NEXCO 3社(東日本・中日本・西日本)は、高速道路の「深夜割引」の仕組みを見直すと発表しています。現行制度では、0時から4時の間に少しでも走行すれば通行料金が3割引になりますが、見直し後は、割引の対象時間帯が22時から翌5時に拡大され、代わりに対象時間帯に走行した分だけが割引されます。割引は「後日還元型」に変わり、ETCマイレージサービスなどの利用が必要になります。運用開始の時期は、当初の予定から延期が続いており、2026年9月25日時点で確認できたNEXCO各社の公式ページには、具体的な開始日は示されていません。この記事では、NEXCO各社と関係機関の公開資料をもとに、見直しの内容、割引の計算方法、上限距離・激変緩和措置、後日還元の仕組み、これまでの経緯を整理します。
📋 この記事の要点
✔ 割引の対象時間帯が、現行の0時〜4時から、22時〜翌5時に拡大される
✔ 対象時間帯に走行した分のみが3割引になる。現行の「0時〜4時に少しでも走れば全走行分が3割引」から変わる
✔ 料金所ではいったん通常料金を課金し、ETCマイレージサービスまたはETCコーポレートカードで後日還元される。ETCマイレージサービスは事前登録が必要
✔ 割引の対象距離に上限(1時間あたり105km、大型車以上の貨物自動車等は90km)を新設。長距離逓減制の拡充と、5年程度の激変緩和措置も実施される
✔ 運用開始時期は「令和8年度以降」とされたまま(令和7年10月の発表)。令和8年3月3日時点では、動作確認・検証の段階。開始日は、改めて案内される
動画でも解説しています。(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
1. 現行の深夜割引と、見直しの全体像
NEXCOの資料によると、現行の深夜割引は、0時から4時の間に高速道路を通行するETC車の料金を3割引にするものです。0時〜4時に少しでも走れば、全走行分が3割引になります。この仕組みには、「割引適用待ちの車両が料金所付近に滞留する」「運転者などの労働環境が悪化する」という課題があるとされ、見直しのポイントが2023年(令和5年)1月20日に発表されました。見直しの目的は、一般道の沿道環境を改善するため、交通容量に余裕のある高速道路の夜間利用を促進することとされています。
📊 深夜割引の現行と見直し後の比較
| 項目 | 現行 | 見直し後(NEXCO各社の資料) |
|---|---|---|
| 割引の対象時間帯 | 0時〜4時 | 22時〜翌5時に拡大 |
| 割引の対象になる範囲 | 0時〜4時に少しでも走行すれば、全走行分が3割引 | 対象時間帯に走行した分のみが3割引 |
| 割引の受け方 | 料金所で、割引後の料金を課金 | いったん通常料金を課金し、ETCマイレージサービスまたはETCコーポレートカードで、後日還元(ETCマイレージサービスは事前登録が必要) |
| 対象距離の上限 | なし | 利用1時間あたりの上限距離を新設(無謀な運転の抑止策) |
| 長距離逓減制 | 現行のまま | 400km超の走行を対象に拡充(運用開始とあわせて) |
| 激変緩和措置 | – | 運用開始後5年程度。1,000km以上走行した場合の扱いと、22時台に流出した場合の還元率(最大20%) |
| 対象路線 | 現行の対象路線 | 変更なし(一回の通行に対して料金を設定している一部の区間は、別の扱い) |
📌 補足
ここで説明する内容は、NEXCO 3社が令和6年(2024年)7月に公表した見直しの概要資料と、令和7年10月・令和8年3月のシステム整備状況の発表をもとにしています。運用が始まるまでに、内容が変更される可能性があります。
2. 割引後料金は、どう計算されるのか
NEXCOの資料では、割引適用時間帯の走行距離と全走行距離から、還元率(通常料金に対して、実際に後日還元される比率)を計算します。割引後料金の式は、次のように示されています。
📊 割引の計算のしくみ
| 項目 | 内容(NEXCOの資料) |
|---|---|
| 割引後料金の式 | 割引後料金 = 通常料金 ×(100% -(割引適用時間帯の走行距離 ÷ 全走行距離 × 30%)) |
| 走行距離の把握 | 入口・出口の料金所、本線上に設置するETC無線通信専用アンテナ等の通信記録(時刻・位置)から算出。22時・5時をまたぐ場合は、前後2点の通信記録から求めた平均速度で、22時・5時の位置を推定する |
| 複数の経路がある場合 | 実際に走行した経路を用いて、割引適用時間帯の走行距離と全走行距離を算出する。なお通常料金は、従前どおり、基本的に最も安い経路の距離で算出する |
| 料金の概算 | 資料には、Webサイトで、事前に概算額をシミュレーションできるサービスを提供する予定との記載がある(NEXCO西日本は、深夜割引変更後の料金シミュレーションのページを公開) |
📊 見直し後の割引計算の例(いずれも資料上のイメージ)
| 走行例(NEXCO資料。イメージ) | 通常料金 | 割引適用時間帯の走行距離 ÷ 全走行距離 | 割引後料金 |
|---|---|---|---|
| 山陽姫路西料金所→岡山料金所(普通車) | 2,170円 | 38.1km ÷ 74.1km | 1,840円 |
| 岩槻料金所→宇都宮料金所(普通車)。全走行が割引適用時間帯 | 2,790円 | 92.5km ÷ 92.5km | 1,950円 |
| 中国池田料金所→五日市料金所(普通車)。複数経路 | 7,230円 | 331.4km ÷ 353.6km | 5,200円 |
※表は横にスクロールできます
💡 例の読み方
1つ目の例は、5時をまたいで走行する場合です。5時の時点の位置を、5時直前の通信記録の平均速度から推定し、割引適用時間帯に走った距離を38.1kmと算出しています。全区間が対象時間帯に入る2つ目の例では、見直し前と割引後料金は変わらないとされています(激変緩和措置の実施中は、22時台に全走行距離を走行した場合、還元率は20%)。
3. 上限距離・長距離逓減制・激変緩和措置
見直しに合わせて、無謀な運転の抑止策として、割引の対象になる走行距離に上限が設けられます。速度超過などで割引対象の距離を増やす運転を防ぐことが目的で、NEXCOの資料には「上限距離設定は、速度超過等の無謀な運転を容認するものではありません」と明記されています。
📊 上限距離の設定
| 車種区分 | 上限距離の考え方(NEXCOの資料) |
|---|---|
| 軽自動車等・普通車・中型車・乗合型自動車 | 割引適用時間における利用時間1時間あたり105km(速度計の誤差等を考慮し、1時間あたり5kmを加算した値)を上限距離とする。利用時間が4時間を超える場合は、30分相当の距離を減じるが、4時間に相当する上限距離(420km)を下回らない |
| 大型車・特大車(乗合型自動車以外) | 利用時間1時間あたり90kmを上限距離とする。利用時間が4時間を超える場合は、30分相当の距離を減じるが、4時間に相当する上限距離(360km)を下回らない |
| 計算の単位 | 22時〜翌5時ごとに計算する |
📊 上限距離が適用される例
| 走行例(NEXCO資料。イメージ) | 内容 |
|---|---|
| 中国池田料金所→小倉東料金所(普通車、山陽道経由) | 通常料金10,970円、全走行距離529.4km。割引適用時間帯の走行距離529.4kmが、上限距離420km(105km × 4.5時間 – 52.5km)を上回るため、420kmを用いて計算し、割引後料金は8,360円 |
📊 激変緩和措置
| 激変緩和措置(運用開始後5年程度) | 内容(NEXCOの資料) |
|---|---|
| 1,000km以上走行した場合 | 深夜割引適用車両(少しでも22時〜翌5時に走行したETC車)のうち、1,000km以上走行した場合は、1,000kmを超える部分を割引対象の走行分に追加する |
| 22時台に高速道路を流出した場合 | 22時台に高速道路から流出した車両は、22時台に走行した分の還元率を最大20%とする |
あわせて、長距離逓減制が拡充されます。NEXCOの資料では、見直しの運用開始とあわせて、割引見直しによる長距離利用の通行料金負担増を軽減するため、400kmを超える走行を対象に、長距離逓減制を拡充するとされています。対象は、NEXCO 3社が管理する高速道路のうち、対距離料金を適用する高速自動車国道で、他の高速道路会社が管理する道路や一般有料道路などは含まれません。資料の図では、引下げ率の最大が、現行の30%から、40%・45%・50%と段階的に大きくなる形で示されています(区間の区切りなど、詳細は公式資料で要確認)。
⚠️ 上限距離は「走れる距離の保証」ではありません
上限距離は、割引の計算に用いる距離の上限です。速度超過などの無謀な運転を認めるものではありません。天候や路面、速度標識などをよく確認し、交通ルールを守って走りましょう(NEXCOの資料の注記)。
4. 後日還元型:ETCマイレージサービスの事前登録と、料金所での課金
見直し後は、「ETCマイレージサービス」または「ETCコーポレートカード」を使った後日還元型の割引に変わります。深夜割引の計算には、車両ごとの通信記録の処理が必要で、一定の時間がかかるためです。NEXCO各社の案内では、ETCマイレージサービスは事前登録が必要とされ、NEXCO中日本の案内では、登録前の利用は割引の対象外とされています。
📊 後日還元型の例
| ケース(NEXCO資料の例。普通車) | 料金所での課金 | 後日の扱い |
|---|---|---|
| 中国池田→津山。深夜割引の条件を満たす。ETCマイレージサービス利用 | 通常料金3,810円を課金(現在は割引後の2,670円) | 差額1,140円(3,810円 – 2,670円)を、翌月20日に還元額として付与。カード会社の請求明細には記載されない |
| 同上。深夜割引と休日割引の条件を満たす。ETCマイレージサービス利用 | 休日割引後の2,850円を課金 | 休日割引後の料金との差額180円(2,850円 – 2,670円)を還元。休日割引後の料金の方が安い場合は、還元されない |
| ETCコーポレートカード利用 | 通常料金3,810円を課金 | 翌月に発送する請求書で、深夜割引後の料金を請求(割引相当額を、請求時に差し引く) |
📊 均一料金の区間などの例外
| 一回の通行に対して料金を設定している区間の扱い | 内容(NEXCOの資料) |
|---|---|
| 対象の例 | 西湘バイパス、小田原厚木道路など(NEXCO 3社の一部区間。資料の路線一覧を参照) |
| 割引の扱い | 料金所の通過時間が22時から翌5時の間であれば、全走行分を30%の還元率とする(激変緩和措置の実施中は、22時台に料金所を通過した場合、20%) |
| 注意 | 他の道路・区間と連続して走行する場合など、資料に注記がある区間がある。東京湾アクアラインは、アクアライン割引と深夜割引は重複して適用されない(資料の注記) |
🧭 利用者としての準備の流れ
ETCカードの種類を確認する
ETCマイレージサービス、または法人向けのETCコーポレートカードのどちらで受けるかを確認します。
ETCマイレージサービスに、事前に登録する
事前登録が必要です。登録前の利用は対象外とされています。登録方法は、ETCマイレージサービスの公式サイトで確認してください。
運用開始日の発表を待つ
開始時期は、NEXCO各社から改めて案内されます。
使い方の変化に備える
対象時間帯の走行距離の割合で、割引額が決まります。事前に、概算のシミュレーションを活用するとよいでしょう。
5. 誰にどう影響するのか:見直しの考え方
割引額は、走行距離のうち、22時〜翌5時に走った割合に、30%をかけて決まります。走り方によって、割引額が増える場合も減る場合もあります。以下は、計算式から考えられる一般的な整理で、実際の金額はケースごとに異なります。
📊 走り方のパターンごとの整理
| 走り方のパターン | 見直し後の考え方(計算式からの整理) |
|---|---|
| 22時〜24時、または4時〜5時台に走ることが多い | 現行では割引の対象外だった時間帯が対象に入るため、割引を受けられる場合がある(ただし、激変緩和措置の実施中は、22時台に流出した場合の22時台走行分の還元率は最大20%) |
| 22時〜翌5時の間に、全区間を走り終える | 見直し後も、3割引の計算になる(激変緩和措置の実施中の、22時台の扱いを除く) |
| 0時前後をまたいで長距離を走る | 現行は、0時〜4時に少しでも走れば、全走行分が割引。見直し後は、対象時間帯(22時〜翌5時)に走った距離の割合で決まるため、対象時間帯の外を走った分は割引されない |
| 夜間に長距離を走る | 上限距離の範囲で計算される。1,000km以上の場合は、激変緩和措置で、1,000km超の部分が対象に追加される。400km超は、長距離逓減制の拡充の対象 |
| ETCマイレージサービスに未登録 | 割引の対象にならない(事前登録が必要) |
⚠️ 個別の料金は、必ず公式のシミュレーションなどで確認を
割引額は、通る区間・時間帯・走行距離で変わります。この記事の整理は、一般的な考え方です。運用開始後の実際の料金は、NEXCO各社のシミュレーションや案内でご確認ください。
📝 運送・長距離ドライバーの準備チェックリスト
☑️ ETCマイレージサービス、またはETCコーポレートカードの利用状況を確認した
☑️ 事前登録が必要なETCマイレージサービスへの登録状況を確認した
☑️ よく使う区間の走行時間帯を、22時〜翌5時の区切りで整理した
☑️ 大型車・特大車は、上限距離の違い(1時間あたり90km)を確認した
☑️ 運用開始日が発表されたら、公式サイトで最新の内容を確認する
6. 運用開始はいつか:これまでの経緯
📊 深夜割引見直しの経緯
| 時期 | できごと(NEXCO各社・関係機関の公表) |
|---|---|
| 令和5年(2023年)1月20日 | 深夜割引の見直しのポイントを発表(対象時間帯の拡大、対象時間帯の走行分のみ3割引、長距離逓減制の拡充) |
| 令和5年11月7日〜11月20日 | 無謀な運転の抑止策(上限距離)について、意見募集を実施 |
| 令和6年(2024年)7月 | NEXCO 3社が、見直しの内容を公表。「令和6年度末頃運用開始予定」とされた |
| 令和7年(2025年)4月6日 | NEXCO中日本管内で、広域的なETCシステム障害が発生。深夜割引の見直しに向けて構築中のシステムから配信していたデータの破損が原因とされ、システム整備が一時中断された |
| 令和7年10月29日 | 発表で、システム整備を再開したことを説明。運用開始時期は、「改めてお知らせするが、令和8年度以降となる」とされた |
| 令和8年(2026年)3月3日 | 走行履歴情報の作成と、還元額の計算用機器へのデータ連携機能の構築が完了。今後は、一連のシステムの動作確認・検証作業を慎重に行うとされた。運用開始時期は、作業状況を踏まえて別途案内 |
NEXCO中日本、NEXCO西日本の公式ページ(いずれも2026年10月に確認)では、運用開始時期は「改めてお知らせします」などとされており、具体的な開始日は示されていません。開始日が発表されるまでは、現行の深夜割引が続きます。
📌 補足
運用開始時期に関する情報は、変更されることがあります。NEXCO東日本・NEXCO中日本・NEXCO西日本の公式サイトやニュースリリースで、最新の内容をご確認ください。
- NEXCO中日本「高速道路の深夜割引の見直しについて」
- NEXCO西日本「高速道路深夜割引」
- NEXCO東日本「高速道路の深夜割引見直しに向けたシステム整備の状況について」(2025年10月29日)
- NEXCO西日本「高速道路の深夜割引見直しに向けたシステム整備の状況について」(2026年3月3日)
7. よくある質問
まとめ
高速道路の深夜割引の見直しは、対象時間帯を22時〜翌5時に広げる一方で、対象時間帯に走行した分だけを3割引にし、後日還元型に変わる大きな変更です。上限距離、長距離逓減制の拡充、5年程度の激変緩和措置もあわせて設けられます。運用開始時期は、令和7年の発表で「令和8年度以降」とされ、令和8年3月にはシステムの動作確認・検証の段階と示されましたが、2026年9月25日時点で、具体的な開始日は確認できていません。ETCマイレージサービスの事前登録が必要になる点を含め、NEXCO各社の公式発表を確認しながら、準備しておきましょう。制度の内容は変更される場合があるため、最新の情報は各社の公式サイトでご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。
アイキャッチ画像: Express highway by MIKI Yoshihito from Sapporo City, Hokkaido, JAPAN, CC BY 2.0


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