パワーステアリングは、ハンドルを回す力を補助して、軽い力で操作できるようにする装置です。この記事では、油圧式と電動式の違い、点検基準での扱い、症状と警告灯、フルードに関する考え方を、国土交通省の自動車点検基準、トヨタ、ダイハツ、JTEKT、JAFの公開情報で確認できた範囲に絞って整理しました。交換の周期や費用は、車種ごとに異なり、統一した公式の数値がないため、掲載していません。
📋 この記事の要点
✔ 世界で初めて実用化・量産化された自動車用の電動パワーステアリング(EPS)は、1988年のスズキ「セルボ」に搭載された(JTEKTの発表)
✔ 従来の油圧式(HPS)は、エンジン始動中は常に油圧ポンプを回す必要があった(JTEKT)。点検も異なり、トヨタの点検整備方式では、電動非油圧式の車は「油漏れ及び油量」の点検が不要とされている
✔ 自動車点検基準の定期点検(自家用乗用自動車)では、ベルトの緩み・損傷は1年ごと、油漏れ・油量と取付けの緩みは2年ごとの点検項目
✔ 自家用乗用自動車の日常点検基準(別表第2)には、パワーステアリングフルードの項目は含まれていない
✔ EPSの警告灯が点灯したときは、トヨタの取扱書は、ただちに販売店で点検を受けるよう案内している
📑 目次
1. 油圧式と電動式の違い
パワーステアリングには、油圧を使う油圧式(HPS)と、電動モーターを使う電動式(EPS)があります。どちらを採用しているかは、車種によって異なります。
📊 油圧式と電動式の違い(公開情報より)
| 項目 | 油圧式(HPS) | 電動式(EPS) |
|---|---|---|
| 補助の方法 | エンジンで駆動する油圧ポンプで、油圧を発生させて補助する | 電動モーターで補助する |
| エンジンへの負荷・燃費 | 従来のHPSは、エンジン始動中は常に油圧ポンプを回す必要があり、軽自動車の小さなエンジンでは負荷が大きかった(JTEKT) | JTEKTは、1988年の実用化の際、HPSと比べて燃費の改善やCO2排出量の削減の効果が認められたと発表 |
| フルードの点検 | 油漏れ及び油量の点検が、定期点検の項目 | トヨタの点検整備方式では、「電動非油圧式」の車は「油漏れ及び油量」の点検が不要と注記されている(車種による) |
| ベルトの点検 | ベルトの緩み及び損傷が、定期点検の項目 | トヨタの点検整備方式では、「電動式」「ギヤ駆動式」「電動非油圧式」の車は、ベルトの緩み及び損傷の点検が不要と注記されている(車種による) |
📊 電動パワーステアリングの実用化
| 年 | できごと | 出典 |
|---|---|---|
| 1988年3月 | スズキ「セルボ」に、世界で初めて、コラムアシスト式の電動パワーステアリングが搭載された(ジェイテクトと三菱電機が開発) | JTEKTの発表(2022年、電気学会「でんきの礎」受賞に関するニュース) |
📌 補足
お乗りの車が油圧式か電動式かは、取扱説明書やメンテナンスノートの記載で確認できます。当サイトでは、ハスラーの電動パワーステアリングについて、取扱説明書をもとに整理した記事(関連記事)も公開しています。
2. 点検基準での扱いと、点検の区分
自家用乗用自動車の定期点検は、自動車点検基準(別表第6)で、パワーステアリングを含む「かじ取り装置」の項目が定められています。2年ごとの点検は、1年ごとの点検に、次の点検を加えたものです。
📊 かじ取り装置の点検項目(自動車点検基準 別表第6・自家用乗用自動車等)
| 点検の対象 | 点検項目 | 点検時期 |
|---|---|---|
| パワー・ステアリング装置 | ベルトの緩み及び損傷 | 1年ごと |
| パワー・ステアリング装置 | 油漏れ及び油量 | 2年ごとに加わる項目 |
| パワー・ステアリング装置 | 取付けの緩み(※年間走行距離が5千km以下の場合に省略できる旨の注記あり) | 2年ごとに加わる項目 |
| ハンドル | 操作具合 | 2年ごとに加わる項目 |
| ギヤ・ボックス | 取付けの緩み(注記あり) | 2年ごとに加わる項目 |
📊 フルードについての点検基準上の位置づけ
| 点検の区分 | パワーステアリングフルードの扱い |
|---|---|
| 日常点検(別表第2) | 項目に含まれていない。ブレーキの液量、冷却水の量、エンジン・オイルの量などが対象 |
| 定期点検(別表第6) | 「油漏れ及び油量」が2年ごとの点検項目(油圧式の場合) |
| 劣化・摩耗により生ずる状態(別表第8) | 「パワー・ステアリング装置のベルトの緩み又は損傷」「パワー・ステアリング装置の油漏れ」が挙げられている |
⚖️ 根拠となる制度
自家用乗用自動車の定期点検は、国土交通省によると、1年ごとに29項目、2年ごとに60項目(1年ごとの項目を含む)です。点検の結果は点検整備記録簿に記録し、自動車に備えつけることになっています。
3. 症状と警告灯の見方
ハンドルの重さ・異音・取られる感じなどは、パワーステアリングの不具合とは限りません。空気圧やアライメントなど、ほかの原因が関係することもあります。次の表は、公開情報が示している手がかりです。
📊 症状と、対応の考え方
| 気づく症状 | 公開情報が示す手がかり | 対応 |
|---|---|---|
| EPS(電動パワーステアリング)の警告灯が点灯 | トヨタの取扱書は、EPSの異常を示すとして、ただちに販売店で点検を受けるよう案内 | ただちに点検を受ける |
| ハンドルが重い・操作が円滑にできない・異音がする | ダイハツは、ステアリングギヤボックスに問題が出た場合の症状として、ハンドルが重い、円滑に操作できない、異音、直進安定性の低下、ハンドルが取られる、を挙げている(通常の使用では壊れにくく、事故などによる損傷が原因になり得るとしている) | 販売店・整備工場で点検 |
| 直進中にハンドルが取られる | JAFは、左右のタイヤの空気圧の違いが原因として多いため、まず空気圧を点検するよう案内。次に、片側のブレーキの引きずり、アライメントの狂いを挙げている | まず空気圧を点検。改善しなければ整備工場へ |
| ある速度域でハンドルが振動 | JAFは、ホイールバランスの狂い、アライメント不良などを挙げている | 整備工場で点検。まず空気圧を確認 |
| 油圧式で、油漏れの跡がある | 油漏れは、自動車点検基準で、劣化または摩耗により生ずる状態として挙げられている | 販売店・整備工場に相談 |
⚠️ 注意
EPSの警告灯が点灯している状態で走行を続けると、ハンドルの操作が重くなるなど、運転に支障が出るおそれがあります。警告灯の意味と対処は、お乗りの車の取扱説明書で確認し、指示に従ってください。
4. フルードについて確認しておきたいこと(油圧式の場合)
油圧式の場合、車種ごとに、指定されるフルードの種類・容量・交換の設定が異なります。指定の内容は、取扱説明書のメンテナンスデータと、メンテナンスノートで確認します。
📊 油圧式フルードの確認ポイント
| 確認すること | 確認する場所 | 考え方 |
|---|---|---|
| 油圧式か電動式か | 取扱説明書・メンテナンスノート | 電動非油圧式の車には、油漏れ及び油量の点検が不要と注記する車種がある(トヨタの点検整備方式) |
| 指定フルードの種類・量 | 取扱説明書のメンテナンスデータ | 指定されたもの以外は使わない |
| 点検・交換の時期 | メンテナンスノートの点検整備方式 | 設定の有無・時期は車種ごとに異なる |
| 減り方が続く・漏れ跡がある | 販売店・整備工場 | 補充だけで済ませず、原因の点検を受ける |
🧭 油圧式の確認の進め方
油圧式か電動式かを確認する
取扱説明書やメンテナンスノートで、パワーステアリングの方式と、点検項目の有無を確認します。
指定フルードと点検の方法を確認する
取扱説明書のメンテナンスデータで、指定の種類・容量、リザーバータンクの位置や点検の方法を確認します。
油量・漏れ跡を確認する
エンジンルームのリザーバータンクの油量と、駐車していた場所に油の跡がないかを確認します。方法は、取扱説明書に従います。
気になる点があれば点検を依頼する
減りが続く、異音がする、操作が重いなどの場合は、販売店・整備工場で点検を受けます。
💡 ポイント
「補充すれば直る」と判断せず、減り続ける場合は、漏れの原因を点検してもらうことが大切です。判断に迷うときは、取扱説明書の記載どおりに販売店へ相談しましょう。
5. 点検チェックリストと、整備事業者に任せる範囲
📝 確認チェックリスト
☑️ 取扱説明書で、油圧式か電動式かを確認した
☑️ EPSなどの警告灯が点灯していない
☑️ ハンドルの重さ・戻り・異音に、普段と違いがない
☑️ 直進中にハンドルが取られない(左右の空気圧も確認した)
☑️ 駐車していた場所に、油の漏れ跡がない
☑️ 定期点検を受け、パワーステアリング関連の項目も点検している
☑️ リコール・不具合情報に該当していないか、国土交通省の検索で確認した
📊 自分でできる範囲と、任せる範囲
| 作業・確認 | 進め方の考え方 |
|---|---|
| ハンドルの重さ・異音・警告灯の確認 | 使用者が日ごろの運転で気づく。異常があれば、点検を依頼する |
| フルードの量・漏れの確認 | 取扱説明書の手順に従う。定期点検でも確認される |
| フルードの交換・ホース類の交換・ギヤボックスの点検 | 専用の設備・整備書の手順が必要な場合がある。販売店・整備工場に依頼 |
| 警告灯の診断(EPSの異常) | 診断機器を使う場合がある。ただちに販売店に相談 |
- 自動車点検基準(e-Gov法令検索・昭和26年運輸省令第70号)
- 国土交通省「点検整備の種類」
- 国土交通省 リコール情報検索(自動車不具合情報ホットライン)
- ジェイテクト「世界初の自動車用電動パワーステアリングシステムが電気技術顕彰『でんきの礎』受賞」
- トヨタ 点検整備方式(ノア/ヴォクシーの例)
- トヨタ 取扱書「警告灯がついたときは」(プリウスの例)
- ダイハツ U-CATCH「ステアリングギヤボックス」
- JAF クルマ何でも質問箱「真っ直ぐな道でハンドルを取られる」
6. よくある質問
📚 あわせて読みたい
▶ ハスラーのパワーステアリングは電動式|取扱説明書で確認できること
▶ タイヤの点検と交換時期ガイド|溝・空気圧・製造年・ひび割れの見方
まとめ
パワーステアリングは、油圧式と電動式で、点検の考え方が異なります。1988年のスズキ セルボに搭載された電動式は、HPSに比べて燃費の改善などが認められたとされています。自動車点検基準では、ベルトは1年ごと、油漏れ・油量は2年ごとの点検で、日常点検の項目にはありません。警告灯が点灯したら、取扱説明書に従ってただちに点検を受け、フルードの指定や交換の設定は車種ごとに確認しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。
アイキャッチ画像: Chevrolet Logo on Car Steering Wheel by Tony Webster, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons


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