台風や豪雨の中の運転では、それまで何ともなかった道で、急に視界が悪くなったり、水に入って走れなくなったり、突風でハンドルをとられたりと、危険が短時間で訪れます。この記事では、JAFの実験(ユーザーテスト)と、気象庁の「雨の強さ」「風の強さ」の目安という、確認できる資料をもとに、ヒヤリハットが起きやすい場面と対策を整理しました(2026年9月25日確認)。ドライブレコーダーは、映像の見直しに役立てる記録手段として、最後の節で扱います。
📋 この記事の要点
✔ 気象庁の目安では、1時間雨量30〜50mmで高速走行時にハイドロプレーニング現象、50〜80mmで水しぶきによる視界不良と「車の運転は危険」
✔ JAFの豪雨テスト(時速40km)では、1時間80mmで、前方の停止車両が無灯火の夜間(自車は下向きライト)は約24mまで接近。1時間30mmの歩行者のテストでは、夜間に黒い服の歩行者を発見して停止できたのは約18m手前で、安全ベスト着用の61m手前と大きな差が出た
✔ JAFのテストでは、1時間80mmの豪雨で、時速40kmのとき衝突被害軽減ブレーキが作動せず、障害物に衝突した。機能を過信しないことが大切
✔ JAFの冠水路走行テストでは、水深60cm・時速10kmで、セダン(2,000cc)は31m地点でエンジンが停止。同じ水深でも速度が高いと、巻き上げる水でエンジンに水が入りやすい
✔ 気象庁の風の表では、平均風速20〜25m/sで「通常の速度で運転するのが困難」。JAFはトンネルの出口付近の突風によるハンドルへの影響に注意している
1. 台風・豪雨で、危険が急に高まる目安
「まだ大丈夫」と感じているうちに、危険が急に高まることがあります。気象庁は、雨の強さと風の強さについて、車の運転への影響も含めた目安を公表しています。
📊 気象庁「雨の強さと降り方」「風の強さと吹き方」の記載
| 現象 | 目安(気象庁) | 運転への影響(気象庁の記載) |
|---|---|---|
| 1時間雨量 20〜30mm(強い雨) | どしゃ降り | ワイパーを速くしても見づらい |
| 1時間雨量 30〜50mm(激しい雨) | バケツをひっくり返したように降る。道路が川のようになる | 高速走行時、車輪と路面の間に水膜が生じ、ブレーキが効かなくなる(ハイドロプレーニング現象) |
| 1時間雨量 50〜80mm(非常に激しい雨) | 滝のように降る。傘は全く役に立たなくなる | 水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる。車の運転は危険 |
| 平均風速 15〜20m/s(強い風) | 風に向かって歩けなくなり、転倒する人も出る | 高速運転中は、横風に流される感覚が大きくなる |
| 平均風速 20〜30m/s(非常に強い風) | 何かにつかまっていないと立っていられない。飛来物によって負傷するおそれがある。看板が落下・飛散する | 通常の速度で運転するのが困難になる |
| 平均風速 30m/s以上(猛烈な風) | 屋外での行動は極めて危険 | 走行中のトラックが横転する |
📌 数値の読み方
気象庁の表で、平均風速は10分間の平均、瞬間風速は3秒間の平均です。瞬間風速は、平均風速の1.5倍程度になることが多い(大気の状態が不安定な場合などは3倍以上)と注記されています。また、風速は地形や周りの建物の影響を受け、近くの観測所の値と大きく異なることがあります。
2. 視界不良と、追突・見落としの危険(JAFの豪雨テスト)
JAFは2018年5月30日に、日本自動車研究所の特異環境試験場(茨城県つくば市)で、豪雨時の視認性を検証しました。時速40kmで走行し、前方の停止車両や歩行者が見えた時点で急ブレーキを踏み、止まれた位置を計測したテストです。
📊 JAFユーザーテスト「豪雨のとき、前方のクルマや歩行者はどう見える?」「衝突被害軽減ブレーキ 豪雨で検証」
| テスト | 条件 | 結果(JAF) |
|---|---|---|
| 前方の停止車両(1時間雨量80mm) | 停止車両の状態を「無灯火」「テールランプ点灯」「リアフォグランプ点灯」「ブレーキランプ点灯」に変えて比較 | テールランプ・リアフォグランプ・ブレーキランプのいずれかが点灯していれば、昼夜問わず50m以上手前で止まれた。無灯火の夜間(自車のヘッドライトは下向き)では、約24mまで接近した |
| 前方の停止車両(1時間雨量30mm) | 同上 | 見えにくさの傾向は、80mmと同じ。昼間より夜間、特に自車のヘッドライトが下向きだと、発見して止まれるまでに大きな差ができた |
| 前方の歩行者(1時間雨量30mm、マネキン) | 白い服、黒い服、反射(安全)ベスト着用で比較 | 夜間(自車のヘッドライトは下向き)では、安全ベスト着用は61m手前で止まれたのに対し、黒い服を発見して停止できたのは約18m手前だった |
| 衝突被害軽減ブレーキ(1時間雨量80mm) | 時速30kmと40kmで、障害物への作動を確認(雨のない状態と比較) | 雨のない状態では両速度とも障害物の手前で停止。1時間80mmでは、時速30kmでは停止できたが、時速40kmでは障害物を一瞬検知したものの作動せず、衝突した。車種・検知システム・雨量・速度などによって結果は異なる |
💡 JAFが示している対策
豪雨などの悪天候時は、必ずヘッドライトを点灯し、速度を抑えて走る。停止中は、ブレーキを踏んでブレーキランプを点灯させて停止する。夜間は、上向きのヘッドライトのほうが、前方の停止車両を発見しやすい傾向があった(交通状況に応じて使い分ける)。衝突被害軽減ブレーキは、悪天候時は正常に作動しないこともあるため、機能を過信しない。
3. 冠水路で、突然走れなくなる危険(JAFの冠水路走行テスト)
冠水路では、「それまで普通に走っていたのに、急に車が止まる」ことが起こりえます。JAFは2010年4月8日に、アンダーパスの冠水を想定したテストを行いました。
📊 JAF ユーザーテスト「冠水路走行テスト」(2010年)
| 車種 | 水深・速度 | 結果(JAF) |
|---|---|---|
| セダン(トヨタ・マークⅡ 2,000cc) | 30cm・時速10km | 走行できた。フロントバンパーの上部に水が接する状態で、グリルから直接水が入ることはなかった |
| セダン | 30cm・時速30km | 走行できたが、巻き上げる水の量が多くなり、エンジンルームに多量の水が入った |
| セダン | 60cm・時速10km | フロントガラスの下端まで水をかぶった。すぐには止まらなかったが、登りのスロープに差し掛かった31m地点でエンジンが停止した |
| SUV(日産・エクストレイル 2,000cc) | 60cm・時速10km | 走りきることができた(エンジン位置が高い) |
| SUV | 60cm・時速30km | エンジン下部からも大量の水が入り込み、わずか10mでエンジンが停止。浸水時の衝撃も大きく、車体が一瞬浮き上がってハンドルが取られた |
- JAFは、エンジンが停止した原因を、エアインテーク(空気の取り入れ口)を通してエンジン内部に水が入ったためと考えられる、としています
- 同じ水深でも、速度が高くなると巻き上げる水の量が多くなり、エンジンに水が入りやすい
- 実際の冠水路では、水深も水の中の様子も分からないため、安易に進入せず、迂回することを考える
- 国土交通省は、水深が床面を超えると、電気装置の故障やエンジンの停止のおそれがあり、水深がドアの下端にかかると、内側からドアを開けることが困難になるとしている
⚠️ 「走れた」テスト結果を、進入してよい根拠にしない
JAFのテストは、特定の車種・条件で行われたものです。実際の冠水路は、水が濁って水深が分からず、マンホールが開いていたり、見えない側溝があったりします。JAFも、迂回するよう案内しています。
4. 強風・突風で、車が横に流される危険
強風時は、走行中だけでなく、駐車場で車から降りるときにも危険があります。JAFの案内と実験、気象庁の目安で確認できる内容を整理します。
📊 強風時の危険に関する確認済みの情報
| 場面 | 確認できた内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 走行中の横風 | 平均風速15〜20m/sで、高速運転中は横風に流される感覚が大きくなる。20〜30m/sでは、通常の速度で運転するのが困難。30m/s以上では、走行中のトラックが横転する | 気象庁「風の強さと吹き方」 |
| トンネルの出口付近 | ゲリラ豪雨は積乱雲が原因で、激しい突風が発生することがあるため、特にトンネルの出口付近では、風によってハンドルをとられないように注意が必要 | JAFクルマ何でも質問箱(高速道路上で大雨に遭遇した場合の注意点) |
| 落下物・飛散物 | 平均風速20〜30m/sで、看板が落下・飛散し、道路標識が傾く。屋根瓦・屋根葺材が飛散するものもある | 気象庁「風の強さと吹き方」 |
| 駐車場で降りるとき | 2017年6月6日、JAFが送風機で再現した実験では、風速20m/sで子ども2人はドアを押さえられなかった。大人は20m/sでは押さえられたが、30m/sでは男性が押さえきれず、40m/sでは2人とも押さえられなかった。風速が上がるほど、隣の車のドアへのダメージは大きくなった | JAFユーザーテスト「強風時のドア開け」 |
🧭 強風時の運転・乗降の基本
風が強まる前に、速度を落とす
横風で流される、突風でハンドルをとられる、といった影響を減らすために、速度を落として走ります(JAFが案内する基本)。
橋、トンネルの出口など、風が抜ける場所を想定する
JAFは、特にトンネルの出口付近では、風によってハンドルをとられないよう注意するよう案内しています。
前後・周囲の飛散物に注意し、車間距離を保つ
看板やトタン板などが飛ぶことがあります(気象庁の表)。周囲を広く見て、車間距離を普段より大きくとります。
駐車場で降りるときは、ドアを強く押さえ、子どもは大人が外から降ろす
JAFは、強風時は大人でもドアを押さえられないことがあり、子どもは勢いよく開くドアで体のバランスを崩し、車から転落することもあるため、大人が外からドアを開けて降ろすよう案内しています。
危険を感じたら、安全な場所に停車して待つ
JAFは、大雨に遭遇した高速道路では、SA/PAに停車して雨が通り過ぎるのを待つよう案内しています。
強風時にハンドルを取られたときの具体的な対処は、別の記事「強風時にハンドルを取られたときの対処法」もあわせてご覧ください。
5. ドライブレコーダーを、教訓づくりにどう使うか
ドライブレコーダーの映像は、事故だけでなく、ヒヤリとした場面を後から見直す材料としても役立ちます。ただし、映像が運転の危険そのものを減らすわけではありません。
📊 ドライブレコーダーの映像の活用
| 活用場面 | 見直すポイント(当サイトの整理) | 注意 |
|---|---|---|
| 視界不良の場面 | 前の車のブレーキランプに気づいた位置、車間距離、ワイパーの動きなどを確認する | JAFのテストのとおり、無灯火・黒い服など、見えにくい対象があることを意識する |
| 冠水路に近づいた場面 | どの時点で水たまりや冠水に気づいたか、迂回の判断は適切だったかを確認する | JAFは、冠水路は水深が分からないとして、進入せず迂回するよう案内している |
| 強風時の場面 | 風が強い場所(トンネルの出口など)でのハンドルの動きと、速度を確認する | JAFの案内に沿って、速度を落とす |
| 記録の管理 | 録画の方式(常時録画・イベント録画)や、上書き・保存期間は、機種によって異なる。取扱説明書で確認し、必要な映像は、上書きされる前に保存する | 機種ごとの仕様は、メーカーの案内による |
📝 台風・豪雨時の運転前チェックリスト
☑️ 気象庁の雨・風の目安と、当日の警報・注意報を確認した
☑️ ヘッドライトを点灯して走ると決めている(昼間でも)
☑️ 車間距離を普段より大きくとると決めている
☑️ アンダーパス・冠水路には進入しない、迂回すると決めている
☑️ 橋、トンネルの出口など、強風の影響を受けやすい場所では速度を落とすと決めている
☑️ 駐車場で降りるときのドアの扱い(押さえる・子どもは外から降ろす)を確認した
☑️ ドライブレコーダーの録画状態と、記録メディアの空きを確認した
☑️ ワイパー・タイヤ・ライトなどの点検を済ませた
- 気象庁「雨の強さと降り方」
- 気象庁「風の強さと吹き方」
- JAFユーザーテスト「豪雨のとき、前方のクルマや歩行者はどう見える?」
- JAFユーザーテスト「衝突被害軽減ブレーキ 豪雨で検証」
- JAFユーザーテスト「冠水路走行テスト」(2010年)
- JAFユーザーテスト「強風時のドア開け」
- JAFクルマ何でも質問箱「高速道路上で大雨に遭遇した場合の注意点はなんですか?」
- 国土交通省「水深が床面を超えたら、もう危険!」
6. よくある質問
📚 あわせて読みたい
まとめ
台風や豪雨の中のヒヤリハットは、視界不良、冠水路での立ち往生、強風・突風という3つの場面で起こりやすく、JAFの実験と気象庁の目安でその危険が確認できます。共通する対策は、早めの減速、ヘッドライトの点灯、車間距離の確保、冠水路や風の抜ける場所を避けることです。ドライブレコーダーの映像は、見直しの材料になりますが、まずは、危険な状況に近づかない判断を心がけましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。


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