電気自動車は台風・浸水に弱いって本当?

「電気自動車(EV)は水に弱く、台風や浸水のときに危ないのでは」という疑問は、EVの普及とともによく聞かれます。この記事では、JAFの冠水路走行テスト(2024年10月実施)、国土交通省の注意喚起、国の保安基準の条文をもとに、EVが冠水路でどうなったか、浸水後に何をしてはいけないかを整理しました(2026年9月25日確認)。

📋 この記事の要点

✔ JAFの冠水路走行テスト(2024年)では、EVは水深60cm・時速30kmと40kmでも走り切れたが、複数の警告灯が点灯した。JAFは「エンジンがないから大丈夫」と安易に進入するのは危険とまとめている

✔ 国土交通省は、EV・HVでは、駆動用バッテリーに浸水すると車両が停止するおそれがあるとしている

✔ 水に浸った車両は、外観上問題がなくても、感電事故や車両火災のおそれがある。エンジンをかけず、EV・HVはむやみに触らない(国土交通省)

✔ 国の保安基準は、電力で作動する原動機を持つ自動車について、高電圧による乗車人員への傷害等を生じるおそれがないことを求めている(第17条の2)。冠水路を走ってよいという意味ではない

✔ 一般に走行可能とされる水深は、乗用車ではドアの下端、つまり床面が浸からない程度(JAF)

1. JAFの冠水路走行テスト(2024年)でわかったこと

JAFは2024年10月28日〜30日に、三重県伊賀市のテストコースで、電気自動車(BEV)・ハイブリッド車(HV)・ガソリン車(軽自動車)を使った冠水路走行テストを行いました。運転はプロのスタントマンが担当し、水深は30cmと60cm、進入速度は10km/h・30km/h・40km/h(40km/hは60cmのみ)です。結果は次のとおりです。

📊 JAF 冠水路走行テスト(2024年10月)の結果

水深・速度 電気自動車(BEV) ハイブリッド車(HV) ガソリン車(軽自動車)
30cm・10km/h 走り切ることができた 走り切ることができた 走り切ることができた
30cm・30km/h 走り切れたが、車体下部のアンダーカバーが外れた。ボンネット内部に水が浸入 走り切れたが、右後輪のホイールカバーと左前の牽引フックが外れた。ボンネット内部に水が浸入 走り切れたが、車内とボンネット内部に水が浸入
60cm・10km/h 走り切ることができた 走り切ることができた 走り切れたが、エアクリーナーの一部が濡れていた
60cm・30km/h 走り切れたが、複数の警告灯が点灯した 走り切れたが、エアクリーナーが完全に濡れていた 走り切れたが、エアクリーナーが完全に濡れ、車内に水が大量に侵入した
60cm・40km/h 走り切れたが、複数の警告灯が点灯した 走り切れたが、冠水路走行後にエンジンが停止し、複数の警告灯が点灯した 走り切れず、28.5m地点で停止。車内に水が大量に浸水した

※表は横にスクロールできます

JAFはテストのまとめとして、次の点を挙げています。

  • 走り切れたケースでも、ボンネット内部や車内に水が浸入したケースが多くあった
  • EVはモーターが止まらなかったが、複数のシステム故障の警告が表示された。「エンジンがないから大丈夫」と安易に冠水路に進入するのは危険
  • 速度が高いと巻き上げる水の量が増え、エンジンルームに水が入りやすい。HVもエンジンを搭載しているため、同様のリスクがある
  • 実際の冠水路は濁っていて水深を判断しにくく、マンホールが開いていることや見えない側溝などの危険もあるため、浅く見えても進入は大変危険

📌 このテストの読み方

テストは特定の条件(車両、プロの運転者、テストコース)で行われたもので、JAFも実際の災害時とは異なる場合があるとしています。走り切れたことは、安全だったことを意味しません。「走れた」と「安全に走れる」は別のものとして受け止めてください。

2. 国の基準と、国土交通省の注意喚起

📊 国の基準と国土交通省の注意喚起

項目 内容 出典
道路運送車両の保安基準 第17条の2 電力により作動する原動機を有する自動車の電気装置は、高電圧による乗車人員への傷害等を生ずるおそれがないものとして、告示で定める基準に適合するものでなければならない(第5項)。一部の車種を除き、衝突等の衝撃を受けた場合でも、高電圧による傷害等のおそれが少ないものであることが求められる(第6項) e-Gov法令検索(道路運送車両の保安基準)
冠水路を走行する際の不具合 自動車は、水深が深い場所を走行できるように設計されていない。水深が床面を超えると、車内に浸水して電気装置が故障したり、マフラーから浸水してエンジンルームが損傷したりするおそれがある。EV・HVでは、駆動用バッテリーに浸水すると、車両が停止するおそれがある 国土交通省「水深が床面を超えたら、もう危険!」(2019年11月27日)
水深とドア 水深がドアの下端にかかると、車外の水圧で内側からドアを開けることが困難になり、ドア高さの半分を超えると、内側からほぼ開けられなくなる 同上
浸水した車両 水に浸った車両は、外観上問題がなさそうでも、感電事故や、電気系統のショート等による車両火災のおそれがある。自分でエンジンをかけず、EV・HVは高電圧のバッテリーを搭載しているため、むやみに触らない 国土交通省「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」

📌 保安基準の条文の読み方

保安基準は、乗車人員が高電圧で傷害を受けないための性能・構造を求めるものです。条文は、冠水路を走ってよいことや、水没時に感電しないことを保証するものではありません。冠水・浸水後の扱いについては、国土交通省の注意喚起が、感電事故や車両火災のおそれを明記しています。

3. EVと他の車で、共通するリスクと違い

冠水や浸水のリスクは、EVに限らず、すべての車に共通するものがあります。一方で、高電圧バッテリーを搭載するEV・HVに特有の注意点もあります。

📊 共通するリスクと、EV・HVの注意点

場面 車全般に共通するリスク EV・HVで特に注意すること
冠水路の走行 巻き上げた水が吸気口からエンジンに入り、停止するおそれ。水深が床面を超えると、電気装置の故障やドアの開閉困難(国土交通省・JAF) 駆動用バッテリーに浸水すると車両が停止するおそれ(国土交通省)。BEVはモーターは止まらなかったが、警告灯が点灯した(JAF)
浸水・水没後 電気系統のショートによる火災のおそれ。エンジンをかけない(国土交通省・JAF) 高電圧バッテリーがあるため、自分で対処せず、整備工場等に相談する(国土交通省)
海水に浸かった場合 海水に含まれる塩分が電気配線等をショートさせ、その熱で発火することがある。海水が引いたあとも、塩分で配線等の腐食が急速に進む(JAF。2004年8月、香川県高松市で台風16号の高潮のあと、海水に浸かった自動車が次々と自然発火した例) 同様に、自分でバッテリーを外そうとせず、専門家に相談する

4. 浸水・冠水したときの対応

🧭 浸水したあとの流れ

1

走行中に車内へ浸水してきたら、車を止め、エンジン(システム)を停止する

JAFは、慌てずに車を止めてエンジンを停止し、避難するよう案内しています。車内の水位が上がると、ドアが開きにくくなります。

2

冠水路に降りるときは、水深を確かめながら歩く

JAFは、いきなり冠水路に飛び出さず、片足を浸けて水深を測りながらゆっくりと両足をつき、進んできた方向に歩いて戻るよう案内しています。

3

水が引いても、エンジンをかけない・車内に乗り込まない

国土交通省・JAFは、水が引いた後もエンジンをかけないよう案内しています。破損や感電の危険があるとしています。

4

EV・HVは、高電圧バッテリー周辺にむやみに触らない

国土交通省は、EV・PHV・HVについては自分で対処せず、自動車整備工場等に相談するよう案内しています。

5

販売店・整備工場・JAFなどに連絡する

JAFのロードサービスは、浸水した車両のけん引にも対応しています。

6

保険会社へ連絡する

車両保険を契約している場合は、台風や洪水による水没が補償される(東京海上日動のFAQ)。手続きについては、契約している保険会社に確認します。

⚠️ 一度浸水した車は、動くように見えても点検が必要です

国土交通省は、一度浸水した車両は、運転可能であっても、電気装置等が損傷を受けているおそれがあるため、自動車整備工場等で点検整備を受けるよう案内しています。水が引いてからも、自分で判断して走らせないことが大切です。

5. EVオーナーの備えと、参考リンク

📝 台風シーズン前のチェックリスト

☑️ 自宅や勤務先、よく通る道のハザードマップ(洪水・土砂災害・高潮)を確認した

☑️ アンダーパス、川沿い、海岸沿いなどの低い場所を避けるルートを決めた

☑️ 車の保管場所が、冠水しやすい低い場所や地下でないことを確認した

☑️ 冠水路を見つけたら進入せず、迂回すると決めている

☑️ 車両保険の有無・補償内容(水害の扱い)を確認した

☑️ 販売店・整備工場・ロードサービスの連絡先を控えた

☑️ 取扱説明書の、冠水・浸水に関する記載を確認した

6. よくある質問

Q. EVは、水たまり程度なら問題ありませんか?

A. 「水たまり程度」がどの深さかは、状況によって異なります。JAFのテストでは、水深30cm・時速10kmでは走り切れましたが、時速30kmではEVのアンダーカバーが外れ、ボンネット内部に水が浸入しました。JAFは、一般に走行可能とされる水深は、乗用車ではドアの下端(床面が浸からない程度)としています。冠水路には、安易に進入せず、迂回するのが基本です。

Q. EVが浸水すると、感電しますか?

A. 国土交通省は、水に浸った車両は、外観上問題がなくても、感電事故や車両火災のおそれがあると案内しています。感電の起きやすさや事例数を示した公的な統計は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。浸水した車には近づかず、むやみに触らないでください。

Q. 水が引いたら、そのまま乗ってもよいですか?

A. 国土交通省・JAFは、水が引いた後もエンジンをかけないよう案内しています。一度浸水した車両は、運転可能であっても、電気装置等が損傷を受けているおそれがあるため、整備工場等で点検整備を受けてください。EV・PHV・HVは、自分で対処せず、専門家に相談します。

Q. 雨の日に充電したり洗車したりしても大丈夫ですか?

A. 今回確認した公的資料では、雨天時の充電や洗車について触れたものは見つかりませんでした。車種や充電設備によって取り扱いが異なるため、メーカーの取扱説明書や、販売店・充電設備の案内に従ってください。

まとめ

JAFのテストでは、EVは水深60cmでも走り切れましたが、複数の警告灯が点灯し、JAFは「エンジンがないから大丈夫」と安易に進入するのは危険とまとめています。国土交通省は、EV・HVでは駆動用バッテリーに浸水すると車両が停止するおそれがあり、浸水した車は感電や火災のおそれがあるため、自分でエンジンをかけたり触ったりせず、整備工場等に相談するよう案内しています。EVかどうかにかかわらず、冠水路には近づかない、というのが基本です。

※本記事は、JAF・国土交通省などの公開情報を整理した一般的な情報提供です。車種ごとの仕様や取り扱いは、メーカーの取扱説明書や、販売店・整備工場の案内に従ってください。浸水した車両の点検・処置は、専門家にご相談ください(2026年10月時点)。

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