冠水路は進入しない:JAFテストで見る水深30cm・60cmの危険と対処

台風や集中豪雨の後、見慣れた道路が冠水していることがあります。「これくらいなら通れるだろう」という自己判断が、立ち往生や重大な事故につながることも少なくありません。この記事では、国土交通省とJAFの公表情報をもとに、冠水路が車に与える影響、JAFの走行テストの結果、避けるべき場所、水没・浸水したときの対応を整理しました。なお、「進入してよい水深」を示した公式の基準は確認できておらず、基本は、冠水路に進入しないことです。

📋 この記事の要点

✔ 国土交通省は、水深が車両の床面を超えて車内に浸水すると、エンジンやモーターが停止して移動できなくなるおそれがあると説明している

✔ 水深が床面以下でも、速度が大きいと、巻き上げた水や波が吸気口からエンジンに入り、エンジンが停止するおそれがある

✔ JAFの走行テストでは、水深30cmでも、30km/hで進入すると、水が浸入するなどの影響が出た。水深60cmでは、停止して立ち往生する車もあった

✔ 冠水した道は、見た目では水深が分からない。アンダーパスや川沿いには近づかない(JAF)

✔ 水没・浸水した車は、エンジンをかけない。バッテリーのマイナス端子を外し、販売店・整備工場・JAFに相談する

1. 冠水路が、車に与える影響

国土交通省は、2019年11月27日の発表で、水深が車両の床面を超えて車内に浸水すると、エンジンや電気装置に不具合が起きるおそれがあり、最悪の場合、エンジンやモーターが停止して移動できなくなると説明しています。この発表は、令和元年台風第19号による大雨で、水没により運転者・同乗者の死亡事故が相次いだことを踏まえたものです。

📊 冠水路の水深と、車への影響

水深の目安(国土交通省の説明) 起こりうること
車両の床面を超える 車内に浸水し、エンジンや電気装置に不具合が起きるおそれ。最悪の場合、エンジンやモーターが停止して移動できなくなる
ドアの高さの半分を超える 内側からほぼ開けられなくなる(外側から水圧がかかるため)
床面以下でも、速度が大きいとき 車両が巻き上げた水や生じた波が、吸気口から入り、エンジンが停止するおそれ

JAFも、冠水路に進入した車が、吸気口から水を吸い込んだり、排気管が水圧で塞がれたりして、エンジンが停止し、立ち往生する危険を指摘しています。危険を感じたときには、すでに車が動かなくなっていることも少なくありません。

📌 確認できなかった点

タイトルにある「進入してはいけない水深の目安」について、公式に「この水深までなら走行してよい」という基準は、確認できませんでした。国土交通省・JAFとも、冠水路には進入しないことを基本としています。

2. JAFの走行テストの結果

JAFは、冠水路を車で走ったときの状況を、実車で検証しています。古いテスト(2010年)と、新しいテスト(2024年)があり、どちらも水深は30cmと60cmです。

📊 JAFの冠水路走行テスト(2010年)

テスト 水深と速度 結果(JAFの公表内容)
2010年4月8日(セダン・SUV) 30cm、10km/h セダン・SUVとも、走行できた
同上 30cm、30km/h セダンは、エンジンルームに水が吹き上がり、走行できなかった
同上 60cm、10km/h SUVは走行できたが、セダンは31m地点で停止した(SUVは、エンジンの位置が高いとされる)
同上 60cm、30km/h SUVも、エンジンが止まった(10m以内)

📊 JAFの冠水路走行テスト(2024年)

テスト 水深と速度 結果(JAFの公表内容)
2024年10月28〜30日(BEV・HV・ガソリン車) 30cm、10km/h 3台とも走り切った
同上 30cm、30km/h 3台とも走り切ったが、エンジンルームや車内に水が入るなどの影響があった
同上 60cm、10km/h 3台とも走り切った
同上 60cm、30km/h BEVは、複数の警告灯が点灯。HV・ガソリン車は、水が浸入した
同上 60cm、40km/h ガソリン車は、入口から28.5m地点で停止し、車内に大量に浸水。BEVとHVは、走り切ったが、警告灯が点灯した

⚠️ テストは、あくまで条件を整えたもの

JAFは、走り切れた場合でも、ボンネット内や車内に水が入ることが多かったと報告しています。実際の冠水路では、水の濁りで深さが分からず、開いたマンホールの蓋や、側溝、漂流物などの危険が隠れているため、テストの結果が当てはまるとは限りません。JAFは、冠水路には進入しないよう呼びかけています。

3. 冠水路の見分け方と、近づいてはいけない場所

📊 冠水路の見分け方と、避ける場所

危険のサイン・場所 なぜ危険か 取るべき行動
路面と水面の境目が分からない 水深を目視で判断できない(JAF) 進入しない。引き返す、または迂回する
マンホールの蓋が浮いている、側溝の位置が分からない 水の下に、開いたマンホールなどの危険が隠れている可能性がある(JAFの走行テストの報告) 近づかない
アンダーパス(道路の下をくぐる区間) 前後の区間より低く、水がたまりやすい。全国に約3,800箇所(令和7年3月末、国土交通省)。大雨のときは、事前に通行規制が行われることがある 大雨のときは、近づかない。迂回する
川沿い・海岸沿い・急傾斜地 JAFは、大雨のとき、危険な場所には近づかないよう呼びかけている 近づかない
先行車が立ち往生している 同じ場所で、自分も立ち往生するおそれがある 進入せず、引き返す

💡 「先行車が通れたから」は、目安になりません

車の種類や、吸気口・排気口の位置、速度によって、影響は大きく異なります。JAFのテストでも、同じ水深・速度で、結果が分かれました。他の車が通れたことを、安全の目安にしないでください。

📝 大雨のときに、出発前に確認すること

☑️ 通行止め・冠水の情報(自治体、道路管理者、NEXCO)を確認した

☑️ ルートに、アンダーパス・川沿い・海岸沿いが含まれていないか確認した

☑️ 危険な区間の迂回ルートを決めておいた

☑️ 冠水を見つけたら、引き返すと決めている

4. やむを得ず冠水路に入ってしまったとき・水没したとき

JAFは、運転中に浸水してきたら、慌てず、車を止めてエンジンを停止し、避難するよう案内しています。深い冠水路でも、ただちに浸水してくるとは限らず、危険を察知した時点で、すでに走行できない状態になっていることが多いとされています。

🧭 浸水・水没したときの行動(JAFの案内より)

1

車を止め、エンジンを止める

慌てて走り続けようとせず、車を止めて、エンジンを停止します(JAF)。

2

シートベルトを外す

JAFの水没時の脱出手順では、落ち着いてシートベルトを外し、脱出に備えるとされています。

3

窓が開けられるなら、窓から脱出する

窓ガラスが水面より高い位置にある場合は、窓を開けて、車の屋根に上るようにして脱出します(JAF)。

4

窓が開かないときは、脱出用ハンマーでガラスを割る

パワーウインドウは、電気系統のトラブルや水圧で開かなくなることがあります。一部の車種は合わせガラスで、割れない場合もあります(JAF)。

5

ドアが開かないときは、車内に水が入り、水圧の差が縮まるのを待つ

JAFは、車内に水が入ると、外の水位との差が縮まり、ドアへの水圧が低下すると説明しています。そのタイミングで、大きく息を吸い込み、足などに力を込めて、ドアを押し開けて脱出します。

6

徒歩で戻るときは、足元を確認する

JAFは、片足を浸けて水深を測りながら、ゆっくりと両足をつき、進んできた方向に歩いて戻るよう案内しています。濁った冠水路では、マンホールの有無が分かりません。

⚠️ 一度でも水没・浸水した車は、エンジンをかけない

水が引いたからといって、車に乗り込んでエンジンをかけると、破損や感電のおそれがあります(JAF)。国土交通省も、「自分でエンジンをかけない」ことが第一と案内しています。

5. 水が引いた後の車の扱い

📊 浸水した車のユーザーの方へ

やること 内容 出典
エンジンをかけない 外見上問題がなくても、感電事故や、電気系統のショートによる火災が起こる可能性がある 国土交通省
バッテリーのマイナス端子を外す 発火のおそれがあるため、バッテリーのマイナス側のターミナルを外す。外した端子が、バッテリーに触れないよう、テープなどで覆う 国土交通省
ハイブリッド車・電気自動車 高電圧バッテリーを搭載している。むやみに触らない 国土交通省、JAF
販売店・整備工場・JAFに連絡する 購入した販売店、最寄りの整備工場、またはJAFのロードサービスに連絡し、車の扱いを相談する 国土交通省、JAF
点検・整備を受ける 一度浸水した車は、運転可能でも、電気装置等が損傷を受けているおそれがあるため、自動車整備工場などで点検整備を受ける 国土交通省(2019年11月27日発表)

📌 海水による浸水

JAFは、特に海水による浸水の場合、バッテリーから直接電気が流れてショートするケースがあり、後で自然発火するおそれがあると説明しています。

📌 確認できなかった点

車両保険の補償範囲や、修理費用、損害額の相場については、公式資料では確認できていません。保険の扱いは契約によって異なるため、加入している保険会社に確認してください。

6. よくある質問

Q. 冠水した道路は、何cmまでなら走れますか?

A. 公式に「ここまでなら走れる」という水深の基準は、確認できませんでした。国土交通省は、水深が車両の床面を超えると、エンジンなどが停止するおそれがあると説明し、JAFは、水深30cmでも、30km/hで進入すると水が浸入する影響が出たと報告しています。冠水路には、進入しないことが基本です。

Q. 水深が浅くても、危険ですか?

A. 国土交通省は、水深が車の床面以下でも、速度が大きいと、巻き上げた水や波が吸気口からエンジンに入り、エンジンが停止するおそれがあると説明しています。水深が浅く見えても、速度を出して進入しないでください。

Q. アンダーパスは、なぜ危険ですか?

A. 前後の区間より、道路の高さが低いため、大雨のときに、水がたまりやすいためです。国土交通省によると、全国に約3,800箇所(令和7年3月末時点)あります。大雨のときは、近づかないようにしましょう。

Q. 車内に水が入ってきたら、どうすればよいですか?

A. 慌てずに車を止め、エンジンを止めます。シートベルトを外し、窓から脱出します。窓が開かなければ、脱出用ハンマーでガラスを割ります。ドアは、水圧のため開けにくくなりますが、車内に水が入り、水位の差が縮まると、開けられる可能性があります(JAF)。

Q. 水が引いたので、エンジンをかけてみてもよいですか?

A. かけないでください。破損や感電、火災のおそれがあります。販売店・整備工場・JAFなどに連絡し、車を移動して点検を受けてください(JAF、国土交通省)。

まとめ

冠水路は、見た目だけでは、安全な水深かどうかを判断できません。国土交通省は、水深が床面を超えるとエンジンなどが停止するおそれがあり、床面以下でも、速度が大きいと吸気口から水が入るおそれがあると説明しています。JAFの走行テストでも、水深30cm、速度30km/hで、水が浸入する影響が出ました。少しでも冠水の疑いがあれば、引き返すか、迂回しましょう。万一、水没・浸水したときは、エンジンをかけず、販売店・整備工場・JAFに相談してください。

※本記事は一般的な情報提供です。台風・大雨の際の行動は、気象庁・自治体・道路管理者が発表する最新の情報や、避難に関する指示を最優先してください。個別の判断や、車両の損害・保険の扱いについては、公的窓口・ロードサービス・保険会社などにご相談ください(気象庁、JAF、国土交通省、NEXCOの公式ページの確認日:2026年9月25日)。

出典: JAF「自動車が冠水路や高潮で浸水してしまったら」、JAF交通安全トレーニングコラム「大雨で冠水した道路は危険?」

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