「最寄りのガソリンスタンドまで車で15km以上」——そんな地域が全国に広がっています。いわゆる「SS過疎地」問題です。2026年8月、経済産業省は特に深刻な約50店舗を選んで重点支援する方針を発表しました。なぜガソリンスタンドが減っているのか、政府はどう対応しようとしているのかを整理します。
📋 この記事でわかること
- 「SS過疎地」とは
- なぜガソリンスタンドは減っているのか
- 2026年8月、経産省が重点支援する50店舗を選定
- 他の生活インフラでも同様の課題
- 過疎地での代替的な燃料供給の工夫
動画でも解説しています。(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
「SS過疎地」とは
資源エネルギー庁などで構成する「SS過疎地対策協議会」は、市町村内のサービスステーション(SS、ガソリンスタンド)数が3か所以下の自治体を「SS過疎地」と定義しています。2016年度末時点で302市町村が該当し、前年より14市町村増加していました。また、これらの中には「最寄りのSSまでの道路距離が15km以上離れている住民が所在する市町村」も含まれています。経済産業省・資源エネルギー庁の別の報告書では、2014年度末時点でガソリンスタンドが3か所以下の市町村は283か所、そのうち1か所もない市町村が10か所あったとされています。
ガソリンスタンドが地域からなくなると、単に給油に不便になるだけではありません。農業用のトラクターや刈払機、災害時に頼りになるエンジン発電機、家庭用の石油暖房機器や給湯器など、石油燃料を使うあらゆる機器が使えなくなるおそれがあり、地域のライフラインそのものに関わる問題とされています。
なぜガソリンスタンドは減っているのか
ガソリンスタンドの経営環境が悪化している背景には、複数の要因が重なっています。
- 燃費の良いエコカーの普及、若者の車離れ、高齢者の運転免許返納などによるガソリン需要の減少
- セルフ式スタンドの普及によるスタンド同士の競争激化
- 2011年の消防法改正で、設置から40年を超える地下タンクの改修が義務付けられたこと。改修費用は安くても数百万円、場合によっては1000万円を超えることもあるとされ、これが廃業や後継者不足の一因になっているといわれています
電気自動車(EV)への切り替えで解決できるようにも思えますが、地方では車両価格の高さや航続距離への不安、充電インフラの不足といった課題があり、必ずしも代替手段にはなっていないのが現状です。
2026年8月、経産省が重点支援する50店舗を選定
こうした状況を受け、経済産業省は2026年8月24日、燃料供給網を維持するうえで特に重要な約50店舗を22道県から選び、「地域インフラSS」として重点支援する方針を発表しました。支援の内容としては、SSの運営継続に向けた「供給計画」の策定支援、設備投資、人手不足対策、AI関連技術の導入などが挙げられており、2027年度当初予算の概算要求に関連経費を盛り込む方針です。
他の生活インフラでも同様の課題
ガソリンスタンドの減少は、地方における生活インフラの縮小という、より大きな流れの一部でもあります。人口減少や高齢化が進む地域では、郵便局の集配拠点の統廃合や、銀行の支店・ATMの縮小、路線バスの減便・廃止といった動きが並行して進んでおり、ガソリンスタンドだけを切り離して語れる問題ではありません。SS過疎地対策協議会が「燃料供給」という切り口で支援策を進めているのと同様に、他の生活インフラについても、それぞれの所管省庁や自治体が独自の維持策を模索している状況です。
過疎地での代替的な燃料供給の工夫
店舗としてのガソリンスタンドの維持が難しい地域では、移動販売車による燃料の配送や、隣接自治体の店舗との連携による巡回配送といった、店舗を構えない形での燃料供給の仕組みづくりも一部の地域で模索されています。また、農業機械や発電機など、日常の給油とは異なる大口の燃料需要については、地域の農協や自治体が窓口となって、まとめて燃料を確保する取り組みを行っているケースもあります。ガソリンスタンドという「店舗」の存続だけでなく、燃料そのものをどう地域に届けるかという視点での対策が、今後さらに重要になっていくと考えられます。
まとめ
ガソリンスタンドの減少は、単なる一商店の廃業ではなく、地域の移動手段や暮らしのインフラそのものに関わる問題です。経済産業省による今回の重点支援は、深刻な地域から優先的に手を打つ取り組みといえます。お住まいの地域や実家がある地域の状況が気になる方は、資源エネルギー庁が公開している「SS過疎地対策ハンドブック」などで、最新の状況を確認してみるとよいでしょう。
出典・免責
本記事の内容は、以下の情報源(2026年9月2日確認時点)に基づいています。
選定店舗数・支援内容・予算等の詳細は今後変更される場合があります。最新情報は経済産業省・資源エネルギー庁の公式発表でご確認ください。
アイキャッチ画像: Gas Station, Tokyo outskirts, Japan by AhmedAlElg, CC BY-SA 4.0
コメント