パワーステアリングのフルードは、「車種を問わず定期的に交換するもの」と思われがちですが、現在のフォルクスワーゲンの主力モデルは、電動パワーステアリングを採用しており、油圧のフルードを使う方式ではありません。この記事では、フォルクスワーゲン公式の主要諸元表、JAF、国土交通省令の自動車点検基準(e-Gov法令検索)、報道されたリコール情報を突き合わせて、方式の違い、点検の考え方、警告灯が点いたときの対応を整理しました(確認日: 2026年9月25日)。
📋 この記事の要点
✔ フォルクスワーゲン公式の主要装備表・諸元表では、Golf(2026年16週以降生産)、Passat(2026年17週以降生産)、Tiguan(2025年28週以降生産)の各モデルに「電動パワーステアリング」が記載されている
✔ JAFによると、油(フルード)を使うのは油圧式と電動油圧式。電動式はモーターで直接アシストする方式で、現在は多くの車種が電動式を採用している
✔ 国の点検基準(別表第6)では、パワー・ステアリング装置の「ベルトの緩み及び損傷」が1年ごと、「油漏れ及び油量」が2年ごとの点検項目。ただし、油圧式の装置に当てはまる項目
✔ 2026年4月28日届出の報道では、Golf・Passat・Tiguanなど12型式3,116台で、電動パワーステアリングの制御プログラムに関するリコールが公表された(対象は車台番号ごとに確認)
✔ フルードの規格番号・交換距離は、フォルクスワーゲン公式の情報では確認できなかったため、この記事では目安を示していない。車ごとの指定は取扱説明書・正規ディーラーで確認
1. まず、自分の車の方式を知る:電動式か、油圧式か
パワーステアリング(パワステ)は、ハンドルを回す力を助ける装置です。JAFの「クルマ何でも質問箱」では、アシストの方式を、油圧式・電動油圧式・電動式に分けて説明しています。フルードの点検や交換が関係するのは、このうち、油を使う油圧式と電動油圧式です。まず、自分の車がどの方式かを知ることが、最初の一歩になります。
📊 パワーステアリングの方式(JAF クルマ何でも質問箱、2026年9月25日確認)
| 方式 | 仕組み(JAFの説明) | フルード(油)との関係 |
|---|---|---|
| 油圧式 | エンジン駆動のオイルポンプで発生した油圧で、操舵をアシストする | 油を使う |
| 電動油圧式 | オイルポンプを電動にしたタイプ | 油を使う |
| 電動式(EPS) | モーターで直接アシストする。電動化によって、エンジンの負担が抑えられ、環境性能が向上するとされる | 油圧でアシストする方式ではない |
JAFは、かつての電動式にはアシストの感触が不自然、操舵感が希薄といった欠点があったものの、改良が進み、現在は多くの車種が電動式を採用していると説明しています。フォルクスワーゲンの現行モデルも、公式の資料でその方式が確認できます。
📊 フォルクスワーゲン公式資料で確認できた、パワーステアリングの方式
| モデル | 公式の資料(フォルクスワーゲン ジャパン) | 確認できた記載 |
|---|---|---|
| Golf | Golf(2026年16週以降生産車両)主要装備表・諸元表 | eTSI・TDI・GTI・Rの各諸元欄の「主要燃費向上対策」に、電動パワーステアリングが記載されている |
| Passat | Passat(2026年17週以降生産車両)主要装備表・諸元表 | 各エンジンの諸元欄に、電動パワーステアリングが記載されている |
| Tiguan | Tiguan(2025年28週以降生産車両)主要装備表・諸元表 | 主要装備表・諸元欄に、電動パワーステアリングが記載されている |
📌 補足
主要諸元表の「電動パワーステアリング」は、燃費向上対策の欄に書かれています。上の3モデルは日本で現在案内されているモデルの例で、古い年式の車や、ほかのモデルの方式は、この記事では確認していません。取扱説明書や正規ディーラーで確認してください。
- Golf 主要装備表・諸元表(フォルクスワーゲン ジャパン)
- Passat 主要装備表・諸元表(フォルクスワーゲン ジャパン)
- Tiguan 主要装備表・諸元表(フォルクスワーゲン ジャパン)
- ステアリングの構造について(JAF クルマ何でも質問箱)
2. 国の点検基準では、どこまで点検するのか
自動車の使用者には、道路運送車両法に基づく定期点検の義務があります。自家用乗用車の場合、点検の項目は、国土交通省令の自動車点検基準(別表第6)に定められています。パワーステアリングに関する項目を、e-Gov法令検索の条文から整理しました。
📊 自動車点検基準 別表第6(自家用乗用自動車等の定期点検基準)のうち、かじ取り装置
| 点検の時期 | 点検項目 | 備考 |
|---|---|---|
| 1年ごと | パワー・ステアリング装置の「ベルトの緩み及び損傷」 | 油圧式のポンプをベルトで駆動する構造の車に当てはまる項目 |
| 2年ごと(1年ごとの点検に加えて実施) | パワー・ステアリング装置の「油漏れ及び油量」 | 油圧式・電動油圧式の車で、油量を確認する項目 |
| 2年ごと | パワー・ステアリング装置の「取付けの緩み」 | 走行距離が年5千km以下の車は、前回の点検を省略していなければ、省略できる場合がある(注記の※1) |
| 1年ごと | ブレーキ、タイヤなど、走行の安全に関わる項目 | パワーステアリング以外の項目も、あわせて点検される |
⚠️ 交換時期を定めた項目は、確認できませんでした
点検基準にあるのは、ベルトの状態、油漏れ、油量の「点検」です。フルードを何kmで交換するかを定めた項目は、確認できませんでした。「2年ごと」「5万kmごと」といった交換時期の数字は、フォルクスワーゲン公式の情報では確認できていないため、この記事では載せません。
点検の時期については、フォルクスワーゲン公式サイトも、法定点検は12か月ごと・24か月ごとに受けることが義務付けられていると案内しています。あわせて、次のサービス時期は、ドアピラーのステッカーまたはスピードメーターのサービスインターバルディスプレイに表示されると説明しています。
3. ハンドルが重い、警告灯が点いた:異常のサインと対応
パワーステアリングに異常があると、ハンドルが重くなります。JAFは、「EPS(エレクトリックパワーステアリング)」「PS」「ハンドルマーク」のいずれかの警告灯が点灯し、ハンドル操作が重くなると説明しています。この状態では、走行はすすめられないとしています。
📊 異常のサインと、その対応
| 状況 | JAFの案内・考え方 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
| EPS・PS・ハンドルマークの警告灯が点灯 | ハンドル操作が非常に重く、走行はすすめられない。点検が必要な状態 | 安全な場所に停車し、JAFや正規ディーラーに連絡する |
| 警告灯が点灯・点滅したまま走行 | 保安基準違反となる可能性がある | 走行を続けず、点検を依頼する |
| 駐車した場所に、油のしみがある(油圧式の場合) | 国の点検基準にも「油漏れ」が挙げられている | 整備工場で、漏れの場所と原因を診断してもらう |
| ハンドルのアシスト感が、以前と違う | 症状だけで原因は決められない。診断が必要 | 症状の出る状況をメモして、正規ディーラーに相談する |
🧭 警告灯が点灯したときの流れ
周囲の安全を確認し、安全な場所へ
ハンドルが重い状態で、無理に走行しないようにします。
警告灯の種類を確認する
「EPS」「PS」「ハンドルマーク」のどれか、取扱説明書で意味を確認します。
JAFまたは正規ディーラーに連絡する
JAFは、点検が必要な状態のため、救援要請を案内しています。
点検・修理の内容を確認する
リコールの対象かどうかも、あわせて確認します(次の項を参照)。
4. リコール情報の確認:電動パワーステアリングの届出(2026年4月)
電動式は、モーターと制御ユニット(プログラム)で動くため、フルードの交換ではなく、リコールなどの情報を確認することが大切になります。報道(レスポンス、2026年5月11日付)によると、フォルクスワーゲン グループ ジャパンは2026年4月28日に、次の内容を国土交通省に届け出ています。
📊 2026年4月28日に届け出られたリコール(報道による)
| 項目 | 報道されている内容 |
|---|---|
| 届出日・届出者 | 2026年4月28日、フォルクスワーゲン グループ ジャパン |
| 対象 | ゴルフ、パサート、ティグアンなど、12型式・3,116台(2025年9月10日〜2026年4月13日に輸入された車両) |
| 不具合の内容 | 電動パワーステアリングの制御プログラムの設計が不十分なため、モーター内部の部品が高温になると、異常検知システムが機械振動を故障と誤って検知することがある。その結果、警告灯が点灯してステアリングのアシストが無効になり、操作力が増大するおそれがある |
| 改善措置 | 電動パワーステアリングのコントロールユニットのプログラムを、対策プログラムに書き換える。対象ユーザーへは、ダイレクトメールなどで通知 |
⚠️ ご自身の車が対象かは、車台番号で確認してください
対象となるのは、報道されている期間に輸入された車両のうち、車台番号などの条件に該当するものです。国土交通省の「リコール情報検索」や、メーカー・購入した販売店で、車検証の車台番号をもとに確認してください。届出の詳細は、公式の発表で確認してください。
5. フルードを使う車(油圧式)は、何を確認するか
古い年式の車などで、油圧式・電動油圧式のパワーステアリングを使っている場合は、リザーバータンクのフルードの量や、漏れの有無が点検のポイントになります。
💡 ポイント
ステアリングは、走行の安全に直結する装置です。フルードの補充や交換、漏れの修理は、指定の規格に合わせる必要があります。整備工場・正規ディーラーに依頼するのが確実です。
6. 点検の依頼前に確認したいこと
📝 パワーステアリングのチェックリスト
☑️ 取扱説明書で、自分の車の方式(電動式・油圧式)を確認した
☑️ ハンドルの重さや、アシストの感触に変化がないか確認した
☑️ EPS・PS・ハンドルマークの警告灯が点いていないか確認した
☑️ 駐車した場所に、油のしみがないか確認した(油圧式の場合)
☑️ 定期点検で、ベルトの状態、油漏れ、油量を確認してもらっている(油圧式の場合)
☑️ 整備記録簿で、前回の点検の内容を確認した
☑️ リコールの対象でないか、車台番号で確認した
📊 よくある思い込みと、確認のしかた
| よくある思い込み | 確認したいこと |
|---|---|
| どの車にもパワステフルードがある | まず、電動式か油圧式かを、取扱説明書で確認する |
| ネットで見た規格番号のフルードを買えば大丈夫 | 規格は車種・年式で異なる。指定は取扱説明書・正規ディーラーで確認する |
| 距離だけで交換時期を決める | 国の点検基準にある、ベルトの状態・油漏れ・油量を、定期点検で確認する |
| 警告灯が点いても、しばらく走れる | JAFは、走行はすすめられないとしている。点検を依頼する |
7. よくある質問
📚 あわせて読みたい
▶ フォルクスワーゲンの補機ベルト:点検基準・JAF・VW公式で確認できること
▶ フォルクスワーゲンのトランスミッションオイル:種類と点検・交換時期の確認方法
まとめ
現行のGolf・Passat・Tiguanは、公式の主要諸元表に電動パワーステアリングと記載されており、パワステフルードを交換するタイプではありません。フルードを使うのは油圧式・電動油圧式で、国の点検基準では、ベルトの緩み・損傷(1年ごと)、油漏れ・油量(2年ごと)が点検項目です。ハンドルが重くなり、EPS・PSなどの警告灯が点いたら、走行を控えて点検を依頼しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。
アイキャッチ画像: Volkswagen Golf VIII R Variant by Alexander Migl, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
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