並行輸入車の落とし穴、部品調達と整備のデメリット

「同じ車種なのに、並行輸入車のほうが安い」。そうした魅力の一方で、購入後の部品調達や整備、リコールの扱いで困る人もいます。この記事では、自動車技術総合機構(NALTEC)のFAQ、国土交通省のリコール制度のFAQ(2026年9月25日確認)を軸に、並行輸入車の公的な位置づけ、登録までに必要な確認、購入後に気をつけたいことを整理しました。部品の入手期間や費用など、公的な数値がないものは、一般的な注意点として区別して書いています。

📋 この記事の要点

✔ 日本で未登録の車を個人で輸入した場合は、原則として「並行輸入自動車」として扱われる(NALTECのFAQ)

✔ 正規の輸入ルートの車は、型式指定自動車・新型届出自動車・輸入車特別取扱自動車(いわゆるディーラー車)として扱われる

✔ 並行輸入車は、日本の道路運送車両の保安基準への適合を確認する届出・試験が必要。排出ガス試験は専用設備のある機関で行う

✔ 国土交通省は、並行輸入車はリコール制度による製作者・輸入事業者等の修理を受けられないことがあると注意を呼びかけている

✔ 部品・整備・保証は、公的な基準ではなく購入先や車種で変わる。購入前に販売店へ具体的に確認する

1. 並行輸入車とは(公的な分類)

NALTECのFAQでは、日本で未登録の自動車を個人で日本に輸入した場合は、原則として「並行輸入自動車」として取り扱うとされています。一方、自動車製作者、または製作者から購入する契約を結んで日本へ輸出を業としている人が、国土交通大臣に型式ごとに安全性や環境性を申請・届出して認められた場合は、別の区分になります。

📊 輸入車の区分(NALTEC・2026年9月25日確認)

区分 内容 登録時の扱い(NALTECのFAQ)
型式指定自動車 製作者等が型式ごとに申請し、認められた自動車 型式ごとの審査を経た車として扱われる
新型届出自動車 製作者等が型式ごとに届出した自動車 同上
輸入車特別取扱自動車(いわゆるディーラー車) 製作者から購入する契約を結んで輸出を業とする人が、型式ごとに申請・届出して認められた自動車 同上
並行輸入自動車 日本で未登録の自動車を個人で輸入した場合など、原則として該当する 新規検査又は予備検査の前に、「並行輸入自動車届出書」などを提出する

📌 補足

「逆輸入車」という呼び方もありますが、上の区分は公的な分類ではありません。日本メーカーの車を海外から持ち込む場合の扱いは、運輸支局(検査場)で確認してください。

2. 登録までに必要な確認と手続き

輸入した車は、日本の「道路運送車両の保安基準」に適合することが確認できなければなりません(NALTECのFAQ)。並行輸入車を日本で初めて登録するときは、新規検査や予備検査の前に、次の書類などを、検査を申請する運輸支局等と同じ敷地内にあるNALTECの事務所長へ提出します。

📊 並行輸入自動車の届出に必要なもの

必要なもの 内容(NALTECのFAQ) 発行・確認する所
並行輸入自動車届出書 新規検査・予備検査に先立って提出する NALTECの事務所(運輸支局等と同一敷地内)
自動車通関証明書等(写) 自動車通関証明書、輸入申告書、二輪自動車等の打刻届出書のいずれかなど 通関証明書・輸入申告書は税関。二輪自動車等の打刻届出書は、国土交通省の地方運輸局
技術基準への適合性を証する書面 技術基準適合証明書(製作者が証明した原本)、または技術基準の試験成績書(指定の試験機関が発行) 製作者、指定の試験機関
排出ガス試験の結果 排出ガス試験は専用設備が必要で、主に公益財団法人日本自動車輸送技術協会、一般財団法人日本車両検査協会、一般財団法人日本自動車研究所で行う 上記の機関

🧭 並行輸入車の登録までの流れ(概要)

1

車の通関を済ませる

税関で、自動車通関証明書または輸入申告書を受け取ります。

2

技術基準への適合を確認する

排出ガスなどの試験成績書、または製作者の技術基準適合証明書を用意します。

3

並行輸入自動車届出書などを提出する

運輸支局等と同じ敷地内にあるNALTECの事務所長へ提出します。

4

新規検査または予備検査を受ける

検査に合格すると、登録・ナンバーの取得へ進みます。

⚠️ 注意

NALTECは、令和3年7月から届出書面の取扱いを変更しました。「技術基準への適合性を証する書面」が偽造されていた事案があったため、審査を一層厳正に行うためとされています。書類の準備は、専門店や行政書士に頼る場合でも、内容を自分で確認しておきましょう。

3. 購入後に起こりやすい困りごと

並行輸入車では、部品・整備・保証の体制が、正規の輸入車とは大きく異なることがあります。次の表は、公的な基準があるものと、一般的な注意点とを分けて整理したものです。

📊 並行輸入車で気をつけたい点

項目 起こりやすいこと 確認のしかた
リコール 製作者・輸入事業者等が届出をする制度の外にあるため、リコール制度による修理を受けられないことがある(国土交通省) 車種の海外リコール情報を自分で調べ、修理の方法を購入先に確認する
部品の調達 国内に在庫がなく、海外から取り寄せる場合がある。期間・費用は、車種や部品で異なる(一般的な注意点) 購入前に、専門店に「よく壊れる部品の入手経路と目安の期間」を聞く
整備を頼める店 正規ディーラーで整備を断られることがある。並行輸入車に慣れた専門店を探す必要がある(一般的な注意点) 近隣で対応できる整備工場を、購入前に見つけておく
診断機・電子制御 新しい車ほど、診断に専用の機器が必要になる。対応できる工場が限られる(一般的な注意点) 対応する診断機を持つ工場かを確認する
年式の表記 車検証の初年度登録と、実際のモデルイヤー(製造年式)がずれることがある。部品を注文するときは、車台番号(VIN)から実際の年式を確認する(実務上の注意点) 車台番号を、販売店や部品商に伝えて確認する
保証 正規のメーカー保証がない場合がある。販売店独自の保証の範囲は店ごとに異なる(一般的な注意点) 保証書の内容(対象部品・期間・修理できる場所)を確認する

⚠️ リコールについて(国土交通省)

国土交通省のFAQでは、リコール届出の義務があるのは、国内の自動車メーカー、海外メーカーの車を国内で販売する契約を結んだ人、日本国内で自らの車を販売する海外メーカーだとされています。これら以外から購入する車や個人で輸入する車(並行輸入車)は、ユーザーが安全と環境保全を図る責任を負い、リコール制度による修理を受けられないことがあるとされています。

4. 購入前のチェックリストと、進め方

📝 購入前のチェックリスト

☑️ 販売店が、並行輸入車の登録実績と整備体制を説明できるか確認した

☑️ 車の届出に使う「技術基準適合証明書」や「試験成績書」の有無と内容を、販売店に確認した

☑️ 保証の対象・期間・修理できる場所を、書面で確認した

☑️ 近隣に、その車を整備できる工場があるかを確認した

☑️ 車台番号(VIN)から、実際のモデルイヤーを確認した

☑️ 車種の海外のリコール情報を、自分でも調べた

☑️ 維持費(部品代・工賃・税金・保険)を、見積もりの範囲で確認した

🧭 購入の進め方

1

欲しい車種の、国内での情報を調べる

正規の輸入車があるか、並行輸入のみか、整備できる工場があるかを調べます。

2

複数の販売店・専門店に、条件を確認する

保証、部品の入手、整備の体制、登録の書類を比べます。

3

車台番号で、実際の年式・仕様を確認する

車検証の年式だけでなく、車台番号から製造年式や仕様を確認します。

4

総額で判断する

車両価格に、諸費用、輸送・登録の費用、必要な整備費を加えて比べます。

5. 向いている人と、慎重に考えたい人

📊 並行輸入車の向き・不向き(一般的な整理)

観点 向いているケース 慎重に考えたいケース
車種 国内未発売のグレード・仕様に乗りたい 国内に整備できる店が近くにない
費用 部品代・整備費に余裕を持てる 維持費を抑えたい
整備 専門店と付き合う前提で選べる 近所の整備工場・ディーラーだけで済ませたい
保証・リコール 保証内容と、リコールへの対応方法を確認して納得している 正規のメーカー保証やリコール対応が欠かせない

💡 ポイント

「価格が安い」ことだけで決めず、購入前に、部品の入手・整備・保証・リコールの4つを、販売店に具体的に質問しておくと、購入後の行き違いを減らせます。

6. よくある質問

Q. 並行輸入車は、正規ディーラーで整備してもらえますか?

A. 正規ディーラーの方針や車種によって異なり、公的な決まりはありません。断られる場合もあるため、購入前に整備できる工場を確認しておきましょう。

Q. 並行輸入車でも、車検には通りますか?

A. 日本で登録する際に、保安基準への適合を確認する届出や試験が必要です。登録後の継続検査でも、日本の保安基準に適合している必要があります。詳細は運輸支局で確認してください。

Q. リコールが出たら、どうなりますか?

A. 国土交通省のFAQでは、並行輸入車は、リコール制度による製作者・輸入事業者等の修理を受けられないことがあるとされています。購入先や整備工場に、対応の可否を事前に確認してください。

Q. 並行輸入車の登録の手続きは、どこで行いますか?

A. NALTECのFAQでは、並行輸入自動車届出書などを、検査を申請する運輸支局等と同一敷地内にあるNALTECの事務所長へ提出するとされています。詳細は審査事務規程(別添3)をご確認ください。

まとめ

並行輸入車は、個人で輸入した未登録車などが該当し、日本の保安基準への適合を、届出と試験で確認して登録します。国土交通省は、リコール制度による修理を受けられないことがあると注意しています。部品の調達、整備できる店、保証の範囲は、公的な基準がなく購入先や車種で異なります。購入前に、その4点を販売店へ具体的に確認して選びましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。

アイキャッチ画像: Deck inside a car carrier by Hervé Cozanet, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

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