ジャッキアップの安全ポイント|ジャッキスタンド・輪止めと、やってはいけないこと

ジャッキアップは、タイヤが浮いた不安定な状態になる作業で、取扱いを誤ると車が落下して重大な傷害につながるおそれがあります。この記事では、トヨタの取扱説明書、三菱自動車の安全ガイド、JAF、厚生労働省(長野労働局)の災害事例、コンチネンタルタイヤで確認できたことだけを整理しました。

📋 この記事の要点

✔ ジャッキは指定位置(ジャッキポイント)に正しくかける。位置は取扱説明書で確認する(三菱自動車・トヨタ)

✔ 車載ジャッキは、タイヤ交換・タイヤチェーンの着脱以外の目的で使用しない。ジャッキで支えられている車の下に体を入れない(トヨタ)

✔ 車の下にもぐり込んで作業する場合は、ジャッキスタンドを使用する(トヨタ)。重大事故の多くは、車の下にもぐって作業している時に発生している(三菱自動車)

✔ ホイールナットは、仮締めのあとに車体を下ろしてから、規定トルクで本締めする。規定トルクは車種ごとに異なる(JAF・トヨタ)

✔ 工具・応急用タイヤがない場合や、不慣れで自信がない場合は、無理をせずJAFなどに任せる(JAF)

1. ジャッキ・ジャッキスタンド・輪止めの役割

ジャッキアップの作業では、車を持ち上げる「ジャッキ」、持ち上げた車を支える「ジャッキスタンド」、車が動くのを防ぐ「輪止め」を、それぞれの役割に合わせて使います。メーカーや団体の資料で確認できた注意点を、表にまとめました。

📊 ジャッキ関連用具の役割と注意点(確認日: 2026年9月25日)

用具 役割 確認できた注意点 出典
車載ジャッキ(車に備え付けのジャッキ) タイヤ交換・タイヤチェーンの着脱 自分の車にしか使えない。他の車に使ったり、他の車のジャッキを自分の車に使ったりしない。タイヤ交換・タイヤチェーンの着脱以外の目的で使用しない。車を持ち上げるときは、ジャッキの上または下にものを置かない トヨタ 取扱説明書(ハリアー)
ガレージジャッキ(フロアジャッキ) 車両を持ち上げる 付属の取扱説明書に従って安全に作業する。正しい位置にセットしないと、車両が損傷したり、けがをしたりするおそれがある。車両の前側では、ジャッキの受け皿が車両下部の樹脂カバーにかかっていないことを確認する(フロントサスペンションの部品が損傷するおそれ) トヨタ 取扱説明書(アルファード)
ジャッキスタンド ジャッキアップした車を支える 車の下にもぐり込んで作業する場合は、ジャッキスタンドを使用する トヨタ 取扱説明書(ハリアー)
輪止め 車が動くのを防ぐ ジャッキアップするタイヤから一番遠いタイヤの前後に、輪止めをする。輪止めがない場合は、タイヤを固定できる大きさの石などで代用できるが、事前に輪止めを準備しておくと安心 三菱自動車

※表は横にスクロールできます

📌 補足

ジャッキの持ち上げ能力の数値、種類ごとの使い分けは、ジャッキごとの取扱説明書と、車の取扱説明書で確認してください。

2. ジャッキアップの前に:場所・停め方・輪止め・ジャッキポイント

三菱自動車、JAF、トヨタの案内で共通して示されている準備を、順番に並べました。タイヤ交換の前に、ホイールナットを「少しだけ」緩めておく点は、JAFとトヨタで一致しています。

🧭 ジャッキアップの流れ(確認日: 2026年9月25日)

1

平坦で硬い、安全な場所に停める

ジャッキアップは、平坦で安全な硬い場所で行います(三菱自動車)。パンクなどで停めたときは、周囲の安全を確認し、ほかの車の邪魔にならない場所に停止します(JAF)。

2

エンジンを止め、駐車ブレーキをかける

オートマチック車はセレクターレバーを「P」に入れ、エンジンを止めて、駐車ブレーキを確実にかけます。マニュアル車は、エンジンを止めてシフトレバーを「R(リバース)」に入れ、駐車ブレーキを確実にかけます(三菱自動車)。

3

輪止めをする

ジャッキアップするタイヤから一番遠いタイヤ(パンクしたタイヤの対角線上)の前後に、輪止めをします(三菱自動車・JAF)。トヨタの取扱説明書には、パンクしたタイヤの位置ごとの輪止めの位置が図示されています。

4

ジャッキポイントを確認する

ジャッキは、必ず指定位置(ジャッキアップポイント)にかけます。誤ると、車体がへこんだり、ジャッキが倒れて重大な傷害を受けるおそれがあります。位置は、取扱説明書で確認します(三菱自動車)。

5

ホイールナットを少しだけ緩める

タイヤが地面についた状態で、ナットを少し(トヨタの取扱説明書では約1回転)緩めます。この時点では外しません。

6

ジャッキをかけ、タイヤが地面から少し離れるまで上げる

ジャッキのねじ部に異物が付着していないか、事前に確認します(三菱自動車)。ジャッキの溝を、ジャッキセット位置にしっかりかけます(トヨタ)。

📝 ジャッキアップ前のチェックリスト

☑️ 平坦で硬い場所に停めた

☑️ エンジンを止め、AT車はP、MT車はR(三菱自動車の案内)に入れ、駐車ブレーキをかけた

☑️ ジャッキアップするタイヤから一番遠いタイヤの前後に、輪止めをした

☑️ 取扱説明書でジャッキポイントの位置を確認した

☑️ ジャッキのねじ部に異物が付いていない

☑️ 周囲に、人や物がない

3. 作業中にしてはいけないこと

メーカーは、ジャッキの取扱いを誤ると、車が落下して重大な傷害におよぶか、最悪の場合は死亡につながるおそれがあると警告しています。次の表は、公式の資料で確認できた「してはいけないこと」です。

📊 作業中にしてはいけないこと(確認日: 2026年9月25日)

してはいけないこと 理由・確認できた内容 出典
ジャッキで支えられている車の下に、体を入れる・もぐり込む 重大事故の多くは、車の下にもぐって作業をしている時に発生している。ジャッキが倒れて重大な傷害を受けるおそれがある トヨタ、三菱自動車
車をゆする ジャッキが倒れて、重大な傷害を受けるおそれがある 三菱自動車
ジャッキで支えている状態で、エンジンを始動する・車を走らせる 取扱説明書で禁止されている トヨタ
指定位置以外にジャッキをかける 車体がへこんだり、ジャッキが倒れて、重大な傷害を受けるおそれがある 三菱自動車
ジャッキのみで車を支え、その下で作業する 厚生労働省 長野労働局の死亡災害の速報(フォークリフトの点検整備の事例)は、ジャッキのみで支持した車体の下に潜り込んで行う作業は厳禁とし、車体が不意に降下しないよう、左右両側などに「介木」を設置してから作業するよう示している。ジャッキは、作業開始前に、各部の変形・亀裂、オイル漏れ、自然降下の有無を点検し、平坦な場所でジャッキアップするとされている 長野労働局(乗用車ではなくフォークリフトの事例)
走行直後に、ホイールやブレーキまわりにふれる 走行直後のディスクホイールやブレーキまわりは高温で、手や足がふれるとやけどをするおそれがある トヨタ

⚠️ 注意

長野労働局の事例は、フォークリフトの点検整備中の死亡災害で、乗用車の事例ではありません。ただし、「ジャッキだけで支えた車体の下に入らない」という考え方は、乗用車のDIYにも通じます。車の下での作業が必要な場合は、ジャッキスタンドを使うか、整備工場に依頼してください。

4. タイヤを付け替えたあとの確認:仮締め・本締め・トルク・増し締め

📊 タイヤ交換後の確認事項(確認日: 2026年9月25日)

項目 確認できた内容 出典
仮締めと本締め タイヤ交換後は、ナットを仮締めし、ジャッキを外して(車体を下ろして)から本締めする。仮締めは、がたつかなくなるまで、2回から3回に分けて行う。締める順番は、取扱説明書の図の番号順 JAF、トヨタ
規定のトルク 無理に締め付けるとボルトが破損する場合があるため、取扱説明書に記載の規定トルクで締める。規定値は車種で異なる(例:トヨタ ハリアーの取扱説明書は103N・m〔1050kgf・cm〕。他の車には当てはめない)。トルクレンチがない場合は、できるだけ早く、ガソリンスタンドや修理工場などで規定トルクの本締めを受ける JAF、トヨタ
ホイール接触面の汚れ 汚れていると、走行中にナットがゆるみ、タイヤがはずれるおそれがあるため、汚れを拭き取る トヨタ
ナットの向き・種類 使用しているホイール専用のナットを使用する。ナットは、必ずテーパー部を内側にして取り付ける。ねじ部やボルト穴に異常がある場合は、販売店で点検を受ける トヨタ
交換後の増し締め タイヤ交換後は、50〜100kmを目安に走行してから、ホイールナットの増し締めをする(タイヤメーカーの案内)。適切なトルクで締め付けられていなかったり、初期走行の環境変化などにより、まれにナットが緩むことがあり、最悪の場合、走行中にホイールが外れることもある コンチネンタルタイヤ
応急用タイヤ 応急用タイヤの側面には「TEMPORARY USE ONLY」と書かれており、応急用にのみ使用する。ハリアーの取扱説明書は、応急用タイヤ装着時は80km/h以上の速度で走行しないよう案内している。パンクしたタイヤは、速やかに修理する トヨタ(ハリアー)、JAF

5. 自分で作業しない判断:困ったときの相談先

📊 作業を任せる目安

状況 考え方 出典
工具・応急用タイヤ・ジャッキが車に備わっていない 最近は、ジャッキやレンチ、応急用タイヤが標準装備されていない車も増えている。工具・応急用タイヤがない場合は、JAFなどに依頼する JAF
自動車整備に不慣れで、自信がない 無理をせず、JAFなどのロードサービスに任せる JAF
車の下にもぐり込む作業が必要 ジャッキスタンドを使用する。手順や規定値が確認できない場合は、販売店・整備工場に依頼する トヨタ
高速道路・交通量の多い道路でのトラブル 対処の詳細は、当サイトの高速道路の記事を参照(この記事では、公式の資料で確認できた範囲のみ扱う) (当サイトの記事)

💡 相談先を、事前に確認しておく

JAFの会員サービスや、自動車保険のロードサービスの内容は、契約によって異なります。いざというときに慌てないよう、連絡先と、対象になるトラブルの範囲を、あらかじめ確認しておきましょう。

6. よくある質問

Q. 車載ジャッキで、車の下にもぐる作業(オイル交換など)をしてもよいですか?

A. トヨタの取扱説明書は、車載ジャッキをタイヤ交換・タイヤチェーンの着脱以外の目的で使用しないよう案内しています。また、ジャッキで支えられている車の下に体を入れないこと、車の下にもぐり込んで作業する場合は、ジャッキスタンドを使用することを示しています。車の下での作業は、整備工場に依頼する方法もあります。

Q. 輪止めがないときは、どうすればよいですか?

A. 三菱自動車の案内では、輪止めがない場合は、タイヤを固定できる大きさの石などで代用できるとされています。ただし、事前に輪止めを準備しておくと便利で安心とも説明されています。

Q. ジャッキポイントは、車のどこにありますか?

A. 車種ごとに異なります。三菱自動車の案内では、ジャッキは必ず指定位置(ジャッキアップポイント)にかけ、位置は取扱説明書で確認するよう示されています。

Q. ホイールナットの締め付けトルクは、何N・mですか?

A. 車種ごとに異なります。この記事に記載したトヨタ ハリアーの103N・mは一例で、他の車には当てはまりません。JAFは、取扱説明書に記載されている規定トルクで本締めし、トルクレンチがない場合は、できるだけ早く販売店や修理工場で本締めを受けるよう案内しています。

Q. 傾斜のある場所でジャッキアップしてもよいですか?

A. 三菱自動車は、平坦で安全な硬い場所に車を止めてジャッキアップするよう案内しています。傾斜のある場所での作業方法は、公式の資料で確認できなかったため、この記事では扱っていません。

まとめ

ジャッキアップは、車が不安定になる、事故の危険が大きい作業です。平坦で硬い場所に停め、エンジンを止めて駐車ブレーキをかけ、ジャッキアップするタイヤから一番遠いタイヤの前後に輪止めをし、取扱説明書で確認した指定位置にジャッキをかけます。ジャッキで支えた車の下には、体を入れないでください。車の下で作業する場合は、ジャッキスタンドを使うか、整備工場に依頼します。タイヤを付けたあとは、仮締めをして車体を下ろし、取扱説明書の規定トルクで本締めをします。工具がない、不慣れで不安なときは、JAFなどに任せてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。ジャッキの取扱い、ジャッキポイント、ホイールナットの規定トルクは車種・用具ごとに異なります。作業の前には、お車とジャッキの取扱説明書をご確認ください。安全に関わる作業は、販売店・整備工場・ロードサービスにご相談ください(2026年10月時点)。

アイキャッチ画像: Hydraulic Jack.jpg by Vanjaxsales, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

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