違法駐車でレッカー移動された車の「費用」は、誰が、いくら負担するのでしょうか。「レッカー代は1万4000円前後」と聞いたことがある方もいるかもしれません。ところが、この金額は全国共通の定額ではありません。法律は、金額を都道府県の規則に委ねています。
この記事では、道路交通法・同施行令の現行条文(e-Gov法令検索)、警視庁・各府県警察の公開情報、各府県の例規集をもとに、レッカー移動の仕組みと費用の負担、黄色い標章と放置違反金、保管された車を取り戻すまでの流れを整理します。YouTubeで反応のよかったショート動画「違法駐車でレッカー移動、費用は誰が払う?」を、条文と数字つきで解説し直した長尺動画の内容を、記事にまとめたものです。
📋 この記事の要点
✔ 違法駐車の車を警察が移動・保管する根拠は道路交通法第51条。運転者等がいないときは、警察官等が50メートルを超えない道路上へ移動でき(第3項)、その範囲に場所がなければ、警察署長が駐車場などへ移動して保管する(第5項・第6項)
✔ 移動・保管・公示などの費用は、運転者等、または使用者・所有者の負担(第15項)。金額は都道府県の規則で定める(第16項)=全国一律ではない。普通自動車の「移動」は、大阪府・兵庫県14,000円、埼玉県・京都府12,000円、滋賀県11,000円、栃木県10,000円(確認日: 2026年10月)。東京都の額は確認できなかった
✔ 黄色い「放置車両確認標章」を取り付けるのは、警察官等または駐車監視員(警察署長が、公安委員会の登録を受けた法人に委託)。運転者の責任を追及できないとき、使用者に放置違反金(反則金と同額。普通車は18,000円または15,000円)が命じられる
✔ 放置違反金を納めないと、督促・延滞金(年14.5%の割合の範囲内)・滞納処分、督促後は車検拒否制度。同じ車で納付命令が重なると、運転の禁止(使用制限)もあり得る
✔ 保管された車は、使用者に告知され、返還は本人確認と受領書と引き換え。所有者への告知または公示の日から1か月で売却・廃棄、3か月で所有権が都道府県のものになる場合がある
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📑 目次
1. レッカー移動の仕組み(道路交通法第51条)
違法駐車の車が警察に移動される、いわゆる「レッカー移動」の根拠は、道路交通法の第51条(違法駐車に対する措置)です。第51条は、移動の方法を、現場の状況に応じて段階的に定めています。

📊 第51条の流れ(要約)
| 項 | 誰が | 何をするか |
|---|---|---|
| 第1項 | 警察官等 | 違法駐車と認められる車について、運転者等(運転者その他その車の管理について責任がある者)に、駐車の方法を変更し、または駐車が禁止されている場所から移動すべきことを命ずることができる |
| 第2項 | 警察官等 | 車の故障などで、運転者等が直ちに命令に従うことが困難なとき、必要な限度で、駐車の方法の変更や車の移動ができる |
| 第3項 | 警察官等 | 現場に運転者等がいないために命令できないとき、その車が駐車している場所からの距離が50メートルを超えない道路上の場所に、車を移動できる |
| 第4項・第5項 | 警察署長 | 50メートルを超えない範囲内に移動する場所がないときは、警察官等が警察署長に報告し、警察署長が駐車場、空地、その他の場所に車を移動できる(これがいわゆるレッカー移動) |
| 第6項 | 警察署長 | 移動した車を保管しなければならない。盗難などの事故を防ぐため、保管している旨の表示や車輪止め装置の取付けなどの措置を講じる |
実際の車の移動・保管の作業は、第51条の3により、警察署長が内閣府令で定める法人に委託できます。ただし、車の移動・返還・売却・廃棄の決定や、負担金の納付命令、滞納処分などは、警察署長が行う事務として委託の対象から除かれています(道路交通法施行令第17条の2)。
2. レッカー移動の費用は誰が、いくら負担する?
誰が負担するか=運転者等、または使用者・所有者(第15項)
📜 道路交通法 第51条第15項(条文の要約)
第2項、第3項または第5項から第11項までの規定による車両の移動、車両の保管、公示その他の措置に要した費用は、当該車両の運転者等または使用者もしくは所有者の負担とする。
負担の対象は、移動だけでなく、保管や公示などの措置に要した費用も含まれます。
いくら負担するか=都道府県の規則で決まる(第16項)
📜 道路交通法 第51条第16項(条文の要約)
警察署長は、負担金について納付すべき金額、納付の期限および場所を定め、文書でその納付を命じなければならない。この場合において、納付すべき金額は、費用につき実費を勘案して都道府県規則でその額を定めたときは、その定めた額とする。
つまり、レッカー移動の負担金は全国一律の定額ではなく、都道府県ごとの規則(または実費)で決まります。各府県の規則や警察の案内で確認できた、普通自動車の「移動」の負担金は次のとおりです。

📊 普通自動車の「移動」の負担金【確認日: 2026年10月】
| 都道府県 | 普通自動車の移動 | 保管などの扱い | 確認した資料 |
|---|---|---|---|
| 大阪府 | 14,000円 | 警察署長が契約した場所に保管する場合は、保管した場所の駐車料金に相当する額。その他の車両の移動は実費 | 大阪府の規則・大阪府警のページ |
| 兵庫県 | 14,000円(普通車の場合。「車種により異なります」) | 警察署以外の場所に保管した場合は、保管費用が加算されることがある | 兵庫県警のページ(規則本文は未確認) |
| 埼玉県 | 12,000円(原動機付自転車4,000円、その他の車両は実費) | (確認した別紙には記載なし) | 埼玉県の規則(埼玉県警の処分基準別紙) |
| 京都府 | 12,000円(原動機付自転車3,000円ほか) | (確認した規則は「移動」の金額のみ) | 京都府の規則 |
| 滋賀県 | 11,000円(自動二輪車以外の自動車1台につき) | 保管は、保管場所の駐車または保管の料金に相当する額。開錠は、業者の定める料金に相当する額 | 滋賀県の規則 |
| 栃木県 | 10,000円(一律) | (確認した規則は「移動」の金額のみ) | 栃木県の規則 |
| 東京都 | 確認できなかった | — | 東京都例規集(令和8年8月14日現在)で「違法駐車」「負担金」「道路交通法第51条」等を検索したが、額を定める規則は見つけられなかった |
保管にかかる費用は別に必要になることがある
第15項は保管や公示の費用も負担の対象としており、府県の規則では、大阪府・滋賀県のように保管した場所の駐車料金に相当する額と定めている例があります。表の「移動」の金額に、保管の費用が加わるかどうかは、府県と状況によって異なります。
負担金を期限までに納めないと(第17項・第18項)
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 納付命令 | 警察署長が、金額・納付の期限・場所を定めて、文書で納付を命ずる(第16項) |
| 督促 | 期限を過ぎても納付しないときは、督促状で納付すべき期限を指定して督促する(第17項) |
| 延滞金 | 督促の場合、年14.5パーセントの割合により計算した額の範囲内の延滞金と、督促に要した手数料を徴収できる(第17項) |
| 滞納処分 | 督促状の指定期限までに納付しないときは、地方税の滞納処分の例により徴収できる(第18項) |
なお、ここで説明したのは、警察署長が命ずる負担金の話です。ロードサービスなどの民間の事業者に自分で車の移動を依頼した場合の料金は、この記事では扱っていません。
3. 黄色い標章と放置違反金の仕組み
フロントガラスに貼られる黄色い紙は、放置車両確認標章です。標章は「レッカー移動」とは別の仕組みで、放置違反金の手続きにつながります。
放置車両とは
第51条の4第1項は、「放置車両」を、違法駐車と認められる場合における車両であって、運転者がその車両を離れて直ちに運転することができない状態にあるものと定めています。警視庁は、車両の停止時間の長短、車両から離れた距離の遠近、エンジンを止めているか、ハザードランプをつけているかは関係しないと説明しています。
標章を取り付けるのは誰か=警察官等、または駐車監視員
| 項目 | 内容(条文・警視庁) |
|---|---|
| 委託するのは誰か | 警察署長が、放置車両の確認と標章の取付けに関する事務(確認事務)を、公安委員会の登録を受けた法人に委託できる(第51条の8第1項) |
| 公安委員会の役割 | 法人の登録、駐車監視員資格者証の交付(第51条の8・第51条の13) |
| 駐車監視員の要件 | 放置車両確認機関は、資格者証の交付を受けている者のうちから選任した駐車監視員以外に、確認等を行わせてはならない。制服の着用や資格者証の携帯・提示が必要(第51条の12) |
| 制度の開始 | 2006年(平成18年)6月1日(警視庁「車検拒否制度」) |
| 東京都内 | 警視庁は、都内全域(島部を除く)で、警察官以外に、放置車両確認機関から選任された駐車監視員が巡回して、確認と標章の取付けを行っていると案内 |
| 法的な位置づけ | 確認事務に従事する放置車両確認機関の役員または職員は、刑法その他の罰則の適用に関しては、法令により公務に従事する職員とみなされる(第51条の12第7項) |
標章を取り除いてよいのは、車の使用者、運転者、その他その車の管理について責任がある者です。それ以外の人が標章を破損・汚損し、または取り除くと、2万円以下の罰金または科料の対象になります(第51条の4第2項、第121条第1項第10号)。
標章が取り付けられたあとの流れ

| 順 | できごと | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 警察官等または駐車監視員が、放置車両に標章を取り付ける | 第51条の4第1項 |
| 2 | 警察署長が、車の駐車に関する状況を公安委員会に報告する | 第51条の4第3項 |
| 3 | 標章が取り付けられた日の翌日から30日以内に、違法駐車行為をした者(運転者)が反則金を納付した場合や、公訴を提起された場合などは、使用者への放置違反金の命令はなし(すでに命令した場合は取り消される) | 第51条の4第4項ただし書・第16項 |
| 4 | 上記がなければ、公安委員会が、車の使用者に放置違反金の納付を命ずることができる。命令の前に、使用者には、弁明の機会が与えられ、放置違反金に相当する金額を仮に納付することもできる(分割は不可) | 第51条の4第4項・第6項・第9項、施行令第17条の4 |
| 5 | 期限を過ぎて納付しないと、督促(年14.5パーセントの割合の範囲内の延滞金)、さらに滞納処分 | 第51条の4第13項・第14項 |
運転者が出頭して反則金を納付した場合は、使用者に放置違反金の納付は不要です。警視庁は、運転者(違反者)の責任と使用者の責任は別であり、反則金と放置違反金の両方を納入した場合は、放置違反金が後日返還される、と案内しています。
放置違反金の額=反則金と同額
放置違反金の額は、道路交通法施行令の別表第一で定められており、反則金(施行令別表第六)と同額です。警視庁の公式ページに掲載されている額は次のとおりです。
📊 放置違反金の額(放置違反金は反則金と同額)【警視庁の表】
| 違反の種類 | 大型自動車等 | 普通自動車・軽自動車 | 二輪車・原付等 |
|---|---|---|---|
| 放置駐車違反(駐停車禁止場所等) | 25,000円 | 18,000円 | 10,000円 |
| 放置駐車違反(駐車禁止場所等) | 21,000円 | 15,000円 | 9,000円 |
| 時間制限駐車区間などの違反(施行令別表第一 五の項。パーキング・メーターやパーキング・チケットの区間の違反など。通常の駐車禁止場所での放置は上の2行) | 12,000円 | 10,000円 | 6,000円 |
高齢運転者等専用の駐車区間などで標章を掲示せずに駐車した場合は、他の場所より2,000円高い反則金・放置違反金が課されます(警視庁)。なお、運転者に付く違反点数は、警視庁の点数表で、放置駐車違反が駐停車禁止場所等3点、駐車禁止場所等2点です(運転者に対する行政処分の点数であり、使用者に命ずる放置違反金とは別の仕組みです)。
放置違反金を納めないと=車検拒否、使用制限
放置違反金を滞納して督促を受けると、車検拒否制度の対象になります。督促を受けたことがある自動車は、自動車検査証の返付を受けるとき、放置違反金等を納付した(または徴収された)ことを証する書面を提示しなければなりません(第51条の7、警視庁)。
さらに、同じ車で納付命令が重なると、車の運転が禁止される「使用制限」があり得ます(第75条の2第2項、施行令第26条の8)。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 条件 | 標章が取り付けられた車両の使用者に納付命令をした場合に、標章が取り付けられた日前6か月以内に、その車両が原因の納付命令を一定回数以上受けていて、公安委員会が、著しく交通の危険を生じさせ、または著しく交通の妨害となるおそれがあると認めるとき |
| 回数 | 前歴がない場合は3回、前歴1回の場合は2回、前歴2回以上の場合は1回(前歴=標章取付日前1年以内に、公安委員会の運転禁止命令(第75条第2項・第75条の2第2項)を受けた回数) |
| 禁止できる期間 | 3月を超えない範囲内。施行令では、大型・中型・準中型・大型特殊・重被けん引車は3月、普通自動車は2月、二輪車・小型特殊・原付は1月の範囲内 |
| 命令に違反すると | 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金(第119条第2項第5号) |
4. 保管された車を取り戻すまでの流れ
警察署長が移動した車を保管したあとの手続きは、第51条と施行令が定めています。
📊 保管から返還・売却までの流れ
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 告知 | 警察署長は、車を保管したとき、使用者に、保管を始めた日時と保管の場所、そして速やかに引き取るべき旨を告知しなければならない。使用者の氏名・住所が分からないときなどは、所有者に告知する | 第51条第7項・第8項 |
| 公示 | 所有者の氏名・住所も分からないときは、保管の場所などを公示する。施行令では、保管を始めた日から起算して5日を経過した日から14日間、警察署の掲示板に掲示し、保管車両一覧簿を備え付けて閲覧させる | 第51条第9項、施行令第16条 |
| 公表 | 公示の日付・内容は、インターネットの利用などの方法で公表する。警視庁も、公示した保管車両等を公表している(公示日から3ヶ月間) | 第51条第10項 |
| 返還 | 返還を受ける者は、氏名・住所を証するに足りる書類を提示するなどして、返還を受けるべき使用者または所有者であることを証明し、内閣府令で定める様式の受領書と引換えに返還される | 施行令第14条の8 |
| 売却・廃棄 | 告知または公示の日から1か月を経過しても返還できない場合で、評価した車の価額に比べて保管に不相当な費用を要するときは、売却できる。買受人がなく、価額が著しく低いときは廃棄できる。売却代金は売却に要した費用に充てられる | 第51条第12項〜第14項 |
| 所有権の帰属 | 告知または公示の日から3か月を経過してもなお返還できないときは、車の所有権は、その警察署の属する都道府県に帰属する | 第51条第20項 |

5. 3つの「お金」の整理
違法駐車にまつわるお金は、似ていますが、根拠も、払う人も、金額の決まり方も別です。
| 名称 | 誰に課されるか | 根拠 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|---|
| レッカー移動・保管の負担金 | 運転者等、または使用者・所有者 | 道路交通法第51条第15項・第16項 | 都道府県の規則(実費を勘案)。都道府県で異なる |
| 反則金 | 違反をした運転者 | 道路交通法第125条以下、施行令別表第六 | 全国共通(別表第六)。違反の種類と車両の種類で決まる |
| 放置違反金 | 車の使用者(運転者の責任を追及できないとき) | 道路交通法第51条の4、施行令別表第一 | 反則金と同額(別表第一) |
レッカー移動された場合に、このうちどれが、どの順で手続きに進むかは、状況によって異なります。実際の通知書や案内に従い、不明な点は管轄の警察署(交通課)にご確認ください。
6. よくある質問
まとめ
違法駐車の車のレッカー移動は、道路交通法第51条に基づき、警察官等・警察署長が段階的に行います。(1)移動・保管・公示などの費用は、運転者等または使用者・所有者の負担で(第15項)、金額は都道府県の規則で決まるため、全国一律ではありません(第16項)。(2)黄色い標章は、警察官等または、警察署長が委託した駐車監視員が取り付けます。運転者の責任を追及できないときは、使用者に、反則金と同額の放置違反金が命じられ、納めないと車検拒否や使用制限もあり得ます。(3)保管された車は使用者に告知され、返還には本人確認と受領書が必要です。引き取らないままだと、売却や廃棄、所有権の都道府県への帰属もあります。
金額や手続きの細部は、都道府県と状況によって異なります。実際にレッカー移動された場合は、現場に残された書面や通知を確認し、管轄の警察署(交通課)に問い合わせてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令・反則金・負担金の額・手続きは改正や変更があるため、最新の内容や個別の判断は、警察庁・各都道府県警察・公安委員会など公的機関の公式情報でご確認ください(確認日: 2026年10月)。
参考(一次情報・公的機関): e-Gov法令検索 道路交通法(第51条・第51条の3〜第51条の15・第75条の2・第119条・第121条)/同 道路交通法施行令(第14条の8・第15条・第16条・第17条の2〜第17条の5・第26条の8・別表第一・別表第六)/警視庁 東京都内全域で駐車監視員が活動中!!/警視庁 放置駐車違反に対する責任追及の流れ/警視庁 反則告知を受けた方へ/警視庁 車検拒否制度/警視庁 交通違反の点数一覧表/警視庁 違法駐車車両等の保管公表/大阪府警 レッカー移動に関すること(負担金の額)/大阪府 違法駐車車両の移動等を行った場合における負担金及び延滞金に関する規則/兵庫県警 違法駐車車両のレッカー移動/埼玉県警 道路交通法第51条第16項 処分基準/京都府 違法駐車車両を移動した場合の負担金につき納付すべき金額を定める規則/滋賀県 違法駐車車両を移動した場合の負担金の額を定める規則/栃木県 違法駐車車両の移動に要した費用についての負担金額を定める規則/神奈川県警 放置駐車違反に対する責任追及の流れ/警察庁 事業評価書 新たな駐車対策法制の導入
図はすべて自作のイラストです(AI生成なし)。条文の内容を要約しており、実際の標章・書面の様式とは異なります。


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