信号機のない横断歩道、歩行者優先のルールと一時停止義務

信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしているのに、車が止まらない。JAFの2025年の全国調査では、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は56.7%にとどまりました。この記事では、JAFの調査結果と警察庁の資料、道路交通法の条文をもとに、歩行者優先のルール、違反した場合の反則金・点数、運転中の注意点を整理します。

📋 この記事の要点

✔ JAFの2025年調査(全国94か所)では、信号機のない横断歩道で一時停止した車は6,226台中3,528台(56.7%)。前年から3.7ポイント上昇したが、約4割は止まっていない

✔ 道路交通法第38条は、横断歩道に近づく車に、停止できる速度での進行と、歩行者等がいるときの一時停止を義務づけている

✔ 横断歩道とその手前30m以内は追越し・追抜きも禁止。横断歩道とその端から前後5m以内は駐車・停車も禁止(警察庁)

✔ 違反すると、点数2点、反則金は普通車9,000円など。罰則は「3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金」(警察庁)。反則金の区分は信号無視(赤色等)と同じ

✔ 警察庁によると、令和7年中の横断歩行者等妨害等違反の取締り件数は約30万件

1. JAF全国調査で見る、横断歩道の一時停止の実態

JAFは2016年から、信号機のない横断歩道での車の一時停止状況を全国で調査しています。背景には、2016年のアンケートで、「信号機のない横断歩道で歩行者がわたろうとしているのに一時停止しない車が多い」と感じる人が86.2%に達したことがあります。2025年調査の概要は次のとおりです。

📊 JAF「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2025年調査結果)」より

項目 内容
調査期間 2025年8月6日〜8月28日の平日、10時〜16時
調査場所 全国94か所(各都道府県2か所)。センターラインのある片側1車線の道路で、原則として前後5m以内に十字路・丁字路がない場所
調査方法 JAF職員が横断歩行者となり、1か所あたり50回、計100回横断。通過する自家用自動車・自家用トラック(白ナンバー)の一時停止を確認。小雨を含む雨天時を除く
結果 通過した6,226台のうち、一時停止したのは3,528台。全国の一時停止率は56.7%(前年から3.7ポイント増加)

📊 都道府県別の一時停止率(抜粋、JAF調査より)

地域 一時停止率(2025年調査)
全国 56.7%
最も高い県 長野県 88.2%(次いで岐阜県 78.0%、福岡県 77.7%)
最も低い県 山口県 34.3%(次いで大阪府 35.5%、福井県 35.8%)
首都圏 東京都 44.2%、神奈川県 62.8%、埼玉県 47.9%、千葉県 48.4%

📌 補足

この調査は、センターラインのある片側1車線・制限速度40〜60km/h程度の場所で、歩行者が「渡ろうとしている」場面を作って行ったものです。全国のすべての横断歩道の実態を表す数字ではなく、調査条件のもとでの結果です。

警察庁は、令和3年から令和7年までの5年間で、自動車と歩行者が衝突した交通死亡事故は4,158件、その約7割の2,843件は歩行者が横断中の事故だったと公表しています。横断中の事故のうち、約6割の1,784件は横断歩道以外の場所を横断している時に発生しており、その約7割は、走行中の自動車の直前直後を横断するなどの法令違反がありました。歩行者側のルール違反も事故の背景にあることがわかります。

2. 道路交通法が定める「歩行者優先」のルール

道路交通法第38条の見出しは「横断歩道等における歩行者等の優先」で、対象は横断歩道と自転車横断帯(以下「横断歩道等」)です。条文の内容を整理します。

📊 運転者に関する主な規定(e-Gov法令検索・警察庁の資料より)

条文 運転者に求められること
第38条第1項(前段) 横断歩道等に近づくときは、渡ろうとする歩行者や自転車がいないことが明らかな場合を除き、横断歩道等の直前(停止線があるときはその直前)で停止できる速度で進行しなければならない
第38条第1項(後段) 横断歩道等を横断している、または横断しようとする歩行者等があるときは、横断歩道等の直前で一時停止し、その通行を妨げてはならない
第38条第2項 横断歩道等またはその手前の直前で停止している車がある場合に、その側方を通ってその前方に出ようとするときは、前に出る前に一時停止しなければならない
第38条第3項 横断歩道等とその手前の側端から前に30m以内の道路の部分では、前方を進行している他の車の側方を通ってその前方に出てはならない(追抜きの禁止)
第30条第3号 横断歩道・自転車横断帯とその手前の側端から前に30m以内の部分では、追越しのための進路変更や前車の側方通過が禁止されている
第38条の2 横断歩道のない交差点でも、交差点またはその直近で歩行者が横断しているときは、その通行を妨げてはならない

📊 横断歩道付近の禁止事項(警察庁「横断歩道は歩行者優先です」より)

場所 禁止される行為(警察庁)
横断歩道・自転車横断帯とその手前30m以内 他の車の追越し・追抜き
横断歩道・自転車横断帯とその端から前後5m以内 駐車・停車(赤信号や危険防止のために一時停止する場合などは別)

💡 「渡ろうとしている」かどうかの考え方

歩行者が渡ろうとしているのか、ただ立っているだけなのか判断がつかないことがあります。条文は、歩行者等がいないことが「明らか」な場合を除き、停止できる速度で進むことを求めています。迷うときは速度を落として、いつでも止まれるように準備しておくことが基本です。

3. 違反した場合の反則金・点数・罰則

警察庁の資料によると、横断歩道等における歩行者等の優先(第38条)に違反した場合の罰則と反則金は次のとおりです。横断歩道のない交差点での歩行者優先(第38条の2)も、罰則・反則金・点数は同じです。

📊 横断歩行者等妨害等の点数・反則金・罰則(警察庁より。自転車による違反には点数は付かない)

区分 内容
基礎点数 2点
反則金 大型車12,000円、普通車9,000円、二輪車7,000円、原付車6,000円、自転車6,000円
罰則 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金
取締り件数 横断歩行者等妨害等違反の取締り件数は、令和7年中は約30万件(警察庁)

📊 反則金が同じ区分に入る違反の例(e-Gov法令検索「道路交通法施行令」別表第六より。2026年9月25日確認)

反則金の区分(道路交通法施行令別表第六の区分16)に入る主な違反 大型車 普通車 二輪車 原付等
横断歩行者等妨害等 12,000円 9,000円 7,000円 6,000円
信号無視(赤色等) 12,000円 9,000円 7,000円 6,000円
通行区分違反 12,000円 9,000円 7,000円 6,000円
追越し違反 12,000円 9,000円 7,000円 6,000円

※表は横にスクロールできます

📌 補足

「横断歩道やその付近に歩行者がいるときは、赤信号と同じ」という言い方がされることがありますが、反則金の区分をみると、横断歩行者等妨害等と信号無視(赤色等)は同じ区分に入っています。

⚠️ 一般的な情報です

反則金・点数・罰則は法令の改正や個別の事案によって異なります。事故が起きた場合の責任は別に問われることがあります。個別の判断は、警察・公安委員会などの公的窓口や専門家にご相談ください。

4. 運転中に気をつけたいポイント

🧭 横断歩道に近づいたときの流れ

1

横断歩道の予告に早く気づく

路面標示や標識で横断歩道があることを確認し、渡ろうとする歩行者や自転車がいないか、左右の歩道の端まで見ます。

2

停止できる速度まで落とす

歩行者等がいないことが明らかでない限り、横断歩道の直前(停止線の手前)で止まれる速度で進みます。後続車がいる場合は、早めに軽くブレーキを踏み、止まる意思を伝えると追突を避けやすくなります。

3

歩行者等がいれば、手前で一時停止する

停止線があればその手前、なければ横断歩道の直前で止まり、渡り終えるまで待ちます。

4

前の停止車両の横を通るときも止まる

横断歩道の手前で停止している車があり、その横を通って前に出るときは、前に出る前に一時停止が必要です(第38条第2項)。

5

渡り終えたのを確認して発進する

歩行者等の通行を妨げないことを確かめてから、ゆっくり発進します。

歩行者を見落としやすい状況もあります。交通の方法に関する教則は、停止している車のそばを通るときは、急にドアが開いたり、車の陰から人が飛び出したりする場合があるので注意するよう示しています。対向車線の車が止まっている場合や、停車中のバスの陰など、歩行者が見えにくい場面では、特に速度を落とすことが大切です。

📝 横断歩道が見えたときのチェックリスト

☑️ 速度を落とし、停止できる状態にした

☑️ 左右の歩道・待っている人・自転車を確認した

☑️ 渡ろうとしている人がいれば、手前で一時停止した

☑️ 停止車両の前に出るときは、一時停止した

☑️ 横断歩道とその手前30m以内で、追越し・追抜きをしていない

☑️ 横断歩道とその前後5m以内に、駐車・停車していない

5. 歩行者側にも守るべきルールがあります

警察庁は、事故を防ぐには運転者だけでなく歩行者のルールの徹底も必要だとして、次のルールを示しています。

📊 歩行者のルール(警察庁「横断歩道は歩行者優先です」より)

歩行者のルール(警察庁) 内容
横断の方法 横断歩道や信号機のある交差点が近くにあるところでは、その横断歩道や交差点で横断しなければならない(道路交通法第12条)
直前直後の横断の禁止 車両等の直前または直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道を渡るときや、信号に従って渡るときは別(第13条)
横断が禁止されている場所 「歩行者横断禁止」の標識のある場所では横断してはならない。道路を斜めに横断してもいけない

6. よくある質問

Q. 歩行者が立っているだけのときも、止まる必要がありますか?

A. 道路交通法第38条は、渡ろうとする歩行者等がいないことが明らかな場合を除き、停止できる速度で進行することを求めています。渡ろうとしているのか判断がつかないときは、速度を落として止まれる準備をし、渡ろうとしていれば一時停止します。

Q. 自転車が横断歩道を渡っているときも、一時停止が必要ですか?

A. 第38条の対象は、横断歩道と自転車横断帯を通行する歩行者と自転車です。警察庁の案内でも、歩行者や自転車が横断しているとき、横断しようとしているときは、手前で一時停止して道を譲るよう示されています。

Q. 違反すると、どうなりますか?

A. 警察庁の資料では、違反点数は2点、反則金は普通車で9,000円、罰則は3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金とされています。一般的な情報ですので、個別の判断は警察・公安委員会などにご確認ください。

Q. 横断歩道の手前に、駐車や停車をしてもよいですか?

A. 警察庁によると、横断歩道と自転車横断帯とその端から前後5m以内の場所では、駐車も停車もしてはいけません。ただし、赤信号や危険防止のために一時停止する場合などは別です。

まとめ

信号機のない横断歩道での歩行者優先は、道路交通法第38条で定められた義務です。JAFの2025年調査では、渡ろうとする歩行者に対して一時停止した車は56.7%で、約4割は止まっていませんでした。違反すると点数2点、反則金は普通車で9,000円(反則金の区分は信号無視の赤色等と同じ)です。横断歩道が見えたら停止できる速度まで落とし、渡ろうとする人がいれば手前で一時停止すること。前の停止車両の横を通るときも一時停止すること。この基本を守ることが、歩行者の安全につながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。

参考: JAF「クルマ何でも質問箱」信号機のない横断歩道での交通ルールとは?(出典: 信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査〔2025年調査結果〕)

アイキャッチ画像: Pedestrian walking on zebra crossing, Higashi-Koganei, Tokyo by nakashi, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons(東京都で撮影)

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