駐車場での接触や、自分でこすってしまった傷。修理代が出ると、「車両保険を使うべきか、自費で直すべきか」で迷う人は多いはずです。保険を使えば当面の負担は減りますが、翌年以降は等級が下がって保険料が上がる場合があります。この記事では、免責金額と等級ダウンを踏まえた損得の考え方を、保険会社の公式情報と、簡単な計算例で整理します。金額は、すべて「例として置いた仮定」であることを明示しています。
📋 この記事の要点
✔ 車両保険で受け取れる保険金は、原則として「損害額−免責金額(自己負担額)」(損保ジャパンのFAQ)
✔ 単独の自損事故で車両保険を使うと、翌年は3等級ダウン。事故有係数が3年つく(損保ジャパンの分類)
✔ 飛び石・いたずら・盗難などで車両保険のみが支払われる事故は、1等級ダウン事故(同上)
✔ 損得は「免責金額+今後の保険料の増加分」と「自費で直す費用」の比較で考えられる
✔ 車両保険の型(一般条件/車対車・限定危険)によって、単独事故や当て逃げで使えるかが変わる
📑 目次
1. 車両保険を使うと何が起こるか
車両保険で修理費が支払われると、その事故は「事故件数」に数えられ、翌年の契約の等級と事故有係数に反映されます。保険から出た金額だけを見て「得をした」と判断せず、その後の保険料の変化まで含めて考える必要があります。
📊 車両保険を使うと起こること(損保ジャパンの公式ページの説明より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険金の額 | 損害額から免責金額(自己負担額)を差し引いた金額が支払われる。損害額が免責金額以下なら、保険金は出ない |
| 翌年の等級 | 事故の種類による。単独の自損事故は3等級ダウン、飛び石・いたずら・盗難などで車両保険のみが支払われる場合は1等級ダウン |
| 事故有係数 | 3等級ダウン事故で3年、1等級ダウン事故で1年が加わる。同じ等級でも、事故有だと割引率が小さい |
| 翌年以降の保険料 | 等級ダウンと事故有係数の両方の影響で、事故がない場合より高くなる |
📌 等級の数字は、別記事で確認できます
等級ごとの割引率(無事故・事故有)は、当サイトの「自動車保険の等級:数字の具体例と考え方」でまとめています。この記事の計算例は、その表(損保ジャパンの例)をもとにしています。
2. 免責金額(自己負担額)のしくみ
車両保険の免責金額は、保険を使うときに契約者が必ず負担する金額です。損保ジャパンの公式FAQによると、設定方法には次の2つがあります。
📊 免責金額の設定方法
| 方式 | 内容 | 選べる金額の例(損保ジャパン) |
|---|---|---|
| 定額方式 | 保険期間中、車両事故の回数にかかわらず、決めた自己負担額を適用 | 0万円、3万円、5万円、7万円、10万円、15万円、20万円 など |
| 増額方式 | 保険期間中、2回目以降の車両事故は、自己負担額を増額 | 1回目0万円→2回目以降10万円 / 1回目3万円→10万円 / 1回目5万円→10万円 |
免責金額があると、修理費が小さいときは保険金がほとんど出ません。次の表は、修理費と免責金額を仮に置いたときの、保険金の計算例です。
📊 修理費と免責金額から見る、保険金の計算例(金額は説明用の仮定。実際の支払いは損害額の査定と約款による)
| 修理費(例) | 免責5万円の場合の保険金 | 免責10万円の場合の保険金 |
|---|---|---|
| 4万円 | 0円(免責金額以下) | 0円(免責金額以下) |
| 7万円 | 2万円 | 0円(免責金額以下) |
| 15万円 | 10万円 | 5万円 |
| 30万円 | 25万円 | 20万円 |
⚠️ 「保険金が少ない」のに等級だけ下がる場合がある
修理費が7万円で免責が5万円なら、保険金は差額の2万円です。この2万円のために等級が下がり、事故有係数が3年つくと、保険料の増加額が保険金を上回る可能性があります。免責金額が大きいほど、その傾向が強くなります。
3. 損得の考え方(簡易計算の例)
保険を使うか、自費で直すかは、次の2つの合計を比べると整理できます。
- 保険を使う場合の負担:免責金額+翌年以降の保険料の増加分
- 自費で直す場合の負担:修理費
翌年以降の保険料の増加分は、等級と割引前の保険料で変わります。当サイトの等級の記事で示した、損保ジャパンの割増引率表を使った簡易計算(割引前の保険料を10万円と仮定)では、3等級ダウン事故の3年間の増加額の目安は次のとおりです。
📊 3等級ダウン事故を想定した、損益分岐の修理費の目安(すべて仮定にもとづく簡易計算)
| 事故前の等級(無事故) | 保険料の増加額(3年間の目安) | 免責5万円のとき、保険を使う方が有利になり始める修理費の目安 |
|---|---|---|
| 20等級 | 約49,000円 | 約99,000円(5万円+4.9万円) |
| 15等級 | 約94,000円 | 約144,000円(5万円+9.4万円) |
| 10等級 | 約102,000円 | 約152,000円(5万円+10.2万円) |
💡 実際のあなたの分岐点は、保険会社の試算で
上の表は、割引前の保険料を10万円と仮定し、他の条件を変えない簡易計算です。実際の分岐点は、ご自身の等級・保険料・免責金額・他の割引によって変わります。他のウェブ記事などで「修理費が○万円以上なら保険を使う方がお得」といった目安を見かけても、あくまで一般論であり、当てはまるとは限りません。
計算例:20等級の人が、修理費20万円・免責5万円の傷で保険を使う場合、保険金は15万円です。自己負担は免責の5万円と、保険料の増加分約4.9万円で、合計約9.9万円。自費なら20万円なので、この仮定では保険を使う方が有利です。一方、修理費8万円なら、保険を使うと約9.9万円、自費は8万円なので、自費の方が負担が小さくなります。
4. 車両保険の「型」と、使えるケース
車両保険には、補償範囲が広い「一般条件」と、範囲を限定して保険料を抑えた「車対車・限定危険」があります。保険会社によって、「エコノミー」「車対車+A」「車両危険限定特約」など、呼び方が異なります(損保ジャパンの公式FAQ)。
📊 車両保険の型と補償の違い(損保ジャパンの公式FAQによる。他社は約款で確認)
| 場面 | 一般条件 | 車対車・限定危険(エコノミー等) |
|---|---|---|
| 相手のいない単独事故(自損) | 補償される | 対象外 |
| 駐車場での当て逃げ | 補償される | 損保ジャパンでは、保険始期が2022年1月1日以降なら補償される。会社・始期により異なるため、約款で要確認 |
📊 場面ごとの等級の扱い(会社・契約によって異なる場合がある)
| 場面の例 | 等級の扱い | 補足 |
|---|---|---|
| 単独の自損事故で、車両保険を使う | 3等級ダウン | 損保ジャパンでは、ノーカウント事故・1等級ダウン事故以外は3等級ダウン |
| 当て逃げで、車両保険を使う | 3等級ダウンとされる例がある(おとなの自動車保険の解説) | 会社によって扱いが異なる可能性。確認が必要 |
| 飛び石・いたずら・盗難で、車両保険のみが支払われる | 1等級ダウン | 3等級ダウンより、等級・事故有係数の影響は小さい |
| 保険を使わず、自費で修理 | 等級は下がらない | 他に事故がなければ、翌年は1等級上がる |
⚠️ エコノミー型の契約だと、そもそも使えない場合がある
駐車場での接触のように、相手が分からない傷を保険で直したいときは、契約している型によっては使えません。保険証券で、自分の契約の型を確認しておきましょう。
5. 判断の進め方とチェックリスト
🧭 車の傷で迷ったときの進め方
修理の見積もりを取る
傷の程度によって、必要な修理が変わります。可能なら、複数の修理工場で見積もりを取ります。
契約内容を確認する
車両保険の型(一般条件か限定型か)、免責金額の設定方法、保険期間の始期を保険証券で確認します。
保険会社に問い合わせる
「今回の傷が保険の対象か」「使った場合の等級・事故有係数」を確認します。
翌年以降の保険料の試算を依頼する
保険を使った場合と、使わない場合の保険料の差を、保険会社や代理店に出してもらいます。
「免責+保険料増加」と「修理費」を比べる
前の節の考え方で、負担の大きさを比べます。
📝 保険を使う前に確認したいこと
☑️ 修理見積もりの金額(内訳と、修理方法の違いを含めて)を確認した
☑️ 契約している車両保険の型(一般条件か、車対車・限定危険か)を確認した
☑️ 免責金額(定額方式か増額方式か)と、金額を確認した
☑️ 今回の事故が、3等級ダウン・1等級ダウン・ノーカウントのどれに当たるかを確認した
☑️ 保険を使った場合の、翌年以降の保険料の試算をしてもらった
☑️ 自費で直した場合の費用と、比べた
6. よくある質問
📚 あわせて読みたい
▶ 自動車保険の「等級」とは?1〜20等級と事故有係数の仕組み
▶ 自動車保険の「等級」とは?保険料が決まる仕組みをわかりやすく解説
まとめ
車の傷で車両保険を使うかどうかは、修理費だけでなく、免責金額と、等級ダウン・事故有係数による翌年以降の保険料の増加まで含めて判断することが大切です。この記事の簡易計算では、20等級・免責5万円のとき、修理費がおよそ10万円を超えると保険を使う方が有利になり始めますが、これは仮定にもとづく目安です。実際の判断は、保険会社に試算してもらい、契約の型・免責金額も確認したうえで行いましょう。
※本記事は損保ジャパンなど各社の公式ページの内容をもとにした一般的な情報で、保険契約に関する個別の助言ではありません(2026年9月25日確認)。等級の扱い・免責金額・補償範囲は、保険会社・契約内容・始期によって異なります。金額の例は仮定にもとづく簡易計算です。個別の判断は、ご契約の保険会社・代理店にご確認ください。
アイキャッチ画像: Car damage on fender by Nenad Stojković, CC BY 2.0


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