ブレーキパッドは「何万キロで交換」なのか、「残り何mm」なのか。車検に通っていれば、パッドも見てもらえているのか。迷う方は多いのではないでしょうか。
この記事は、YouTubeショート「ブレーキパッドの交換時期、見落とすと困ることがある落とし穴3つ」の内容を、JAF・ブレーキ部品メーカーのアドヴィックス・曙ブレーキ・日産・トヨタ・国土交通省の公開情報と、自動車点検基準の条文で確認し直したものです。動画では触れられなかった、交換の目安の数字が資料ごとに違うこと、警報装置の種類、点検を省略できる条件も加えて整理しました。
📋 この記事の要点
✔ 走行距離は目安にすぎない。アドヴィックスは小型乗用車4〜5万km・SUV2〜3万kmとしつつ、「環境や乗り方で寿命が大きく異なるため、距離や期間で寿命を判断することは困難」と説明している
✔ 交換の目安の厚さは資料で違う。JAFは2mm以下程度、曙ブレーキは4mm以下、日産とアドヴィックスは5mm。国の点検基準に厚さの数値はなく、トヨタも数値を示していない(車の指定・取扱説明書で確認)
✔ 使い切ると金属の裏板がローターに当たる。アドヴィックスによると摩擦係数は約0.3〜0.4から約0.15程度に下がり、効きは半分以下、ローターの交換も必要になる
✔ 減ったことは音(可聴式)や警告灯(電気式)で知らせる装置があるが、アドヴィックスは「一定の距離を走行すると音を発しなくなります」と注意している
✔ 車検は検査、パッドの点検は定期点検(自家用乗用車は1年ごと)。年5,000km以下なら点検を行わないことができるが、前回行わなかった場合は除かれる
🎬 動画で見る(ショート)
この記事の元になった、かーぎーくんのショート動画です。動画では触れられなかった詳しい内容や条文・公式情報は、このあと記事で確認できます。
▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
📑 目次
・動画で挙げた数字(4〜5万km・2〜3万km、2mmと5mm、効きが半分以下など)は、公式ページで確認でき、誤りは見つかりませんでした。
・JAFは「2mm以下程度になったら交換するように定められており」と書いていますが、国の自動車点検基準と国土交通省の手引には、パッドの厚さの数値が見当たりませんでした(確認できなかったことであり、「ない」と断定するものではありません)。
・「年5,000km以下だと省略できることがある」は動画では三菱自動車の案内として紹介しましたが、同じ内容が自動車点検基準の注記にあり、前回行わなかった場合は省略できない点も、この記事で確認しました。
1. 走行距離だけで決めない|目安の数字と、減り方が変わる条件
パッドの交換時期を、走行距離で示している資料もあります。ただし、同じ資料が「距離はあくまで目安」という説明も添えています。
📊 走行距離で示された目安(確認できた公開情報)
| 出どころ | 目安 | 資料の補足 |
|---|---|---|
| アドヴィックス (ブレーキ部品メーカー) |
小型乗用車4〜5万km/スポーツカー3〜4万km/SUV2〜3万km | 「実際は走行条件(地域、乗員、速度)によって異なる」と明記 |
| 日産(公式サイト) | 点検・交換の目安は「残厚5mm または 30,000km走行ごと」 | 放っておくと、ブレーキを踏んだときの「キーキー」音、効きの悪化、ブレーキディスクローターの損傷につながると案内 |
減り方が変わる条件(アドヴィックスの説明)
| 条件 | 資料の説明 |
|---|---|
| 山道など | ブレーキ回数が多くなり、寿命が短くなる |
| 雪国 | ローターが錆びやすくなり、これも摩耗が早くなる原因になる |
| 車重・エンジン出力 | 一般的に、車重の大きい車、エンジン出力の大きい車はパッドの寿命が短くなる |
| 坂道・悪路・サーキット | ブレーキ各部の劣化が促進されるため随時の点検が必要。坂道・悪路走行は「半年ごと、または6,000kmごとの点検が目安」、サーキット走行は「その都度点検がベスト」 |
アドヴィックスは、車の使用環境や乗り方で寿命が大きく異なるため、距離や期間で寿命を判断することは困難とし、定期点検・日常点検で状況を確認して交換時期を判断するよう案内しています。同社は、タイヤを交換するときにパッドの厚みもチェックすることも勧めています(「タイヤとパッドの交換サイクルは、ほぼ同じ」と記載)。
2. 「残り何mmで交換」は資料ごとに違う
厚さの目安は、資料によって2mmから5mmまで開きがあります。動画で紹介したJAFの「2mm」とアドヴィックスの「5mm」の差は、他の資料にもあらわれていました。

📊 交換の目安として示されている厚さ
| 出どころ | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| JAF | 残量が2mm以下程度になったら交換するよう定められており、そのまま使うとブレーキの効きが悪くなり重大な事故につながる恐れがある | 確認方法として、ホイールを外し、ブレーキキャリパーの点検用の窓から厚みを見ると案内(2025年7月現在の記載) |
| 日産 | 点検・交換の目安は「残厚5mm または 30,000km走行ごと」 | 公式サイトの「足回りの消耗品|ブレーキ」より |
| アドヴィックス | 厚みが残り5mmになったら必ず交換 | 同社の図では「安心 約10mm」「注意 約5mm」「危険 約3mm」と表示。セミメタリック材のパッドは断熱材の層があるため、厚みが半分になったときに交換することが大切と説明 |
| 曙ブレーキ (AKEBONO REPORT 2018) |
新品の摩擦材は約10mmで、使用できるのは7〜8mm程度。残厚4mm以下になったら安全のための交換をお薦め | 軽自動車専用パッド「K4」の色分けは、青=10〜6mm(安全)、黄=4mm以下(注意・交換時期)、赤=2mm以下(危険・即交換)。2018年の資料で、特定の製品の表示 |
| トヨタ | 「点検後、残量が少なければ交換」。使用限度(残厚限度)を超えて使うと、ディスクを削ってしまい、効きが弱くなったり修理費用が高額になったりするため、早めの交換をすすめている | 公式ページに数値の記載なし |
国の基準に、厚さの数値はあるのか
自動車点検基準(別表第6)は、自家用乗用自動車の1年ごとの点検として「ブレーキ・ディスク及びパッド」の「パッドの摩耗」などを挙げていますが、厚さの数値は書かれていません(e-Govの条文を取得し、「パッド」を含む行を全て確認しました)。道路運送車両の保安基準の本文にも、パッドの厚さの数値は見当たりませんでした。なお、車種区分ごとに多数ある保安基準の細目告示は、今回すべては確認していません。
国土交通省の「自動車の点検及び整備に関する手引」は、パッドの摩耗の点検方法を次のように書いています。
📜 国土交通省「自動車の点検及び整備に関する手引」(自家用乗用などの定期点検・パッドの摩耗。要旨)
リフト・アップなどの状態で、ホイールを取り外し、キャリパ・ボディーの点検孔から、パッドの厚みを点検します。また、必要に応じてスケールなどにより点検します。
同じ手引は、実施方法の欄の「規定」という言葉を「自動車製作者の定める方法、範囲又は値など」と説明しています。パッドの厚さの項目に「規定」の語は使われておらず、手引がパッドの厚さをメーカー規定と明記しているわけではありません。ただ、国の点検基準に数値がない以上、実際の判断基準は車ごとの取扱説明書やメンテナンスノートに当たるのが確実です。
3. 使い切るとどうなるか|裏板・ローター・効きの低下

ブレーキパッドは、摩擦材と金属の裏板でできています。アドヴィックスによると、パッドを使い切ると裏板でブレーキをかけることになり、ローターを傷つけ、効きも半分以下の非常に危険な状態になります。通常のパッドの摩擦係数は0.3〜0.4ですが、金属の裏板では0.15程度とされています。このときは、パッドだけでなくローターの交換も必要です。
📊 交換しないと起きる問題(アドヴィックスの整理)
| 問題 | 補足 |
|---|---|
| ブレーキ鳴きの増加 | |
| ベーパーロック(ノーブレーキ) | ※フル摩耗時と注記 |
| 制動距離の延長 | |
| ブレーキローターの損傷 | 交換費用が増える |
かなり薄くなったパッドを使い続けると、パッド表面の摩擦熱が裏板側へ伝わり、ブレーキフルードやキャリパーなどに熱が伝わって、ブレーキ部品が熱で傷むトラブルを起こす可能性があることも、同社は説明しています。トヨタも、使用限度(残厚限度)を超えて使うとディスクを削り、効きが弱まって修理費用が高額になるとしています。
同じアドヴィックスのページは、最悪の場合として「ノーブレーキ」になる可能性に触れる一方、実際はブレーキが2系統になっているため、同時に2系統が使えなくなることはないとも書いています(道路運送車両の保安基準第12条は、一部の低速の自動車を除き、自動車に二系統以上の制動装置を備えることを定めています)。だからといって、効きが落ちたまま走ってよいという意味ではありません。
4. 警告のサインと、鳴らないことがある点

パッドが減ったことを知らせる装置は「パッドウェアインジケーター」(アドヴィックスはPWI=摩耗警報装置と呼びます)といい、音で知らせる可聴式と、警告灯で知らせる電気式があります。
📊 サインとして挙げられているもの
| 出どころ | 内容 |
|---|---|
| JAF | ほとんどの国産車には「パッドウェアインジケーター」が付いており、残量が少なくなると、インジケーターが直接ブレーキディスクに接して「キーキー」と音を出して知らせる。これらの症状が出たら、早急に整備工場で点検・交換が必要 |
| トヨタ | パッドの摩耗が進むと、インジケーターがディスクローターと干渉して異音が出る。チェックポイントは「ブレーキから異音が出だした」「メーター内のブレーキ警告灯が点灯した」「リザーバータンクの液量が減ってきた」 |
| アドヴィックス(可聴式) | 裏板に付けた0.5〜0.8mm厚のステンレスの板が、摩耗するとローターに触れてビビリ音を出す。ずっとキーキーと耳障りな音が出ているときは、キャリパーの点検溝からパッドの残厚を確認する |
| アドヴィックス(電気式) | パッドが規定厚み(通常2mm)まで摩耗すると、埋め込んだ電線がローターで切れ、メーターのブレーキ警告ランプが点灯する。同社は「ランプ点灯の場合は、即刻、交換が必要」としている |
ブレーキ液の量と警告灯
JAFは、パッドが減ったことでブレーキ液がリザーバータンクの下限ラインを下回り、ブレーキ警告灯も点灯するようになっている、と説明しています。アドヴィックスも「フルードのレベルが『MIN』を示しているとパッドが摩耗しています」としています。ただし、液量の低下は、パッドの摩耗以外が原因のこともあります。JAFの赤色のブレーキ警告灯のページは、パーキングブレーキを解除しても消灯しない場合、ブレーキフルードが低下している可能性やブレーキ機構の故障の恐れがあり、走行は危険なのでJAFに救援を要請するよう案内しています。ブレーキ液そのものの劣化と交換時期は、別の記事で整理しています(下の「あわせて読みたい」)。
5. 車検や点検で見てもらえている?|検査と点検整備の違い

国土交通省の「自動車検査登録総合ポータルサイト」は、自動車の検査(車検)を「検査時において安全・環境基準に適合しているかどうかを確認しているもの」と説明しています。一方、点検・整備は、保守管理の責任が使用者自身にある(自己管理責任)ことから、使用者が必要なときに点検し、その結果に基づいて整備することで、「検査と点検・整備は直接リンクするものではありません」と書かれています。
そのうえで、道路運送車両法は、日常点検と定期点検を使用者に義務づけています(第47条の2・第48条)。
パッドの点検は、どの点検に入っているか
📊 自家用乗用自動車(マイカー)の点検基準より
| 点検 | 時期 | ブレーキ・パッドに関する項目 |
|---|---|---|
| 日常点検(別表第2) | 走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期 | ブレーキの項目は「ペダルの踏みしろが適当で、ききが十分」「ブレーキの液量が適当」「駐車ブレーキ・レバーの引きしろが適当」。パッドの厚みの項目はない |
| 定期点検・1年ごと(別表第6) | 自家用乗用自動車等は1年ごと(法第48条第1項第3号) | 「ブレーキ・ディスク及びパッド」の「パッドの摩耗」と「ディスクとパッドとのすき間」 |
| 定期点検・2年ごと(別表第6) | 1年ごとの点検に加えて行う | 「ディスクの摩耗及び損傷」(ほかにキャリパの機能・摩耗・損傷) |
国土交通省の点検整備のページでは、マイカーは1年ごとに29項目、2年ごとに1年ごとの項目を含む計60項目の点検整備を行う必要があるとされています。
年5,000km以下なら、パッドの点検は省略できる?
自動車点検基準別表第6の注には、次のように書かれています。パッドの摩耗は、この(※1)印の項目に含まれています。
📜 自動車点検基準 別表第6の注②(要旨)
(※1)印の点検は、自動車検査証の交付を受けた日または当該点検を行った日以降の走行距離が1年当たり5千キロメートル以下の自動車については、前回の当該点検を行うべきこととされる時期に当該点検を行わなかった場合を除き、行わないことができる。
ポイントは3つです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 「できる」であって「不要」ではない | 条文は「行わないことができる」と書いています。点検が禁止・不要になるという意味ではありません |
| 前回省略したら、今回は省略できない | 前回行わなかった場合は除かれます。手引も「2回連続して省略することはできません」と書いています |
| 使用状況が厳しい場合は | 手引は、走行距離が多いなど使用の状況が厳しい場合(シビアコンディション)には、表にない点検(メーカーなどが発行する点検整備の情報を参考にする点検)が必要になると書いています |
三菱自動車の「法定12ヶ月点検」のページにも、「登録した日、または前回点検整備を行った日からの走行距離が年間5,000km以下の場合、点検整備を省略できることがあります」という注記があります。
点検のときに、確認しておきたいこと
| 確認すること | 根拠 |
|---|---|
| 残量(mm)を教えてもらえるか | 手引は、点検整備記録簿の「整備概要」に、測定結果(ブレーキ・ライニング、ブレーキ・パッドの厚みなど)も必要に応じて記載すると書いている。記録簿にどう書かれているか見るのも一案 |
| パッドの点検が行われたか、省略されたか | 年5,000km以下の車は省略できる場合があるため。前回省略していれば今回は省略できない |
| 車の指定(メンテナンスノート・取扱説明書) | 国土交通省は、メーカーが法定点検以外の点検整備に必要な情報を「メンテナンスノート」として提供していると説明している |
| 自分で見るなら、安全な設備で | パッドの確認にはホイールを外す必要がある。手引は、車をリフトアップするときは適切なジャッキ、スタンド、リフトなどを使うよう書いている |
6. よくある質問
まとめ
動画の3つの落とし穴を、公式情報で整理します。(1)走行距離だけで決めない。距離の目安(アドヴィックスの4〜5万kmなど)はあっても、使用環境や乗り方で寿命は大きく変わります。(2)ぎりぎりまで使わない。交換の目安は、JAFの2mm以下程度、曙ブレーキの4mm以下、日産・アドヴィックスの5mmと資料で違い、国の点検基準(と国土交通省の手引)に厚さの数値は書かれていません。使い切ると裏板がローターに当たり、効きが半分以下になるとされています。(3)車検や点検で見てもらえていると思い込まない。パッドの摩耗は1年ごとの定期点検の項目で、年5,000km以下なら行わないことができますが、前回省略した場合は除かれます。
音や警告灯で知らせる装置もありますが、鳴らなくなることがあるとメーカーが注意しています。点検のときに残量を聞き、取扱説明書やメンテナンスノートの指定とあわせて判断するのが、公式情報から言える確かな方法です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。ブレーキは安全に直結する部品です。交換の目安(厚さ・走行距離)は、車種・パッドの種類・使い方で変わります。点検・交換は整備工場にご相談のうえ、お車の取扱説明書・メンテナンスノートで必ずご確認ください。法令・基準は改正されることがあります(確認日: 2026年10月17日)。
参考(一次情報・公的機関・メーカー・JAF): e-Gov法令検索 自動車点検基準(第1条・第2条・別表第2・別表第6)/同 道路運送車両法(第47条の2・第48条・第49条)/国土交通省 自動車検査登録総合ポータルサイト 自動車の検査と点検・整備/国土交通省 点検整備の種類/国土交通省 自動車の点検及び整備に関する手引(PDF)/JAF ブレーキパッドの磨耗状態はどこで分かりますか?/JAF ブレーキ警告灯(赤色)が点灯する場合の原因と対処方法/アドヴィックス 残り何mmで交換すれば良いか/同 ブレーキメンテナンス/同 交換時期はこうやって把握する/同 摩耗センサーのしくみ/同 タイヤを外した状態でのキャリパーとブレーキパッドの点検について/日産 メンテナンス ブレーキ/トヨタ ブレーキ/曙ブレーキ AKEBONO REPORT 2018/三菱自動車 法定12ヶ月点検(乗用車)
図はすべて自作のイラストです(AI生成なし)。断面などの図は概念図で、縮尺は実物と異なります。


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