※この記事で紹介している動画は、2026年11月14日(土)19:00に公開予定です。公開までは、記事の中の動画は再生できません。公開後に再生できるようになります。
※確認日は2026年10月26日です。法令の改正は11月7日までの分を確認した内容で、JAFの横断歩道の調査は、確認日時点で2025年調査が最新でした。公開日は11月14日のため、その後の改正や2026年の調査結果は確認していません。最新はe-Gov法令検索とJAFのサイトでご確認ください。
歌いながら話す動画『路面のひし形と逆三角形の意味は?横断歩道で歩行者がいるとき止まる条件と、JAF調査(2025年)の停止率56.7%』の解説記事です。動画で話した内容の出どころを、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(標識令)・道路交通法・同施行令の現行の条文、警察庁の教則、JAFの調査で確認し直し、動画で触れきれなかった補足と、動画とは別の切り口(二つの標示の文を並べて読む・第38条を言葉ごとに分解する・JAF調査の読み方・立場別の見方・思い込みの検証)を加えました。横断歩道で止まる決まりの全体像(都道府県別の一時停止率や歩行者のルール)は、既存の信号機のない横断歩道、歩行者優先のルールと一時停止義務で整理しています。この記事は、路面の標示の意味と、第38条の条文の読み方が中心です。
📋 この記事の要点
✔ 路面のひし形は、標識令の番号210『横断歩道又は自転車横断帯あり』で、「前方に横断歩道又は自転車横断帯があること」。逆三角形は、番号211『前方優先道路』で、交差する前方の道路が優先道路であること。色はどちらも白。形は別表第六の図で、ひし形は二重のひし形、逆三角形は頂点が下の二重の三角形(標識令の意味と設置場所は別表第五、様式は別表第六)。
✔ どちらも「あらかじめ示す必要がある地点」に置く標示で、警察庁の教則は「予告」と書いている。何メートル手前に置くかは、別表第五の文にも教則の付表にも書かれていなかった。ひし形に従って何かをする、という文も見当たらなかった。
✔ 止まる条件は道路交通法第38条第1項。横断歩道又は自転車横断帯に近づくときは、歩行者等が「ないことが明らか」な場合を除き、直前(停止線があるときはその直前)で停止できる速度で進行する。「横断し、又は横断しようとする歩行者等があるとき」は、直前で一時停止し、その通行を妨げない。第38条には、手を上げるなどの定めや、判断の基準になる具体例は見当たらなかった。
✔ 違反は「横断歩行者等妨害等」で、違反点数2点(基礎点数)、反則金は普通車9,000円(大型車12,000円・二輪車7,000円・原付等6,000円)。反則金は、交通事故を起こした場合などは対象になりません(道路交通法第125条第2項)。法律上の罰則は3か月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金(第119条第1項。2026年10月26日確認)。
✔ JAFの2025年調査(8月、信号機のない横断歩道)で、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は6,226台のうち3,528台(56.7%)。2021年(30.6%)から2025年まで毎年上がっている。調べた場所と条件が決まった調査の数字で、全国のすべての横断歩道の数字ではない。2026年の調査結果は、確認日時点でJAFのサイトに見つからなかった。
▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
📑 目次
1. 動画の内容(要約):標示の意味から、止まる条件、JAFの調査まで
2. 動画で触れきれなかった補足:標識令・道路交通法の原文・教則の記載・点数と反則金・確認できなかったこと
3. 違った観点から整理する:二つの標示を並べて読む・第38条を言葉ごとに分解・JAF調査の読み方・立場別・思い込みの検証
1. 動画の内容(要約)
動画は、聞き役の「かーぎーくん」と解説役のかけ合いです。冒頭と章の頭、まとめで歌い、本文はリズムに乗せた会話です。歌の歌詞には数字や条件を入れず(『ひし形 なんの しるし?』『逆さの 三角は?』『二つとも 予告!』『渡る人 いたら 手前で 止まろう』『迷ったら 止まれる 速さで 近づこう!』など)、条件と数字は語りと画面の表で示しています。歌詞は条文を簡略化した呼びかけで、条件(『ないことが明らか』など)は語りにあります。各章の開始時刻は、動画の概要欄の目次と同じです。

| 章 | 開始 | 内容 | 使った一次情報 |
|---|---|---|---|
| イントロ | 00:00 | 歌のフックと、4つのポイント(ひし形・逆三角形・止まる条件・JAFの調査) | (各章の出典) |
| 1. ひし形(210) | 00:39 | 名称・意味・設置場所・色と図。何メートル手前かは書かれていないこと。教則の「予告」。ひし形に従う義務の文は見当たらないこと | 標識令 別表第五・第六、教則 付表3(2) |
| 2. 逆三角形(211) | 01:35 | 意味(交差する前方の道が優先道路)。優先道路の定義(第36条第2項のかっこ書き)。第36条第3項の徐行と第2項の進行妨害。一時停止(標識330)との違い | 標識令 別表第一・第五・第六、道路交通法第36条 |
| 3. 止まる条件(第38条) | 03:03 | 前段(「ないことが明らか」を除き停止できる速度)と後段(歩行者等があるとき一時停止)。手を上げる等の定めが見当たらないこと。第2項・第3項(30メートル)。第38条の2 | 道路交通法第38条・第38条の2、教則 |
| 4. 点数と反則金 | 04:53 | 横断歩行者等妨害等:2点、反則金、罰則 | 施行令 別表第二・第六、道路交通法第119条 |
| 5. JAFの調査 | 05:23 | 2025年:6,226台のうち3,528台(56.7%)。2021〜2025年の推移。調べた場所と方法。2026年の調査の確認 | JAF 各年の調査結果 |
| まとめ | 06:36 | 4つの確認と、締めの歌 | (上記) |
2. 動画で触れきれなかった補足
2-1. 標識令の文と図(番号210・211)
動画の語りと画面は、聞きやすくするために一部を大意(言い換え)にしています。標識令(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令)は、道路標示について次のように定めています(e-Gov法令検索で取得。施行日2026年9月1日の版)。
📜 標識令 第8条〜第10条(原文)
【第8条】「道路標示の分類は、規制標示及び指示標示とする。」
【第9条】「道路標示の種類、設置場所等は、別表第五のとおりとする。」
【第10条】「道路標示の様式は、別表第六のとおりとする。」
つまり、意味と設置場所は別表第五、記号の図と色は別表第六に書かれています。ひし形(210)と逆三角形(211)は、別表第五の指示標示の最後の2つです。
📊 標識令 別表第五(意味と設置場所。原文)
| 番号と名称 | 表示する意味(原文) | 設置場所(原文) |
|---|---|---|
| 210 『横断歩道又は自転車横断帯あり』 | 「前方に横断歩道又は自転車横断帯があること。」 | 「前方に横断歩道又は自転車横断帯があることをあらかじめ示す必要がある地点」 |
| 211 『前方優先道路』 | 「当該道路と交差する前方の道路が交通法第三十六条第二項に規定する優先道路であること。」 | 「当該道路と交差する前方の道路が優先道路であることをあらかじめ示す必要がある地点」 |
標識令の「交通法」は、道路交通法のことです。別表第六(様式)では、どちらも色彩は「白」と書かれ、図は次のとおりです(図を目で見て確認しました。文章には形の名前は書かれていません)。
| 番号 | 別表第六の図(目で見た内容) | 色彩 |
|---|---|---|
| 210 | 車線上に置く二重のひし形(外側のひし形の内側に、もう一つのひし形)。図には、道路の左側端からの寸法が入っている | 白 |
| 211 | 車線上に置く二重の三角形(頂点が下向き。外側の三角形の内側に、もう一つの三角形)。図には寸法が入っている | 白 |
教則(警察庁)の付表3(2)「指示標示」(PDF 138〜139ページ)にも、同じ形の図が載っています。文章は、番号38『横断歩道又は自転車横断帯あり』が「前方に横断歩道や自転車横断帯があることの予告」、番号39『前方優先道路』が「この標示がある道路と交差する前方の道路が優先道路であることの予告」で、色は「同上」(記号は白)です。図の個数や間隔は、模式図のため、この記事の図では標識令のとおりには描いていません。
📊 標識側の「前方優先道路」と「一時停止」の文(標識令 別表第一。原文)
| 標識 | 表示する意味(原文) |
|---|---|
| 『前方優先道路』(329の2。規制標識) | 「交通法第三十六条第二項の道路標識により、当該道路と交差する前方の道路を優先道路として指定すること。」 |
| 『優先道路』(405。指示標識) | 「交通法第三十六条第二項の道路標識により、優先道路として指定すること。」 |
| 『一時停止』(330。規制標識) | 「交通法第四十三条の道路標識により、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、車両及び路面電車が一時停止すべきことを指定すること。」 |
標識は「指定する」と書かれ、路面の逆三角形(211)は「優先道路であること」の意味と「あらかじめ示す」設置場所が書かれています。211の文には、一時停止すべきことは書かれていませんでした。
2-2. 道路交通法の原文(第38条・第38条の2・第36条)
📜 道路交通法 第38条(横断歩道等における歩行者等の優先)第1項(原文。e-Gov法令検索、施行日2026年7月21日の版)
「車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。」
📜 同 第2項・第3項(原文)
【第2項】「車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない。」
【第3項】「車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(特定小型原動機付自転車等を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない。」
📜 同 第38条の2(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)(原文)
「車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。」
📜 同 第36条(交通整理の行なわれていない交差点)第2項・第3項(原文)
【第2項】「車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、その通行している道路が優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。)である場合を除き、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、当該交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。」
【第3項】「車両等(優先道路を通行している車両等を除く。)は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合において、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、徐行しなければならない。」
📜 同 第2条第1項(定義)第4号・第4号の2(原文)
【第4号 横断歩道】「道路標識又は道路標示(以下「道路標識等」という。)により歩行者の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう。」
【第4号の2 自転車横断帯】「道路標識等により自転車の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう。」
罰則の表記は、第38条の末尾に「罰則 第百十九条第一項第五号、同条第三項」、第38条の2の末尾に「罰則 第百十九条第一項第六号」と書かれています。第36条第2項から第4項までの罰則は、同じ第119条第1項第6号です。
2-3. 警察庁の教則が書いていること
| 項目 | 教則の記載(2024年11月13日付PDF。ページはPDFのもの) |
|---|---|
| 第5章 第3節「歩行者の保護など」2(2)(p.47) | 「横断歩道や自転車横断帯に近づいたときは、横断する人や自転車がいないことが明らかな場合のほかは、その手前で停止できるように速度を落として進まなければなりません。」「また、歩行者や自転車が横断しているときや横断しようとしているときは、横断歩道や自転車横断帯の手前(停止線があるときは、その手前)で一時停止をして歩行者や自転車に道を譲らなければなりません。」 |
| 同 2(3)(p.47) | 「横断歩道や自転車横断帯やその手前で止まつている車があるときは、そのそばを通つて前方に出る前に一時停止をしなければなりません。」 |
| 同 2(4)(p.47) | 「横断歩道や自転車横断帯とその手前から30メートル以内の場所では、ほかの車を追い越したり、追い抜いたりしてはいけません。」 |
| 同 2(1)(p.46)・(5)(p.47) | 「横断歩道のない交差点やその近くを歩行者が横断しているときは、その通行を妨げてはいけません。」「横断歩道や自転車横断帯のない場所でも、歩行者が横断することがありますので、注意しましよう。」 |
| 第2章 第3節「横断の仕方」3(5)(p.14)(歩行者向け) | 「横断するときは、手を上げるなどして運転者に対して横断する意思を明確に伝えるようにしましよう。」 |
| 付表3(2)指示標示 38・39(p.138・139) | 「前方に横断歩道や自転車横断帯があることの予告」「この標示がある道路と交差する前方の道路が優先道路であることの予告」 |
2-4. 守らないとどうなるか:点数・反則金・罰則
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 違反の名前 | 『横断歩行者等妨害等』=第38条又は第38条の2の規定の違反となるような行為 | 施行令 別表第二 備考 |
| 違反点数 | 2点(基礎点数) | 施行令 別表第二(一般違反行為の基礎点数) |
| 反則金 | 大型車12,000円・普通車9,000円・二輪車7,000円・原付等6,000円(信号無視(赤色等)・通行区分違反・追越し違反などと同じ区分) | 施行令 別表第六(十六の行) |
| 点数・反則金の前提 | 点数は基礎点数です。反則金は、交通事故を起こした場合などは対象になりません(道路交通法第125条第2項)。 | 道路交通法第125条第2項第3号 |
| 罰則 | 3か月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金(第38条は第1項第5号、第38条の2は第1項第6号)。過失により第38条(第5号)に違反した場合は、第119条第3項で10万円以下の罰金(第38条の2の第6号は、第3項に挙げられていない) | 道路交通法第119条第1項・第3項 |
| 自転車 | 反則金は6,000円で、16歳以上が対象(16歳未満は反則者から除かれる)。自転車による違反には点数は付かない(警察庁の案内) | 道路交通法第125条第2項第4号・警察庁「横断歩道は歩行者優先です」 |
警視庁の違反点数一覧と反則金一覧(どちらも更新日2026年4月1日)にも、横断歩行者等妨害等が同じ数字(点数2・反則金は12千円・9千円・7千円・6千円)で載っています。警視庁の反則金一覧は、表の中の『普通車』を「普通自動車、軽自動車(二輪車を除く)及びミニカー」と注記しています(施行令 別表第六は「普通車」とは「普通自動車をいう」と書きます)。軽自動車の四輪も、警視庁の表では普通車の列で見ます。
反則金の前提は、道路交通法第125条第2項です。反則金の手続きの対象になる人(反則者)から、同項は、無免許の人、酒に酔った状態などで運転した人、「当該反則行為をし、よつて交通事故を起こした者」(第3号)、「十六歳未満の者」(第4号)などを除いています。このため、事故を起こした場合や16歳未満の人の扱いは、反則金の表の数字とは別になります。第119条第3項は、「過失により」第1項第5号(第43条後段に係る部分を除く)などの罪を犯した者を「十万円以下の罰金」と定めていて、第38条は第5号に入ります。第38条の2は第6号で、第3項に挙げられた号には入っていません。反則金を納めた場合の手続きや、事故があった場合の責任には、この記事は立ち入りません。点数・反則金・罰則は改正されることがあるため、最新の情報も確認してください。
2-5. 確認できなかったこと・書かないこと
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| ひし形・逆三角形を、何メートル手前に置くか | 標識令の別表第五の設置場所の欄(「あらかじめ示す必要がある地点」)にも、教則の付表3(2)にも、距離は書かれていなかった(図に入っている寸法は、記号の大きさと左側端からの位置) |
| ひし形・逆三角形に従って何かをする、という文 | 別表第五の意味の欄と、教則の付表3(2)には書かれていなかった。止まるかどうかは第38条、徐行や進行妨害は第36条が定めている |
| ひし形が示すのは、横断歩道か自転車横断帯か | 名称が一つ(『横断歩道又は自転車横断帯あり』)で、標示の文だけでは区別されない。近づいて確かめる |
| 「渡ろうとしている」「ないことが明らか」の判断の基準 | 第38条には、具体例や基準は書かれていなかった。教則も「横断しようとしているとき」と書くだけ |
| 手を上げる等の合図を運転者の条件とする文 | 第38条には見当たらなかった(教則は歩行者向けに「手を上げるなどして」意思を伝えるよう書く。運転者の条件としては書かれていない) |
| 第38条第2項の「停止している車両等」が、同じ向きの車か、対向車か | 条文の文だけでは区別を断定できないため、この記事では言い切らない |
| 信号機のある横断歩道での扱いの全体像 | 信号(第7条)との関係は、この記事では扱わない。第38条第1項の文章に「信号機のない」という限定は書かれていない(信号に触れるのは、第2項のかっこ書き) |
| JAFの2016〜2020年の数字 | 各年のページで確認していないため、使わない |
| JAFの2026年の調査結果 | 2026年10月26日の確認で、JAFの全国調査データ一覧の最新は2025年調査結果。2026年のページは見つからなかった(出ていた場合は、JAFのサイトで最新の数字を確認してください) |
| JAF調査で『止まらなかった』車の中身(減速して通過した車など) | 確認したページには、一時停止した台数・割合の記載のみで、内訳は書かれていなかった |
3. 違った観点から整理する
3-1. 二つの標示の文を並べて読む

並べると、二つの標示は同じ構造であることがわかります。(1)意味は『前方に…がある』『前方の道路が優先道路である』という事実、(2)設置場所は「あらかじめ示す必要がある地点」、(3)教則の言い方は「予告」、(4)色は白。違うのは、ひし形が横断歩道に関わり(第38条)、逆三角形が交差点に関わる(第36条)点です。
『何をするか』を決めているのは、どちらも標示の文ではなく、道路交通法の条文です。ひし形のあとの横断歩道で停止できる速度を求めるのは第38条第1項、逆三角形のあとの交差点で徐行を求めるのは第36条第3項(いずれも条件つき)です。標示は、その場面が前にあることを、あらかじめ知らせる役割として書かれています。
3-2. 第38条を言葉ごとに分解する

| 条文の言葉 | 条文の言い方(原文) | 動画・記事での読み方 | 条文に書かれていないこと |
|---|---|---|---|
| どんなとき | 「横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合」 | 横断歩道又は自転車横断帯に近づくとき | 「接近」が何メートル手前からか、ひし形との関係 |
| 誰に対して | 「歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)」 | 歩行者と自転車(自転車は、横断歩道等を横断するもの) | 年齢や人数による区別 |
| 前段の例外 | 「がないことが明らかな場合を除き」 | 歩行者等がいないことが明らかなら、前段の速度の決まりは外れる | 「明らか」の基準・具体例 |
| 前段の内容 | 「停止することができるような速度で進行しなければならない」 | 直前(停止線があればその直前)で停止できる速度 | 具体的な速度(キロ) |
| 後段の対象 | 「横断し、又は横断しようとする歩行者等があるとき」 | 渡っている人も、渡ろうとしている人も入る | 手を上げる等の合図の要否、「渡ろうとしている」の基準 |
| 後段の内容 | 「当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」 | 直前で一時停止し、通行を妨げない | 待つ時間、歩行者側の速さ |
動画の歌詞『迷ったら 止まれる 速さで 近づこう!』は、この表の「前段」を簡単に言ったものです。前段は『ないことが明らか』な場合を除く、と書かれているので、明らかでなければ、停止できる速度で近づくことになります。後段は、歩行者等があるときの一時停止です。前段(速度)と後段(一時停止)は、同じ第1項の中で別のことを定めています。
3-3. JAFの調査の読み方

| 調査年 | 一時停止した車 | 割合 | 前年との差(JAFの記載) | 調査期間(平日・10時〜16時) |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 2,534台 | 30.6% | +9.3ポイント | 8月11日〜30日 |
| 2022年 | 3,003台 | 39.8% | +9.2ポイント | 8月10日〜31日 |
| 2023年 | 3,193台 | 45.1% | +5.3ポイント | 8月9日〜9月20日 |
| 2024年 | 3,525台 | 53.0% | +7.9ポイント | 8月7日〜28日 |
| 2025年 | 3,528台(調査台数6,226台) | 56.7% | +3.7ポイント | 8月6日〜28日 |
JAFは2025年の結果を「歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は3,528台(56.7%)という結果となりました」と書き、「依然として約4割のクルマが止まらない結果となりました」としています。読むときの注意は、次の6つです。
(1)調べた場所は、各都道府県2か所ずつ(全国94か所)の信号機が設置されていない横断歩道で、センターラインのある片側1車線の道路、制限速度は時速40〜60km程度、交通量は1分に3〜8台が目安。詳しい場所は非公表です。
(2)渡る人はJAF職員で、立ち位置と横断しようとするタイミングを統一しています。調べた車は、横断歩行者側の車線を走る自家用自動車・自家用トラック(白ナンバー)です。雨天時(小雨を含む)は除かれています。
(3)JAFは、「調査場所は各都道府県内で2箇所ずつですので、都道府県内すべての市町村の箇所で同様の数値(傾向)とは限りません」と書いています。都道府県別の数字(長野県88.2%〜山口県34.3%など)も、2か所の結果です。
(4)調査場所・対象・方法の説明は、2021〜2025年の各年のページで同じ文面でした(各都道府県2箇所・全国94箇所、白ナンバー、1箇所50回の横断)。違うのは調査期間で、2023年だけ8月9日〜9月20日と長くなっています。説明文は5年とも同じですが、調査地点が毎年同じかは公表されていません。調査台数も年で異なります(2021年8,281台→2025年6,226台。JAFは理由を書いていません)。年を並べるときは、この点を踏まえて読んでください。
(5)確認したページには、一時停止した台数・割合が書かれていて、止まらなかった車の中身(減速して通過した車など)の内訳は書かれていませんでした。
(6)確認日(2026年10月26日)時点で、JAFの全国調査データ一覧の最新は2025年調査結果で、2026年の結果ページは見つかりませんでした。2026年の結果が公表された場合は、JAFのサイトで最新の数字を確認してください。
警察庁は「横断歩道は歩行者優先です」のページで、横断歩行者等妨害等違反の取締り件数が令和7年中は約30万件であること、令和3年から令和7年までの5年間に自動車と歩行者が衝突した交通死亡事故が4,158件で、約7割の2,843件が歩行者が横断中の事故だったことを公表しています。そのうち横断中の事故の約6割(1,784件)は横断歩道以外の場所を横断している時に発生し、その中の約7割は走行中の自動車の直前直後を横断するなどの法令違反があった、とも書いています。また、令和7年の交通事故死者のうち、歩行中は890人(全死者の34.9%)で、状態別で最も多くなっています(警察庁『令和7年における交通事故の発生状況等について』。歩行中には、横断歩道以外の場面も含まれます)。運転者の側の決まりと、歩行者の側の決まりの、両方が大事だというのが、警察庁の整理です。
3-4. 立場別に見る
| 立場・場面 | 確認できたこと |
|---|---|
| 免許を取ったばかり・久しぶりの人 | 路面のひし形が見えたら『前に横断歩道又は自転車横断帯がある』という意味で、止まるかどうかを決めるのは第38条。第38条は、歩行者等が「ないことが明らか」でなければ、停止できる速度で近づく、と書いている |
| 歩行者 | 教則は、横断歩道や信号機のある交差点が近くにあるところでは、そこで横断するよう書き(第2章第3節1)、信号機のない場所では「手を上げるなどして運転者に対して横断する意思を明確に伝えるようにしましよう」と書く(同3(5))。車が止まってくれたときも、ほかの車の動きに注意し、安全を確認してから横断を始める(同3(4))。これは心得で、第38条の運転者の条件ではない |
| 自転車に乗る人(歩行者等として) | 第38条の「歩行者等」は歩行者又は自転車。自転車が横断歩道等を横断する場合も、条文の対象 |
| 自転車の運転者(違反をした場合) | 自転車の運転者への反則金6,000円は16歳以上が対象(点数は付かない。警察庁の案内)。16歳未満は反則者から除かれる(道路交通法第125条第2項第4号) |
| 交差点に入る運転者(逆三角形が見えたとき) | 逆三角形は「交差する前方の道路が優先道路」という予告。交通整理の行なわれていない交差点で、自分の道が優先道路でなく、交差道路が優先道路なら徐行(第36条第3項)、交差道路を通る車の進行妨害をしない(同第2項)。信号などで交通整理が行われている交差点は、この条文の場面ではない |
3-5. よくある思い込みを検証する
| 思い込み | 確認できたこと | 判定 |
|---|---|---|
| ひし形が見えたら、必ず減速する決まりがある | 別表第五の意味の欄・教則の付表3(2)に、ひし形に従って何かをする、という文は書かれていなかった。減速や停止の決まりは第38条にあり、第38条はひし形の有無を条件にしていない | ひし形の文には書かれていない |
| 逆三角形は一時停止の印 | 一時停止は標識(330)が指定する。路面の逆三角形(211)の文は「優先道路であること」で、一時停止すべきことは書かれていない | 予告であり、一時停止の指定ではない |
| 歩行者が手を上げていなければ止まらなくてよい | 第38条には手を上げる等の定めは見当たらない。後段は「横断し、又は横断しようとする歩行者等があるとき」。教則の手を上げる記載は歩行者向けの心得 | 合図の有無を条件にした文は見当たらない |
| 渡る気配がなさそうなら止まらなくてよい | 前段は「ないことが明らか」な場合を除く、と書く。「明らか」の基準・具体例は第38条に書かれていない。明らかでなければ、停止できる速度で近づく | 基準は書かれていない。言い切れない |
| 歩行者だけが対象で、自転車は含まれない | 第38条の「歩行者等」は歩行者又は自転車。「横断歩道等」には自転車横断帯も入る | 自転車も入る |
| 横断歩道がない場所では、歩行者に配慮しなくてよい | 第38条の2は、交差点又はその直近で横断歩道のない場所を歩行者が横断しているとき、その通行を妨げてはならない、と書く(罰則・点数・反則金は第38条と同じ区分) | 配慮の決まりがある |
| 信号機のない横断歩道だけのルール | 第38条第1項の文章に「信号機のない」という限定は書かれていない(この記事は信号との関係の全体像は扱っていない) | 文言に限定は書かれていない |
4. よくある質問
5. あわせて読みたい・まとめ・出典
あわせて読みたい
📖 信号機のない横断歩道、歩行者優先のルールと一時停止義務(JAF 2025年調査の都道府県別・第38条の整理表・歩行者のルール)
📖 信号のない交差点で右折車は先に入っても直進車に譲る?左方優先・優先道路との違いを条文で解説(優先道路と前方優先道路の標識・標示)
📖 ゼブラゾーン(導流帯)は走ると違反?黄色い枠つき「立入り禁止部分」との違いと点数・反則金を条文で解説(路面の標示のもう一つの読み方)
まとめ
路面のひし形(標識令210)は前方に横断歩道又は自転車横断帯があること、逆三角形(211)は交差する前方の道路が優先道路であることを示す標示で、どちらも「あらかじめ示す」予告です(色は白、形は別表第六の図)。何メートル手前かは、条文に書かれていませんでした。止まる条件は、標示ではなく道路交通法第38条にあり、横断歩道又は自転車横断帯に接近するときは、歩行者等が「ないことが明らか」な場合を除き、停止できる速度で進行し、「横断し、又は横断しようとする歩行者等があるとき」は、直前で一時停止して通行を妨げないようにします。違反は点数2点・反則金は普通車9,000円です。JAFの2025年調査では、調べた条件のもとで、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は56.7%でした。2026年の結果が公表された場合は、JAFのサイトで最新の数字を確認してください。
免責・出典(確認日 2026年10月26日)
・道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(標識令。e-Gov法令検索)
・警察庁『令和7年における交通事故の発生状況等について』(PDF)
・JAF「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2025年調査結果)」
・JAF Mate「信号機のない横断歩道での一時停止状況は56.7%(JAF調べ)【2025年版】」
図はすべて自作のイラスト・図で、AI生成画像は使っていません。標識令の図は、e-Gov法令検索に載っている図を目で見て確認した内容を、この記事の文章で説明したものです。音声はVOICEVOX(四国めたん・玄野武宏)です。


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