「ヘッドライトを社外のLEDやHIDに替えたら、車検に通らなかった」。こうした話を聞いたことはありませんか。LEDやHIDだから駄目、というわけではなさそうですが、車検で何が見られていて、どこが落とし穴なのかは意外と整理されていません。
この記事は、YouTubeショート「社外LED・HIDのヘッドライト、車検に通らないことがあるって知ってた?」の解説記事です。動画の内容を道路運送車両の保安基準・細目告示、国土交通省・自動車技術総合機構・軽自動車検査協会のお知らせ、JAF、小糸製作所の製品ページで確認し直し、動画では触れきれなかった「条文の言い方」「6,400カンデラの適用範囲」「交換前後に確認したいこと」を加えました(確認日: 2026年10月)。ヘッドライトの黄ばみやくもりについては、別の記事で詳しく解説しています。
📋 この記事の要点
✔ 保安基準と告示が見ているのは、光源の種類ではなくロービームの性能。「前方40mの障害物を確認でき、他の交通を妨げない」ことが求められ、今回確認した条文に「LED」の語は出てこない
✔ 灯光の色は「白色」(細目告示第198条)。色温度(ケルビン)による合否の数値基準は、確認できなかった
✔ 国のお知らせは、前照灯ユニットと相性の悪いバルブに交換した車が、光度不足・配光の崩れのまま受検している例が多いと説明(令和6年8月)。「LED」「HID」という語は使っていない
✔ 平成10年9月1日以降に製作された車は、2026年8月1日から全車ロービーム計測。「1灯6,400cd以上」は、最高光度点の位置による計測方法の判定値
✔ 小糸製作所も、車検対応品でも車両の状態等により車検に通らない場合があると明記。適合車種以外への取付けや、先進機能への影響にも注意書きがある
🎬 動画で見る(ショート)
この記事の元になった、かーぎーくんのショート動画です。動画では触れられなかった詳しい内容や条文・公式情報は、このあと記事で確認できます。
▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
・動画の「光度は1灯につき6,400カンデラ以上」は、令和6年6月のお知らせで示された「最高光度点の位置によるロービーム計測方法」の判定値です。動画の言い方だと、6,400cdが全車共通の基準のように聞こえますが、実際は上記の計測方法の判定値です。計測方法ごとの違いは第4章で説明します。
・動画の「2026年8月1日から、ロービームで測る検査に移行」は、全車がロービーム計測になった、という意味です。ロービーム計測自体は、平成27年(2015年)9月1日から原則として行われていました(軽自動車検査協会、平成30年2月のお知らせ)。第4章で説明します。
・動画の「色は白色」は、現行の告示のとおりです。ただし、検査の規程(審査事務規程)では、平成17年12月31日以前に製作された自動車は「白色又は淡黄色」とされています(第2章)。
・国のお知らせの「相性の悪いバルブ」は、LEDやHIDという語を使っていません。動画の「LEDやHIDが悪いわけじゃなくて、その車に合うかどうかが大切」は、お知らせの内容と矛盾しない読み方ですが、国がLEDやHIDについて述べたものではない点にご注意ください。
📑 目次
1. 条文が見ているのは「光源の種類」ではなく「ロービームの性能」
ヘッドライトのうち、ロービームの正式名称は「すれ違い用前照灯」です(JAF)。保安基準第32条第5項は、これについて次のように定めています。
📜 道路運送車両の保安基準 第32条第5項(条文の引用)
すれ違い用前照灯は、夜間に自動車の前方にある交通上の障害物を確認でき、かつ、その照射光線が他の交通を妨げないものとして、灯光の色、明るさ等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。
具体的な基準は、細目告示第198条第6項にあります。
📊 細目告示第198条第6項の内容(要約)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 前方の確認 | そのすべてを同時に照射したとき、夜間に前方40m(一部の特殊な自動車は15m)の距離にある交通上の障害物を確認できる性能(第1号) |
| 他の交通 | 照射光線が他の交通を妨げないこと(第1号) |
| 灯光の色 | 走行用前照灯の基準(第2項第3号)に準じ、白色であること(第3号) |
| 灯器の状態 | 灯器が損傷し、またはレンズ面が著しく汚損していないこと(第2項第4号に準ずる) |
| 取付部 | レンズ取付部に緩み、がた等がないこと(第2項第5号に準ずる) |

この条文と告示には、「LED」という語は出てきません。HIDにあたる放電灯は、第7項第7号に「放電灯光源を備えるすれ違い用前照灯は、走行用前照灯が点灯している場合に消灯できない構造であること」という構造の基準として出てきます。HIDキットなどがこの構造をどう満たしているかは、今回確認できませんでした。
2. 落とし穴1: 光の色は「白色」
動画の1つ目の落とし穴です。条文を確認します。
📜 細目告示 第198条 第2項第3号(第6項第3号により、すれ違い用前照灯にも準用)
走行用前照灯の灯光の色は、白色であること。
国土交通省の「不正改造の具体例」のページは、「灯光色が指定の色以外のものであれば、他の運転者や歩行者などに誤解を与え危険であるため、灯光色の変更を禁止」していると説明しています。なお、このページが個別に例示している色は、車幅灯・尾灯・制動灯・方向指示器などで、ヘッドライトの色は個別の例には載っていません。ヘッドライトの根拠は、上の告示です。
📊 色について確認できたこと
| 項目 | 確認できたこと |
|---|---|
| 法令上の基準 | 灯光の色は白色であること(細目告示第198条) |
| 審査の方法 | 「視認等その他適切な方法」で審査する(自動車技術総合機構 審査事務規程7-66-2) |
| 色温度(ケルビン)の数値基準 | 告示、審査事務規程、国のお知らせのいずれにも、確認できなかった |
| 古い車 | 平成17年12月31日以前に製作された自動車は、「白色又は淡黄色」で、同時に点灯する走行用前照灯を含む全てが同一であること(審査事務規程7-66-9) |
| メーカー表示の例 | 小糸製作所のヘッドランプ用LEDバルブ(「車検対応」と表示)の色温度の表記は6,000〜6,500K。同社FAQでは、通常のハロゲンバルブは3,000〜3,150K。これは製品の仕様で、合否の基準値ではない |
そのため、この記事では「何ケルビンまでなら通る」とは書きません。条文が求めているのは数値ではなく「白色であること」で、色は検査で視認等により審査されます。同じ小糸製作所が、車検対応品であっても車検に通らない場合があると注記している点は、第3章で触れます。
3. 落とし穴2: ライトとの相性で配光が崩れる
2つ目の落とし穴です。国土交通省・自動車技術総合機構・軽自動車検査協会のお知らせ(令和6年8月)には、次の記載があります。
📜 お知らせ「ロービームの光度及び向きの適切な整備・調整のお願い」(令和6年8月。要旨)
ロービーム計測で基準不適合となる自動車には、①レンズ面のくもり、②内部リフレクタの劣化、③前照灯ユニットと相性の悪いバルブに交換した等により、光度が不足した状態や配光が崩れた状態のまま受検しているものが多く見受けられる。
✔ ③の「相性の悪いバルブ」は、お知らせではLEDやHIDに限定されていません(「LED」「HID」の語はありません)
✔ 原因は③だけではなく、①②(灯具の劣化)も並べて挙げられています。バルブが原因でなくても、不適合になりうるという読み方ができます(当サイトの整理)。黄ばみ・くもりについては別の記事で解説しています
✔ 令和8年5月のお知らせは、バルブの交換を、効果的な整備・修理の一例にも挙げています(「必ずしも基準に適合するものではありません」との注記つき)。バルブ交換そのものが悪いのではなく、合うかどうかが問われている、と読めます

「相性」とは何か(メーカーの説明から)
小糸製作所のFAQは、H4ハロゲンバルブのロービームについて、「ロービーム用フィラメントは焦点の少し上に設置されていて、光源の位置がずれているために光束は下向きになる」と説明しています。灯具(反射鏡)は、光源の位置や形に合わせて設計されているということです。
ここから先は当サイトの整理で、公的資料に書かれた内容ではありません。発光部の位置や形が違うバルブに替えると、同じ灯具でも光の出方が変わりうる、と考えると、国のお知らせの「相性」という言葉と話がつながります。
メーカーの注意書き(小糸製作所の製品ページ)
📊 小糸製作所 LEDホワイトビーム・LED Vホワイト(ヘッドランプ用)の注意書き(2026年10月確認)
| 項目 | 書かれていること |
|---|---|
| 適合 | 純正H4/H11/HB3ハロゲンヘッドランプ装着車用(一部除く)の交換用バルブで、他のランプには使用しない。適合の可/不可があり、適合車種以外に取付けた場合は車検に通らない場合がある |
| 「車検対応」の意味 | 「車検対応品ですが、車両の状態等により車検に通らない場合」があり、また「純正バルブと異なった光であることから自動車検査場によっては車検に通らない場合」がある |
| 用途 | HB3/HB4タイプは、ヘッドランプ・フォグランプ以外への装着は配光不良の原因になり使用できない |
| 光のばらつき | LEDの特性上、色味・輝度にバラツキがある場合がある |
なお、同社のH4タイプは、製品ページで「販売終了」と表示されていました(2026年10月時点)。
4. 落とし穴3: 車検は「ロービームの光度と向き」で見る
📊 ロービーム計測の経緯(対象は平成10年9月1日以降に製作された自動車)
| 時期 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 平成27年(2015年)9月1日 | 原則としてすれ違い用前照灯(ロービーム)の計測を実施。ただし、お知らせの時点(平成30年2月)では、検査機器による計測が困難な一部の自動車は、当面の対策として走行用前照灯(ハイビーム)に切り替えて検査 | 軽自動車検査協会(平成30年2月のお知らせ) |
| 令和6年(2024年)8月1日 | 全車ロービーム計測への移行が予定されていた(のちに令和8年8月1日に延期)。ただし、一部の地域・検査場は、期限より前にロービーム計測へ移行済みでした(例: 九州運輸局管内の佐賀・大分の各事務所)。この日から、カットオフラインが確認できない自動車などに対する「最高光度点の位置によるロービーム計測方法」も見直された | 令和8年5月: 国土交通省・自動車技術総合機構・軽自動車検査協会/令和6年6月: 自動車技術総合機構・軽自動車検査協会/地域の移行: 国土交通省九州運輸局のお知らせ |
| 令和8年(2026年)8月1日 | 全車ロービーム計測に移行 | 同(令和8年5月) |
対象から除かれるのは、二輪自動車、側車付二輪自動車、最高速度35km/h未満の大型特殊自動車、最高速度20km/h未満の自動車、被牽引自動車です(お知らせの注記)。検査はヘッドライトテスタで行われ、ロービームが前方40mの障害物を確認できることと、照射光線が他の交通を妨げないことを見ます(令和6年8月のお知らせ)。
「6,400カンデラ」が使われる計測方法
動画の「1灯につき6,400カンデラ以上」は、令和6年6月のお知らせにある、次の計測方法の判定値です。
📊 「最高光度点の位置によるロービーム計測方法」(令和6年6月のお知らせ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる自動車 | ①カットオフラインが確認できないすれ違い用前照灯(レンズの表面にくもりがないものに限る)を備える自動車 ②指定自動車等以外の自動車(指定自動車等は、型式の指定を受けた自動車などを指す用語。細目告示第2条第1号) |
| 判定: 最高光度点の位置 | 示された2つの範囲のいずれかの中にあること。うち1つは、照明部の中心から下方20〜150mm、左右270mm以内(照明部中心高さが1mを超える場合は、20mmを70mmに、150mmを200mmに読み替え) |
| 判定: 光度 | 最高光度点における光度が1灯につき6,400cd以上 |
お知らせの注記によると、指定自動車等以外の自動車は、「エルボー点の位置による計測」または「最高光度点の位置による計測」のいずれかでロービームを計測します。つまり「6,400cd以上」は、ロービーム計測すべてに共通する数字ではなく、この計測方法の判定値です。エルボー点の位置による計測での光度の判定値は、今回確認した公的資料には記載がありませんでした。
なお、カットオフライン(明暗の境目)が確認できない配光は、①の方法の対象になりうると読めます(当サイトの読みです。国の資料はLEDやHIDに触れていません)。実際にどの方法で計測されるかは、検査場でご確認ください。
向き(光軸)の確認
JAFによると、ロービームのカットオフラインは、通常は1%程度下向き(10m先で10cm下がる)に調整されています。バルブを交換したときや、ライトが上を向いていると感じたときは、次の簡易チェックができるとされています。
| 手順 | 内容(JAF Safety Light) |
|---|---|
| 1 | 平坦な場所で、車内に重量物を置かない |
| 2 | 体の一部にカットオフラインを映し、指で押さえる |
| 3 | そのまま車から5m離れ、カットオフラインが指の位置より5cm下に来ていれば問題なし |
| 4 | 上に来てしまったら、整備工場やディーラーに相談する |
国のお知らせは、調整のときの注意として、レベリング装置の位置を標準状態に戻してから調整を始めること、照射光線は合格エリアの端ではなく中央に合わせることを挙げています。JAFの簡易チェックは目安で、車検の合否はヘッドライトテスタの計測で決まります。
5. 交換前後に確認したいこと、メーカーと国の注意

📊 車検以外にも、メーカーや国が注意していること
| 項目 | 書かれていること |
|---|---|
| 先進機能 | カメラ、ミリ波、赤外線、超音波などを利用した先進技術は、純正バルブの使用を前提に設計・調整されているため、装着により正常に動作しなくなる恐れがある。例として、アダプティブヘッドランプ、オートマチックハイビーム、衝突被害軽減システムなど(小糸製作所) |
| 表示灯・ちらつき | ハイビームインジケータが正常動作しない場合は、取付作業をやめる。アイドリングストップ車等では、始動時にちらつく場合がある(小糸製作所) |
| 取り付け | 整備工場またはカーディーラーで行う。誤った接続は不点灯・誤作動の原因になる。登録前の車両には取付けできない(小糸製作所) |
| HIDの場合 | ディスチャージランプは、バルブと安定器(バラスト)がセットで初めて光を発するシステムで、バルブを交換しただけでは機能しない(小糸製作所FAQ)。HIDバルブは高電圧で点灯するため、交換時はバッテリーの端子を外してから作業する(同社の注意事項) |
| 火災 | バッテリー付近に取付ける後付電装品(HIDヘッドランプ等)に起因する火災や、不適切な取付けが原因と推定される火災が発生している(国土交通省) |
| ワット数 | 今使っているバルブよりワット数の高いものは、灯体やレンズが樹脂の場合、熱で溶ける可能性があり勧めない(小糸製作所FAQ) |
基準に適合しなくなったときの扱い
道路運送車両法第99条の2は、何人も、自動車検査証が交付されている自動車などについて、自動車の改造、装置の取付けまたは取り外しその他これらに類する行為であって、その自動車が保安基準に適合しないこととなるものを行ってはならない、と定めています。違反した場合は、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(第108条)。また、使用者に対しては、保安基準に適合しない状態の原因が改造や装置の取付けによると認められるとき、地方運輸局長が必要な整備を命ずることができ(第54条の2)、命令に従わないと6月以内の使用停止の対象になりえます。
6. よくある質問
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▶ ヘッドライトの黄ばみは表面コーティングの劣化|ガラスから樹脂へ1981年の転換と車検のしくみ【2026年】
まとめ
社外のLED・HIDバルブに替えたヘッドライトの車検で、動画が挙げた3つの落とし穴を、条文と公式資料で確認しました。(1)色は、すれ違い用前照灯も「白色であること」(細目告示第198条)で、数値基準は確認できませんでした。(2)相性は、国のお知らせが「前照灯ユニットと相性の悪いバルブに交換した」ために光度不足・配光の崩れのまま受検する例が多いと説明しています(LED・HIDという語はありません)。(3)検査は、2026年8月1日から全車ロービーム計測で、「1灯6,400cd以上」は最高光度点の位置による計測方法の判定値です。
小糸製作所は、車検対応品でも車両の状態等により通らない場合があると明記しています。LEDやHIDそのものが悪いのではなく、その車のライトに合うか、色・光度・向きが基準に合っているかが問われます。迷ったら、交換前に販売店や整備工場に相談しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令・基準・検査の運用、メーカーの製品情報は改訂・変更されることがあります。最新の内容や個別の判断は、国土交通省・運輸支局・検査場、ご利用の販売店・整備工場、メーカーの公式情報でご確認ください(2026年10月時点)。LEDやHIDの使用そのものを禁止・推奨するものではありません。
参考(一次情報・公的機関・メーカー・JAF): e-Gov法令検索 道路運送車両の保安基準(第32条)/同 道路運送車両法(第54条の2・第99条の2・第108条)/国土交通省 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第198条(前照灯等)/同 第1条・第2条(定義)/自動車技術総合機構 審査事務規程 7-66,8-66 すれ違い用前照灯/国土交通省 不正改造の具体例/同 不正改造に対する罰則等/国土交通省・自動車技術総合機構・軽自動車検査協会 お知らせ(令和6年8月)/自動車技術総合機構・軽自動車検査協会 お知らせ「カットオフラインが確認できない自動車などのロービーム計測について」(令和6年6月)/国土交通省九州運輸局 お知らせ「令和8年8月1日より、ロービーム計測に移行します」/国土交通省・自動車技術総合機構・軽自動車検査協会 お知らせ(令和8年5月)/軽自動車検査協会 お知らせ(平成30年2月)/JAF Safety Light 光軸チェック/小糸製作所 ヘッドランプ専用LEDホワイトビーム/同 LED Vホワイト(ヘッドランプ用)/同 よくある質問(自動車用電球)/同 注意事項/国土交通省 後付電装品の火災にご注意!
図はすべて自作のイラストです(AI生成なし)。配光の図は概念図で、実際の見え方を再現したものではありません。


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