台風接近時、ペーパードライバーが特に気をつけたいこと

普段あまり運転しない「ペーパードライバー」の方にとって、台風時の運転は、ふだん以上に負担の大きいものです。この記事では、運転するかどうかの判断材料、気象庁が示す風と雨の目安、やむを得ず運転する場合の心がけ、止まる場所の考え方を、気象庁・JAF・法令などの公的・一次情報で整理しました。

📋 この記事の要点

✔ 気象庁の表では、平均風速20m/s以上25m/s未満の風で「通常の速度で運転するのが困難になる」、25m/s以上30m/s未満で「走行中のトラックが横転する」とされている

✔ 気象庁の雨の表では、1時間雨量20mm以上30mm未満で「ワイパーを速くしても見づらい」、50mm以上80mm未満で「車の運転は危険」とされている

✔ 道路交通法施行令では、トンネルの中や濃霧などで、視界が一般道で50m以下、高速自動車国道・自動車専用道路で200m以下の暗い場所では、昼間でも灯火をつける

✔ JAFは、アンダーパス、川沿い、海岸沿い、急傾斜地には近づかないよう呼びかけている。冠水路は、安易に進入せず迂回する

✔ 2026年5月29日から、防災気象情報に警戒レベルの数字が付く新しい運用が始まった(例:「レベル3大雨警報」)

1. 運転するかどうか、まず判断する

台風時に運転するかどうかは、慣れの有無にかかわらず、慎重に考える必要があります。公的な資料に書かれている、判断の材料を表にまとめます。

📊 運転するかどうかを考える材料

判断の材料 公的資料に書かれている内容 出典
風 平均風速15m/s以上20m/s未満の「強い風」は、高速運転中に横風に流される感覚が大きくなる。20m/s以上25m/s未満で、通常の速度で運転するのが困難になる。25m/s以上30m/s未満で、走行中のトラックが横転する 気象庁「風の強さと吹き方」
雨 1時間雨量20mm以上30mm未満で、ワイパーを速くしても見づらい。30mm以上50mm未満で、高速走行時にブレーキが効かなくなるハイドロプレーニング現象。50mm以上80mm未満で、視界が悪くなり、車の運転は危険 気象庁「雨の強さと降り方」
避難情報 警戒レベル4「避難指示」までに、必ず避難する。警戒レベル3は「高齢者等避難」、警戒レベル5は「緊急安全確保」 内閣府(防災担当)
高速道路 通行止めが実施される場合がある。NEXCO東日本は、2026年9月21日、台風25号の影響で、車での外出を控えるよう呼びかけた NEXCO東日本
冠水した道 水位が上がってからの自動車での避難は、大変危険なため控える。アンダーパスや川沿い、海岸沿い、急傾斜地には近づかない JAF

🧭 運転する前の判断の流れ

1

他の移動手段や、運転を頼める人がいないか考える

家族や周囲に頼める場合は、運転を任せることも選択肢です。鉄道やバスも、台風で運休や遅れが出ることがあるため、運行情報を確認します。

2

外出・移動をずらせないか考える

台風の接近が予想される時間帯を避けて、日程や時間帯を変えられないかを検討します。

3

気象情報と、道路・避難の情報を確認する

気象庁の情報、市区町村の避難情報、高速道路会社のお知らせなどを確認します。

4

それでも運転が必要な場合は、経路と目的地を絞る

慣れた道や短い距離を選び、冠水しやすい低い場所を避けたルートを考えます。

⚠️ 一般的な情報です

ここに書かれているのは、公的資料に基づく一般的な情報です。運転するか、避難するかの判断は、状況によって異なります。市区町村の避難情報や、お住まいの地域の気象情報を優先してください。

2. 気象庁の風と雨の階級表を、運転の目でみる

気象庁は、風と雨の強さを階級に分け、それぞれ、人や車にどのような影響があるかの目安を示しています。運転に関係する部分だけを取り出しました。

📊 風の強さと運転への影響(気象庁「風の強さと吹き方」)

風の強さ 平均風速(m/s) おおよその時速 走行中の車に関する記述(気象庁)
やや強い風 10以上15未満 〜50km(速さの目安:一般道路の自動車) 道路の吹流しの角度が水平になり、高速運転中では横風に流される感覚を受ける
強い風 15以上20未満 〜70km(速さの目安:高速道路の自動車) 高速運転中では、横風に流される感覚が大きくなる
非常に強い風 20以上25未満 〜90km 通常の速度で運転するのが困難になる
非常に強い風 25以上30未満 〜110km 走行中のトラックが横転する

※表は横にスクロールできます

📊 雨の強さと運転への影響(気象庁「雨の強さと降り方」)

雨の強さ 1時間雨量(mm) 車に乗っていて(気象庁)
強い雨 20以上30未満 ワイパーを速くしても見づらい
激しい雨 30以上50未満 高速走行時、車輪と路面の間に水膜が生じ、ブレーキが効かなくなる(ハイドロプレーニング現象)
非常に激しい雨 50以上80未満 水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる。車の運転は危険

💡 表を読むときの注意

気象庁の風の表にある平均風速は10分間の平均で、瞬間風速は平均風速の1.5倍程度になることが多い(3倍以上になることもある)とされています。また、風速は地形や周りの建物の影響を受けるため、実際にいる場所の風は、観測所の値と大きく異なることがあります。この記事で確認した気象庁・JAF・NEXCOの資料には、運転をやめるべき風速などの「基準値」は示されていません。

📌 防災気象情報の名前が変わりました

気象庁は、2026年5月29日から、新たな防災気象情報の運用を開始しました。警戒レベルの数字が情報名に組み込まれ、たとえば従来の大雨警報は「レベル3大雨警報」という名称になり、レベルの数字と一緒に伝えられます。避難情報のガイドラインも、2026年3月に改定されています(内閣府)。

3. やむを得ず運転する場合の、心がけ

運転せざるをえない場合は、次の点を意識しましょう。法令や公的資料で確認できた内容を、表にまとめます。

📊 やむを得ず運転する場合の心がけ

場面 心がけ 根拠
速度と操作 道路、交通、車両の状況に応じ、ハンドル、ブレーキなどを確実に操作し、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転する。風や雨で状況が悪いときは、いつもより速度を落とす 道路交通法第70条(安全運転の義務)
ライトの点灯 視界が、高速自動車国道・自動車専用道路で200m、その他の道路で50m以下であるような暗い場所を通行する場合は、夜間以外でも灯火をつける。豪雨で視界が悪いときも、ライトの点灯を習慣にする 道路交通法第52条、同法施行令第19条
車間距離 路面が濡れると、止まるまでの距離は長くなる。いつもより車間距離を大きくとる 一般的な注意事項(具体的な距離は、公的資料では確認できていません)
近づかない場所 アンダーパス、高架下や立体交差など周囲より低い場所、川沿い、海岸沿い、急傾斜地 JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」
冠水した道 冠水路に遭遇したら、安易に進入せず迂回する。水の深さや、水の中の様子は、見た目ではわからない JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」

📊 冠水路を走ると、どうなるか(JAFユーザーテスト)

JAFの冠水路走行テスト(セダン) 結果
浸水深30cm・時速10km 走行できた。フロントバンパーの上部に水が接する程度で、コース設定の30mを走行
浸水深30cm・時速30km 走行できたが、巻き上げる水の量が多くなり、エンジンルームに多量の水が入った
浸水深60cm・時速10km 走行できなかった。フロントガラスの下端まで水をかぶり、31m地点でエンジンが停止

JAFは、この結果はあくまでユーザーテストの結果で、実際の災害時とは走行の可否が異なる場合があるとしています。実際の冠水路では、水の深さも水の中の様子もわからないため、遭遇したら進入せず、迂回するよう呼びかけています。

🧭 やむを得ず運転するときの流れ

1

経路を事前に確認する

ハザードマップ(国土交通省のハザードマップポータルサイト等)で、通る道の危険箇所を確認します。

2

目的地と経路を絞る

初めての道や長距離は避け、できるだけ慣れた道、短い距離にとどめます。

3

車の基本点検をする

タイヤ、ワイパー、ライト、燃料などを確認します。詳しくは、当サイトのタイヤ点検の記事も参考にしてください。

4

運転中は、いつもより速度を落とす

風や雨の影響を受けやすいため、無理のない速度と車間距離を保ちます。

5

危険を感じたら、安全な場所に停まる

次の章で、止まる場所の考え方を整理します。

4. 怖い、見えにくいと感じたときの停まり方

運転中に、少しでも「怖い」「見えにくい」と感じたら、無理をせず、安全な場所に停まって様子を見ることが大切です。これは決して恥ずかしいことではありません。ただし、停まる場所には注意が必要です。

📊 停まる場所の考え方

停まる場所 考え方 根拠・補足
コンビニなどの駐車場 安全に入れる場所であれば、一時的に停まる選択肢。周囲の状況に注意する 一般的な注意。飛来物などにも注意
アンダーパス、周囲より低い場所 冠水しやすく、避けたい場所 JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」
川沿い、海岸沿い、急傾斜地 増水や高潮、土砂災害の危険があるため、近づかない JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」
高速道路の本線上や路肩 停止は危険が大きい。可能な限り、SA・PAや最寄りの出口へ向かう 一般的な注意。詳しくは、当サイトの高速道路での故障・パンク対処法の記事を参照

もし車が冠水・水没した場合の対処について、JAFは、エンジンを前方に搭載する乗用車は水没時に前傾姿勢になるが、慌てず落ち着いてシートベルトを外すこと、窓ガラスが水面より高い位置にあれば窓を開けて屋根に上がって脱出すること、窓やドアが開かない場合は緊急脱出用ハンマーでガラスを割って脱出すること、などを紹介しています。また、冠水した車は、いきなりエンジンをかけず、ボンネットを開けて水に浸っていれば、火災防止のためバッテリーのマイナス側のターミナルを外すことなどが示されています(ハイブリッド車・電気自動車は、むやみに触らない)。詳しくは、下記の当サイトの記事も参照してください。

⚠️ 判断に迷ったら、無理に動かない

安全な場所に停まったあとは、無理に再出発せず、天候の回復や、市区町村・道路管理者の情報を確認してから判断しましょう。個別の状況の判断は、公的な窓口や専門家にご相談ください。

5. 運転に不安があるときの、平常時の備え

台風のシーズンだけでなく、平常時のうちに、運転の不安をやわらげておくことも大切です。

📊 運転に不安がある人の備え

備え 内容 注意点
ペーパードライバー講習を受ける 教習所などで、運転の感覚を取り戻す講習が行われている。東京都内では、東京指定自動車教習所協会が「ペーパードライバー教育課程」の実施教習所一覧を掲載している 実施日や内容、料金は教習所ごとに異なる。各教習所に直接問い合わせる
慣れた道で、少しずつ距離を伸ばす 天気のよい日に、短い距離から運転に慣れていく 家族の車で練習する場合は、その車の保険で補償される運転者の範囲を、事前に確認する
自動車保険の内容を確認する JAFは、地震・噴火・台風・洪水・高潮・津波などによる自然損害には、対人賠償保険・対物賠償保険・無保険車傷害保険が適用されないと案内している。一時金を支払う特約を扱う保険会社もある 個別の補償内容は、契約している保険会社に確認する
JAFのロードサービスの対象を知る JAFのロードサービスは、自動車保険では対象外の地震、台風、大雪などの「自然災害に起因した事故・故障」にも対応している 利用条件や料金は、JAFの公式ページで確認する

📝 台風が近づく前の、ペーパードライバー向けチェックリスト

☑️ 今日の予定は、本当に車でなければならないかを、家族などと相談した

☑️ 気象庁の情報や、市区町村の避難情報、高速道路のお知らせを確認した

☑️ 通る道の、冠水しやすい低い場所を、ハザードマップなどで確認した

☑️ 車のタイヤ、ワイパー、ライト、燃料を確認した

☑️ 慣れた道・短い距離に、目的地と経路を絞った

☑️ 怖いと感じたときに、停まれる場所の候補を決めた

☑️ 自動車保険とロードサービスの連絡先を、すぐ出せるようにした

6. よくある質問

Q. 風速がどのくらいになったら、運転をやめるべきですか?

A. この記事で確認した気象庁・JAF・NEXCOの資料では、運転をやめるべき風速の基準値は示されていません。気象庁の表では、平均風速20m/s以上25m/s未満で通常の速度での運転が困難になり、25m/s以上30m/s未満で走行中のトラックが横転するとされています。強い風が予想される日は、運転そのものを見直しましょう。

Q. ペーパードライバーは、台風のとき高速道路を避けたほうがよいですか?

A. 法令上、ペーパードライバーだけを対象にした規制は、今回確認できませんでした。気象庁の表では、風速15m/s以上で、高速運転中に横風に流される感覚が大きくなるとされています。また、高速道路は通行止めになることがあり、NEXCO東日本は車での外出を控えるよう呼びかけた例があります。不安な場合は、利用しない選択も含めて検討してください。

Q. 豪雨で前が見えないとき、どうすればよいですか?

A. 気象庁の表では、1時間雨量50mm以上80mm未満で、視界が悪くなり、車の運転は危険とされています。ライトを点け、速度を落とし、安全に停まれる場所を探しましょう。川沿いやアンダーパスなどの低い場所は、JAFが近づかないよう呼びかけています。

Q. 運転が不安なので、講習を受けたいです。どこで受けられますか?

A. 教習所などで、ペーパードライバー向けの講習が行われています。東京都内では、東京指定自動車教習所協会が実施教習所の一覧を掲載しています。実施日や内容、料金は教習所ごとに異なるため、直接問い合わせてください。

まとめ

ペーパードライバーの方は、台風時の運転そのものを避けられないか、まず考えましょう。気象庁の表では、風速20m/s以上で通常の速度での運転が困難になり、1時間雨量50mm以上で車の運転は危険とされています。やむを得ず運転する場合は、慣れた道・短い距離を選び、速度を落とし、冠水しやすい低い場所を避けます。怖いと感じたら、安全な場所に停まる判断を大切にしてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。

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