※この記事で紹介している動画は、2026年11月12日(木)19:00に公開予定です。公開までは、記事の中の動画は再生できません。公開後に再生できるようになります。
歌いながら話す動画『ホイールナットは対角線の順に締める?トルクレンチと増し締めの「共通」と「車で違う」点を、取扱説明書とJATMA資料で確認』の解説記事です。タイヤ交換のあとのナットの扱いを、国土交通省の「自動車の点検及び整備に関する手引」、JATMAの整備基準(乗用車用タイヤ編2026年版)、JAF、トヨタ・ホンダ・日産・スバル・マツダの取扱説明書とメーカーFAQで確認し直し、『共通の手順』『車で違うところ』『大型車の話』に仕分けました。動画で触れきれなかった補足と、動画とは別の切り口(資料が誰向けかの読み分け・場面別の確認先・よくある言い方の確認)を加えています。
車の取扱説明書の手順・数字は車ごとに違います。この記事の数字は、取扱説明書などに書かれた『例』で、他の車に当てはめないでください。手順の整理にとどめています。自信がなければ、販売店や整備工場へ。
📋 この記事の要点
✔ 共通の手順: JAFとトヨタ・スバルの取扱説明書は、ナットを少し緩める → ジャッキで上げる → 仮締め → 車を下ろして本締め、の順でした(日産ノート(E12型)は取り付けのページのみ確認。本締めは車を下ろしてから、という点はどれも同じです)。国土交通省の手引きは、反対側にある2つのナットを交互に、数回に分けて徐々に締め、最後にトルクレンチなどで規定トルクで締める、としています。細かい順番は車で違います(手引き:「最後の締め付け方法は、車の種類によって異なります」)。
✔ 車で違うところ: 規定トルクは、取扱説明書などの例でトヨタ シエンタ103N・m、ホンダ N-BOX108N・m、日産 ノート(E13型)108N・m、スバル BRZ120N・m、マツダ CX-30は108〜147N・m。ナットの形(N-BOXとノートでピッチ・二面幅が違う)、ねじ部の油(シエンタ・BRZ・ノートE12型の取説は塗らない/大型車向けの資料には塗る手順)、ジャッキや工具が付属するかも車で違います。
✔ 増し締めの「50〜100km」は大型車向けの数字: 国土交通省の要請と手引きの記載は大型車(車両総重量8トン以上または乗車定員30人以上)の話です。乗用車向けのJATMA整備基準は「走行初期(100km程度)」、確認した取扱説明書のページ(シエンタ・BRZ・ノートE12型)には走行距離の数字がなく、マツダの古い取扱書には約1,000kmの例があります。タイヤメーカーのコンチネンタルは、乗用車用などのタイヤの解説ページで「交換後50-100kmを目安」と案内しています(確認したのは1社です)。乗用車は、まず自分の取扱説明書と店の案内を確認してください。
✔ 統計も大型車のもの: 国土交通省の令和7年度の大型車の車輪脱落事故は128件(前年度120件)。約半分が11月から1月、約54%が脱着作業後1か月以内。乗用車の件数は、確認できませんでした。
✔ 迷ったら: 自分の車の取扱説明書と、タイヤを替えた店の案内に従い、トルクレンチがなければ店や整備工場に規定トルクでの締め付けを頼む(パンクの応急交換についてのJAFの案内)。確認日は2026年10月25日です。
▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
📑 目次
1. 動画の内容(要約):共通の手順・順番・車で違う点・増し締めの時期・大型車の話
2. 動画で触れきれなかった補足:手引きの原文・取扱説明書5車種の比較・ナットの形・ジャッキの注意・統計の詳細・確認できなかったこと
1. 動画の内容(要約)
動画は、聞き役の「かーぎーくん」と解説役のかけ合いです。冒頭と章の頭、まとめで歌い、本文はリズムに乗せた会話です。歌の歌詞には数字や条件を入れず(『ナットの順番?』『トルクはいくつ?』『増し締めもいつやるの?』『車でちがうよ、取説みよう』など)、数字と条件は語りと画面の表で示しています。

| 章 | 開始 | 内容 | 使った資料 |
|---|---|---|---|
| イントロ | 00:00 | 歌のフックと、『共通の手順』『車で違うところ』『大型車の話』の3つの分け方。取扱説明書の数字は車の例 | (各章の出典) |
| 共通の手順 | 00:42 | 平らで固い場所・パーキングブレーキ・対角線上のタイヤに輪止め。ナットはジャッキで上げる前に少し(約1回転)緩める。ジャッキの位置は取説の図で。接触面の汚れを拭き、そのホイールに合ったナットを使い、手で仮締め、車を下ろして本締め(本締めは車を下ろしてから、という点はJAF・トヨタ・スバル・日産ノートE12型とも同じ)。ジャッキや工具が載っていない車もある | JAF・トヨタ・ホンダ・日産・スバルの取扱説明書・国交省の手引き |
| 締める順番と回数 | 02:05 | 中心を挟んで反対側のナットを交互に、数回に分けて(手引き)。対角線の順序で(JATMA)。回数はJAFと手引きが2、3回、トヨタ・スバルが2、3度、日産ノートE12型が2回以上。足で踏む・パイプで延ばすのは避ける | 国交省の手引き・JATMA整備基準・JAF・取扱説明書 |
| トルク・ナット・ねじ部の油 | 02:56 | トルクは締める力の大きさ。足りなくても締めすぎても問題のおそれ(JATMA)。規定トルクの例5車種。N-BOXとノートでナットの形が違う。ねじ部の油は、シエンタ・ノートE12型の取説は塗らない、大型車向けの資料は塗る手順 | JATMA整備基準・各社取扱説明書とFAQ・国交省 東北運輸局の様式例 |
| 増し締めの時期 | 04:29 | 増し締めとは、走ったあとにもう一度規定トルクで締めること。国交省(大型車)は50〜100km、JATMAの乗用車用は100km程度、取説の例は距離の数字なし、マツダの古い取扱書は約1,000km。大型車の50〜100kmは大型車向けの数字で、乗用車はまず自分の取説と店の案内。トルクレンチがなければ店へ(パンクの応急交換のとき・JAF) | 国交省の要請と手引き・JATMA整備基準・各社取扱説明書・JAF |
| 大型車の統計 | 06:16 | 令和7年度の大型車の車輪脱落事故128件(前年度120件)。約半分が11月から1月、約54%が脱着作業後1か月以内。乗用車の件数は確認できなかった | 国交省 令和7年度の傾向分析 |
| まとめ | 07:06 | 車を下ろして本締め・反対側と交互に/トルク・ナット・油・道具は車で違う/増し締めの時期は資料で違う。自信がなければ店へ。締めの歌 | (上記) |
2. 動画で触れきれなかった補足
2-1. 国土交通省の手引き(告示第317号)の原文
「自動車の点検及び整備に関する手引」(国土交通省告示第317号)は、JATMAの整備基準(乗用車用タイヤ編2026年版)の『点検の実施の方法』『整備の実施の方法』の部分が載っています。タイヤの交換の「整備の実施の方法」から、ナットに関わる部分を、原文のまま引用します。
📜 手引 整備の実施の方法「タイヤの交換」(4)
「ホイール・レンチでホイール・ナットを少し(約1回転)緩めます。」ジャッキアップはその後です。
📜 同 (9)(接地してからの締め付け)
「ホイール・ナットを対角線の順序で2、3回に分けて、徐々に締め付けます。最後の締め付けは確実に行ってください。」(続けて括弧書きで)「最後の締め付け方法は、車の種類によって異なります」
📜 同 注意事項(7)(順番の考え方)
「ホイール・ナットの締付けは、当該ディスク・ホイールの中心点を挟んで反対側にある2つのホイール・ナットを交互に、かつ、個々のホイール・ナットが均等に締め付けられるように数回に分けて徐々に締める方法に則り行い、最後にトルク・レンチを用いるなどにより規定トルクで締め付けます。」
📜 同 (11)(増し締め。大型車に限った記載)
「大型車の場合、タイヤ交換後、ディスク・ホイールの取付状態に適度な馴染みが生じる走行後(一般的に50~100km 走行後が最も望ましいとされています。)、トルク・レンチを用いるなどにより規定トルク(自動車製作者が定めるトルク値をいう。)でホイール・ナットを締め付けます。」
(9)の『対角線の順序』は、(7)の「中心点を挟んで反対側にある2つのホイール・ナットを交互に」と同じ考え方です。(11)の増し締めは、冒頭が「大型車の場合」と限定されています。同じ手引きの注意事項(8)には、アルミ製とスチール製のディスク・ホイールで、それぞれ専用のホイール・ボルトとホイール・ナットが必要な車の種類があるという趣旨(大意)の記載もあります。
手引きの定期点検の項目にも「ホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩み」があり、点検の実施方法は「ホイール・ナット、ホイール・ボルトに緩みがないかをホイール・ナット・レンチなどにより点検します。」とされています。

2-2. JATMAの整備基準(乗用車用タイヤ編2026年版)
JATMAの基準は、「タイヤ販売店、整備工場等の整備者が、タイヤの分解、組立てを行う時の作業手順、注意事項を規定しています」と書かれた、整備する側向けの基準です。「車体への組付け」には次の項目があります。
| 項目 | 原文 |
|---|---|
| 順番 | 「ホイール・ナットは、対角線の順序で締め付けること。」 |
| トルク | 「ホイール・ナットは、車両に規定されたトルクで均等に締め付けること。」 |
| ナットの適合 | 「ホイールを交換する場合は、ホイールに適合したホイール・ナットを使用すること。」 |
| 締め忘れ | 「ホイール・ナットの締め忘れのないことを確認すること。」 |
| 増し締め | 「走行初期の段階でホイール・ナットの増し締めを行うこと。」 |
| 解説(トルク) | 「トルクレンチ等トルクを設定できる器具を使用して、自動車製作者が定める規定のトルクで締め付けて下さい。」 不足すると「ナットのゆるみやホイール・ボルト」の折れの原因、締めすぎると「ネジ山及びホイールの摩滅や破損」が発生し緩むおそれがある、と説明 |
| 解説(増し締め) | 「タイヤ取付け後、走行初期(100km 程度)の段階でナットの増し締めを行って下さい。」 |
2-3. 取扱説明書5車種の比較(確認した範囲)
次の表は、2026年10月25日に開いて確認した取扱説明書・メーカーFAQの記載です。確認したページに書かれていなかったことは『確認したページに記載なし』と書き、『書かれていない』とは断定していません。車名は例で、ほかの車や他の年式に当てはまるとは限りません。

| 車(出典) | 規定トルク | 締め方の書き方 | ねじ部の油 | 工具・スペア | 交換後の確認 |
|---|---|---|---|---|---|
| トヨタ シエンタ(取扱説明書「タイヤ交換」) | 103N・m(1050kgf・cm) | 手で仮締め → 車体を下げる → 「図の番号順でナットを2、3度しっかり締め付ける」 | 「ねじ部にオイルやグリースを塗らない」。ついていればふき取る | 「お客様の車にはタイヤパンク応急修理キットが標準装着のため、タイヤ交換に使用する以下の工具は搭載されていません。」(ジャッキ・ナットレンチ・輪止めなど) | 「ホイールの交換後は、すぐに103N・m(1050kgf・cm)の力でナットを締める」「タイヤを交換したあとは、速やかに締め付けトルクを確認してください。」距離の数字は確認したページに記載なし |
| ホンダ N-BOX(取扱説明書2026年版・FAQ) | 108N・m(11kgf・m)。FAQは「中央値」と注記 | 確認したページ(ローテーション・ジャッキ・タイヤとホイールの交換)に記載なし | 確認したページに記載なし | 「この車には、ジャッキが標準で搭載されていません。」 | 確認したページに記載なし |
| 日産 ノート(E13型はFAQ、E12型は取扱説明書) | 108N・m(11kg・m)(E13型FAQ)。E12型の取扱説明書も108N・m | E12型: 指で締める → レンチで図の順序に2回以上 → 接地するまで下げて確実に締める → 完全に下げる → トルクレンチ | E12型:「ボルトやホイールナットには絶対にオイルまたはグリースを使用しないでください。」 | (確認したページに記載なし) | E12型:「ホイールナットは、トルクレンチを使ってできるだけ早く指定のトルクで締め付けてください。」「タイヤを取り付けてしばらく走行したあと、ナットのゆるみや車体の振動などの異常がないか確認してください。」 |
| スバル BRZ(取扱説明書) | 120N・m(1224kgf・cm) | 手で仮締め → 車体を下げる → 図の番号順でナットを2、3度 | 「ねじ部にオイルやグリースをぬらないでください。」(取扱説明書301ページ「タイヤ交換時の注意」。ついていればふき取る) | (確認したページに記載なし) | 「ホイールの交換後はすぐに120 N・m(1224 kgf・cm)の力でナットをしめる」距離の数字は確認したページに記載なし |
| マツダ CX-30(電子取扱説明書) | 108〜147N・m(同ページのkgf・m併記は『12〜14』で、N・mの範囲と換算が一致しない。N・mのみ参照) | 確認したページに記載なし | 確認したページに記載なし | 「お客様のお車にはスペアタイヤが標準で搭載されていない」(タイヤの位置交換のページ。位置交換は販売店に相談) | 確認したページに記載なし |
参考として、マツダの古い取扱書(ATENZA [Qス_初版])には、ねじ部について「ナットやボルトにオイルやグリースをぬらないでください」、トルクは88〜118N・m、交換後は「標準タイヤに交換してから約1,000km走行した後、ナットにゆるみが無いことを確認してください」と書かれています。古い取扱書なので、現行車には当てはめないでください。
スバルのFAQは「ホイールナットの締付トルクついては、車種ごとにご用意しています」と書き、日産のFAQは型式と販売期間ごと(例: ノート2020年12月〜のE13型、2012年9月〜2020年11月のE12型)に載せています。メーカーによっては、同じ名前の車でも世代で別々に載っています。
2-4. ナットの形・ねじ部の油・専用ナット
| 項目 | ホンダ N-BOX(FAQ) | 日産 ノート(E13型 FAQ) |
|---|---|---|
| ねじ径 | M12 | M12 |
| ピッチ | 1.5mm | 1.25mm |
| ナット二面幅 | 19mm | 21mm |
| 座面形状 | 球面座(球面R12) | (FAQに記載なし) |
どちらもM12(ねじの直径12mm)ですが、ピッチと二面幅が違います。取扱説明書は、そのホイール専用のナットを使うよう書いています(トヨタ・スバル:「使用しているホイール専用のナットを使用する」、日産ノートE12型:「使用されていたホイールナット以外は絶対に使用しないでください。」)。JATMAの整備基準も「ホイールを交換する場合は、ホイールに適合したホイール・ナットを使用すること。」としています。トヨタ・スバルは、取り付けるときにナットのテーパー部を内側にする、とも書いています。
ねじ部の油は、確認した乗用車の取扱説明書(トヨタ シエンタ・スバル BRZ・日産 ノートE12型)では塗らないと書かれていますが、大型車向けの資料は逆です。スバル BRZ の取扱説明書は301ページの「タイヤ交換時の注意」に「ねじ部にオイルやグリースをぬらないでください。」と書き、ナットが必要以上に締め付けられてボルトが破損するおそれがあるとしています。国土交通省 東北運輸局のタイヤ脱着作業管理表(様式例)は、ホイール・ボルトとナットの「ネジ部にエンジンオイルなどの潤滑剤を薄く塗布する」を挙げ(方式の別は書かれていません。座面部(球面座)への塗布はJIS方式が対象)、ISO方式ではハブのディスク・ホイール取付面、ホイール合わせ面、ホイールと座金との当たり面には油脂類を塗布しないよう注意しています。令和8年度の緊急対策も、大型車について「各部位への潤滑剤の塗布」を挙げています。車の種類で手順が逆になるので、自分の車の取扱説明書が先です。
2-5. ジャッキと安全の注意(取扱説明書の警告)
| 内容 | 出典と原文 |
|---|---|
| ジャッキだけで支えた車の下に入らない | ホンダ N-BOX:「車がジャッキだけで支えられているときは、車の下に入らない。」/トヨタ:「ジャッキで支えられている車の下に体を入れない」/スバルも同趣旨 |
| 他の車のジャッキを使わない | トヨタ:「他の車のジャッキをお客様の車に使用しない」/ホンダ:「この車専用のジャッキをお使いください」(ジャッキの呼荷重・形状が合わない場合がある、と説明) |
| 走行直後のホイール・ブレーキ | トヨタ:「走行直後、ディスクホイールやブレーキまわりなどにはふれないでください」(やけどのおそれ) |
| 接触面の汚れ | トヨタ:「ホイール接触面が汚れていると、走行中にナットがゆるみ、タイヤがはずれるおそれがあります。」/日産ノートE12型・スバルも同趣旨 |
| 足で踏む・パイプで延ばす | 日産ノートE12型:「ホイールナットレンチを足で踏んで回したり、パイプなどを使って必要以上に締め付けないでください。ボルトが折れるおそれがあります。」 |
| 道具が載っていない車 | JAF:「ジャッキやレンチ、テンパータイヤがクルマに標準装備されていないケースも増えてきています」 |
パンク時の応急交換の手順(高速道路・路肩での注意を含む)は、既存記事『パンク時のスペアタイヤ交換の手順|JAFの手順と、締め付け・交換後の確認』、ジャッキアップの安全は『ジャッキアップの安全ポイント|ジャッキスタンド・輪止めと、やってはいけないこと』で整理しています。
2-6. 国土交通省の統計(大型車)の詳細
国土交通省 物流・自動車局の「令和7年度大型車の車輪脱落事故発生状況と傾向分析について」(令和8年9月)は、自動車事故報告規則に基づく報告などを集計した、大型車(車両総重量8トン以上、または乗車定員30人以上)の資料です。乗用車の件数は載っていません。
| 年度 | 平成28 | 29 | 30 | 令和元 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 件数 | 56 | 67 | 81 | 112 | 131 | 123 | 140 | 142 | 120 | 128 |

| 項目(令和7年度・128件) | 内容 |
|---|---|
| 月別 | 4月6、5月4、6月4、7月5、8月10、9月9、10月8、11月20、12月23、1月21、2月6、3月12。「約50%が令和7年11月~令和8年1月に発生」(20+23+21=64件) |
| 脱着作業から事故まで | 1か月以内69件(約54%)、2か月以内21件、3か月以内12件、4か月以内16件、5か月以内1件、6か月以内0件、6か月超3件、不明6件 |
| 人身事故 | 3件(3名が軽傷)。大型バスは128件中1件 |
| 事故車両調査(89台) | 「タイヤ脱着作業後の増し締めが実施されていない車両が散見された」 |
国土交通省が載せた事故車両調査の事例3件は、脱着後27日(約1,000km走行後・増し締め実施)、12日(約2,300km・未実施)、22日(約1,800km・未実施)でした。3件だけの例で、この数字を一般化することはできません。いずれも大型車です。
国土交通省の平成28年11月4日付資料(大型自動車等の車輪脱落事故防止)には、最後に「中型トラック等でも、ホイール・ボルト折損による車輪脱落事故が発生しています。車輪脱落事故防止のための留意事項は同様ですので、適切な作業の実施をお願いします。」とも書かれています。トラックなどの話で、乗用車のことは書かれていません。
2-7. 確認できなかったこと
(1) 乗用車のホイールナットの緩み・脱輪の公的な件数や傾向。(2) 乗用車に対して『走行後に何km』と定める国土交通省の基準(「50〜100km」は大型車向けの記載です)。(3) ホンダ N-BOX・マツダ CX-30・スズキ・ダイハツ・三菱のナットの緩め方・締め方の手順ページ(N-BOXは「ジャッキのかけかた」のページを輪止めの確認に使いましたが、ナットの緩め方・締め方のページは、確認したローテーション・ジャッキの取り扱い・タイヤとホイールの交換の3ページには見つかりませんでした。CX-30はトルクとタイヤの位置交換のページのみ確認。スズキ公式のPDFは確認時にメンテナンス中、ダイハツのFAQは到達できませんでした)。(4) 取扱説明書の図に書かれたナットの具体的な番号の並び(文字では確認できません)。図は「一例」としています。
3. 違った観点から整理する
3-1. 『どの資料が誰向けか』で読み分ける
資料を読み分けると、「50〜100km」の出どころが大型車向けの資料だったことが分かります。同じ「増し締め」でも、資料によって対象が違います。次の表は、対象が書かれている部分を並べたものです。

| 資料 | 対象(資料の書き方) | 増し締めの書き方 |
|---|---|---|
| 国土交通省の要請(平成29年11月14日) | 大型自動車等(「車両総重量8トン以上のトラック又は乗車定員30人以上のバス」)の車輪脱落事故防止 | 「[2] タイヤ交換後、50~100km走行後の増し締め」 |
| 国土交通省 平成28年11月4日付資料 | 大型自動車等(中型トラック等も「留意事項は同様」と記載) | 「締め付け後は初期なじみによってホイール・ナットの締付け力が低下します。」「50~100km 走行後を目安に増し締めを行います。」 |
| 国土交通省の手引き(告示第317号)(11) | 「大型車の場合」 | 「一般的に50~100km 走行後が最も望ましいとされています。」 |
| 全日本トラック協会のリーフレット(JATMAのサイトに掲載) | 大型車(ISO方式・インパクトレンチなどの内容) | 「50km~100km走ったら必ずトルクレンチで増し締めを!」(大型車向け) |
| JATMA整備基準 乗用車用タイヤ編2026年版 | 整備者(タイヤ販売店・整備工場等) | 「走行初期(100km 程度)の段階でナットの増し締めを行って下さい。」 |
| コンチネンタルタイヤ(日本語サイトの解説ページ。確認したのは1社) | タイヤを交換した人(ページの分類は「Passenger & Light Truck Tires」。自動車メーカーの取扱説明書や国交省の基準ではない) | 「新しいタイヤに交換した時は、交換後50-100kmを目安に走行してからホイールナットの増し締めをしましょう。」 |
| 取扱説明書(シエンタ・BRZ・ノートE12型の確認ページ) | その車の使用者 | 交換後すぐ(シエンタ・BRZ)/できるだけ早く、しばらく走ったあとに確認(ノートE12型)。距離の数字なし |
| マツダの古い取扱書(ATENZA) | その車の使用者 | 約1,000km走行した後、ナットにゆるみが無いことを確認 |
| JAF(パンク時のスペアタイヤ交換) | パンク応急の作業をする人(手順の中の「増し締め」は、車を下ろした直後の本締めを指す) | 「トルクレンチがない場合は、本締め後、できるだけ早くガソリンスタンドや修理工場などで規定のトルクで本締めをしてもらうか、不安が残る場合はJAFに連絡してください」 |
この表から言えるのは、『どの数字も、その資料が対象とする車・読む人に向けた数字』だということです。乗用車の使用者にとって一番近いのは、その車の取扱説明書と、タイヤを替えた店の案内です(この記事では、各店の案内の中身は確認していません)。取扱説明書に距離がない場合、JATMAの整備基準(整備者向け)は「走行初期(100km程度)」としています。タイヤメーカーの中には、乗用車用などのタイヤの解説ページで「交換後50-100kmを目安」と案内しているところもあります(コンチネンタル。確認したのは1社です)。国土交通省の要請と手引きの50〜100kmは大型車向けの記載ですが、他の資料にも50〜100kmの数字があるため、乗用車で一切使えない数字とは言い切れません。まず自分の取扱説明書と店の案内を確認してください。なお、JAFの手順にある「増し締め」は、車を下ろした直後の本締めのことで、走行後の増し締めとは別です。
3-2. 場面別の確認先
| 場面 | 確認すること | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 自分で替える | 取扱説明書で、規定トルク・ジャッキの位置・ナットの締め方(図の番号)・ねじ部の油。車を下ろしてから本締め。トルクレンチで規定トルク | トヨタ・スバル・日産ノートE12型・JAF・手引き |
| 店で替えてもらった | 増し締めの案内があるか、時期はいつか、確認してもらえるか、費用はいくらかを、その場で聞く | この記事では各店の案内を確認していない。JAFは(パンクの応急交換のページで)、トルクレンチがなければ店や修理工場で規定トルクの締め付けを頼むよう案内 |
| パンクで応急交換 | JAFの手順(輪止め・少し緩める・ジャッキ・仮締め・下ろして本締め・規定トルク)。工具やスペアが載っていない車もある | JAF。高速道路・路肩の注意は既存記事で整理 |
| 道具・自信がない | 店・整備工場・ガソリンスタンドへ。不安が残るときはJAF | トヨタ「不安がある場合は、トヨタ販売店にご相談ください」/JAF |
3-3. よくある言い方を、資料に照らす
よく見かける言い方を、確認した資料と並べました。正誤の判定ではなく、『資料にはこう書かれている』の整理です。
| よくある言い方 | 資料で確認できたこと |
|---|---|
| 増し締めは「50〜100km走行後」が決まり | 国交省の要請・手引きの数字は大型車向け。乗用車向けのJATMA整備基準は「100km程度」。確認した取扱説明書のページには距離の数字がなく、古いマツダの取扱書は約1,000km。タイヤメーカーのコンチネンタルは乗用車用などのタイヤの解説で「50-100kmを目安」と案内(確認は1社)。資料ごとに違う |
| ナットのねじ部には油を塗る | 確認した乗用車の取扱説明書(シエンタ・BRZ・ノートE12型)は塗らない。大型車向けの資料(東北運輸局の様式例・令和8年度緊急対策)は潤滑剤を塗る手順。車の種類で逆 |
| 強く締めるほど安心 | JATMA:足りないとナットの緩みやボルト折れの原因、締めすぎるとネジ山やホイールの摩滅・破損が発生し緩むおそれ。日産ノートE12型・マツダ旧型:足で踏む・パイプで延ばすなどで必要以上に締めない |
| ナットは星形に締める | 手引き:中心を挟んで反対側にある2つのナットを交互に。JATMA:対角線の順序。取扱説明書の図に番号がある車は、その番号の順(トヨタ・スバル「図の番号順」) |
| 規定トルクは大体どの車も同じ | 例だけでも103、108、120、108〜147N・mと分かれる。同じメーカーでも型式・年式で分けて載せる(日産FAQ) |
| ジャッキもスペアタイヤも車に付いている | シエンタは応急修理キット標準でジャッキ等は搭載なし、N-BOXはジャッキ標準搭載なし、CX-30はスペアタイヤ標準搭載なし。JAFも、標準装備されない車が増えていると案内 |
| 脱輪事故の件数は〜件 | 国交省の件数は大型車のみ(令和7年度128件)。乗用車の件数は確認できなかった |
4. よくある質問
5. あわせて読みたい・まとめ・出典
📊 あわせて読みたい(サイト内の関連記事)
- タイヤ交換後の「増し締め」はなぜ必要?正しい締め付け手順
- スタッドレスは雪が降ってから履き替えると遅い?平年の初雪日・3℃・増し締め・保管の空気圧を出典で確認
- パンク時のスペアタイヤ交換の手順|JAFの手順と、締め付け・交換後の確認
- ジャッキアップの安全ポイント|ジャッキスタンド・輪止めと、やってはいけないこと
まとめ
ナットの締め方には、資料や取扱説明書に共通して書かれていること(車を下ろしてから本締め、反対側にあるナットを交互に数回に分けて、最後にトルクレンチなどで規定トルク、接触面の汚れを拭く、そのホイールに合ったナットを使う)と、車で違うこと(規定トルク・ナットの形・ねじ部の油・ジャッキや工具の有無・細かい締め方の順番)があります。
増し締めの「50〜100km」は、国土交通省の大型車向けの資料の数字です。乗用車向けのJATMAの整備基準は「走行初期(100km程度)」、取扱説明書の例には距離の数字がないものや約1,000kmのものがあります。タイヤメーカーの中には乗用車向けにも「50-100kmを目安」と案内しているところもあります(確認したのは1社です)。統計は大型車のもので、乗用車の件数は確認できませんでした。自分の車の取扱説明書と、タイヤを替えた店の案内を先に確認し、自信がなければ販売店・整備工場へ頼みましょう。
📊 出典(確認日2026年10月25日)
- 国土交通省「自動車の点検及び整備に関する手引」(告示第317号)の点検・整備の実施の方法を載せたJATMA『自動車用タイヤの選定、使用、整備基準 乗用車用タイヤ編 2026年版』(PDF)
- 国土交通省 報道発表(平成29年11月14日)「ホイール・ボルト折損等による大型自動車等の車輪脱落事故防止について」
- 国土交通省 自動車局整備課(平成28年11月4日)「ホイール・ボルト折損による大型自動車等の車輪の脱落事故防止について」(PDF)
- 国土交通省 物流・自動車局「令和7年度大型車の車輪脱落事故発生状況と傾向分析について」(令和8年9月)(PDF)
- 国土交通省「大型車の車輪脱落事故防止『令和8年度緊急対策』」(令和8年9月30日)(PDF)
- 国土交通省 東北運輸局『タイヤ脱着作業管理表(様式例)』(PDF)
- JATMA「大型車車輪脱落事故防止に関する情報」
- 全日本トラック協会『ストップ!!車輪脱落事故〜タイヤ交換作業の手順と方法〜』(大型車向け。JATMAのサイトに掲載)(PDF)
- JAF クルマ何でも質問箱「パンクしたときのタイヤの交換方法は?(応急用タイヤへの交換)」
- トヨタ シエンタ(HEV)取扱説明書「タイヤ交換」
- トヨタ シエンタ(ガソリン車)取扱説明書「タイヤ交換」
- ホンダ N-BOX 取扱説明書(2026年版)「タイヤのローテーション」
- ホンダ N-BOX 取扱説明書(2026年版)「ジャッキの取り扱い」
- ホンダ N-BOX よくあるご質問「N-BOXのホイールナットの形状を教えて」
- 日産 ノート(E12型)取扱説明書「タイヤの取り付けかた」
- 日産 FAQ『ノート(2020/12〜・E13型)ホイールナットのサイズと締め付けトルクを教えて』
- スバル BRZ 取扱説明書(PDF)
- スバル FAQ「ホイールナットの締付トルクを教えてください。」
- マツダ CX-30 電子取扱説明書「ホイールナットの締め付けトルク」
- マツダ CX-30 電子取扱説明書「タイヤの位置交換(タイヤローテーション)」
- マツダ ATENZA 取扱書 [Qス_初版](古い取扱書の例)「タイヤ交換」
- コンチネンタルタイヤ(日本語サイト)「タイヤ交換後の増し締め」(タイヤメーカーの案内の例)
図はすべて自作のイラスト・図です(AI生成画像は使っていません)。音声は VOICEVOX:四国めたん・VOICEVOX:玄野武宏。


コメント