・例外を告示で確認【2026年】(最低地上高の告示の記事)

▶ 車の改造で必要になる「構造等変更検査」とは?対象と手続き(改造と検査の手続きの記事)

まとめ

サスペンションの表の読み方は、(1)表の言葉は会社ごとに少しずつ違うので、表の言葉のまま読む、(2)大きな分け方は、車軸を固定した方式と、左右の車輪が別々に動く方式(JAFの説明)、(3)前と後ろ、駆動方式の注記も一緒に読む、(4)形の得意は説明ごとに違い、ホンダのページは「形式によって優劣が決まったりするものではない」と書いている、(5)保安基準 第14条は、備えるのは、強度や緩衝性能について告示で定める基準に適合する、ばねその他の緩衝装置。ただし、大型特殊自動車などは省略できる場合がある、と定めていて、条文の本文に形式の名前は見当たらなかった、の5つです。

確認日・免責・出典

確認日は2026年10月27日です。諸元のPDFの版は、記事内の表のとおりです(HTTPの更新日時、PDFの中の日付、ファイル名の年月)。諸元は改良・仕様変更・販売終了で変わることがあり、サスペンションの形式も、グレードや駆動方式の列で分かれることがあります。最新の情報はメーカー公式サイトと販売店で確認してください。JAFの回答は「2024年11月現在」、ホンダ SPORTS DRIVE WEB は掲載年の記載がないページです。国の基準は、保安基準(e-Govの施行日2026年10月20日の版)と、国土交通省が公開している細目告示の緩衝装置の条(PDF)で確認しました。特定の車・部品・商品を勧めるものではありません。

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