台風が近づく中、ペットと一緒に車で動くのは、避難が必要になった場合など、やむを得ない場面に限りたいものです。この記事では、台風時の車移動をどう判断するか、走行中にペットをどう固定するか、車内で気をつけたいこと、避難所についての事前確認を、環境省・JAF・法令などの公的・一次情報で整理しました。
📋 この記事の要点
✔ 台風の接近中は、そもそも車での外出を控えるのが基本。NEXCO東日本は2026年9月21日、台風25号の影響で「車での外出をお控えください」と呼びかけた
✔ 走行中に、ペットを膝の上に乗せたり、車内を自由に動けるようにしたりすることは、JAFがNG行為として挙げている。道路交通法第55条第2項は、運転者の視野や操作を妨げる乗車をさせて運転することを禁じている
✔ JAFは、ハードクレートを後部座席などのフラットな場所に置き、シートベルトなどで固定する方法を、もっとも安心な方法として紹介している
✔ 環境省のガイドライン(2018年3月)でいう「同行避難」は、ペットと一緒に避難する行動のこと。避難所でペットと同じ部屋で過ごせることを意味しない
✔ JAFの実験(2012年8月・気温35度)では、窓を3cm開けた車でも、車内の最高温度は45度に達した。ペットを車内に残すのは避ける
📑 目次
1. 台風の接近中、ペットとの車移動をどう考えるか
台風の接近中は、ペットを連れているかどうかにかかわらず、車での移動自体にリスクがあります。まず「本当に今、車で動く必要があるか」を考え、そのうえで、やむを得ない場合の備えを確認しておくことが大切です。判断の材料になる公的情報を、表にまとめます。
📊 車で動くかどうかを考える材料
| 判断の材料 | 公的資料に書かれている内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 風の強さ | 平均風速20m/s以上25m/s未満の「非常に強い風」では、走行中の車について「通常の速度で運転するのが困難になる」。25m/s以上30m/s未満では「走行中のトラックが横転する」 | 気象庁「風の強さと吹き方」 |
| 雨の強さ | 1時間雨量30mm以上50mm未満の「激しい雨」では、高速走行時にハイドロプレーニング現象が起きうる。50mm以上80mm未満の「非常に激しい雨」では「車の運転は危険」 | 気象庁「雨の強さと降り方」 |
| 冠水・浸水 | アンダーパス、川沿い、海岸沿い、急傾斜地には近づかない。水位が上がってからの自動車での避難は、大変危険なので控える | JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」 |
| 高速道路 | 通行止めが実施されることがある。NEXCO東日本は、2026年9月21日19時発表のお知らせで、台風25号の影響により通行止めを実施している区間があるとして、車での外出を控えるよう呼びかけた | NEXCO東日本 |
| 避難情報 | 市区町村が出す避難情報は、警戒レベル3「高齢者等避難」、警戒レベル4「避難指示」、警戒レベル5「緊急安全確保」。2021年5月に「避難勧告」は廃止され、避難指示に一本化された | 内閣府(防災担当)、気象庁 |
📌 補足
気象庁の風の表にある平均風速は10分間の平均で、瞬間風速は平均風速の1.5倍程度になることが多い(大気が不安定な場合は3倍以上になることもある)とされています。また、風速は地形や周りの建物の影響を受けるため、観測所の値と、実際にいる場所の風は異なることがあります。
⚠️ ペットのために、危険な状況で無理に動かない
避難の必要があるかどうかは、自宅の場所や、ハザードマップ、市区町村の避難情報によって異なります。個別の判断は、お住まいの市区町村など公的な窓口の情報に従ってください。ペットを連れているからといって、危険な場所を通って移動することは避けましょう。
2. 走行中の固定と、道路交通法のルール
車で動くことになった場合、走行中のペットの安全は、固定の仕方で大きく変わります。JAF Mate Onlineは、次のような乗せ方を「やってはいけないNG行為」として紹介しています。
📊 走行中の乗せ方(JAF Mate Online)
| 乗せ方 | JAFの解説 | 道路交通法との関係 |
|---|---|---|
| ドライバーの膝の上に乗せて運転する | NG行為 | JAFは、道路交通法第55条第2項(乗車又は積載の方法)に違反することになる、と解説 |
| 車内を自由に動ける状態で運転する | NG行為 | 同上 |
| 走行中、窓を開けて顔を出させる | NG行為 | 同上 |
| ハードクレートに入れ、後部座席などのフラットな場所に置き、シートベルトなどで固定する | 「一番安心・安全」として紹介。急ブレーキや急ハンドルでも全身が囲われている | – |
| 大型犬に、後部座席や荷室に敷くドライブシートや、犬用のシートベルトを使う | 大型犬向けの方法として紹介 | – |
道路交通法第55条第2項は、車両の運転者は、運転者の視野やハンドルなどの装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害するような乗車をさせ、または積載をして車両を運転してはならない、という趣旨の規定です(e-Gov法令検索で条文を確認)。法令の適用の判断は個別の状況によるため、詳しくは警察など公的な窓口にご確認ください。
🧭 出発前の固定手順
普段からクレートに慣らしておく
JAFは、旅行や病院のときだけクレートを使うと、嫌がったり怖がったりする犬もいるとして、普段から家の中で自由に出入りできるようにして「クレート=安心できる場所」にしておくことを勧めています。
置き場所を決める
JAFは、クレートは後部座席などのフラットな場所に置くよう紹介しています。
シートベルトなどでクレートを固定する
クレートが走行中に動かないようにします。固定方法は、クレートの取扱説明書も確認します。
運転者の視野・操作を妨げないか確認する
荷物やクレートが、後方の視界や、ペダル・ハンドルの操作の邪魔にならないかを、出発前に確かめます。
3. 車内での体調管理と、熱中症への注意
ペットにとって、車内は暑さの影響を受けやすい環境です。JAFは、ペットと車内で避難するときの注意として、たとえ曇っていても日中の車内は想像以上に温度が上がることがあるため、頻繁に窓を開けて換気し、十分な水分を与えるよう呼びかけています。やむを得ずペットを車内に残す場合は、たっぷりの飲み水を置き、車内温度に注意するとしています。
📊 炎天下の車内温度(ミニバン5台、埼玉県戸田市、晴れ、気温35度、正午から4時間・各車の室温を25度に揃えて測定)
| 条件(JAFユーザーテスト・2012年8月22日、23日) | 車内最高温度 | 車内平均温度 |
|---|---|---|
| 対策なし(黒い車) | 57度 | 51度 |
| 対策なし(白い車) | 52度 | 47度 |
| サンシェード装着 | 50度 | 45度 |
| 窓を3cm開けた状態 | 45度 | 42度 |
| エアコン作動 | 27度 | 26度 |
JAFは、この結果について、サンシェードや窓開けによる対策は温度を抑える効果が低く、人や動物が耐えられない温度になるとして、車内温度の上昇を防ぐことはできないと述べています。また、エアコン作動車は温度の上昇を防げる一方、エンジンをかけたままだと、誤操作で車が動いたり、燃料切れでエンジンが止まったりする可能性があると指摘しています。なお、同じテストのうち、子どもを車内に残した状況を想定した測定では、エアコン停止からわずか15分で、熱中症指数が危険レベルに達しました。
📊 車内・避難先での体調管理
| 項目 | JAFが示している内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 犬にとっての適切な温度・湿度 | 一般的に、温度18〜28度、湿度40〜60%。車内では25〜27度くらいを目安にエアコンをかける | JAF Mate Online |
| 動物の熱中症の主な症状 | 意識がない、意識はあるが倒れて動かない、息が荒い、身体が熱い、舌が異常に赤い、など | JAF「ペットの防災」 |
| 避難先での体調 | 慣れない場所で飼い主が近くにいないと、ペットは強いストレスを感じ、むやみに吠えたり攻撃的になったりすることがある。食欲不振、下痢、便秘なども出やすくなる | JAF「ペットの防災」 |
| 車内で長く過ごす飼い主の注意 | 長時間の車内生活では、エコノミークラス症候群の危険がある。定期的に車外に出て運動し、水分をこまめにとる | JAF「ペットの防災」 |
📌 補足
雷や強風の音などで、落ち着きがなくなるペットがいることは知られていますが、対応は、かかりつけの動物病院など専門家にご相談ください。
4. 避難所でのペットの扱いを、事前に確認しておく
「ペットと一緒に避難する」といっても、言葉ごとに意味が違います。環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」(2018年3月)は、次のように整理しています。
📊 「同行避難」と「同伴避難」の違い
| 用語 | 環境省ガイドラインでの意味 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 同行避難 | 災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所等まで避難すること。ペットと共に移動を伴う避難行動を指す | 避難所等で飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味しない |
| 同伴避難 | 被災者が避難所でペットを飼養管理すること(状態)を指す。内閣府の「避難所運営ガイドライン」で使われている用語 | 同伴避難についても、飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではなく、飼養環境は避難所等によって異なる |
| 指定避難所 | 避難した居住者などが、災害の危険がなくなるまで一定期間滞在する施設。市区町村長が指定する | 一般的に、ペットの受入れが課題となるのは、この指定避難所とされている |
📊 避難前の確認項目
| 事前に確認しておくこと | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 自治体の避難所のルール | 住んでいる自治体の広報誌やホームページで、避難所の場所や、ペットを連れて行く場合の注意事項を確認する。受け入れ体制が整っていても、避難所での飼育が難しいことがある | JAF「ペットの防災」 |
| 同行避難できる動物の範囲 | 自治体によって異なる。JAFは、東京都が避難所へ連れていけるペットを「犬、猫、小鳥、小型のげっ歯類(ハムスターなど)などの一般的なペット」としていると紹介 | JAF「ペットの防災」 |
| 預け先の確保 | 避難所の設置自体が難しいケースも考えられるため、犬猫を含むすべてのペットについて、一時的に預かってもらえる施設や知人を確保しておく | JAF「ペットの防災」 |
| 所有者明示 | 迷子札、マイクロチップ、鑑札、狂犬病予防注射済票などを装着する。飼い主の名前や連絡先が特定できない首輪だけでは、不十分とされる | 環境省ガイドライン |
| しつけと健康管理 | ケージやキャリーに慣らす。犬は「待て」「おいで」などの指示に従えるようにする。ワクチン接種などを済ませておく | JAF「ペットの防災」、環境省ガイドライン |
📌 環境省ガイドラインは、改訂の手続きが進んでいます
環境省は、2018年3月のガイドラインの改訂に向けて、2025年10月から2026年3月まで検討会(第1回〜第4回)を開き、2026年6月8日から26日まで、改訂案への意見を募集しました。ただし、2026年9月25日時点で、検討会のページには、改訂版の確定・公表は確認できませんでした。改訂内容は、環境省のページで必ず最新の情報をご確認ください(要確認)。
5. ペット用の備えと、出発前チェックリスト
JAFは、避難所では人への準備はされているものの、ペットの備えは基本的に飼い主の責任になるとして、避難用品に優先順位をつけておくことを勧めています。
📊 ペットの避難用品(優先順位はJAFの整理)
| 優先順位 | 主な用品(JAFの例) | 考え方 |
|---|---|---|
| 1. 命や健康にかかわるもの | 薬、療法食、フード、水(5日分以上)、予備の首輪、リード(伸びないもの)、食器、ガムテープ(ケージの補修などに使用) | すぐに持ち出せるようにしておく |
| 2. ペットや動物病院の情報 | 飼い主の連絡先、ペットの写真、ワクチン接種状況や健康状態・既往症の記録、かかりつけの動物病院の連絡先 | はぐれたときの特定や、健康管理に役立つ。ペットの写真はスマートフォンにもあるとよい |
| 3. 普段のペット用品 | ペットシーツ、排泄物の処理用具、トイレ用品(猫はトイレ砂)、タオル、ブラシ、使い慣れたおもちゃ、洗濯ネット(猫の移動時などに利用) | 一時帰宅が許可された後に持ち出してもよい |
📝 台風が近づく前の、ペットと車の準備チェックリスト
☑️ 自治体の避難所のペット受け入れ方針と、ハザードマップで避難先までの経路・危険箇所を確認した
☑️ ペットがクレート(キャリー)に慣れており、車内で固定する場所と方法を決めた
☑️ 迷子札やマイクロチップなどで、所有者明示をしている
☑️ フード・水(5日分以上)、薬・療法食、予備の首輪・リードを用意した
☑️ ワクチン接種状況、かかりつけの動物病院の連絡先、ペットの写真を持ち出せる形にした
☑️ 一時的に預かってもらえる施設や知人を確保した
☑️ ペットを車内に残さない。やむを得ず車内で過ごす場合は、換気・水分・車内温度を確認できる状態にした
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(2018年3月)
- 環境省 ガイドライン改訂等に係る検討会
- JAF「ペットの防災(クルマに関する注意喚起)」
- JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」
- JAF Mate Online「愛犬と快適ドライブのために注意したいこと」
- JAFユーザーテスト「真夏の車内温度」
6. よくある質問
まとめ
台風の接近中は、ペットの有無にかかわらず、車での外出を控えるのが基本です。避難などでやむを得ず移動する場合は、クレートに入れて後部座席などに固定し、車内に残さず、熱中症に注意しましょう。同行避難は避難行動のことで、避難所で同室になるとは限りません。自治体のルールと預け先を、台風シーズンの前に確認しておくことが、いざというときの安心につながります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。

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