海沿いに住んでいる方や、沿岸部を通勤・通学で走る方にとって、台風は「風と雨」に加えて高潮・高波・海水という別のリスクがあります。この記事では、気象庁とJAFの公開情報をもとに、高潮のしくみ、2026年5月29日から変わった高潮の警戒情報の名称、車が海水に浸かったときの注意点を整理しました。
📋 この記事の要点
✔ 高潮は、台風による気圧の低下(吸い上げ)と、沖から海岸へ吹く強風(吹き寄せ)で起こる。気圧が1hPa下がると潮位は約1cm上がる(気象庁)
✔ 9月頃は、1年を通じて平均潮位が最も高くなる時期。台風による高潮を考えるうえで見逃せない(気象庁)
✔ 2026年5月29日から、高潮の警戒情報は警戒レベルつきの名称に。レベル4高潮危険警報は、浸水被害のおそれがある状況となる約6時間前までに発表される(気象庁・国土交通省の資料)
✔ 海水に浸かった車は、キーを抜いていてもバッテリーの電気でショートすることがあり、水が引いた後も腐食で自然発火する可能性がある(JAF)
✔ 台風が近づいたら、海岸にはむやみに近づかない。高潮に高波が重なると、普段は波が来ない所まで押し寄せる(気象庁)
📑 目次
1. 沿岸部で警戒したい現象の早見表
📊 沿岸部の主なリスク
| 現象 | 公的情報で確認できた内容 | 車・運転での考え方 |
|---|---|---|
| 高潮 | 台風や発達した低気圧が通過するとき、潮位が大きく上昇する現象。主な原因は「吸い上げ効果」と「吹き寄せ効果」(気象庁) | 海岸付近の道路・駐車場が冠水するおそれがある。台風接近前に、車を高台や内陸側へ移す |
| 高波 | 台風が近づいて波が高くなる中で、高波にさらわれる事故が毎年発生している。台風接近時には海岸を突然大波が襲うことは珍しくない(気象庁) | 海岸沿いの道路・駐車場、海岸そのものにむやみに近づかない |
| 強風 | 台風に吹き込む風は反時計回りで、ふつうは進行方向に対して右側で強くなる(気象庁)。風速の目安は、強風の記事の早見表を参照 | 風の強さは地形や周りの建物に左右され、観測所の値と大きく異なることがある(気象庁) |
| 海水による車両火災 | 海水は電気を通しやすく、電気系統がショートして車両火災につながる可能性がある(JAF) | 海水に浸かった車は、エンジンをかけず、JAFや販売店・整備工場に相談 |
| 冠水路 | 冠水した道路は、見た目だけでは水深が分からず、進入すると立ち往生することがある(JAF) | 低い場所や海岸沿いの冠水路には進入せず、迂回する |
⚠️ 注意
高波や高潮のおそれがあるときに、海の様子を見に行くのは危険です。気象庁は、台風接近時にはむやみに海岸へ近づかないよう呼びかけています。
2. 高潮のしくみと、注意したい時期・条件
高潮は、台風のときだけ起こるわけではありませんが、台風の進路・強さ・潮位の状況が重なると大きくなります。気象庁が解説している内容を整理します。
📊 高潮に関する気象庁の解説(整理)
| ポイント | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 吸い上げ効果 | 台風や低気圧の中心は周辺より気圧が低く、海水が吸い上げられて海面が上昇する。気圧が1hPa下がると、潮位は約1cm上昇するといわれる。1000hPaの場所に中心気圧950hPaの台風が来れば、中心付近の海面は約50cm高くなる | 気象庁「高潮」 |
| 吹き寄せ効果 | 強い風が沖から海岸に向かって吹くと、海水が海岸に吹き寄せられて海面が上昇する。潮位の上昇は風速の2乗に比例し、風速が2倍になれば海面上昇は4倍。遠浅の海や、風が吹いてくる方向に開いた湾では、特に潮位が高くなる | 気象庁「高潮」 |
| 満潮・大潮との重なり | 満潮と高潮が重なると、潮位がいっそう上昇して大きな災害が起こりやすい。ただし、干潮の時刻や小潮のときでも、潮位偏差が大きければ高潮の被害は起こりうる | 気象庁「高潮」「台風に伴う高潮」 |
| 時期 | 9月頃は、海水温が高くなるなどの影響で、1年を通じて最も平均潮位が高くなる時期 | 気象庁「台風に伴う高潮」 |
| 台風の進路と湾の向き | 南に開いた湾では、台風が西側を北上すると南風が吹き続けて高潮が起こる。過去50年で潮位偏差が1m以上になった高潮は、ほとんどが東京湾・伊勢湾・大阪湾・瀬戸内海・有明海の、遠浅で南に開いた湾で発生している | 気象庁「高潮と台風の進路」 |
| 過去の例 | 2018年9月の台風第21号では、大阪で天文潮位より277cm高い潮位(瞬間値)を観測し、過去の最高潮位を超えた。台風の接近は小潮の時期だったが、関西国際空港が浸水するなどの被害があった | 気象庁「台風に伴う高潮」 |
📌 補足
気象庁は、高潮災害の防止のために、満潮の時刻だけでなく、台風や低気圧の接近時を中心に気象情報に十分注意して、早めに警戒し対策をとることが大切だと説明しています。
3. 高潮の警戒情報(2026年5月29日から)
気象庁は、令和8年(2026年)5月29日から、新しい防災気象情報の運用を始めました。高潮に関する情報も、避難情報の5段階の警戒レベルに対応した名称になっています。気象庁・国土交通省の資料から、レベルごとの内容を整理します。
📊 高潮に関する警戒レベルと情報(2026年度からの運用)
| 警戒レベル | 情報名 | 発表のタイミング | 住民がとるべき行動 |
|---|---|---|---|
| 5 | レベル5高潮特別警報 | 浸水がすでに発生、または切迫している | ただちに安全確保の行動を |
| 4 | レベル4高潮危険警報 | 浸水被害のおそれがある状況となる約6時間前までに発表 | 浸水想定区域など、高潮による浸水被害のおそれのある場所にいる人は、全員安全な場所に避難 |
| 3 | レベル3高潮警報 | 浸水被害のおそれがある状況となる約12時間前までに発表 | 避難に時間を要する人は早めに避難。避難の準備など |
| 2 | レベル2高潮注意報 | 浸水被害のおそれがある状況となる約18時間前までに発表 | 避難行動を確認(避難場所、ルート、時期など) |
| 1 | 早期注意情報(高潮) | 5日先までにレベル4相当の現象が予想される場合に、「高」「中」の2段階で発表 | 災害への心構えを高める |
※表は横にスクロールできます
📌 従来との違い
以前は、高潮特別警報と高潮警報がどちらも警戒レベル4相当として扱われ、高潮注意報が警戒レベル2と3相当に分かれていました。新しい体系では、警戒レベルごとに情報が整理されています。古い記事や資料と警戒レベルの位置づけが異なる場合があります。また、暴風・波浪・強風などの警報・注意報の名称は、従来どおりです(気象庁の資料)。
💡 ポイント
国土交通省・都道府県・気象台が共同で発表する「高潮予報海岸」では、波の打ち上げ高も加味した予報が行われます(気象庁・国土交通省の資料)。自分の地域が対象かどうかは、自治体や気象庁の案内で確認できます。
⚠️ 注意
上の表の「約6時間前」「約12時間前」「約18時間前」は、浸水被害のおそれがある状況になるまでの目安時間で、台風が上陸する時刻ではありません。気象庁は、警戒レベル4までに危険な場所から全員避難するという原則は変わらないと案内しています。車を高台へ移すなどの準備は、情報が出てから慌てるのではなく、早めに進めましょう。
4. 海水に浸かった車の注意点(JAFの案内)
JAFは、2004年8月に香川県高松市で台風16号による高潮が発生し、その後、海水に浸かった自動車が次々と自然発火した事例を紹介しています。海水の塩分が車内の電気配線などをショートさせ、その熱で発火したものです。
📊 海水に浸かった車について
| ポイント | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 海水は電気を通しやすい | 電気系統がショートして、車両火災につながる可能性がある | JAF「自動車が冠水路や高潮で浸水してしまったら?」 |
| キーを抜いていても | バッテリーから直接電気が流れてショートするケースがある | JAF Q&A |
| 水が引いた後も | 海水による電気系統の腐食が進み、ショートして自然に発火することがある | JAF Q&A |
| やってはいけないこと | 水が引いたからといって乗り込んでエンジンをかけると、破損や感電の危険がある。自分でバッテリーを外そうともしない(JAFのQ&A) | JAF Q&A |
| 相談先 | JAFや販売店、整備工場に相談する。JAFのロードサービスは、浸水した車両のけん引にも対応している | JAF Q&A |
⚠️ ハイブリッド車・電気自動車
国土交通省は、水に浸った車のうち、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)は高電圧のバッテリーを積んでいるため、むやみに触らないよう案内しています。国土交通省のページは、バッテリーのマイナス端子を外す手順も示していますが、JAFのQ&Aは自分で外そうとしないよう案内しており、表現が異なります。判断に迷う場合は、専門家に相談してください。
5. 沿岸部での車の判断と、情報の入手先
🧭 沿岸部での台風対応の流れ
台風情報と高潮に関する情報を確認する
気象庁の台風情報で進路と強さ、高潮に関する情報(レベル2高潮注意報など)を確認します。
車の避難先を決める
自宅・勤務先周辺のハザードマップで、浸水想定区域の外の、高台や内陸側の駐車場を探します。
水位が上がる前に車を移す
JAFは、水位が上がってからの自動車での避難は大変危険だと案内しています。
海岸沿いや低い場所には近づかない
高波・冠水のおそれがある海岸沿いの道路や、アンダーパスは避けます。
通過後は、浸水した車に触れない
海水に浸かった車は、エンジンをかけず、JAFや販売店・整備工場へ相談します。
📝 チェックリスト
☑️ 自宅・通勤路のハザードマップで、浸水想定区域を確認した
☑️ 車の避難先(高台・内陸側)を決めた
☑️ 台風の進路と高潮に関する情報の確認方法を決めた
☑️ 避難ルートと、車を使わない場合の移動方法も確認した
☑️ 海岸に近づかない(高波の様子を見に行かない)ことを家族と共有した
☑️ JAFや保険会社の連絡先を、すぐ出せるようにした
📊 情報の入手先
| 情報 | 入手先 | 確認できる内容 |
|---|---|---|
| 台風・高潮・暴風の情報 | 気象庁 | 台風の進路、警報・注意報、時系列情報など |
| 危険箇所 | 国土交通省ハザードマップポータルサイト、市区町村のハザードマップ | 浸水想定区域、避難場所・避難ルート |
| 避難情報 | 市区町村 | 警戒レベルに応じた避難情報 |
- 気象庁「高潮」
- 気象庁「台風に伴う高潮」
- 気象庁「高潮と台風の進路」
- 気象庁「海岸の高潮と高波の重なり合い」
- 気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」
- 国土交通省・気象庁「高潮に関する情報の改善」(PDF)
- JAF「自動車が冠水路や高潮で浸水してしまったら?」
- JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」
- 国土交通省「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」
6. よくある質問
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まとめ
沿岸部の台風では、風と雨に加えて、高潮・高波・海水による車両火災に注意が必要です。2026年5月29日から、高潮の警戒情報はレベルつきの名称になりました。海水に浸かった車は、水が引いた後も自然発火する可能性があるため、自分でエンジンをかけず、専門家に相談しましょう。台風が近づいたら、車の避難先を早めに決め、海岸にはむやみに近づかないことが大切です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。
出典: JAF「自動車が冠水路や高潮で浸水してしまったら」

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