電動キックボード「特定小型原付」のルールとは?違反・事故の最新状況もあわせて解説

街で見かける機会が増えた電動キックボード。2023年7月1日に施行された道路交通法の改正で、一定の基準を満たす電動キックボード等は「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」として、運転免許を受けずに運転できるようになりました。一方で、通行する場所や飲酒運転など、守るべきルールと罰則があります。この記事では、警察庁の公表情報をもとに、基本ルールと取締りの状況(違反)に絞って整理します。事故の統計やドライバー側の注意点は、別記事にまとめています。

📋 この記事の要点

✔ 基準は、長さ190cm以下・幅60cm以下、定格出力0.60kW以下の電動機、20km/hを超える速度が出せない構造など。基準に当てはまらない電動キックボードは、免許が必要で歩道は走れない

✔ 16歳以上なら免許なしで運転できるが、ナンバープレートの取付けと自賠責保険(共済)への加入は必要。ヘルメットは努力義務

✔ 通行は車道の左側端が原則。歩道を通行できるのは、要件を満たす「特例特定小型原付」が、標識で通行可とされている歩道を歩行者優先で走る場合に限られる

✔ 飲酒運転は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金等。交通反則通告制度の対象であり、違反を繰り返すと講習の受講命令もある

✔ 警察庁が公表した検挙件数は、令和7年(2025年)が37,185件。通行区分違反が最多(22,368件)

動画でも解説しています。(YouTube「くるまのかーぎーくん」)

🧭 記事の使い分け

この記事は、特定小型原付に乗る側・借りる側のルール(基準・走る場所・飲酒・二人乗り・反則通告)を中心に整理しています。事故統計の読み方や、車を運転する側が気をつけたいことを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

▶ 電動キックボード(特定小型原付)の事故統計2026年版:ドライバーが知っておきたい数字と注意点

1. 「特定小型原付」とは:基準と免許・ナンバー・保険

警察庁の「特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について」によると、特定小型原付とは、原動機付自転車のうち、車体の大きさや構造が自転車道での他の車両の通行を妨げるおそれのないものなどで、道路交通法施行規則で定める基準に当てはまるものをいいます。

📊 特定小型原動機付自転車の基準(警察庁)

項目 基準の内容
車体の大きさ 長さ190cm以下、幅60cm以下
原動機 定格出力が0.60kW以下の電動機を用いること
最高速度 時速20kmを超える速度を出すことができないこと
その他の構造 走行中に最高速度の設定を変更できないこと。AT機構がとられていること。最高速度表示灯が備えられていること

📌 補足

警察庁によると、これらの基準を満たさないものは、形状が電動キックボード等であっても特定小型原付にはならず、その車両区分(一般原動機付自転車または自動車)に応じた交通ルールが適用されます。その場合は運転免許が必要で、歩道を走行することもできません。

📊 乗る前に確認したいこと(警察庁)

項目 ルール 罰則(警察庁の記載)
運転免許 運転免許は不要 –
年齢 16歳未満の運転は禁止。運転することとなるおそれのある16歳未満の者への提供も禁止 6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金
ナンバープレート 所有者は、市町村の条例等の定めにより標識(ナンバープレート)を取得し、車体の見やすいところに取り付ける。小型の標識も交付される –
自賠責保険(共済) 加入が義務付けられている –
保安基準 道路運送車両の保安基準に適合するものでなければ運行できない。性能等確認済シール等が付けられているものは基準を満たしている –

なお、警察庁のページには、最高速度表示灯の取付けについて、令和5年7月1日より前に製作された車両には令和6年12月22日までの猶予があったことが記載されています。この猶予期限はすでに過ぎているため、現在は、最高速度表示灯を備えていることが基準となっています。

2. 走る場所と、交差点・信号のルール

📊 主な交通ルールと罰則(警察庁)

ルール 内容(警察庁の記載) 罰則
車道通行の原則 車道と歩道・路側帯の区別があるところでは車道を通行する(自転車道も通行できる)。原則として左側端に寄って通行し、右側を通行してはいけない 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金等
歩道の通行 歩道を通行できるのは特例特定小型原付に限り、「普通自転車等及び歩行者等専用」の道路標識がある場所など、道路標識等で歩道通行が認められているとき。歩道の中央から車道寄りの部分(または普通自転車通行指定部分)を通行し、歩行者優先。歩行者の通行を妨げるときは一時停止 通行方法の違反は2万円以下の罰金または科料(中央から車道寄り以外を通行した場合等)
信号 信号機の信号等に従う。歩行者用信号機に「歩行者・自転車専用」の標示がある場合や、特例特定小型原付が横断歩道を進行して横断する場合は、歩行者用信号機に従う 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金等
右折の方法 信号機等により交通整理が行われている交差点では、青信号で交差点の向こう側まで直進し、止まって右に向きを変え、前方の信号が青になってから進む「二段階右折」。青の矢印信号があっても、進むことはできない 5万円以下の罰金
左折の方法 交差点の手前の側端から30m手前の地点で左側の方向指示器を操作して合図し、できるだけ道路の左端に沿って十分に速度を落として曲がる 5万円以下の罰金
横断歩道・踏切 横断歩道では、歩行者が横断しているとき等は手前で一時停止して道を譲る。踏切では直前(停止線があるときは停止線の直前)で一時停止し、左右の安全を確かめる 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金等
スマートフォン等 車両が停止しているときを除き、スマートフォン等を通話のために使用したり、画面に表示された画像を注視したりしない 1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金等(運転者の遵守事項)

🧭 「二段階右折」の流れ(信号機のある交差点)

1

青信号で、交差点の向こう側まで直進する

信号機等により交通整理が行われている交差点で右折するときは、まず直進して交差点の向こう側まで進みます。

2

その地点で止まり、右に向きを変える

進行方向に対して右に向きを変え、前方の信号を確認します。

3

前方の信号が青になってから進む

前方の信号が青になってから進みます。赤信号や黄信号のときは進めません。

💡 特例特定小型原付とは

特例特定小型原付とは、特定小型原付のうち、(1)歩道等を通行する間、最高速度表示灯を点滅させている、(2)点滅させている間は、車体の構造上、6km/hを超える速度が出せない、(3)側車を付けていない、(4)ブレーキが走行中に容易に操作できる位置にある、(5)鋭い突出部がない、のすべてに当てはまるものです。アクセルの操作で6km/h以下に抑えて走っているだけでは、要件を満たしません。

3. 飲酒・二人乗り・ヘルメット・事故のときの決まり

📊 飲酒・二人乗り・ヘルメットなど(警察庁)

項目 内容(警察庁の記載) 罰則
飲酒運転 お酒を飲んだときは運転してはいけない。飲酒運転をするおそれのある人への車両の提供や、酒類の提供・飲酒のすすめも禁止 5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金等
二人乗り 二人乗りをしてはいけない 5万円以下の罰金等
ヘルメット 運転者には、乗車用ヘルメットの着用の努力義務がある -(努力義務)
車体の点検・整備 基準に適合しない車両を運転してはいけない。乗車前にブレーキの遊びや効き、車輪のガタやゆがみ、タイヤの空気圧、ハンドル、灯火などを自分で点検する 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金等
交通事故のとき 直ちに運転を停止して負傷者を救護し、道路における危険を防止する措置を講じ、直ちに警察官に報告する 10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金等

⚠️ 注意

お酒を飲んだあとは、特定小型原付も運転してはいけません。「少しだけなら」「短い距離なら」という考えは通用しません。シェアリングサービスなど、手軽に借りられる場合でも同じです。

📝 乗る前のチェックリスト

☑️ 16歳以上で、飲酒していない

☑️ ナンバープレート(標識)が車体の見やすい場所に取り付けられ、自賠責保険(共済)に加入している

☑️ 性能等確認済シール等が付いているなど、基準を満たした車両である

☑️ ブレーキの遊び・効き、車輪のガタやゆがみ、タイヤの空気圧、ハンドル、灯火(すべて)に異常がない

☑️ 乗車用ヘルメットを着用する(努力義務)。SGマークなど安全性を示すマークがあるものを選び、あごひもを確実に締める

☑️ 通行は車道の左側端。標識のない歩道には入らない

☑️ スマートフォン等を使いながら運転しない

4. 取締りの制度:反則通告と、違反を繰り返した場合の講習

警察庁によると、特定小型原付の運転者が行った道路交通法の違反は、交通反則通告制度と放置違反金制度の対象とされています。交通反則通告制度は、比較的軽微で、現認でき、明白で、定型的な違反を「反則行為」とし、反則金の納付を通告して、任意に納付すれば公訴が提起されない制度です。反則金の額や、対象になる違反の区分については、警察庁・都道府県警察の案内で確認してください。

また、特定小型原付運転者講習制度があり、都道府県公安委員会は、次の違反行為(特定小型原動機付自転車危険行為)を反復して行った者に、講習の受講を命ずることができます。命令に従わなかった場合は、5万円以下の罰金の対象になります。

  • 信号無視、通行禁止違反、歩行者用道路徐行違反、通行区分違反、歩道徐行等義務違反、路側帯進行方法違反
  • 遮断踏切立入り、優先道路通行車妨害等、交差点優先車妨害、環状交差点通行車妨害等、指定場所一時不停止等
  • 整備不良車両の運転、酒気帯び運転等、共同危険行為等、安全運転義務違反、携帯電話使用等、妨害運転

⚠️ 注意

飲酒や信号無視、通行区分違反などは、それぞれ罰則の対象です。「電動キックボードだから軽い違反で済む」ということはありません。

5. 検挙件数から見る「よくある違反」

警察庁が公表した資料(都道府県警察から警察庁に報告された数値を集計、令和8年2月6日時点)によると、特定小型原付の交通違反の検挙件数は、制度が始まった令和5年7月以降、次のとおりです。

📊 特定小型原付の検挙件数(違反類型別、警察庁の資料より)

違反類型 令和5年(7〜12月) 令和6年 令和7年 累計
通行区分違反 3,440件 24,628件 22,368件 50,436件(59%)
信号無視 2,685件 9,838件 6,529件 19,052件(22%)
一時不停止 463件 2,643件 4,286件 7,392件(9%)
歩行者妨害 172件 928件 650件 1,750件(2%)
その他 370件 3,209件 3,352件 6,931件(8%)
合計 7,130件 41,246件 37,185件 85,561件

※表は横にスクロールできます

累計で最も多いのは、車道の左側端を通行しない、歩道を通行するなどの「通行区分違反」(59%)で、次いで「信号無視」(22%)です。警察庁の資料には、「その他」の中に酒気帯び運転が含まれ、その件数は令和5年(7〜12月)37件、令和6年378件、令和7年415件で、累計830件と示されています。

💡 基本ルールの再確認を

検挙が多い通行区分違反や信号無視は、基本ルールを知っていれば防げる違反です。歩道は原則として走れないこと、信号に従うこと、二段階右折をすること、お酒を飲んだら乗らないこと、の4点を、最低限押さえておきましょう。事故の統計や、自動車ドライバー側の注意点は、別記事で整理しています。

6. レンタル・シェアで借りるときと、車を運転する側の心得

警察庁によると、令和4年の道路交通法の改正(令和4年法律第32号)により、特定小型原付を販売したり貸し渡したりすることを業とする者には、購入者や利用者に対する交通安全教育を行うことが努力義務として課されています。また、官民の協議会(パーソナルモビリティ安全利用官民協議会)が、販売事業者、シェアリング事業者などが取り組むべき交通安全対策を示すガイドラインを作成しています。

📊 立場ごとの心得

立場 心得
借りる(利用者) レンタルやシェアで借りる場合も、走る場所・信号・飲酒・二人乗りなどのルールは、自分で買った場合と同じ。事業者の説明やアプリの案内を確認し、基本ルールを理解してから走り出す
貸し出す事業者 購入者や利用者への交通安全教育の努力義務がある。事業者向けのガイドラインが作成されている
車を運転する人 特定小型原付は、車道の左側端を通行するのが原則。追い越しや右左折、駐停車車両の脇を通るときは、車道を走る他の車両と同じように、周囲の動きに注意する。ドライバー側の注意点や統計は、別記事も参考に

⚠️ 注意

この記事は、警察庁などの公表情報をもとにした一般的な解説です。罰則や反則金の適用は事案ごとに異なります。個別の判断は、警察や公的窓口にご確認ください。

出典(公式)

7. よくある質問

Q. 特定小型原付に乗るのに、運転免許は必要ですか?

A. 必要ありません。ただし、16歳未満の運転は禁止されています。ナンバープレート(標識)の取付けと、自賠責保険(共済)への加入は必要です。

Q. 歩道を走ってもいいですか?

A. 歩道を通行できるのは、要件を満たす特例特定小型原付が、道路標識等で歩道通行が認められている歩道を走る場合に限られます。その場合も歩行者優先です。基準を満たさない電動キックボードは、歩道を走ることはできません。

Q. ヘルメットは必ずかぶる必要がありますか?

A. 警察庁は、運転者にはヘルメット着用の努力義務があるとしています。頭部を守ることが重要とされているため、着用が推奨されています。

Q. お酒を少し飲んだ程度でも、乗ってはいけませんか?

A. お酒を飲んだときは、特定小型原付を運転してはいけません。飲酒運転には、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金等の罰則があります。

まとめ

特定小型原付は、16歳以上なら運転免許なしで乗れますが、車道の左側端を通行する原則、二段階右折、歩道は特例の場合のみ、飲酒運転は重い罰則、といった守るべきルールがあります。警察庁の資料では、令和7年の検挙件数は37,185件で、通行区分違反と信号無視が多くを占めています。基本ルールを知っているだけで防げる違反が多いため、乗る前に一度確認しておきましょう。事故の統計とドライバー側の注意点は、別記事もあわせてご覧ください。

※本記事は、警察庁の公表情報(2026年9月25日に確認)をもとにした一般的な情報提供です。罰則・反則金・制度の運用は変更されることがあります。個別の事案の判断は、警察・都道府県警察などの公的窓口にご確認ください。

アイキャッチ画像: Electric kick scooter in Old Vilnius(リトアニア・ヴィリニュスで撮影) by Андрей Романенко, CC BY-SA 4.0

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