高速道路の多くは、中央分離帯で上下線が分けられていますが、なかには中央分離帯がなく、片側1車線ずつで対面通行になっている区間があります。「暫定2車線」と呼ばれる区間で、国土交通省の資料では、対向車線への飛び出し事故が課題とされています。この記事では、国土交通省・NEXCO・警察庁・JAFの公開情報にもとづき、暫定2車線の特徴、事故の傾向、走るときの注意点、4車線化の状況を整理します。
📋 この記事の要点
✔ 暫定2車線区間は、中央分離帯がなく、上下線が隣り合う「非分離区間」「対面通行区間」。国土交通省の資料(平成28年12月時点)では、高規格幹線道路の供用延長11,315kmのうち4,112km(36%)が暫定2車線
✔ 暫定2車線の死亡事故率は、四車線以上の高速道路の約2倍(国土交通省、平成25年のデータ)
✔ 有料の暫定2車線の飛び出し事故は、平成27年に334件。約4割は冬期(1・2・12月)に発生
✔ 最高速度は標識で指定されている。JAFは原則60km/h以下と説明。対面通行区間では、100km/hの法定最高速度の表は適用されず、最低速度の規制もない
✔ 国土交通省は、令和元年9月に課題の大きい約880kmを優先整備区間として選定し、4車線化を進めている
1. 暫定2車線とは(国土交通省の資料から)
JAFの説明によると、暫定2車線は、交通量が少ないなどの理由で、暫定的に片側1車線ずつの計2車線で運用されている区間です。中央分離帯を設けていないことから「非分離区間」、上下線が隣り合うことから「対面通行区間」とも呼ばれます。国土交通省の資料では、上下線の間はラバーポールで区切られています。
📊 高規格幹線道路の暫定2車線区間(国土交通省「暫定二車線区間の現状と課題」、平成28年12月1日時点)
| 区分 | 供用延長 | うち暫定2車線 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 高規格幹線道路 計 | 11,315km | 4,112km | 36% |
| うち有料 | 9,322km | 2,538km | 27% |
| うち無料 | 1,993km | 1,574km | 79% |
※表は横にスクロールできます
📊 暫定二車線区間の標準的な幅員(国土交通省の資料より)
| 区間 | 全幅員の標準的な断面(国土交通省の資料) |
|---|---|
| 土工部 | 10.5m(積雪寒冷地は12.0m〜) |
| 橋梁部(中小橋、長さ50m未満) | 10.5m〜 |
| 橋梁部(長大橋、長さ50m以上) | 9.5m |
| トンネル | 9.5m |
📌 補足
JAFは「国土交通省の2023年発表で、高速道路・自動車専用道路の総延長1万2200kmのうち、暫定2車線区間は約3400km」と紹介していますが、一次資料は今回確認できなかったため、最新の延長は国土交通省・NEXCO各社の公表資料でご確認ください(要確認)。上の表は、確認できた平成28年12月時点の数値です。
2. 暫定2車線の事故の特徴(国土交通省の資料から)
📊 事故率の比較(平成25年。高速道路はNEXCO3社調べ、一般道路は警察庁資料。国土交通省の資料より)
| 区分 | 死傷事故率(件/億台キロ) | 死亡事故率(件/億台キロ) |
|---|---|---|
| 高速道路(四車線以上) | 4.19 | 0.16 |
| 高速道路(暫定二車線) | 3.98 | 0.30 |
| 一般道路 | 93.0 | 0.61 |
国土交通省の資料では、暫定二車線の死亡事故率は、四車線以上の区間の約2倍とされています。死傷事故率は四車線以上の区間とほぼ同水準とされていますが、死亡事故率が高い点が課題です。また、分離区間の死傷事故は減少傾向にある一方、非分離区間では、平成18年の192件から平成27年の341件へと増加傾向にあります。
📊 飛び出し事故の発生状況(国土交通省「暫定二車線区間の現状と課題」より)
| 項目 | 数値(有料の暫定二車線、平成27年) |
|---|---|
| 対向車線への飛び出し事故 | 334件(物損事故261件、負傷事故61件、死亡事故12件) |
| 冬期(1・2・12月)の発生 | 1月58件、2月43件、12月31件の計132件。約4割が冬期に発生 |
| 昼夜別 | 昼間223件(67%)、夜間111件(33%) |
| 飛び出した車の車種 | 軽自動車等75台(22%)、普通車248台(74%)。約96%が軽自動車等または普通車 |
| もらい事故の車の車種 | 大型車・特大車が約2割(87台中17台) |
| 死傷者(飛び出し死傷事故73件) | 飛び出した車の側で死者7人・負傷者68人、もらい事故の側で死者5人・負傷者70人、第三当事者で負傷者12人 |
⚠️ もらい事故で、死亡することも
飛び出し事故による死者12人のうち、5人はもらい事故の側でした。自分が対向車線に出なくても、対向車が飛び出してくる可能性があるのが、対面通行区間の特徴です。
3. 走行ルールと注意点
📊 暫定2車線区間を走るときのルールと注意点
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 最高速度 | 標識で指定されている。JAFは「片側1車線の制限速度は原則60km/h以下」と説明。指定のない区間は、一般道路と同じ扱いになる(施行令第11条では、中央線のある一般道路は60km/h) | JAF、道路交通法施行令 |
| 標識の例 | 道東自動車道の暫定2車線区間では、通常70km/h、悪天候時や工事区間では50km/h(2016年のNEXCO東日本の案内) | NEXCO東日本 |
| 100km/hの表 | 本線車道が往復の方向別に分離されていない区間では、車種別の法定最高速度の表は適用されず、一般道路と同じ | 警察庁「交通の方法に関する教則」 |
| 最低速度 | 往復の方向別に分離されていない本線車道は、最低速度(50km/h)を定めない本線車道とされている | 施行令第27条の2 |
| 追越し | 対面通行区間では、追越しができる区間でのみ追越しが可能。追越し時の接触は非常に危険 | NEXCO東日本(道東道) |
| 夜間のヘッドライト | 夜間は、対向車と行き違うときやほかの車の直後を通行しているときを除き、前照灯を上向きにする。対向車と行き違うときは、光度を減じる(下向きにする) | 教則、道路交通法第52条第2項、JAF |
| 車間距離 | 路面が乾燥しタイヤが新しい場合、100km/hで約100m、80km/hで約80m。雨で濡れ、タイヤが減っている場合は、約2倍程度が必要となることがある。NEXCO東日本は、70km/h走行時は最小70m、雨天は倍を推奨(道東道) | 教則、NEXCO東日本 |
🧭 暫定2車線区間を走るときの流れ
区間に入る前に、対面通行区間かどうかを確認する
標識や道路の構造(ラバーポールで区切られているなど)、NEXCOなどの案内で確認します。
最高速度の標識を確認する
片側2車線以上の高速道路と同じ感覚で走ると、知らないうちに制限速度を超えるおそれがあります(JAF)。
車間距離を十分にとる
暫定2車線は、事故や故障車の影響で渋滞が起こりやすいことも特徴です(JAF)。前の車に注意を払い、速度に応じた車間距離を保ちます。
追越しは、追越しができる区間だけにする
対面通行区間での追越しは、接触事故につながる危険があります。
夜間は、対向車が来たらヘッドライトを下向きに
中央分離帯のない対面通行区間では、光を遮る物がありません。ハイビームのままでは、対向車のドライバーがまぶしく感じます(JAF)。
💡 冬や悪天候のときは特に
国土交通省の資料では、飛び出し事故の約4割が冬期に発生しています。雪や凍結路では、速度を落とし、車間距離を広くとりましょう。
4. 4車線化の状況と、走る前の確認
国土交通省は、令和元年9月に、課題の大きい暫定2車線区間を優先整備区間(約880km)として選定し、4車線化を順次事業化しています。令和6年3月1日には、新たに着手する4車線化の候補箇所として、災害・渋滞・事故発生箇所などを総合的に勘案し、計11箇所約57kmを選定したと発表しています。
📊 4車線化の候補箇所(国土交通省、令和6年3月1日発表の別紙1。合計56.5km。その後の進捗は各社の公表資料でご確認ください)
| 路線 | 区間 | 延長 | 都道府県 |
|---|---|---|---|
| 道東自動車道 | 追分町IC〜夕張IC | 4.1km | 北海道 |
| 秋田自動車道 | 横手北スマートIC〜大曲IC | 7.9km | 秋田県 |
| 常磐自動車道 | 山元南スマートIC〜山元IC | 5.5km | 宮城県 |
| 磐越自動車道 | 西会津IC〜津川IC | 8.7km | 新潟県 |
| 東海北陸自動車道 | 飛騨清見IC〜白川郷IC | 4.3km | 岐阜県 |
| 山陰自動車道 | 松江玉造IC〜宍道JCT | 3.0km | 島根県 |
| 徳島自動車道 | 美馬IC〜吉野川SAスマートIC | 4.8km | 徳島県 |
| 松山自動車道 | 伊予IC〜内子五十崎IC | 5.3km | 愛媛県 |
| 東九州自動車道(椎田道路) | みやこ豊津IC〜築城IC | 1.2km | 福岡県 |
| 東九州自動車道 | 末吉財部IC〜国分IC | 7.1km | 鹿児島県 |
| 西九州自動車道(武雄佐世保道路) | 武雄南IC〜波佐見有田IC | 4.6km | 佐賀県・長崎県 |
※表は横にスクロールできます
このほか、準備調査候補箇所として5箇所約30kmが選定されています。地方の高速道路をよく利用する方は、自分がよく使う区間が、すでに4車線化されたのか、いまも暫定2車線なのかを、国土交通省やNEXCO各社の公式サイトで確認しておくと、走るときの心構えが変わります。
📝 暫定2車線を走る前のチェックリスト
☑️ 対面通行区間かどうかを、標識・案内で確認した
☑️ 最高速度の標識を確認した(片側2車線以上と同じ感覚で走らない)
☑️ 冬期や悪天候のときは、速度を落とす準備をしている
☑️ 十分な車間距離をとっている
☑️ 追越しは、追越しができる区間だけにしている
☑️ 夜間、対向車が来たらヘッドライトを下向きに切り替える
5. よくある質問
まとめ
中央分離帯のない暫定2車線の高速道路は、国土交通省の資料で、死亡事故率が四車線以上の区間の約2倍とされ、対向車線への飛び出し事故が課題です。飛び出し事故の約4割は冬期に発生しています。最高速度は標識で指定され、JAFは原則60km/h以下と説明しています。標識を確認して速度を守り、十分な車間距離をとり、夜間は対向車が来たらヘッドライトを下向きにする。この基本を、とくに冬や悪天候のときに徹底しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。
参考: JAF「クルマ何でも質問箱」中央分離帯がない高速道路を走るときの注意点は?(出典: 国土交通省「高速道路の暫定2車線区間の4車線化について」「暫定二車線区間の現状と課題」)
アイキャッチ画像: 上北自動車道天間林道路(七戸IC – 七戸北IC) by 国土交通省東北地方整備局青森河川国道事務所, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons


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