EVの火災はなぜ消火が難しいのか|国交省の新基準・冠水時の注意・万一の行動

電気自動車(EV)の火災が報じられるたびに、「EVは燃えやすいのでは」という不安が広がります。この記事では、国土交通省の発表、総務省消防庁の資料、JAF(日本自動車連盟)の関連コラムで確認できた内容から、EVの火災が「消えにくい」と言われる理由、国の新しい安全基準、万一のときの行動、冠水時の注意点を整理しました。EVとガソリン車の火災の起こりやすさについては、国内の公的統計でEV別の数値を確認できなかったため、確認できた範囲の資料を明記して紹介します。

📋 この記事の要点

✔ EVは、走行用にリチウムイオン電池を搭載。強い衝撃、内部ショート、過充電などで急激に発熱・発火することがあり、セルが連鎖的に熱暴走すると火災が拡大する(JAFトレコラム)

✔ 国土交通省は、令和7年9月26日に保安基準等を改正。バッテリー火災の乗員保護性能確認試験を義務づけ(新型車は令和9年9月、継続生産車は令和12年9月から)

✔ 基準は「異常発熱を検知して運転者に警告し、警告開始から5分間は火災・爆発・車内への煙の放出がない」などの要件

✔ 全国の車両火災は、令和2年が3,466件、令和3年が3,512件(総務省消防庁)。原因の内訳はEV別ではなく、排気管、配線、電気機器など

✔ 万一の煙・異臭・異常な熱には、ハザードランプで停止して119番通報。自分で消火せず、車に近づかず、消防の到着を待つ(JAFトレコラム)

✔ 冠水したハイブリッド車・EVは、むやみに触らず、販売店や整備工場に相談(国土交通省)

1. EVの火災は、なぜ「消えにくい」と言われるのか

EVは、ガソリンの代わりに、スマートフォンなどにも使われるリチウムイオン電池を、はるかに大きな容量で積んでいます。JAFトレコラム(JAFメディアワークス運営)は、EVの火災が消えにくいとされる理由を、電池の構造と化学反応から説明しています。

📊 EV火災が消えにくいとされる理由(JAFトレコラム、2026年9月25日確認)

項目 説明(JAFトレコラム)
電池の特性 エネルギー密度が高く、高出力を出しやすい一方、熱に弱く、熱暴走のリスクがある。強い衝撃、内部ショート、過充電などで急激に発熱・発火する性質がある
火災が広がる仕組み 電池内部で急激な発熱が起こると、電解液が気化・発火する。電池セルが連鎖的に熱暴走を起こすと、火災が一気に拡大する
消火が難しい理由 ガソリン車の火災は燃料が燃え尽きれば鎮火へ向かうが、EVは電池内部の熱暴走で自己発熱が連鎖的に続く。電池は密閉構造のため、水や消火剤が火元に直接届きにくい
二次的な危険 消火活動中に有毒ガスの発生や感電のリスクがある。人の目では判別しにくく、専門知識や専用装備による対応が必要

📌 補足

JAFトレコラムは、日本国内でのEV火災の件数は「現状ごくわずか」としながら、今後EVが増えることを想定して備えることの大切さを述べています。EVが「特に燃えやすい」と断定できる公的な国内統計は、確認できませんでした。

2. 火災の起こりやすさを、データで確認する

EVとガソリン車の火災の起こりやすさを比べる数値は、よく目にします。確認できた資料を、出典とあわせて整理します。

📊 車両火災に関する公的資料と引用データ(2026年9月25日確認)

資料 内容 注意点
総務省消防庁「車両火災の現況等について」(令和5年11月20日) 全国の車両火災は、令和3年中に3,512件(令和2年は3,466件)。死者71人、負傷者221人、損害額215,290万円。主な出火原因は、排気管531件(15.1%)、交通機関内配線316件(9.0%)、電気機器254件(7.2%)、放火235件(6.7%)、たばこ152件(4.3%)、その他2,024件(57.6%) 車種別(EV・ガソリン車・ハイブリッド車)の内訳は、この資料では確認できなかった
JAFトレコラム(米国運輸統計を引用) 米国のNTSB(国家運輸安全委員会)の統計として、販売10万台あたりの火災件数を、EV約25台、ガソリン車約1,530台、ハイブリッド車約3,475台と紹介 米国のデータ。集計の対象年・条件は、この記事では確認できなかったため、日本の状況にそのまま当てはめることはできない

📊 全国の車両火災の出火原因(総務省消防庁「車両火災の現況等について」)

車両火災の主な出火原因(令和3年) 件数 割合
排気管 531件 15.1%
交通機関内配線 316件 9.0%
電気機器 254件 7.2%
放火(放火の疑いを含む) 235件 6.7%
たばこ 152件 4.3%
その他(不明・調査中を含む) 2,024件 57.6%

⚠️ 「EVはガソリン車より火災が少ない(多い)」と言い切れる国内の数値は確認できません

JAFトレコラムが紹介する米国のデータでは、EVの火災件数は少ないとされています。一方で、同コラムは、EVの火災は一度発生すると消火が困難であることを指摘しています。件数と、消火の難しさは別の問題として捉えましょう。

3. 国の安全基準と、2025年の改正

国土交通省は、令和7年9月26日に、電気自動車等のバッテリー火災に対する安全性を確保するため、道路運送車両の保安基準等を改正しました。発表資料で確認できた内容を、表に整理します。

📊 バッテリー火災に対する乗員保護の新基準(国土交通省、2026年9月25日確認)

項目 国土交通省の発表内容(令和7年9月26日)
背景 日本は、平成19年に世界で初めて電気自動車等の乗員の安全確保に関する基準を策定し、国際基準の策定・強化に活用。令和7年3月の国連WP.29で、日本提案の乗員保護要件が合意されたことを受けて改正
義務づけの内容 電気自動車等で走行用モーターに使うバッテリーについて、何らかの原因で異常発熱したことを想定し、一部の電池を過熱させたときに、火災・爆発・車内への煙の放出がないかなど、乗員の安全が確保されているかを確認する基準を導入
試験の方法 レーザーを照射するなどして電池を意図的に過熱する
満たすべき要件(いずれか) ・バッテリー全体が異常発熱に至らないこと。・異常発熱を検知して運転者に警告信号を発し、かつ、警告開始から5分間は、火災・爆発・車内への煙の放出のいずれも発生しないこと
適用時期 新型車:令和9年9月。継続生産車:令和12年9月

📌 補足

この基準は、電池が絶対に燃えないことを求めるものではなく、「乗員が脱出するための時間を確保する」ことを目的としています(発表資料に「乗員が脱出するための時間を確保するため」との記載)。すでに販売されているEVが、この新基準に適合しているかどうかは、この記事では確認できていません。

4. 万一の煙・異臭・火災のときの行動

JAFトレコラムは、EVの車両火災に遭遇した場合の行動を、次のように説明しています。ドライバー自身が消火にあたる必要はなく、むしろ非常に危険を伴うため、消火は控えるよう案内しています。

🧭 煙・異臭・火災に気づいたときの行動(JAFトレコラム)

1

異常に気づいたら、ハザードランプをつけて停止する

異常な熱・煙・異臭に気づいたら、ハザードランプを点滅させて後続車に知らせ、なるべく路肩側に停止します。

2

119番に通報する

可能であれば、「EV車、または電気自動車が燃えている」ことを伝えます。消防隊の消火活動が、より安全で迅速になるための助けになるとされています。

3

消火は控え、車から離れる

ドライバー自身が消火にあたる必要はなく、危険を伴います。車内に忘れ物があっても、車に近づかないようにします。

4

安全な場所で、消防隊の到着を待つ

むやみな行動で避難が遅れると、火事に巻き込まれたり、感電や有毒ガスを吸い込んだりするリスクがあります。

⚠️ 自分で消火しようとしない

JAFトレコラムは、通常の車両火災では飲料水をかけたり、上着で炎を覆ったりして鎮火を試みることが有効な場合もあるが、EVの車両火災は消火が困難であるため、消火活動は控えるよう案内しています。専用の消火器や大量の水による対応は、専門の消防隊が行うものです。

📊 場面別の行動の目安

気づいたこと 考え方
走行中に、煙・異臭・異常な熱を感じた ハザードランプで路肩へ停止し、119番通報。車から離れる
警告灯や警告メッセージが表示された 取扱説明書の指示に従う。具体的な対応は車種ごとに異なる
充電中に、異臭や熱を感じた 充電中の個別の手順は、公的資料では確認できなかった。取扱説明書や充電サービスの案内に従う。煙や炎が見える場合は、走行中と同様に119番通報し、車から離れる
冠水・浸水した 自分でエンジン(システム)を始動せず、むやみに触らない。販売店・整備工場に相談(国土交通省)

5. 冠水・浸水したときの注意と、日ごろの備え

EVやハイブリッド車は、高電圧のバッテリーを搭載しています。国土交通省の「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」では、次のように案内されています。

📊 浸水・冠水被害を受けた車両の対処方法(国土交通省、2026年9月25日確認)

項目 国土交通省の案内
水に浸った車両の危険 外観上問題がなさそうな状態でも、感電事故や、電気系統のショートなどによる車両火災が発生するおそれがある
対処方法 自分でエンジンをかけない。使用したい場合は、販売店または最寄りの整備工場に相談する
ハイブリッド車・電気自動車 高電圧のバッテリーを搭載しているため、むやみに触らない
使用するまでの間 発火するおそれがあるため、バッテリーのマイナス側のターミナルを外す。外したターミナルがバッテリーと接触しないよう、テープなどで覆う

⚠️ ターミナルを外す作業は、車種によって異なります

国土交通省のページには、バッテリーのマイナス側のターミナルを外す旨の記載があります。EVやハイブリッド車は、高電圧のバッテリーを搭載しており、作業には危険が伴います。ご自身で判断せず、販売店や整備工場に相談してください。

📝 EVに乗る方・購入を考える方のチェックリスト

☑️ 取扱説明書の、充電・警告表示・緊急時の対処のページを読んだ

☑️ 充電中に、熱・異臭・煙などの異常があったときの連絡先(販売店・ロードサービス)を確認した

☑️ 警告灯や警告メッセージが出たときの対応を、取扱説明書で確認した

☑️ 冠水・浸水が予想される場所への駐車を避けることを、家族で共有した

☑️ 事故や強い衝撃を受けた後の点検について、取扱説明書やメーカーの案内を確認した

☑️ 車両保険が、EVの火災・水没を補償するかを、保険会社に確認した(補償の範囲は契約によって異なる)

6. よくある質問

Q. EVは、ガソリン車より火災が多いのですか?

A. 日本国内で、EV別の火災の統計は確認できませんでした。JAFトレコラムは、米国のNTSBの統計として、販売10万台あたりの火災件数がEVは約25台、ガソリン車は約1,530台と紹介しています。ただし、これは米国のデータで、日本にそのまま当てはめることはできません。同コラムは、EVの火災は発生すると消火が困難であることも指摘しています。

Q. EVから煙が出たら、自分で消火してよいですか?

A. JAFトレコラムは、ドライバー自身が消火にあたる必要はなく、危険を伴うため控えるよう案内しています。ハザードランプをつけて路肩に停止し、119番通報のうえ、車に近づかず消防隊の到着を待ちましょう。

Q. 新しい基準があれば、EVは燃えなくなりますか?

A. 国土交通省の新基準は、バッテリーが異常発熱した場合でも、乗員が脱出する時間を確保することを目的としています(警告開始から5分間は、火災・爆発・車内への煙の放出がないこと)。電池が絶対に燃えないことを保証するものではありません。適用は、新型車が令和9年9月、継続生産車が令和12年9月からです。

Q. 冠水したEVは、すぐ使ってもよいですか?

A. 国土交通省は、水に浸った車両は外観上問題がなさそうでも、感電事故や車両火災のおそれがあるため、自分でエンジンをかけず、販売店または整備工場に相談するよう案内しています。EVやハイブリッド車は高電圧のバッテリーを搭載しているため、むやみに触らないでください。

まとめ

EVの火災は、リチウムイオン電池の熱暴走が連鎖して広がり、電池が密閉構造のため消火が難しいとされています。国土交通省は、令和7年9月に保安基準等を改正し、バッテリー火災時に乗員が脱出する時間(警告開始から5分間)を確保する性能確認試験を義務づけました(新型車は令和9年9月から)。万一の煙・異臭・異常な熱には、ハザードランプで停止して119番通報し、自分では消火せず、車に近づかずに消防隊を待つことが案内されています。冠水した車両は、むやみに触らず、販売店・整備工場に相談しましょう。

※本記事は、国土交通省・総務省消防庁・JAFなどの公表情報にもとづく一般的な情報提供です。車両の火災や事故の際は、取扱説明書の指示、消防・警察・販売店の案内を優先してください。制度・基準は変更されることがあります(2026年9月25日時点の公式ページによる)。

アイキャッチ画像: EV Charging Station, Idukki Dam Park by Timothy A. Gonsalves, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

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