信号のない交差点では、「左から来る車が先」「右折車は先に入っても直進車に譲る」といったルールを聞いたことがあっても、どの条文に基づくのか、優先道路や一時停止の標識があるときはどう変わるのか、と聞かれると迷う方は多いのではないでしょうか。
この記事では、道路交通法の現行条文(e-Gov法令検索)、警察庁の「交通の方法に関する教則」、JAF Mate Onlineの解説、道路交通法施行令の別表と警視庁の点数表をもとに整理します。YouTubeで反応のよかった、3択クイズ全3問のショート動画(信号のない交差点の左方優先・右折車の優先関係・歩道を横切るときの一時停止)の内容を、条文と数字つきで詳しく解説した記事です。
📋 この記事の要点
✔ 信号機などで交通整理が行われていない交差点で、道幅が同じくらいなら、左から来る車の進行を妨げてはいけない(道路交通法第36条第1項)
✔ 優先道路(標識で指定された道路、交差点で中央線や車両通行帯が設けられている道路)や明らかに広い道路を通る車が優先。優先でない側は徐行(第36条第2項・第3項)。一時停止の標識があれば停止線の直前で止まる(第43条)
✔ 右折車は、直進・左折しようとする車の進行を妨げてはいけない(第37条)。警察庁の教則は、自分の車が先に交差点に入っていても進行を妨げてはいけないと説明している
✔ 店や駐車場に入るため歩道・路側帯を横切るときは、歩道等に入る直前で一時停止し、歩行者の通行を妨げない(第17条第2項)。歩行者が見えなくても、歩道等に入る直前で一時停止が必要(歩行者がいるときに限った規定ではない)
✔ 違反の点数・反則金(普通車): 交差点優先車妨害1点・6,000円/優先道路通行車妨害等2点・7,000円/交差点安全進行義務違反2点・9,000円/指定場所一時不停止等2点・7,000円
🎬 動画で見る(ショート)
この記事の元になった、かーぎーくんのショート動画です。動画では触れられなかった詳しい内容や条文・公式情報は、このあと記事で確認できます。
▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
📑 目次
1. 同じ道幅の交差点は「左から来る車」が先(第36条第1項)
2. 優先道路・広い道路・一時停止の標識があるときは別(第36条第2項・第3項、第43条)
3. 右折車は、先に入っても直進車・左折車に譲る(第37条)
1. 同じ道幅の交差点は「左から来る車」が先(第36条第1項)
動画の第1問は、「信号も標識もない、同じ道幅の交差点。お互い直進。あなたが先に通すのは?」でした。答えは左から来る車です。根拠は道路交通法第36条第1項です。
📜 道路交通法 第36条第1項(条文の引用。第2号は省略)
車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、次項の規定が適用される場合を除き、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に掲げる車両等の進行妨害をしてはならない。一 車両である場合 その通行している道路と交差する道路(以下「交差道路」という。)を左方から進行してくる車両及び交差道路を通行する路面電車

警察庁の「交通の方法に関する教則」(第5章第7節3)も、道幅が同じような道路の交差点では、路面電車や左方から来る車があるときは、その進行を妨げてはいけないと説明しています。
📊 第36条第1項が使える条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 交通整理が行われていない | 条文は「交通整理の行なわれていない交差点」と書いています。信号機や警察官の手信号で交通整理が行われている交差点では、この規定ではなく、信号や指示に従います |
| 第2項が適用されない | 第1項は「次項の規定が適用される場合を除き」と始まります。優先道路や、明らかに広い道路があるときは第2項が先です(次の章) |
| 「左方」は自分から見て左 | 「その通行している道路と交差する道路を左方から進行してくる車両」と書かれています。自分が進む向きから見て、左の道路から来る車が対象です |
2. 優先道路・広い道路・一時停止の標識があるときは別(第36条第2項・第3項、第43条)
左から来る車を先に通すのは、「どちらの道路にも目印がなく、道幅も同じくらい」のときの話です。次の3つのいずれかに当たると、考え方が変わります。
📊 優先関係を変える3つの目印
| 目印 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 優先道路 | 標識で優先道路として指定された道路、およびその交差点で、通行を規制する中央線または車両通行帯が設けられている道路 | 道路交通法第36条第2項(かっこ書き) |
| 明らかに広い道路 | 自分が通っている道路の幅より、交差する道路の幅が明らかに広いとき | 第36条第2項 |
| 一時停止の標識 | 交通整理が行われていない交差点またはその手前の直近で、標識で一時停止が指定されているとき。停止線の直前(停止線がなければ交差点の直前)で一時停止する | 第43条 |
優先でない側の義務は「進行妨害をしない」と「徐行」
第36条第2項は、自分が通る道路が優先道路ではなく、交差する道路が優先道路のとき(または交差する道路の幅が明らかに広いとき)は、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならないと定めています。さらに第3項は、そのような場合に交差点に入ろうとするときは徐行しなければならないと定めています。
ここで注意したいのは、「徐行」は一時停止とは違うことです。徐行とは、車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいいます(道路交通法第2条第1項第20号)。JAF Mate Onlineの解説も、優先道路が交差するときは「必ずしも一時停止する必要はなく、徐行して車や路面電車の進行を妨げないようにします」と整理しています。
標識でも知らせている:「優先道路」と「前方優先道路」
標識令(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令)には、優先関係を示す標識が次のように載っています。
| 標識 | 意味(標識令の記載) |
|---|---|
| 指示標識「優先道路」(405) | 道路交通法第36条第2項の道路標識により、優先道路として指定する |
| 規制標識「前方優先道路」(329の2) | 第36条第2項の道路標識により、交差する前方の道路を優先道路として指定する(優先道路と交差する道路の手前に置かれる) |
| 道路標示(指示標示)「前方優先道路」(211) | 路面の逆三角形の標示。交差する前方の道路が優先道路であることを、あらかじめ示す |
| 規制標識「一時停止」(330) | 第43条の道路標識により、交通整理が行われていない交差点またはその手前の直近で、一時停止すべきことを指定する |
一時停止の標識は「止まれば終わり」ではない
第43条は、一時停止の標識がある交差点では、停止線の直前で一時停止しなければならないと定めたうえで、「この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない」と続けます。止まったあとも、交差道路を通る車の進行を妨げてはいけません。警察庁の教則(第5章第7節3)にも、同じ趣旨が書かれています。

3. 右折車は、先に入っても直進車・左折車に譲る(第37条)
動画の第2問は、「信号のない交差点で右折。先に交差点へ入っていても、優先されるのは?」でした。答えは対向の直進車です。

📜 道路交通法 第37条(条文の引用)
車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。
この条文には、「先に交差点に入った車が優先」という書き方はありません。警察庁の教則(第5章第7節2(5))も、右折しようとする場合に、その交差点で直進か左折をする車や路面電車があるときは、自分の車が先に交差点に入っていても、その進行を妨げてはいけないと説明しています。JAF Mate Onlineの学科試験クイズでも、「右折しようとして先に交差点に入ったときは、反対方向から来る直進車または左折車に優先して右折できる」は誤り(×)とされています。
第37条は、第36条のように「交通整理の行なわれていない交差点」に限る書き方ではありません。つまり、信号がない交差点だけの決まりではなく、右折するときは、直進や左折の車を先に通すのが基本です。右折用の矢印信号など、信号が右折の進行を指示している場面の考え方は、別の記事(下の「あわせて読みたい」)で整理しています。
「直進車が優先」でも、直進車に注意義務がないわけではない
第36条第4項は、交差点に入ろうとするときや交差点内を通行するときに、反対方向から進行してきて右折する車両等に特に注意するよう定めています。教則(第5章第7節1(1))も、交差点では右折車、歩行者などに気を配ること、特に右折しようとするときは、対向車線を直進する二輪車が見えにくくなることがあるため十分に注意することを求めています。右折車は譲る側ですが、直進車も右折車の動きを見ておく必要があります。
動画に入らなかった点:右折のしかたと合図
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 右折の位置 | あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、交差点の中心の直近の内側を徐行する(自動車・一般原動機付自転車) | 道路交通法第34条第2項 |
| 一方通行の道路から右折 | あらかじめその前からできる限り道路の右側端に寄り、交差点の中心の内側を徐行する | 第34条第4項 |
| 右折の合図を出す時期 | 交差点の手前の側端から30メートル手前の地点に達したとき | 道路交通法施行令第21条第1項の表 |
| 右折の合図を出した車がいるとき | 後方の車は、速度や方向を急に変えなければならなくなる場合を除き、その進路の変更を妨げてはならない | 第34条第6項 |
なお、環状交差点(ラウンドアバウト)は、通常の交差点とは別の規定(第37条の2など)があり、教則も「交差点(環状交差点を除きます。)」と分けて書いています。
4. 店や駐車場に入るため歩道を横切るときは一時停止(第17条)
動画の第3問は、「店の駐車場へ入るため、歩道を横切る。歩行者は見えない。どうする?」でした。答えは歩道の直前で一時停止です。

📜 道路交通法 第17条第1項ただし書・第2項(条文の引用。一部省略)
[第1項ただし書] ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき(中略)は、この限りでない。 [第2項] 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。
ここでいう「歩道等」は、第17条第1項で歩道または路側帯を指すと定義されています。警察庁の教則(第5章第3節6(2))にも、「道路に面した場所に出入りするため歩道や路側帯を横切る場合には、その直前で一時停止をするとともに、歩行者の通行を妨げないようにしなければなりません」と書かれています。
条文の書き方に注目すると、一時停止の義務は「歩行者がいるとき」に限られていません。歩行者が見えなくても、歩道等に入る直前で一時停止することが求められます。JAF Mate Onlineの解説(モータージャーナリスト・菰田潔氏)は、歩道を横切るのは「やむを得ない場合に限って」特別に許されている行為で、歩道は歩行者のためのものだと整理しています。
📊 JAF Mate Onlineの調査(実際に止まっている車はどれくらい?)
| 調査の内容 | 結果 |
|---|---|
| 調査方法 | 車道と歩道の切れ込みがあるガソリンスタンド2か所で、各1時間・延べ2時間。調査員の目視で、タイヤが完全に停止したかどうかを判定 |
| 歩道の手前で一時停止した車 | 計90台のうち15台(17%)。83%は一時停止しなかった |
| 入るときと出るとき | 入る車は50台中2台、出る車は40台中13台が一時停止 |
この調査は、2か所のガソリンスタンドでの限られた時間の結果で、全国の実態を表す数字ではありません。それでも、JAF Mate Onlineの記事は、「歩道を横切るときは直前で一時停止する」というルールを知らない、または意識していないドライバーが多いことの表れだとしています。
5. 違反点数・反則金の一覧
この記事に出てきた規定に違反した場合の点数と反則金です(普通自動車)。反則行為の種別は道路交通法施行令の別表第二、反則金は別表第六、点数は警視庁の違反点数表で確認しました。
📊 今回の規定に関係する違反点数・反則金【普通車】
| 違反の名称 | どんな行為か | 根拠 | 点数 | 反則金(普通車) |
|---|---|---|---|---|
| 交差点優先車妨害 | 左方から来る車の進行を妨げる/右折時に直進・左折車の進行を妨げる | 第36条第1項・第37条 | 1点 | 6,000円 |
| 優先道路通行車妨害等 | 優先道路を通る車や、明らかに広い道路を通る車の進行を妨げる/徐行しない | 第36条第2項・第3項 | 2点 | 7,000円 |
| 交差点安全進行義務違反 | 交差道路の車、右折車、横断する歩行者などへの特別の注意と、安全な速度・方法での進行を怠る | 第36条第4項 | 2点 | 9,000円 |
| 指定場所一時不停止等 | 一時停止の標識がある交差点で、停止線の直前(なければ交差点の直前)で一時停止しない/交差道路の車の進行を妨げる | 第43条 | 2点 | 7,000円 |
| 通行区分違反 | 歩道等に入る直前で一時停止しないなど、第17条第1項〜第4項・第6項の違反となる行為(施行令別表第二の定義) | 第17条 | 2点 | 9,000円 |
反則金は車の種類で金額が異なります(施行令別表第六)。交差点優先車妨害は大型車7,000円・二輪車6,000円・原付等5,000円、優先道路通行車妨害等と指定場所一時不停止等は大型車9,000円・二輪車6,000円・原付等5,000円、交差点安全進行義務違反と通行区分違反は大型車12,000円・二輪車7,000円・原付等6,000円です。
また、第36条第1項と第37条の違反には「5万円以下の罰金」(第120条第1項第2号)、第36条第2項〜第4項と第17条第2項の違反には「3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金」(第119条第1項第6号)、第43条の違反には同じく「3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金」(第119条第1項第5号)の罰則が定められています。反則行為は、反則金を納めれば刑事手続に移らない仕組み(交通反則通告制度)ですが、納めなかった場合などは別です。
6. よくある質問
まとめ
信号のない交差点のルールを整理します。(1)道幅が同じくらいで標識もないときは、左から来る車の進行を妨げてはいけません(第36条第1項)。(2)優先道路や明らかに広い道路があるときは、その道路を通る車が優先で、優先でない側は徐行します(第36条第2項・第3項)。一時停止の標識があれば、停止線の直前で止まり、そのあとも交差道路の車を妨げません(第43条)。(3)右折する車は、先に交差点に入っていても、直進・左折する車の進行を妨げてはいけません(第37条)。(4)店や駐車場に入るため歩道・路側帯を横切るときは、歩行者が見えなくても、歩道等に入る直前で一時停止します(第17条第2項)。
どの場面でも、第36条第4項が求める「交差点の状況に応じた安全な速度と方法」で進むことが土台です。標識と路面の標示をよく見て、迷うときは先に譲る気持ちで走りましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令・反則金・基準は改正されることがあるため、最新の内容や個別の判断は、警察庁・各都道府県警察・公安委員会など公的機関の公式情報でご確認ください(確認日: 2026年10月)。事故の過失割合など、個別の事案の判断は専門家や保険会社にご相談ください。
参考(一次情報・公的機関・JAF): e-Gov法令検索 道路交通法(第2条・第17条・第34条・第36条・第37条・第43条・第119条・第120条)/同 道路交通法施行令(第21条・別表第二・別表第六)/同 道路標識、区画線及び道路標示に関する命令/警視庁 違反点数/警察庁 交通の方法に関する教則(PDF)/JAF Mate 交差点の通行ルールを〇×形式で出題/JAF Mate 信号機がないY字の交差点…(優先道路の解説)/JAF Mate 車道から歩道を横切るとき、歩道の手前で一時停止していますか?
図はすべて自作のイラストです(AI生成なし)。実際の交差点・標識・出入口の形は場所によって異なります。


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