EV・HVの車両接近通報装置(AVAS)とは

電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)が低速で近づいてくるとき、モーター音とは別に「ヒュイーン」というような電子音が聞こえることがあります。これは車両接近通報装置(AVAS)と呼ばれる装置で、日本では道路運送車両の保安基準で装備が定められています。この記事では、対象となる車、義務化の時期、作動する速度域の考え方、海外(EU・米国)との比較を、国土交通省・EU・米国の一次情報で整理しました。

📋 この記事の要点

✔ 日本では、電力で作動する原動機を持つ自動車に車両接近通報装置の装備が求められる(保安基準第43条の7)。ただし、走行中に内燃機関が常に作動する車は除かれる

✔ 適用時期は、新型車が2018年3月8日、継続生産車が2020年10月8日(国土交通省の2016年10月の発表)

✔ 性能要件は国連規則第138号に沿ったもの。EUの規則には「発進から約20km/hまで、および後退時」に自動で音を出す旨がある

✔ 2016年の国土交通省の発表では、装置の作動を停止できる機能は持たないものとされた

✔ 米国は2018年2月に最終規則を公表し、全対象車への適用は2020年9月1日。音が必要な速度は約30km/hまで

動画でも解説しています。(YouTube「くるまのかーぎーくん」)

1. 車両接近通報装置(AVAS)とは何か

AVASは、Acoustic Vehicle Alerting Systemの略です。エンジン音がないか小さい電気自動車やハイブリッド車が、モーターで静かに走っているときに、歩行者や自転車などへ車の接近を音で知らせるための装置です。国土交通省は2016年10月7日の発表で、この装置を義務付ける理由として、国連の作業部会(WP29)で車両接近通報装置に関する国際基準が新たに採択されたことを挙げています。

📊 AVASの位置づけ(確認日: 2026年9月25日)

項目 内容 出典
目的 歩行者等に、自動車の接近を音で知らせる 国土交通省 報道発表(2016年10月7日)
国際基準 国連規則(協定規則)第138号「静音性車両」。WP29で採択された 国土交通省 報道発表(2016年10月7日)
日本の条文 道路運送車両の保安基準 第43条の7(車両接近通報装置)。機能・性能は告示で定める e-Gov法令検索
告示での扱い 保安基準の細目を定める告示 第67条の3は、機能・性能を国連規則第138号の規定に沿うものとして定める 国土交通省 細目告示 第67条の3

📌 補足

モーター走行時の静かさから、歩行者が車の接近に気づきにくい点が装置導入の背景です。日本国内の事故件数や、この装置による事故減少の効果を示す統計は、今回確認した公的資料の範囲では見つかりませんでした。そのため、この記事では数字を載せていません。

2. 日本での対象車と義務化の時期

保安基準第43条の7は、電力により作動する原動機を有する自動車に、車両接近通報装置を備えることを求めています。対象から外れる車と、時期は次のとおりです。

📊 国内の適用範囲と時期(確認日: 2026年9月25日)

項目 内容 出典
対象 電力により作動する原動機を有する自動車。電気自動車、プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車などが該当する 保安基準 第43条の7
対象外(車種) 二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、被牽引自動車 保安基準 第43条の7
対象外(走行方式) 走行中に内燃機関が常に作動する自動車 保安基準 第43条の7 ただし書き
適用時期(新型車) 2018年3月8日 国土交通省 報道発表(2016年10月7日)
適用時期(継続生産車) 2020年10月8日 国土交通省 報道発表(2016年10月7日)
作動の停止 当該装置の作動を停止させることができる機能を有さないものとする(2016年の発表時点) 国土交通省 報道発表(2016年10月7日)

💡 古いハイブリッド車の扱いは、車種ごとに確認を

適用時期は「新型車」と「継続生産車」の2段階で、日付は約2年半離れています。義務化の日より前に製造された車の装備の有無や、後付けを求める規定があるかは、今回確認した資料では見つかりませんでした。気になる場合は、取扱説明書やメーカーの販売店で確認してください。

3. どんな条件で音が出るのか(速度域と音の要件)

日本の告示は国連規則第138号に沿う形で定められているため、具体的な作動速度や音の性質は、同じ内容を規定するEUの規則が参考になります。EU規則(No 540/2014)の附属書VIIIには、AVASについて次のように書かれています。なお、国連規則に基づく日本の細目告示の本文は今回全文を確認できておらず、ここではEU規則の記述を紹介します。

📊 EU規則 No 540/2014 附属書VIIIの概要(確認日: 2026年9月25日)

項目 EU規則の記述(概要)
音を出す速度域 発進から約20km/hまでの範囲、および後退時に、自動で音を発生させる
内燃機関が動いているとき 定められた速度域でエンジンが作動している車は、AVASは音を出さない
後退警報装置がある車 後退音を発する装置がある車は、AVASが後退時に音を出さなくてもよい
音の種類 連続した音で、車の動きが分かるもの。エンジン車の音に似たものが望ましいとされる
音の変化 車速に合わせて音量や特性が自動的に変わるなど、車の挙動が分かるものとする
音の大きさ 同じ条件で走るエンジン車(M1)の音の大きさを超えないものとする

⚠️ 「約20km/h」は目安の表現です

EU規則の原文も「approximately 20 km/h」(約20km/h)という書き方です。お使いの車が実際に何km/hまで音を出すかは、車種の取扱説明書やメーカーの説明で確認してください。

速度が上がるとタイヤの走行音や風切り音が大きくなるため、装置の音が必要な範囲は低速域に限られます。ただし、この理由づけを国土交通省が明記した資料は今回確認できていません。上の表の「速度域」だけが、確認できた事実です。

4. 海外の動き:EUと米国

📊 日本・EU・米国の規則の比較(確認日: 2026年9月25日)

地域 規則 時期 出典
日本 保安基準 第43条の7、細目告示 第67条の3(国連規則第138号に沿う) 新型車2018年3月8日、継続生産車2020年10月8日 国土交通省
EU Regulation (EU) No 540/2014 第8条 新型式のHV・EVは2019年7月1日まで、全ての新車は2021年7月1日までに搭載 EUR-Lex
米国 FMVSS No.141(2018年2月26日公表の最終規則) 2018年4月27日発効。2019年9月1日に50%、2020年9月1日に全対象車 Federal Register / govinfo

※表は横にスクロールできます

米国のFMVSS No.141は、電気・ハイブリッドの乗用車、多目的車、軽量トラック、バス(車両総重量10,000ポンド以下)や低速車を対象としています。約30km/h(約18.6mph)までの速度域で、停車中(駐車中を除く)、後退、前進時に最低限の音を出すことを求める内容です。

📌 補足

この記事の元の版には、米国について「NHTSAが2022年に発表した」という趣旨の記述がありましたが、最終規則の公表は2018年2月26日です。2022年の日付は、今回確認した一次情報の中に見つからなかったため削除しました。

5. 音色や音量は車ごとに違う?後退時の音との違い

上のEU規則の条文は「連続した音」「車の挙動が分かる」「エンジン車を超えない」といった要件を定めており、特定の音色を一つに決めるものではありません。実際にどんな音が出るかは、車種ごとの設計によります。個別の車種の音の仕様は、取扱説明書やメーカーの案内で確認できます。

📊 AVAS・後退警報・警音器の違い

音の種類 役割 補足
AVAS(車両接近通報) 低速で走行中、歩行者等へ車の接近を知らせる 保安基準第43条の7で定められる装置
後退警報(バックブザーなど) 後退することを周囲に知らせる EU規則では、後退音を出す装置がある車はAVASが後退時に鳴らなくてよいとされる
警音器(クラクション) 他の交通に警告する 保安基準第43条で別に定められる。AVASとは別の装置

📝 自分の車がAVAS対象かを確認する手順

☑️ 車がEV・PHEV・HVのどれか確認した

☑️ 走行中にエンジンが常に作動する方式ではないか確認した

☑️ 取扱説明書に「車両接近通報装置」「接近通報」の記載があるか確認した

☑️ 低速で走る音が周囲に聞こえるか(車外で音を確かめる)を、安全な場所で試した

☑️ 音が出ない、いつもと違うなどの異変があれば、ディーラーに相談した

6. よくある質問

Q. AVASの音は、運転者が止めることはできますか?

A. 国土交通省の2016年10月の発表では、車両接近通報装置は、作動を停止させることができる機能を有さないものとされています。ただし、その後の基準の改正で扱いが変わっていないかは今回確認できていません。お使いの車の仕様は、取扱説明書で確認してください。

Q. ガソリン車やディーゼル車にも、AVASは付いていますか?

A. 保安基準第43条の7は、電力により作動する原動機を有する自動車が対象で、走行中に内燃機関が常に作動する自動車は除かれます。エンジンだけで走る車は、この条文の対象外です。

Q. AVASが鳴るのは何km/hまでですか?

A. EU規則には、発進から約20km/hまで、および後退時に音を出すと書かれています。日本の細目告示は国連規則第138号に沿う形で定められていますが、個々の車種が実際に鳴らす速度は、車種によって異なる可能性があります。取扱説明書でご確認ください。

Q. 古いハイブリッド車には、AVASは付いていませんか?

A. 適用時期は、新型車が2018年3月8日、継続生産車が2020年10月8日です。この日より前に製造された車の装備の有無は、今回確認した資料では車種ごとの一覧が見つかりません。取扱説明書やメーカーの販売店で確認してください。

まとめ

車両接近通報装置(AVAS)は、モーター走行で静かな電動車が歩行者へ接近を知らせるための装置で、日本では保安基準第43条の7で、電力で作動する原動機を持つ車に求められています。適用時期は新型車が2018年3月8日、継続生産車が2020年10月8日です。EU規則では、発進から約20km/hまで、および後退時に音を出す旨が書かれています。音色は車種ごとに異なるため、自分の車の仕様は取扱説明書で確認しましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。

アイキャッチ画像: Nissan Leaf taxi in Japan by MIKI Yoshihito, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

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