事故にあったとき、「まず何をするか」は、知っているようで迷いやすいところです。けが人がいなくても警察に連絡が必要なのか、相手が「今ここで示談に」と言ってきたらどうするのか。ショート動画の3択クイズで取り上げた3問の答えを、道路交通法の条文と、JAF・日本損害保険協会・警視庁・自動車安全運転センターの公開情報で確認し直しました。
この記事では、道路交通法第72条が運転者に求めること、守らなかったときの罰則と違反点数、交通事故証明書の期限と手数料、その場の示談と保険会社への連絡の注意点を、動画では触れられなかった部分まで含めて整理します(2026年10月確認)。
📋 この記事の要点
✔ 道路交通法第72条第1項は、交通事故のとき運転者に直ちに停止し、負傷者を救護し、道路の危険を防止し、警察に報告することを求める。「交通事故」には人の死傷だけでなく物の損壊も含まれる(第67条第2項)
✔ 罰則は、死傷があるのに救護・危険防止をしないと5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(運転に起因する場合は10年以下・100万円以下)、警察に報告しないと3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金
✔ 小さなキズだけでも警察への届出は必要。届出のない事故は交通事故証明書が交付されず、証明書は人身事故は5年・物件事故は3年を過ぎると原則交付されない(手数料は1通1,000円)
✔ 現場での示談は避ける(JAF・警視庁)。保険を使う可能性があるときは、示談や約束の前に保険会社へ相談(日本損害保険協会)
🎬 動画で見る(ショート)
この記事の元になった、かーぎーくんのショート動画です。動画では触れられなかった詳しい内容や条文・公式情報は、このあと記事で確認できます。
▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
1. 第72条が運転者に求めること(停止・救護・危険防止・報告)
クイズの第1問(救護と危険の防止)と第2問(警察への連絡)の根拠は、同じ条文です。道路交通法第72条第1項の前段は、次のように定めています。
📜 道路交通法 第72条第1項前段(e-Govの条文の引用)
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
続く後段は、運転者(運転者が死亡・負傷してやむを得ないときは、その他の乗務員)に、警察官が現場にいるときはその警察官に、いないときは直ちに最寄りの警察署(派出所・駐在所を含む)の警察官に、事故の内容を報告するよう求めています。

📊 第72条第1項が求める4つのこと
| 義務 | 条文の内容 | 公的機関・JAFの補足 |
|---|---|---|
| 1. 停止 | 直ちに車両等の運転を停止する | JAF:ただちに運転を停止し、人や物の被害状況を確認する |
| 2. 救護 | 負傷者を救護する | JAF:負傷者がある場合はただちに救護し、必要があれば救急車の手配などを求める |
| 3. 危険防止 | 道路における危険を防止する等必要な措置を講じる | JAF:事故車両を安全な場所に移動する、接近してくる他の自動車に事故の発生を知らせるなど |
| 4. 報告 | 現場の警察官、いなければ最寄りの警察署の警察官に報告する(後段) | JAF:報告は電話で行ってもよいが、怠ると処罰される |
警察に報告する5つの事項
条文が報告事項として挙げているのは、事故が発生した日時及び場所、死傷者の数及び負傷者の負傷の程度、損壊した物及びその損壊の程度、事故に係る車両等の積載物、事故について講じた措置です。JAFはこれを5つの項目に分けて紹介しています。あわせてJAFは、憲法第38条により自己に不利益な供述は強要されないため、運転者に過失があることまで報告する義務はないと解説しています。
「交通事故」は人身事故だけではない
第67条第2項は、「車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊」を「交通事故」と定義しています。日本損害保険協会も、人身事故・物損事故のどちらの場合も、直ちに警察へ届け出るよう案内しています。クイズの第2問が「けが人もなし」でも警察への連絡が必要としているのは、この定義と報告義務によるものです。
報告のあと、現場を離れてよいとは限らない
第72条第2項は、報告を受けた最寄りの警察署の警察官が、負傷者を救護し、または道路における危険を防止するため必要があると認めるときは、警察官が現場に到着するまで現場を去ってはならない旨を命ずることができると定めています。この命令に従わなかった者は、第120条第1項第11号により5万円以下の罰金です。また第3項は、現場にいる警察官が、救護・危険防止などのため必要な指示をすることができると定めています。
2. 守らなかったときの罰則と違反点数
第72条の義務を果たさなかったときの罰則は、場面ごとに別の条文に分かれています(2026年7月21日施行の現行条文で確認)。
📊 第72条の義務違反の罰則(道路交通法)
| 場面 | 根拠 | 罰則 |
|---|---|---|
| 人の死傷があるのに、救護・危険防止などの措置をとらない(ひき逃げ) | 第117条第1項 | 5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 上の場合で、人の死傷がその運転者の運転に起因するもの | 第117条第2項 | 10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 人の死傷がない事故(物損のみなど)で、必要な措置をとらない | 第117条の5第1項第1号 | 1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金 |
| 警察への報告をしない | 第119条第1項第17号 | 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金 |
なお、第117条第1項の対象は「車両等(軽車両を除く。)」の運転者です。自転車などの軽車両の場合は、人の死傷があっても、第117条の5第1項第1号が適用されます。また、救護義務違反の35点は、自動車等の運転に関し行われたものに限られます。

違反点数と免許の処分
道路交通法施行令別表第二は、「救護義務違反」(第117条第1項または第2項の罪にあたる行為。自動車等の運転に関し行われたもの)を、酒酔い運転などと並ぶ特定違反行為(基礎点数35点)と定めています。警視庁の行政処分の基準表(特定違反行為)では、35〜39点・前歴なしの場合は免許取消し、欠格期間3年とされています(免許取消歴等保有者などは5年となる場合があります)。
人の死傷がない事故での危険防止措置義務違反(第117条の5第1項第1号の罪にあたる行為)については、別表第二の備考が、事故の原因となった違反行為の点数(事故の付加点数を含む)に5点を加えると定めています(単独の違反点数ではありません)。警察への報告義務違反(第119条第1項第17号)については、別表第二の一般違反行為の一覧にこの名称の項目は見当たらず、点数は確認できませんでした。
3. 第1問 けが人がいるとき、現場での動きの順番

第1問の答え(A 救護と危険の防止)は、第72条第1項前段のとおりです。現場での具体的な動きは、JAF Mate Onlineの特集(2023年9月18日。日本赤十字社健康安全課長の取材協力、弁護士の法律監修)が、一般道での事故を例に次の順で紹介しています。
📊 JAF Mate Onlineが紹介する、事故発生時にドライバーがすべきこと
| 順番 | JAFの案内(要約) |
|---|---|
| 1. 事故の続発を防ぐ | エンジンを切り、ハザードを点灯して後続車の追突を防ぐ。危険があれば路肩や空き地など安全な場所へ車を移動する。周囲の車に注意しながら降車し、発炎筒や停止表示器材などで後続車に危険を知らせる。事故車の中に人を残さない |
| 2. 負傷者の救護 | 負傷者がいる場合はただちに119番通報し、事故発生場所・けが人の状態・事故の状況を落ち着いて伝える。意識不明や大量出血などのときは、危険な場所にいる場合を除き、むやみに動かさず、できる範囲で応急手当を行う。周りの人に手伝いを頼む |
| 3. 警察(110番)へ連絡 | 人身事故はもちろん、軽微な物損事故でも必ず警察に連絡する。目撃者がいれば、可能なら警察官が来るまで現場にいてもらうか、連絡先を聞く |
| 4. 警察・救急隊の指示に従う | 事故の状況を説明する(質問に想像で答えず、わからないことは「わからない」と答える) |
| 5. 情報を記録する | 相手の車のナンバーを控え、免許証で氏名・住所・電話番号・保険会社などを確認する。現場や事故車の状況はスマートフォンのカメラやメモで記録する。ドライブレコーダーの記録を保存する |
| 6. 保険会社へ連絡 | 遅滞なく第一報を入れ、細かな内容は保険会社の指示に従って後日報告する |
119番で伝えること(総務省・救急車利用マニュアル)
救急車を呼ぶときは、まず「救急です」と伝え、住所(市町村名から。わからなければ近くの大きな建物や交差点などの目印)、誰が、どのようにして、どうなったか(わかる範囲で意識・呼吸の有無)、年齢(わからなければ「60代」のようにおおよそ)、通報者の名前と連絡可能な電話番号を伝えます。
なお、JAFは、運転者自身の判断で「負傷は軽微だから救護は必要ない」として現場を立ち去った場合でも、ひき逃げ(救護義務違反)として罰せられると解説しています。けが人の有無は、必ず確認することが大切です。応急手当の具体的な方法は、JAF Mate Onlineの特集や、日本赤十字社の講習・解説動画で確認できます。
4. 第2問 小さなキズでも警察へ。交通事故証明書の期限と手数料
第2問の答え(C 軽い事故でも必要)の根拠は、運転者の報告義務です。日本損害保険協会は、運転者には道路交通法に基づく警察への報告義務があるため、軽微な事故でも警察への届出が必要とし、警察官の立会いで現場の状況が確認され、人身事故の場合は「実況見分調書」として記録に残ると説明しています。被害者側の届出(人身事故では「人身扱い」の届出)も、忘れないようにと案内しています。
届出がないと、交通事故証明書が出ない
自動車安全運転センター(JSDC)は、交通事故証明書を、事故の当事者が適正な補償を受けられるよう、警察から提供された資料に基づき、交通事故の事実を確認したことを証明するものと説明しています。警察への届出のない事故は、交通事故証明書の発行ができません。

📊 交通事故証明書の主な条件(自動車安全運転センターの案内)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請できる人 | 交通事故の加害者・被害者、交付を受けることに正当な利益のある方(例:損害賠償の請求権のある親族、保険金の受取人など)。代理人は委任状が必要 |
| 期限 | 人身事故は事故発生から5年、物件事故は3年を経過したものは原則交付できない(詳しくは事故が起きた都道府県のセンター事務所へ) |
| 手数料 | 1通1,000円(消費税非課税)。ゆうちょ銀行・郵便局の払込料金などが別にかかる。インターネット申請は払込手数料143円が別途 |
| 受け取り | 郵便局での払込みやインターネット申請は、郵送で届くまで10日程度。センター事務所の窓口では、警察から資料が届いていれば原則即日交付(他の都道府県の事故は後日郵送) |
保険金の請求との関係は、資料ごとに表現が違う
日本損害保険協会は、保険金請求に際しては交通事故証明書が必要で、警察に事故の報告をしないと証明書が交付されないと説明しています。JAF Mate Onlineは、警察への届け出がないと事故証明書が発行されず、保険の請求ができない場合があると案内しています。どちらも、届出をしておくことが保険金の請求に関わる、という点は共通しています。実際に必要な書類は、加入している保険会社の案内で確認してください。
5. 第3問 その場の示談と、保険会社への連絡
第3問の答え(B 断って保険会社へ相談)は、複数の機関が同じ方向の案内を出しています。立場と目的が違うので、資料ごとに分けて整理します。
📊 その場の示談・保険会社への連絡に関する案内(出典ごと)
| 出典 | 内容 |
|---|---|
| JAF Mate Online | 警察に連絡する際、その場での示談はしない。その場の示談などで済ませると後々トラブルに発展することもある。保険会社には遅滞なく第一報を入れる。連絡しないと保険金が減額されることがある |
| JAFクルマ何でも質問箱(2023年11月現在) | 保険会社への通知を正当な理由なく怠ると保険金が支払われないことがある。対人事故では、事故発生の日から60日以内に書面による通知がないと、原則として保険金は支払われない(契約内容は加入先の約款で確認) |
| 警視庁(当たり屋のページ。2017年更新) | わざとぶつかって「警察に届けると免許に傷が付く」などと示談を迫り、現場で賠償金などを要求する手口がある。事故現場では決して示談をせず、相手から迫られても応じずに直ちに110番 |
| 日本損害保険協会(問25) | 保険を使用する、または使用する可能性がある場合は、当事者同士での示談や約束は行わず、必ず保険会社に相談。保険会社の承認なく示談や約束をした場合には、保険金の一部または全部が支払われないことがある。自動車を修理するときも、事前に保険会社へ連絡 |
| 日本損害保険協会(問32) | 当事者間で示談する場合は、事実関係の確認・相手の本人確認・条件の明確化・示談書の作成が必要。示談書には「今後この件ではいっさい請求しない」という権利放棄条項を盛り込むのが一般的で、損害額の見通しが立たないうちに示談すると、後日請求できなくなる |
動画では「保険会社の承認なしの示談や約束は、保険金が支払われないことがある」と話していますが、日本損害保険協会の案内は「保険を使用する、または使用する可能性がある場合」についてのものです。保険を使わない場合の扱いや、示談書の書き方は、この協会のQ&Aでも別に説明されています。
示談交渉サービスが使えない場合もある
日本損害保険協会(問10)によると、現行の自動車保険は示談交渉サービスがついている商品が一般的ですが、自分にまったく過失がなく賠償責任が生じていない場合(被害者になった場合)は、自分の対人賠償・対物賠償の保険を使えないため、示談交渉サービスも利用できません。その場合に備える特約として、保険会社によっては「弁護士費用等補償特約」があります。
6. よくある質問
まとめ
事故のあとに法律が運転者に求めるのは、(1)直ちに停止し、(2)負傷者を救護して道路の危険を防ぎ、(3)警察に報告することです(道路交通法第72条第1項)。「交通事故」には物の損壊も含まれるため、小さなキズだけでも報告は必要で、届出がなければ交通事故証明書は交付されません(人身事故は5年、物件事故は3年を過ぎると原則交付不可)。救護・危険防止をしないと、死傷がある場合は5年以下(運転に起因すれば10年以下)の拘禁刑などの罰則があり、救護義務違反は違反点数35点です。
その場の示談は避け、保険を使う可能性があるときは、示談や約束の前に保険会社へ相談してください。クイズの3問の答えは、一次情報で確認できました。もしものときは、警察・消防・加入している保険会社の案内に従ってください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事故についての法的助言ではありません。法令・罰則・手数料・期限は改正されることがあるため、最新の内容や個別の判断は、警察・自動車安全運転センター・保険会社・弁護士などの公式情報でご確認ください(2026年10月確認)。
参考(一次情報・公的機関・JAF・業界団体): e-Gov法令検索 道路交通法(第67条・第72条・第117条・第117条の5・第119条・第120条)/同 道路交通法施行令(別表第二)/警視庁 行政処分基準点数/警視庁 当たり屋/日本損害保険協会 問25 交通事故を起こしてしまった場合/同 問26 被害が軽微な交通事故の場合/同 問32 当事者同士で示談する場合/同 問10 示談交渉サービス/JAF Mate Online 交通事故発生!あなたは応急手当できますか?/JAFクルマ何でも質問箱 交通事故を起こしたら、加害者はどうするべきですか?/自動車安全運転センター 交通事故に関する証明書/同 申請方法/総務省 救急車利用マニュアル 救急車の呼び方
図はすべて自作のイラストです(AI生成なし)。


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