高速道路で故障したとき、三角表示板(法令上は「停止表示器材」)は、車の何m後ろに置けばよいのでしょうか。「50m以上」とよく言われますが、これは法令に書かれた数字ではありません。
この記事では、e-Gov法令検索の道路交通法・同施行令・同施行規則と、JAF・NEXCO・政府広報オンライン(警察庁取材協力)の公開情報、警視庁の一覧表をもとに、「距離」の出どころ、JAFの実測データ、置けないときの考え方を整理します。YouTubeで反応のよかったショート動画の内容を、条文と数字つきで補った記事です。義務の全体像や器材の種類の違いは、三角表示板、高速道路での使用義務と正しい使い方に、非常電話と#9910は高速の非常電話は何mおき?にまとめています。
📋 この記事の要点
✔ 施行令第27条の6は、停止表示器材を「後方から進行してくる自動車の運転者が見やすい位置」に置くと定めるだけで、距離の数字はない
✔ 「50m以上」はJAF Mate Online(NEXCO中日本への取材記事)が示す目安。NEXCO中日本・西日本の案内ページと、警察庁取材協力の政府広報オンラインには、距離の記載が見つからなかった
✔ 数字が出てくるのは器材の基準。三角の停止表示板は、夜間は200mの距離から前照灯の反射光を、昼間は200mの距離から蛍光を、容易に確認できること(施行規則第9条の17・18)
✔ JAFの実測(夜間・時速80km・3名・2012年)では、後方50mに表示板があると停止車両の214〜443m手前で視認、ないと68〜222m手前
✔ 置けない・危険なとき: 条文に例外の定めは確認できず、NEXCOは「無理のない範囲で」と案内。トンネルはできるだけ非常駐車帯まで自走。置かないと故障車両表示義務違反(1点・普通車6,000円)
🎬 動画で見る(ショート)
この記事の元になった、かーぎーくんのショート動画です。動画では触れられなかった詳しい内容や条文・公式情報は、このあと記事で確認できます。
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📑 目次
法令に「何m」とは書かれていない
高速自動車国道や自動車専用道路で故障して動けなくなったとき、停止していることを表示する義務は、道路交通法第75条の11にあります。
📜 道路交通法 第75条の11第1項(条文の要約)
自動車の運転者は、故障その他の理由により、本線車道・これに接する加速車線・減速車線・登坂車線、またはこれらに接する路肩・路側帯において自動車を運転することができなくなったときは、政令で定めるところにより、故障その他の理由により停止しているものであることを表示しなければならない。(第2項は、本線車道等以外の場所へ移動するため必要な措置を講じる義務)
「政令で定めるところ」が、道路交通法施行令第27条の6です。ここに、置く場所が書かれています。
📜 道路交通法施行令 第27条の6(条文の要約)
表示は、次の区分に従い、停止表示器材を、後方から進行してくる自動車の運転者が見やすい位置に置いて行う。(1)夜間=内閣府令の基準に適合する夜間用停止表示器材 (2)夜間以外=昼間用停止表示器材(停止場所がトンネルの中その他視界が200m以下の場所なら、夜間用)
つまり、法令が定めているのは「見やすい位置に置くこと」で、何メートル後ろ、という数字はありません。危険なときは置かなくてよい、といった例外の文言も、今回確認した条文には見当たりませんでした。

数字が出てくるのは「器材の基準」
距離の数字が出てくるのは、器材そのものの基準です。道路交通法施行規則の第9条の17(夜間用)と第9条の18(昼間用)が、次のように定めています。200mは「置く距離」ではなく、器材が備えるべき見えやすさの基準です。
📊 停止表示器材の基準(施行規則第9条の17・18)
| 器材 | 夜間用 | 昼間用 |
|---|---|---|
| 停止表示板(三角表示板) | 中空の正立正三角形の反射部などを有し、夜間、200mの距離から前照灯で照射したとき、反射光を容易に確認できる。反射光は赤色。路面上に垂直に設置できる | 中空の正立正三角形の蛍光反射部などを有し、昼間、200mの距離から蛍光を容易に確認できる。蛍光は赤色または橙色。路面上に垂直に設置できる |
| 停止表示灯(紫色の点滅灯) | 点滅式。路面上に置いた状態で長さ17cm・幅17cm・高さ15cm以内。夜間、200mの距離から点灯を容易に確認できる。灯光は紫色 | 大きさ・点滅式・灯光の色は夜間用と同じ。昼間、200mの距離から点灯を容易に確認できる |
発炎筒は、この基準に含まれていません。JAFも、発炎筒について「法令では用途についての規定はありません」「停止表示器材が必須」と案内しています。
「50m以上」はどこから来た数字か
それでは、よく聞く「50m以上」はどこから来た数字でしょうか。今回確認できた公式・準公的な資料を並べると、次のとおりです(2026年10月に取得して確認)。
📊 資料ごとの「距離」の書き方
| 資料 | 書かれていること |
|---|---|
| 道路交通法・施行令・施行規則 | 「後方から進行してくる自動車の運転者が見やすい位置」。距離の数字なし |
| JAF Mate Online(2025年2月7日。協力: NEXCO中日本) | 「停止表示器材は、クルマの50m以上後方に、無理のない範囲で確実に設置します」 |
| JAF Mate Online(2025年4月7日。協力: NEXCO東日本・警察庁・内閣府) | 「設置の目安としては、停止車両の後方50m以上離れた位置が望ましいとされています」 |
| JAFユーザーテスト(2012年) | 停止車両の後方50mに表示板を置いた場合と置かない場合を比べて検証(第3章) |
| NEXCO中日本「事故・故障が発生!」 | 「車の後方に無理のない範囲で設置」。距離の記載なし |
| NEXCO西日本「緊急時の対処法」 | 「車の後方に、無理のない範囲で設置」(地震時は「車両後方の見やすい位置」)。距離の記載なし |
| NEXCO東日本「ドラぷら」 | 停止表示器材の設置を案内。距離の記載なし |
| 政府広報オンライン(2025年10月17日。取材協力: 警察庁) | 「停車した車の後方で、後続車から見やすい場所に」設置。距離の記載なし |
整理すると、「50m以上」と書いているのは、今回確認した範囲ではJAF(JAF Mate Online)で、NEXCO各社の案内ページや警察庁取材協力の記事には数字がありませんでした。JAF Mate Onlineの2025年2月7日の記事には「無理のない範囲で確実に」が付いています(4月7日の記事は「50m以上離れた位置が望ましいとされています」)。NEXCOも「無理のない範囲で」と案内しています。なお「以上」と書かれているとおり、下限の目安で、上限は示されていません。50mという数字の根拠(算出方法)を説明した資料は、今回は見つかりませんでした。
JAFの実測: 表示板があると何m手前で気づけるか
後方50mに表示板を置いた場合を実測したのが、JAFのユーザーテスト「夜間の停止表示板の効果」です(2012年3月実施)。条件と結果は次のとおりです。
📊 JAFユーザーテストの条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施日・場所 | 2012年3月15日。開通前の高速道路(協力: 中日本高速道路) |
| 方法 | 路肩に停止車両を置き、車両の後方50mに停止表示板を置いた場合と置かない場合で比較 |
| 計測 | 時速80kmで走行車線を走るモニターが、停止表示板または停止車両のどちらかを視認できた位置(停止車両からの距離)を計測 |
| モニター | 年齢・性別の異なる3名(A・B・C) |

A・B・Cで比べると、Aは68m→214m、Bは155m→408m、Cは222m→443mと、表示板があるほうが遠くから視認できていました。
📊 距離を時間に直すと(時速80km=秒速約22.2mで一定と仮定した筆者計算)
| 表示板あり | 表示板なし | |
|---|---|---|
| モニターA | 214m(約9.6秒) | 68m(約3.1秒) |
| モニターB | 408m(約18.4秒) | 155m(約7.0秒) |
| モニターC | 443m(約19.9秒) | 222m(約10.0秒) |
置けないときの考え方(歩き方・橋・トンネル)

設置のために歩くとき
NEXCO中日本は、故障時の対応の最初に「絶対に歩き回らない」を挙げ、高速道路上で「人」がはねられる重大事故が多発していると注意しています。一方で、「発炎筒・停止表示器材は車の後方に無理のない範囲で設置」とも案内し、設置するときは「車線から離れ、ガードレールなどの防護柵より外側の安全な場所を通って移動」するよう求めています。NEXCO西日本は「ガードレールの外側や中央分離帯に沿って後方へ移動」としています。
JAF Mate Onlineは、同乗者をガードレールの外側などへ避難させたうえで器材を置く手順を示し、発炎筒が燃えている約5分の間に設置と避難を終えるよう案内しています。
橋・高架・路肩が狭い場所
JAFは、橋やトンネルなど路肩が狭い、または路肩がない場所では、可能な限り広い所まで自走するよう案内しています。道路交通法第75条の8は、高速自動車国道等での停車・駐車を原則禁止しつつ、故障などでやむを得ない場合に、停車のため十分な幅員がある路肩・路側帯に停車することを例外としています。橋や高架で外側へ避難できないときは、追突に巻き込まれないよう車より後方に避難する、というのがJAFの案内です。
トンネル内
NEXCO中日本は「トンネル内は路肩が狭いため、できるだけトンネルの外に出るか非常駐車帯に入る努力を」と案内しています。やむを得ず車線上に停車した場合は、停止表示板を置いて、車線上に止まっていることが後続車にわかるようにします。JAFは、トンネル内には原則として約750mごとに非常駐車帯があるとし(2022年8月時点の記載)、「停止表示器材を設置する作業そのものが大きな危険をともなう」と注意しています。また、発炎筒は視界を悪くするおそれがあるため使えない場合があり、赤色LEDの非常信号灯なら使えるとしています。
なお、施行令第27条の6は、停止した場所がトンネルの中などで視界が200m以下の場合、昼間でも夜間用の基準に適合する器材を使うと定めています。
条文にはどう書いてあるか
第75条の11と施行令第27条の6には、設置が危険な場合に置かなくてよいとする例外の定めは、確認できませんでした。NEXCOの「無理のない範囲で」は案内であり、法的にどう扱われるかは、この記事では判断できません。迷うときは、警察の窓口などで確認してください。
なお、国家公安委員会告示の「交通の方法に関する教則」(警察庁掲載、法令そのものではありません)には、歩行が困難で自動車の後方に置けない場合、停止表示灯は自動車の側方の、後方から見やすい場所に置くこともできる、との記載があります。この教則にも、距離の数字はありません。
停止表示灯という選択肢
紫色の点滅灯である停止表示灯も、施行規則が定める停止表示器材です。JAFは、シガーソケットから電源を取るタイプの停止表示灯について「被視認性は高いが、バッテリー上がりの際には使えません」と書いています。停止表示器材は車に備え付けられていない場合があるため、販売店などで購入して備えるよう案内しています。
夜間の灯火と、置かなかったときの点数・反則金
夜間については、施行令第18条第2項が、自動車(大型・普通自動二輪車、小型特殊自動車を除く)が、幅員5.5m以上の道路に停車・駐車しているときは、非常点滅表示灯(ハザードランプ)または尾灯をつけなければならないと定めています。ただし書きで、停止表示器材や警告反射板を置いた場合などを除いていますが、その場合は「高速自動車国道及び自動車専用道路以外の道路」に限られます。つまり高速道路では、停止表示器材を置いたからといって、夜間のハザードランプ(または尾灯)の点灯義務がなくなるわけではありません(条文の読み。保安基準に適合する駐車灯をつけている場合などは別です。JAFユーザーテストのまとめも、夜間や視界の悪い場合の点灯が義務付けられていると記載)。
停止表示器材で表示しなかった場合の点数と反則金は、次のとおりです。
📊 故障車両表示義務違反の点数と反則金(警視庁の一覧表、2026年4月1日更新)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 違反の名称・根拠 | 故障車両表示義務違反(道路交通法第75条の11第1項) |
| 違反点数 | 1点 |
| 反則金 | 普通車6,000円(普通自動車・軽自動車・ミニカー)/二輪車6,000円/大型車7,000円/小型特殊車5,000円 |
| 罰則(参考) | 第1項違反は5万円以下の罰金の対象(第120条第1項第13号)。反則金の制度の対象にもなっている |
なお、JAF Mate Onlineは、停止表示器材を車に積んでいないこと自体は違反にならず、故障して停止したときに表示しないと違反になる、と整理しています。
よくある質問
まとめ
三角表示板(停止表示器材)の「距離」は3つに分けて考えると整理できます。(1)法令は「後方から進行してくる自動車の運転者が見やすい位置」で、距離の数字はありません(施行令第27条の6)。(2)目安の「50m以上」は、今回確認した範囲ではJAFが示す数字で、「無理のない範囲で」が付いています。JAFの実測では、後方50mに表示板があると、停止車両の214〜443m手前で視認されました(夜間・3名・2012年)。(3)器材の基準の200mは、器材が200mの距離から確認できる性能のことです。
置けない・危険なときについて、条文に例外の定めは確認できず、NEXCOは「無理のない範囲で」、トンネルはできるだけ非常駐車帯まで自走、と案内しています。置かないと故障車両表示義務違反(1点・普通車6,000円)で、夜間は表示のほかに、ハザードランプまたは尾灯の点灯も定められています。まず安全な場所へ避難することを最優先にしてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令・反則金・基準は改正されることがあるため、最新の内容や個別の判断は、警察庁・各都道府県警察・道路管理者など公的機関の公式情報でご確認ください(2026年10月時点)。JAFのユーザーテストは2012年、トンネル内の故障に関するJAFの記載は2022年8月時点のものです。
参考(一次情報・公的機関・JAF): e-Gov法令検索 道路交通法(第75条の8・第75条の11・第120条)/同 道路交通法施行令(第18条・第27条の6・別表第二・別表第六)/同 道路交通法施行規則(第9条の17・第9条の18)/警視庁 反則行為の種別及び反則金一覧表/警視庁 交通違反の点数一覧表/JAF Mate Online 高速道路を走行中に突然のトラブルで走行不能になったら、どうする?/JAF Mate Online 後続車に「危険」を知らせるにはどうする?/JAFユーザーテスト 夜間の停止表示板の効果/JAF 高速道路で事故や故障が発生したらどうすればいいのですか?/JAF 高速道路のトンネル内で故障したらどうすればいい?/NEXCO中日本 事故・故障が発生!/NEXCO中日本 トンネル内でのアクシデントでは、どうすればいいのですか?/NEXCO西日本 もしもの時は?緊急時の対処法/NEXCO東日本 ドラぷら 高速道路で事故を起こしてしまったら/政府広報オンライン 高速道路の安全ドライブ 3つのポイント
図はすべて自作のイラストです(AI生成なし)。JAFユーザーテストの図は、公表されている数値をもとに作り直したものです。


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