衝突被害軽減ブレーキは何km/hで効く?義務化の基準(国交省)と、取扱説明書4車種で読む「効かない場面」【2026年10月】

※この記事で紹介している動画は、2026年11月15日(日)19:00に公開予定です。公開までは、記事の中の動画は再生できません。公開後に再生できるようになります。

歌いながら話す動画『衝突被害軽減ブレーキは何km/hで効く?義務化の基準(国交省)と、効かない場面の読み方』の解説記事です。動画で話した内容の出どころを、国土交通省の発表と告示、ナスバ(独立行政法人自動車事故対策機構。国土交通省と一体で自動車アセスメント「JNCAP」を行っています)、4つの取扱説明書の原文で確かめ直し、動画で触れきれなかった表と、別の切り口の整理を足しました。確認日は2026年10月26日です。取扱説明書は車種・年式・装備で違うため、読んだ4車種は「例」で、他の車に当てはまるとは書いていません。

📋 この記事の要点

✔ 義務化の対象は、乗用車等の「新車」。乗車定員10人未満の乗用車(軽を含む)と、車両総重量3.5トン以下の貨物車。継続生産車(義務化の前から作り続けているモデル)は、もとは2026年9月1日以降に製作された車から。国土交通省が2026年8月31日に、適用日を11月1日へ延期した。11月1日は過ぎたので、いまは11月1日以降に製作された車が対象のはずだが、改正後の告示本文は確認できていない(確認した2026年1月版の告示では、軽の貨物車の継続生産車は2027年9月1日から)。古い解説にある『国産は2025年12月』は2020年の発表の時期で、確認した2026年1月版の告示とは違う。

✔ 国の基準は、決められた試験の条件で「衝突しないこと」。乗用車の例は、止まっている車へ時速40キロ、時速20キロで走る車へ時速60キロ、横断する歩行者へ時速40キロ、横断する自転車へ時速38キロ。令和3年度の国交省の検討会資料の表では、止まっている車への試験で近づく速度が時速45キロ以上の条件は『衝突速度の上限』(時速60キロなら35キロ以下)になっている(いまの試験方法かは未確認)。

✔ 『止める装置』ではなく『被害を軽減する装置』。細目告示の定義は「前方障害物との衝突による被害を軽減するために制動装置を作動させる装置」。ナスバは「どんなときでも絶対止まる物ではありません」と説明し、4つの取扱説明書もそれぞれ、あらゆる状況で働くものではない、機能には限界がある、という趣旨を書いている。

✔ 作動する速度は車ごとに違い、『作動する』と『避けられる』は別。確認した4車種で範囲も対象も違った。スズキ スペーシアの取扱説明書(2023年11月作成のPDF)は、自動ブレーキが作動しても「十分に減速できない場合があります」と書き、ブレーキが冷えている・濡れているときや、凍結路・積雪路などを挙げている。

✔ 効かない場面は6つに分けて読める。見えにくいとき、センサーの前がふさがれたとき、相手の動きや形、道の形、運転する人の操作、作動しても止まりきれない場面。過信しない・取扱説明書で作動条件を確認する、はナスバが書いている(「過信せず、取扱説明書を読み、作動条件等を正しく理解して」)。「過信しない」の趣旨は確認した4つの取扱説明書にも書かれている(言い方は車で違う)。自分で作動テストをしない、はトヨタとスズキの取扱説明書が書いている(トヨタ PDF p.206、スズキ PDF p.299(印字4-48))。

▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)

1. 動画の内容(要約)

動画は、聞き役の『かーぎーくん』と解説役のかけ合いです。冒頭と章の頭、まとめで歌い、本文はリズムに乗せた会話です。歌の歌詞には数字や条件を入れず(『止まらない時もある』『被害を減らす装置』『取説見てね』など一般的な内容だけ)、数字と条件は語りと画面の表で示しました。

自動ブレーキは何キロで効く? 義務化の基準と、効かない場面の読み方
図:動画で確かめる4つのポイント(自作の図)
章 開始 内容 使った一次情報
イントロ 00:00 歌のフックと、4つのポイント(義務化の対象と時期・国の基準・作動する速度・効かない場面) (各章の出典)
義務化の対象と時期 00:40 対象は乗用車等の新車。新型車と継続生産車の時期。継続生産車は、もとは2026年9月1日以降の製作分から、2026年8月31日に11月1日へ延期(改正後の告示本文は未確認)。軽の貨物車と、バス・トラックは別 細目告示第15条・適用関係の整理告示・国交省の発表4件
国の基準の中身(試験の条件) 02:28 静止車両・走行車両・歩行者・自転車への試験。時速40キロを超える条件は衝突速度の上限。「絶対止まる物ではありません」 国交省の発表・検討会資料・ナスバ
作動する速度は車ごとに違う 04:07 4つの取扱説明書の作動する速度。『作動する』と『避けられる』は別(スペーシアの記載) 4車種の取扱説明書
効かない場面の読み方 05:20 6つの場面(見えにくい・センサーがふさがれた・相手の動きや形・道の形・運転する人の操作・止まりきれない)。交差点の評価と、自分で試さないこと 4車種の取扱説明書・ナスバ
まとめ 06:54 4つの確認と、締めの歌 (上記)
動画では、数字を歌詞にしていません。条文の数字と条件は、次の章で原文のまま確認できます。

2. 動画で触れきれなかった補足

2-1. 義務化の対象(細目告示の原文)

📜 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第15条 第8項(国土交通省掲載の2023.1.4版)

「専ら乗用の用に供する自動車(二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車並びに被牽引自動車を除く。)であって乗車定員10人未満のもの及び貨物の運送の用に供する自動車(三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車並びに被牽引自動車を除く。)であって車両総重量が3.5t以下のものには、道路維持作業用自動車又は緊急自動車であって車両前部に特殊な装備を有するものを除き、協定規則第152号の規則5.及び6.に適合する衝突被害軽減制動制御装置を備えなければならない。」
同 第7項(定義): 「衝突被害軽減制動制御装置(前方障害物との衝突による被害を軽減するために制動装置を作動させる装置をいう。以下同じ。)」。出典: 国土交通省 細目告示 第15条(PDF)

軽の乗用車は対象に含まれます(除外は「カタピラ及びそりを有する軽自動車」と三輪・二輪など)。国土交通省の発表の見出しは「新車を対象とした義務付け」で、すでに走っている車や中古車に後付けを求める決まりは、細目告示の第15条には見当たりませんでした(確認したのは第15条の範囲で、ほかの条文や通達までは調べていません)。2020年1月31日の発表には「機能には限界があり作動しない場合もあります。機能を十分に理解した上で、過信せずに引き続き安全運転を心がけていくことが重要です」という注意も書かれています。

2-2. 適用時期の表と、古い時期との違い

衝突被害軽減ブレーキの義務化の適用時期(新型車・継続生産車[適用日は2026年11月1日へ延期。当初は9月1日。11月1日以降の製作分から(のはず)で、告示本文は未確認]・軽の貨物車・古い解説の時期)
図:確認できた範囲の適用時期(自作の図。継続生産車は国交省の発表の文面による。製作日の基準など、改正後の告示本文は未確認。出典は下の表)
区分 現行の時期 出典・補足
新型車(国産) 2021年11月1日から(新たに型式の指定を受けたモデル) 適用関係の整理告示【2026.1.9】第9条 第53項
新型車(輸入車) 2024年7月1日から 同上
継続生産車(国産・輸入車) 適用日は2026年11月1日へ延期(当初は2026年9月1日以降に製作された車から。国交省が2026年8月31日に延期)。11月1日以降に製作された車から(のはず。製作日の基準は告示本文で未確認) 同第53項(当初の日付)。国交省 2026年8月31日の発表「本年9月1日から継続生産車に適用される基準について、適用日を本年11月1日に延期」(延期される基準に「乗用車等の衝突被害軽減ブレーキの義務化」)。理由は熊本地震による生産の遅れ(特例措置)。11月1日は過ぎたので、いまは11月1日以降に製作された車が対象のはずですが、改正後の告示本文は確認できていません
軽の貨物車(軽トラック等)の継続生産車 2027年9月1日から(2026年1月版の告示) 同第53項(令和9年8月31日まで除外)。2020年1月の発表の「軽トラックは令和9年9月」と一致。2026年8月31日の延期の対象に含まれるかは、告示本文で未確認
古い解説の時期 継続生産車 国産 2025年12月 / 輸入 2026年7月 2020年1月31日の国交省の発表の時期。確認した2026年1月版の告示とは違う(いつ・なぜ変わったかは確認できなかった)

「継続生産車」は、義務化の前に型式の指定を受けて作り続けているモデルです(告示は、指定を受けた日、またはそれ以降に新たに指定を受けても以前の型式から型式を区別する事項に変更がないもの、で区別しています)。適用は製作時期と型式で決まり、出荷検査証の発行日と新規検査の時期による例外もあります。そのため『この日に買った新車は全部対象』とは言えず、お持ちの車・購入予定の車は販売店や取扱説明書で確認してください。

対自転車の要件は、2021年9月30日の発表で追加され、当時の適用日は新型車2024年7月1日・継続生産車2026年7月1日でした(国交省の発表)。2026年1月版の告示の読み替え規定(第56項)では、継続生産車は2026年9月1日以降に製作された車から改訂版の要件になります。2026年8月31日の延期の対象に含まれる細目は、改正後の告示本文を取得できず未確認です。なお、確認日(2026年10月26日)以降の改正は確認していません。

2-3. バス・トラック等(大型車)は別の基準

対象 基準 時期 出典
乗車定員10人以上の乗用車(バス等)、車両総重量3.5トン超の貨物車(トラック等) 原則として国連規則第131号にもとづく(細目告示 第15条 第7項)。2023年1月4日の改正で、歩行者を加えた強化基準 新型車 2025年9月1日 / 継続生産車 2028年9月1日 国交省 2023年1月4日の発表・適用関係の整理告示 第61項
第7項のただし書(例外) 「液体の圧力により作動する主制動装置を備える車両総重量8t以下の自動車にあっては、次項に適合する衝突被害軽減制動制御装置を備えてもよい。」(次項=第8項。乗用車等と同じ国連規則第152号)。また第7項本文は「高速道路等において運行しないもの」などを義務の対象から除いている — 国土交通省 細目告示 第15条(PDF)

大型車の従来の時期は、適用関係の整理告示【2026.1.9】第9条の第18〜23項に、車両総重量や乗車定員などの区分ごとに、型式の指定日と製作日で細かく書かれています(たとえば、車両総重量22トン超の貨物車と、8トン超20トン以下の貨物車では、日付が違います)。区分が細かいため、この記事では扱いません。報道には食い違う時期も出回っているため、告示の原文でお確かめください。

2-4. 義務化の『試験の条件』(乗用車)

義務化の試験(静止車両・走行車両・歩行者・自転車)の速度
図:国交省 2021年9月30日の発表 別紙の条件(自作の図)
試験 相手 試験車の速度 要件
(ア)静止車両 止まっている車 時速40キロ 衝突しないこと
(イ)走行車両 時速20キロで走る車 時速60キロ 衝突しないこと
(ウ)歩行者 時速5キロで横断(6歳児相当・身長115cmのダミー) 時速40キロ 衝突しないこと
(エ)自転車 時速15キロで横断 時速38キロ 衝突しないこと

(エ)自転車の試験は、2021年9月30日の発表で追加された要件で、適用日は新型車が2024年7月1日(継続生産車は当時の発表で2026年7月1日)でした(国交省 2021年9月30日の発表 別紙(PDF))。

そのほか、緊急制動の0.8秒前までに警報すること(対歩行者は緊急制動の開始まで)、エンジン始動のたびにシステムが自動的に起動してスタンバイすること、が要件です(2020年1月の概要)。ダミーは「試験車のブレーキが作動しないと4秒後に衝突するタイミングで動き出す」とされています。出典: 国交省 2021年9月30日の発表、2020年1月31日の発表

古い図に注意: 2020年1月の発表の図は、歩行者への試験が時速30キロでした。2020年7月の検討会資料は、2020年3月にWP.29で成立した改訂で、対歩行者の試験速度を30キロから40キロへ強化(乗用車を含む全車)と示しています(令和2年度第1回車両安全対策検討会 資料3-2)。2021年9月30日の別紙は40キロです。その適用日は資料で「調整中」とされ、確認できませんでした。

軽トラック等(車両総重量3.5トン以下の貨物車)は試験速度が異なります。令和3年6月の検討会資料(改正案の段階の資料)では、静止38・走行58・歩行者35・自転車36キロとされています(令和3年度第1回車両安全対策検討会 資料3-2)。

2-5. 時速40キロを超える条件(止まっている車への試験。令和3年度の資料の表)

試験で近づく速度 JNCAPの満点要件 国連規則の要件(この表の読み)
時速40キロまで 衝突回避 同等(衝突回避と同等)
時速45キロ 衝突回避 衝突速度15キロ以下
時速50キロ 衝突回避 衝突速度25キロ以下
時速55キロ 衝突回避 衝突速度30キロ以下
時速60キロ 衝突回避 衝突速度35キロ以下

出典: 国交省 令和3年度第2回自動車アセスメント評価検討会 資料1(PDF) p.3の対応表(CCRs=静止車両)。走行車両(CCRm35〜60)はすべて『同等』です。この表では、時速40キロを超える静止車両への条件は、『衝突しないこと』ではなく衝突速度の上限(衝突を前提に速度を下げる書き方)になっています。この表は令和3年度の検討会資料のもので、現在の試験方法そのものかは確認できていません。

2-6. JNCAP(ナスバ)の評価の読み方

ナスバ(独立行政法人自動車事故対策機構)は、国土交通省と一体で自動車アセスメントを行っており(ナスバ 自動車アセスメントのご案内)、ナスバのサイトはこれを「JNCAP」の名前で案内しています。JNCAPの予防安全性能は、衝突被害軽減ブレーキを、前方の歩行者(昼間・夜間[街灯あり・街灯なし])、前方の自転車、交差点の右折時の対向車、交差点の右左折時の横断歩行者などで評価しています(自動車安全性能2025パンフレット)。「自動車安全性能2026」からは、交差点で直進してくる二輪車の前方を自車が右折した場合と、直進時に右から四輪車が進入してくる場合も評価に加わりました(ナスバ 自動車アセスメントのご案内)。

質問(ナスバのよくある質問) 回答の要点(原文の要所)
被害軽減ブレーキで、止まらないのに何で点が与えられるのですか? 「被害軽減ブレーキは絶対止まる装置ではなく、衝突しそうになった時に少しでも衝突する速度を下げる装置ですので、その速度低減量(速度が下がった量)に応じて得点を与えています。」
被害軽減ブレーキは、試験みたいに絶対止まるのですか? 「試験は一定の条件で実施したもので、実際には交通実態や車の位置、太陽の位置などの気象条件等が影響しますので、どんなときでも絶対止まる物ではありません。」
夜間や雨天も考慮されていますか? 「雨・雪等の気象条件での評価はしておりません。」(歩行者への夜間条件は、2018年度から街灯あり、2019年度から街灯なしを評価)
後付けの安全装置は評価していますか? 「後付けの安全装置については自動車アセスメントの評価対象ではございません。」

出典: ナスバ 自動車アセスメント よくある質問(確認日2026年10月26日)。また、パンフレットには「予防安全技術は、ドライバーを支援するシステムであり、万能ではありません。周囲の状況によってはシステムが作動しない場合や、十分な効果を発揮しない場合があります」と書かれています。

2-7. 取扱説明書4車種の「作動する速度」

取扱説明書4車種の作動する速度の比較表
図:4車種の取扱説明書に書かれた作動する速度(自作の図)
車種(取扱説明書) 記載(自車速度。「約」)
トヨタ アクア(取扱説明書2607版) プリクラッシュブレーキ: 先行車両・静止車両 約5〜180キロ / 対向車両 約30〜180キロ / 自転車 約5〜80キロ / 歩行者 約5〜80キロ(自動二輪車は別の範囲)
ホンダ N-BOX/N-BOX CUSTOM/N-BOX JOY 2026 自車の車速が約5キロ以上でカメラが検知を開始。自車との速度差が約5キロ以上ある対象に作動。交差点などでの右折時は自車が約30キロ以下。「対向車両、停止車両、前方の交差車両、歩行者および移動する自転車に対しては、自車が約100km/h以下で走行中に衝突のおそれがあるときに、CMBSが作動します」
日産 ノート(取扱説明書2210版。PDF内の編集日は2022年7月25日) 「車速約5km/hから作動します。歩行者・人が乗車している自転車には約10km/h~80km/hの範囲で作動します。(車速約100km/h以上では停止車両に対しては作動しません。)」「前方車両と自車の速度の差が小さいときは作動しません」
スズキ スペーシア(2023年11月作成のPDF) 前方衝突警報・警報ブレーキ・自動ブレーキ 約5〜約100キロ、ブレーキアシスト 約10〜約100キロ(PDF p.299〜301)。DCBSが作動しても「十分に減速できない場合があります」(PDF p.302)
スズキ スペーシアの取扱説明書の例: 作動する範囲と、作動しても十分に減速できない場合の違い
図:作動する範囲(約5〜約100キロ)と、作動しても十分に減速できない場合の記載(自作の図。2023年11月作成のPDF p.299〜302)

出典: トヨタ アクア 取扱説明書(PDF)、ホンダ N-BOX 取扱説明書(CMBS)、日産 ノート 取扱説明書(PDF)、スズキ スペーシア 取扱説明書(PDF。2023年11月作成)。他のグレード・年式・仕様に当てはまるとは限りません。

スズキ スペーシアの取扱説明書について: この記事のスペーシアの記載は、スズキ公式サイトに置かれているPDF(Web99011-79R33-000)の原文で確認しました。PDF内部の作成日は2023年11月28日で、本文にスペーシア・スペーシアカスタム・スペーシアギア・スペーシアベースの語が出る版です(スズキの取扱説明書の一覧ページはJavaScriptで表示されて取得できず、この版が最新かどうかまでは確認できていません。お持ちの車の取扱説明書で確認してください)。古い版の記載(世代未確認): スズキ スペーシアの旧世代の取扱説明書(Web99011-81M34-000。PDF内部の作成日は2016年11月15日・更新日は2017年8月4日で、本文にハイブリッド・スペーシアギアの語はない)には、自動ブレーキが作動したときの車速が約50km/h未満(歩行者の場合は約30km/h未満)であれば「衝突を回避できる場合があります」という記載がありましたが、2023年11月作成のPDFには見つからなかったため、この記事と動画では使っていません。

2-8. 取扱説明書の『作動しない・しにくい・止まりきれない』記載の例(6つの分類)

分類 記載の例(取扱説明書の言葉) 記載があった取扱説明書
① 見えにくいとき 悪天候(雨・霧・雪など)、逆光・対向車のライトなどの強い光、トンネルの出入口など急な明るさの変化、夜間にヘッドライトを点灯していない 確認した4つすべて
② センサー・カメラの前がふさがれたとき フロントガラスの汚れ・曇り・氷・雪、センサー前面の泥・雨滴・雪、ステッカー・フィルム・アクセサリー、ワイパーの拭き残し。トヨタ「ステッカー(透明なものを含む)などを貼ったりしない」 ガラスの汚れ・拭き残しは4つすべて。センサー前面の汚れはトヨタ・日産。ステッカー類は4つすべて(日産はノートの「カメラ前方のフロントガラスにステッカー(透明なものを含む)を貼らないでください」、PDF p.371)
③ 相手の動きや形 急な割り込み、目の前への飛び出し。日産(2210版)は、背の低い人(子供など)・動物・対向車両を検知しないと記載。スズキは、高さの低い対象物(小動物や幼児など)・対向車両を、ステレオカメラが検知できない、または検知に時間がかかる場合があると記載(PDF p.297〜298)。ホンダは歩行者の身長が約1m以下または約2m以上のとき。トヨタは対向車両の作動範囲(約30〜180キロ)を表で記載 割り込みはホンダ・日産。飛び出しはホンダ・日産・スズキ(スズキは「横からすぐ目の前に飛び出してきた」のみ。PDF p.298)。その他は上のとおり車種で違う
④ 道の形 急なカーブ、坂道・勾配が変わる道、凸凹・段差の多い路面 カーブと坂道・勾配は4つすべて。凸凹・段差も4つすべて(スズキは「作動しても十分に減速できない場合があります」の項に「急カーブや、凸凹の激しい路面」、PDF p.302)
⑤ 運転する人の操作 「運転者がアクセルペダルを強く踏んでいたり、ハンドルを操作したりしていると、運転者の回避操作とシステムが判断し、プリクラッシュブレーキが作動しない、または作動が解除される場合があります」(トヨタ)。ブレーキペダルを踏んでいると作動開始が遅れる場合もある 4つすべて(書き方はそれぞれ違う)
⑥ 作動しても止まりきれない 滑りやすい路面(凍結・積雪・砂利・鉄板など)、ブレーキが冷えている・濡れている・過熱している、すり減ったタイヤ・空気圧不足、降雨時 滑りやすい路面は4つすべて。ブレーキの冷え・濡れはトヨタ・日産・スズキ。タイヤのすり減り・空気圧は4つすべて(書き方は車で違う。下の説明)。降雨時はスズキ

タイヤについては、確認した4つとも、すり減りや空気圧のことが書かれていますが、書き方は車で違います。トヨタは、「システムをOFFにする必要があるとき」の一覧(PDF p.206〜207。Toyota Safety Sense共通の注意で、プリクラッシュセーフティ専用の項ではありません)に「タイヤの残り溝が十分にないとき、または空気圧が不足しているとき」を挙げています。ホンダは、カメラが正しく検知できない事例に「タイヤ空気圧が適切でない」とあり、さらに「摩耗度合の異なるタイヤ」を使うとシステムが正常に作動しないおそれがあると書きます。日産は「摩耗しているタイヤ、空気圧不足のタイヤ」(PDF p.205)。スズキは「タイヤの空気圧が適正でない、または摩耗したタイヤのとき」(PDF p.297)。

表の『記載があった取扱説明書』は、読んだ4つの中で書かれていたものです。書かれていない=その車種に当てはまらない、という意味ではありません(読み落としや、別の項目に書かれている場合があります)。

交差点については、ナスバが2026年度から出会い頭などの評価を加えた一方、ケース③(事故の直前に、相手が前方付近にいないケース)は評価の対象外で、「衝突軽減ブレーキは作動しません。運転手が自ら様々な状況を想定した衝突回避行動を取る必要があります」と説明しています(ナスバ 出会い頭のケース・対二輪右直のケース)。

2-9. 確認できなかったこと・載せなかったこと

項目 状況
2025年12月が2026年9月1日に変わった経緯 確認できなかった(現行告示と、2026年8月31日の延期は確認)
2026年8月31日付の改正後の告示本文 国交省の保安基準のページは「2026年3月31日現在」のまま。発表の文面で確認(細目は未確認)。『11月1日以降に製作された車が対象になる』という読みは、告示本文では確認できていない。確認日(2026年10月26日)以降の改正も確認していない
スズキ スペーシアの古い版の記載(世代未確認) 古いPDF(Web99011-81M34-000。PDF内部の作成日は2016〜2017年)にあった、約50km/h未満(歩行者は約30km/h未満)なら「衝突を回避できる場合があります」という記載は、2023年11月作成のPDFに見つからず、この記事では使っていない(2-7)
大型車の従来の時期 確認したが、この記事では扱わない(適用関係の整理告示【2026.1.9】第9条の第18〜23項に、重さの区分ごとに細かく書かれている)
国連規則第152号の原文(試験の路面・天候などの条件) 取得せず。国交省の概要の図と表で確認
スバル・マツダ・ダイハツ・三菱の取扱説明書 今回は4車種分のみ(スバルのPDFは文字が取り出せず、マツダ・ダイハツのWeb版は本文を取得できなかった)
追突事故の減少率などの統計 最新の公的な比較(装着車と非装着車)を確認できず、数字は載せない。国交省の事後効果評価は平成29年の資料で古い

3. 違った観点から整理する

3-1. 『作動する』『衝突しない(試験)』『十分に減速できる』『被害を減らす』は別の言葉

言葉 書かれている場所と意味 例
作動する 取扱説明書の作動する速度の範囲。システムが働く条件 スペーシア: 自動ブレーキ 約5〜約100キロ
衝突しない(試験の要件) 国の基準の試験条件。決まった条件での合格ライン 乗用車: 止まっている車へ時速40キロ
十分に減速できない場合がある 取扱説明書の記載。作動しても、ブレーキが冷えている・濡れている、路面が滑りやすいなどのときは、十分に減速できないことがある スペーシア: 「作動しても十分に減速できない場合があります」(PDF p.302)
被害を軽減する 細目告示の定義・ナスバの説明・4車種の取扱説明書の目的の書き方 「少しでも衝突する速度を下げる装置」(ナスバ)

4つの取扱説明書は、目的を「衝突回避を支援、あるいは衝突被害の軽減に寄与する」(トヨタ)、「衝突回避を支援したり衝突被害の軽減を支援したりする」(ホンダ)、「衝突回避操作を支援、または衝突時の被害や傷害の軽減」(日産)、「主に車両や歩行者への衝突の回避、あるいは衝突の被害を軽減することを目的としています」(スズキ)と書いています。どれも「回避の支援」と「被害の軽減」を並べていて、『必ず止める』とは書いていません。

3-2. ありがちな言い方の検証表

ありがちな言い方 確認した範囲で言えること 根拠
義務化されたから、今乗っている車にも付ける必要がある 国交省の発表は「新車を対象とした義務付け」。使っている車に後付けを求める決まりは、細目告示第15条第8項には見当たらなかった 2020年1月の発表・細目告示第15条第8項
国産の新車は2025年12月から全部対象 2025年12月は2020年の発表の時期。2026年1月版の告示では継続生産車は2026年9月1日以降の製作分から、2026年8月31日の発表で11月1日へ延期(改正後の告示本文は未確認)。新型車は2021年11月から 適用関係の整理告示・2026年8月31日の発表
時速40キロ以下なら必ず止まる 40キロは試験の条件。ナスバは「どんなときでも絶対止まる物ではありません」と説明 ナスバ よくある質問
試験に合格しているから、雨でも夜でも大丈夫 JNCAPは雨・雪などの気象条件での評価をしていない。取扱説明書は悪天候・逆光などで作動しにくいと書く ナスバ よくある質問・4車種の取扱説明書
すべての自動ブレーキは同じように効く 作動する速度の範囲も対象も、確認した4車種で違った。対向車や背の低い人の扱いも車種で違う 4車種の取扱説明書
ブレーキやハンドルを自分で操作しても、システムは変わらず働く 取扱説明書は、運転者の操作を回避操作と判断して、作動しない・遅れる・解除されることがあると書く トヨタ・ホンダ・日産・スズキの取扱説明書

3-3. 取扱説明書でここを読む(チェックリスト)

項目 見る場所の例(名称は会社で違う)
機能の名前 トヨタ「プリクラッシュセーフティ」/ ホンダ「衝突軽減ブレーキ(CMBS)」/ 日産「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」/ スズキ「デュアルカメラブレーキサポート」
作動する速度と対象 対象(車両・歩行者・自転車・二輪車など)ごとの速度の範囲、停止車両・対向車両の扱い
作動しない・しにくい・十分に減速できない場合 悪天候・逆光・汚れ、相手の動き、道の形、運転者の操作、路面とブレーキとタイヤの状態
センサー・カメラの手入れ フロントガラスの汚れ・曇り、ステッカーやフィルムを貼らない、ガラス交換やバンパーに衝撃を受けた後の点検・再調整(トヨタの記載)
警告表示・点検 警告灯が点いたときの対応。「頻繁に警報が作動するなど、システムに異常を感じたとき」は販売店で点検(ホンダの記載)
やってはいけないこと 自分で作動テストをしない(トヨタ・スズキの記載)。システムをOFFにする必要がある場面と手順は車ごとに違うため、取扱説明書の記載に従う(この記事ではOFFの手順は紹介しません)

3-4. 立場別の見方

立場 確認したい点
新車を買う予定の人 その車が新型車か継続生産車か、製作時期。取扱説明書の作動する速度と、作動しない場合。JNCAPの評価は、評価内容の変更で年度間の点数を単純比較できない(ナスバの説明)
いま乗っている人 フロントガラスとセンサー前の汚れ・曇り、ステッカーの有無、タイヤの状態。取扱説明書の「作動しない場合」を一度読む
家族や同乗者に説明する人 『ぶつからない車』ではなく『被害を減らす支援』と伝える。車間距離と速度は運転する人が決めること(ホンダの取扱説明書は「周囲の状況を確認し、十分な車間距離を保ち安全運転を行ってください」と書く)
歌詞に数字を入れなかった理由: 歌は短く覚えやすい反面、条件が落ちて誤解を固定しやすいためです。動画の歌は『いつでも止まるわけではない』『被害を減らす装置』『取扱説明書を見る』『車間は自分で空ける』といった、条件が要らない内容に限りました。

4. よくある質問

Q. 衝突被害軽減ブレーキは時速何キロで効きますか?

A. 国の基準は試験の条件で、乗用車は止まっている車へ時速40キロ、時速20キロで走る車へ時速60キロ、横断する歩行者へ時速40キロ、横断する自転車へ時速38キロで「衝突しないこと」です。実際に作動する速度は車ごとに取扱説明書に書かれ、確認した4車種では範囲も対象も違いました。作動する範囲と、衝突を回避できる範囲は別で、どんなときでも絶対止まる物ではない、とナスバは説明しています。

Q. 自分の車に衝突被害軽減ブレーキは付いていますか?

A. 義務化は新車が対象で、適用は製作時期と型式で決まります(継続生産車は、もとは2026年9月1日以降の製作分から、適用日が2026年11月1日へ延期されました。改正後の告示本文は確認できていません)。例外もあるため、取扱説明書・車検証の型式・販売店で確認してください。

Q. 後付けはできますか?

A. この記事では後付けの装置は扱いません。ナスバは「後付けの安全装置については自動車アセスメントの評価対象ではございません」としています。義務化は新車を対象にしたものです。

Q. 雨や夜は効かなくなりますか?

A. 確認した4つの取扱説明書は、悪天候(雨・霧・雪など)や逆光などの強い光で検知しにくい・作動しないことがあると書いています。JNCAPは雨・雪などの気象条件での評価をしていません。夜間の歩行者への条件は、2018年度・2019年度から評価しています。

Q. システムをOFFにしてもいいですか?

A. OFFにする必要がある場面や手順は車ごとに違い、取扱説明書に書かれています。この記事ではOFFの手順を紹介しません。ふだんの使い方と、作動しない場合は、お持ちの車の取扱説明書で確認してください。

5. あわせて読みたい・まとめ・出典

あわせて読みたい

まとめ

義務化の対象は乗用車等の新車で、継続生産車は、もとは2026年9月1日以降に製作された車からでしたが、適用日が2026年11月1日へ延期されました(11月1日は過ぎたので、いまは11月1日以降に製作された車が対象のはずですが、改正後の告示本文は確認できていません。適用は製作時期と型式で決まります)。国の基準は決まった試験の条件で、「どんなときでも絶対止まる物ではありません」。作動する速度は車ごとに違い、『作動する』と『避けられる』は別です。効かない場面は取扱説明書に書かれているので、自分で試さず、過信せず、車間距離と速度は運転する人が決めてください。

免責: この記事は、2026年10月26日時点の国土交通省・ナスバの公表資料と、4つの取扱説明書の記載の整理です。告示・JNCAPの評価内容・取扱説明書は改正・改定されることがあります。適用日は改正されることがあります。最新の国土交通省の発表もご確認ください。取扱説明書は車種・年式・装備で異なり、ここで読んだ4車種は例です。個別の判断は、販売店・メーカー等にご確認ください。

出典(確認日 2026年10月26日)

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