住宅街や通学路で、三脚に載った小さな装置や、警察車両に積まれた機器による速度取締りが行われていることがあります。これが、いわゆる「移動式(可搬式)オービス」です。高速道路や幹線道路に常設されている固定式と違い、設置場所を変えながら運用されるため、「どこで行われるかわからない」と感じる方も多いでしょう。2026年9月1日には、中央線などがない生活道路の法定速度が60km/hから30km/hへ引き下げられました。この記事では、警察庁・警視庁・県警察・内閣府の公開情報をもとに、移動式オービスの基本、公表されている運用の例、30km/h規制との関係、速度超過の点数・反則金を整理します。
📋 この記事の要点
✔ オービスは、走行車両の速度を測定し、一定の速度以上の車両を自動で写真撮影・記録する装置。移動式は、装置を置くスペースがあれば、通学路や生活道路でも取締りができる(県警察の案内)
✔ 警察庁の資料では、2016年4月から埼玉県・岐阜県の警察でモデル事業として、可搬式などの新たな装置が導入された
✔ 全国の可搬式速度違反自動取締装置は、令和5年(2023年)3月末時点で132台(内閣府の交通安全白書)
✔ 三重県警察のように、実施期間と実施警察署を公表している例がある。ただし「予告なく変更又は中止する場合がある」とされている
✔ 生活道路の法定速度30km/hは令和8年9月1日から。中央線・車両通行帯がある道路や、標識で最高速度が指定された道路は対象外
動画でも解説しています。(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
📑 目次
1. 固定式と移動式の違い
警察庁の資料では、速度違反自動取締装置は、走行する車両の速度を測定し、一定の速度以上で走行する車両を速度違反車両として自動で写真撮影し、記録するものと説明されています。警察官が現場で違反車両を止める「定置式取締り」を補うために整備されたもので、現場に警察官の配置が不要なため、深夜・早朝の取締りにも向く、受傷事故の危険がない、違反車両を止めないので交通の流れを妨げない、といった特徴が挙げられています。
📊 固定式と移動式(可搬式)の違い
| 比較項目 | 固定式 | 移動式(可搬式) |
|---|---|---|
| 設置の考え方 | 道路に常設する。警察庁の資料(平成29年度)には、整備の要件として、国道であること、死亡事故が多発している路線や区間であること、などが示されている | 持ち運んで設置する。警察庁の資料では、取締りスペースの確保が困難な生活道路や、警察官の配置が困難な深夜などの取締りを可能にするため導入された |
| 主な使いどころ | 交通事故が多い幹線道路など | 通学路・生活道路など。茨城県警察は、装置を設置するスペースがあれば、通学路や生活道路でも取締りができると案内 |
| 導入の経緯 | 従来からある方式 | 警察庁の資料によると、2016年4月から埼玉県警察・岐阜県警察でモデル事業として、可搬式・半可搬式・固定式を1台ずつ導入。その後、富山県警察・愛知県警察などに整備が広がった |
| 台数の目安 | 警察庁の資料(平成28年度末現在)に、高速道路192台・一般道路153台の計345台という整備状況が示されている | 内閣府の交通安全白書では、可搬式は令和5年3月末時点で全国132台 |
📌 新しい装置の3つのタイプ
警察庁の資料では、新たな速度違反自動取締装置として「可搬式」「半可搬式」「固定式」の3タイプが紹介されています。「移動式オービス」と呼ばれるものの中にも、持ち運びの容易さなどが異なる複数の種類があります。
⚠️ 「移動式オービス」の呼び名は、法令上の名称ではありません
県警察などの公式ページでは「可搬式速度違反自動取締装置(通称:可搬式オービス)」などと表記されています。この記事では、一般によく使われる呼び名として、「移動式オービス」と書いています。
2. 移動式オービスは、どこで使われているのか
移動式の取締りの場所や時期は、県警察によって公表の仕方が異なります。以下は、公式ページで確認できた例です。
📊 県警察の公表例
| 機関 | 公式ページで確認できた内容 |
|---|---|
| 茨城県警察 | 令和2年(2020年)12月から、主に通学路や生活道路で、可搬式速度違反自動取締装置を活用した取締りを推進。例として、住宅街の中の歩道がない道路が挙げられている。深夜や早朝であっても取締りを実施するとしている |
| 三重県警察 | 「生活道路を中心に取締りを実施します」として、期間と警察署・市町名を公表。令和8年9月21日(月)〜10月4日(日)は、いなべ、四日市北、亀山、津、津南、大台、伊勢、尾鷲、伊賀の各警察署管内が掲載されている。「予告なく変更又は中止する場合があります」との注記あり |
| 奈良県警察 | 可搬式オービスを運用し、生活道路を中心に速度取締りを実施。「奈良県交通指導取締り情報」など、関連ページへのリンクを掲載 |
内閣府の令和5年版交通安全白書には、令和3年(2021年)8月4日に策定された「通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策」の進捗として、可搬式速度違反自動取締装置が、通学路等における速度規制の実効性を確保するために全国で132台整備されている(令和5年3月末時点)こと、令和4年中には、可搬式速度違反自動取締装置を1万3,053回運用して取締りを実施したこと(前年比1,978回増)が記載されています。
📊 公表されている数字
| 数値 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 132台 | 全国で整備された可搬式速度違反自動取締装置(令和5年3月末時点) | 内閣府 令和5年交通安全白書 |
| 13,053回 | 令和4年中に、可搬式速度違反自動取締装置を運用して取締りを実施した回数(前年比+1,978回) | 同上 |
| 2016年4月 | 埼玉県警察・岐阜県警察でのモデル事業の開始 | 警察庁資料 |
| 令和2年12月 | 茨城県警察が、可搬式速度違反自動取締装置を活用した取締りを推進し始めた時期 | 茨城県警察 |
💡 公表情報の活用の仕方
都道府県警察の公表は、速度抑制を促し、事故を減らすためのものです。「ここでは取り締まりがない」という保証にはなりません。公表されていない場所や時間帯でも、取締りが行われる可能性があります。
3. 生活道路の法定速度30km/hと、どう関係するのか
警視庁のページによると、令和8年(2026年)9月1日から、主に地域住民の日常生活に利用されるような道路で、自動車の法定速度が時速60kmから時速30kmに引き下げられました。理由は、交通の安全と円滑を図り、ドライバー、同乗者、歩行者、自転車の方々を守るためと説明されています。
📊 法定速度30km/hの対象と対象外
| 区分 | 内容(警視庁の案内) |
|---|---|
| 法定速度が30km/hになる道路 | 主に地域住民の日常生活に利用されるような道路。中央線や車両通行帯がない一般道路が中心 |
| 60km/hのままの道路 | 道路標識または道路標示による中央線、または車両通行帯が設けられている一般道路 |
| 60km/hのままの道路(その他) | 往復の方向別に分離された一般道路、自動車専用道路なども、対象外として案内されている(詳しくは警視庁のページを参照) |
| 標識で最高速度が指定されている道路 | 道路標識等により最高速度が指定されている場合は、その速度が最高速度になる |
移動式オービスは、道路の幅が狭い生活道路や通学路でも、装置を置くスペースがあれば取締りができる、という特徴を持つ装置です。法定速度の引き下げと、可搬式の取締りは、どちらも生活道路の速度を抑えるという方向の取り組みですが、「30km/hになったから、この場所に設置される」といった具体的な運用は、公式には示されていません。
⚠️ 「標識がないから60km/h」という思い込みに注意
今回の引き下げで、標識のない生活道路の法定速度が変わりました。標識や標示がなくても、中央線や車両通行帯のない道路では30km/hが最高速度になる場合があります。一方、標識などで最高速度が指定されている道路は、その指定速度に従います。走る道路がどちらに当たるか、日頃から確認する習慣をつけましょう。
4. 速度超過の点数・反則金と、通知が届いたときの流れ
警視庁の反則行為の種別及び反則金一覧表(2026年4月1日時点として掲載)では、普通車の最高速度違反の反則金は、一般道路で次のとおりです。あわせて、警視庁の違反点数の一覧表から、一般道路の点数も示します。
📊 一般道路の速度超過:点数と反則金(警視庁の一覧表より)
| 超過速度(一般道路) | 違反点数(通常) | 反則金(普通車) |
|---|---|---|
| 15km/h未満 | 1点 | 9,000円 |
| 15km/h以上20km/h未満 | 1点 | 12,000円 |
| 20km/h以上25km/h未満 | 2点 | 15,000円 |
| 25km/h以上30km/h未満 | 3点 | 18,000円 |
| 30km/h以上50km/h未満 | 6点 | 警視庁の反則金一覧表(一般道路)には、この区分の反則金は掲載されていない |
| 50km/h以上 | 12点 | 同上 |
📌 補足
点数表では、高速自動車国道等の場合、区分の基準が異なります(例:6点は40km/h以上50km/h未満)。表の点数は、通常の場合の点数です。アルコールの影響がある場合などは、別の点数が定められています。詳しくは、警視庁の一覧表をご確認ください。
茨城県警察の案内によると、可搬式オービスは、制限速度を超える車両を感知すると、その車両の速度を測定し、車両、ナンバー、運転者を自動で撮影します。後日、郵送で出頭要請などの通知が届く形です。所有者と違反した運転者が異なる場合は、通知を発送した警察署に連絡するか、運転者に出頭を依頼する必要があるとされています。
🧭 通知が届いたときの流れ(一般的な整理)
通知の内容を落ち着いて確認する
差出人(警察署)、日付、出頭の期日・場所などを確認します。
自分が運転していたかを確認する
所有者と運転者が異なる場合は、通知を発送した警察署に連絡するか、運転者に出頭を依頼します(茨城県警察の案内)。
通知に記載された窓口・期日に対応する
対応の方法は、通知書と警察署の案内に従います。
不明な点は、警察署に問い合わせる
個別の事案の判断は、警察・弁護士などの専門家に相談してください。
5. ドライバーとして、どう考えればよいか
移動式オービスは、設置場所を予測しにくいことが特徴です。しかし、大切なのは、場所を探すことではなく、生活道路や通学路など、歩行者・自転車との距離が近い場所では、規制の有無にかかわらず速度を控えることです。警視庁も、法定速度の引き下げの目的として、ドライバー・同乗者とあわせて、歩行者・自転車の方々を守ることを挙げています。
📝 生活道路・通学路を走るときのチェックリスト
☑️ 中央線・車両通行帯の有無や、標識による最高速度の指定を意識して走っている
☑️ 住宅街・学校の周辺・通学の時間帯は、いつでも止まれる速度で走っている
☑️ 歩行者・自転車の飛び出しを想定し、道路の端や交差点、駐車車両の陰に注意している
☑️ ナビやアプリの表示に頼りすぎず、実際の道路標識・標示を確認している
☑️ 速度計と、実際の速度のずれや、下り坂での加速に気をつけている
☑️ 出かける前に、通る道路の規制の変更がないかを確認する習慣をつけている
- 警視庁「生活道路における法定速度について」
- 警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」
- 警視庁「交通違反の点数一覧表」
- 茨城県警察「可搬式速度違反自動取締装置(通称「可搬式オービス」)による取締りについて」
6. よくある質問
まとめ
移動式(可搬式)オービスは、装置を設置するスペースがあれば、通学路や生活道路でも速度違反の取締りができる装置です。警察庁の資料では2016年4月から埼玉県・岐阜県でモデル事業が始まり、内閣府の白書では令和5年3月末時点で全国132台が整備されています。2026年9月1日からは、中央線などがない生活道路の法定速度が30km/hに引き下げられました。取締りの場所を探すよりも、生活道路や通学路では、規制の有無にかかわらず、歩行者や自転車を守る速度で走ることが基本です。制度や運用は変更されることがあるため、最新の情報は警察庁・都道府県警察の公式サイトでご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。
アイキャッチ画像: オービス(北海道) by Ab11, CC BY 3.0(写真は固定式オービスの例です)


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