中古車の広告や店頭には、「修復歴なし」「支払総額」「保証付き」といった言葉が並びます。この記事は、同じ題材の動画の内容を紹介しながら、それぞれの言葉が規約でどう決められているかと、買う前に確認する項目を整理したものです。
「この車は買うな」と決めつけるのではなく、確認する項目と判断の基準を、自動車公正取引協議会(公取協)の規約・公式資料、日本自動車査定協会(日査協)、国土交通省、国民生活センター、e-Gov法令検索の記載で、2026年10月24日に確認し直しました。特定の販売店・メーカー・車種の評価は載せていません。
📋 この記事の要点
✔ 規約の「修復歴」は、車体の骨格に当たる8つの部位を修正・交換して復元したもの。ドアやバンパーは8部位の名前に入っていません。ただし日査協の判断基準には、小さな損傷(カードサイズ未満)などを修復歴としない扱いもあり、「修復歴なし」は、骨格部位に損傷や修理跡が全くない、という意味とは限りません。「事故歴」「事故車」を定義した条文は、規約集(2025年4月版)の中では見つけられませんでした
✔ 広告・展示車の価格は「支払総額」(車両価格+諸費用)で表示するルール。諸費用に入れてよいのは、保険料・税金(法定費用を含む)・登録等に伴う費用(検査登録と車庫証明の手続き代行費用)の範囲です。公取協は2026年8月、苦情の多かった店を調べて14社に改善を要請しました
✔ 「保証付き」は、保証に要する費用が車両価格に含まれ、保証書が付いているもの。何が対象でいつまでかは、保証書で確認します。「現状販売」「保証なし」の場合の責任の範囲は、契約の内容や事情で変わります
✔ 契約の前に、約款・注文書(口約束は備考欄へ)、リコール(車台番号)、走行距離(メーター交換・改ざんのシール)を確認。店舗で買う中古車は、国民生活センターが挙げるクーリング・オフの対象の取引に入っていません
✔ 公取協の2025年度の相談は、四輪車の中古車関係が3,587件(うち品質・機能が2,029件、修復歴の疑義が218件)。ただし相談の件数であり、トラブルの発生割合ではありません
▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
1. 動画の内容(要約)
動画は、聞き役の「かーぎーくん」と、中古車・表示担当の「ルーペ」の会話で、次の4つの章に分けて進みます。各章の開始時刻は、動画の概要欄の目次と対応しています。
| 章 | 内容 | 使った公式情報 |
|---|---|---|
| イントロ (動画 00:00〜) | 概要と、今回の担当(中古車・表示担当のルーペ)の紹介 | (公式資料の引用なし) |
| 相談件数 (動画 00:47〜) | 公取協に2025年度に寄せられた四輪車の中古車の相談(3,587件)の内訳。相談の件数であって、トラブルの割合ではない | 公取協「2025年度 消費者相談レポート」 |
| 1つ目 修復歴と証明書 (動画 01:02〜) | 規約の「修復歴」の定義と骨格8部位。「修復歴なし」の意味。日査協の車両状態証明書の記号(M・W・XM)。プライスボードの項目 | 中古車施行規則 第14条 / 日査協 V-CON / 公取協「必要表示」 |
| 2つ目 支払総額 (動画 02:01〜) | 支払総額=車両価格+諸費用。諸費用の範囲。公取協の改善要請(2026年8月)。見積書で見る4つ | 中古車施行規則 第6条 / 公取協 2026年8月31日の資料 |
| 3つ目 保証 (動画 03:21〜) | 「保証付き」の定義と、保証書で見ること。民法の条文(大意)と「現状販売」 | 中古車施行規則 第11条 / 民法 第562条・第566条 / 公取協マニュアル |
| 4つ目 契約の前に (動画 04:23〜) | 約款・注文書、キャンセルとクーリング・オフ、リコールの確認、走行距離(シール・走行メーター管理システム) | 公取協マニュアル / 国民生活センター / 国土交通省 / 公取協・日査協 |
| まとめ (動画 05:31〜) | 4つの確認ポイントと、買う前のチェックリスト(9項目) | (上の資料のまとめ) |

動画の結論は、「この車はやめるべき」ではなく、4つの確認ポイントです。(1)修復歴の意味と書面、(2)支払総額の内訳と登録地、(3)保証書の内容、(4)契約の前の書面・リコール・走行距離。以下で、動画で触れきれなかった根拠を示します。
2. 動画で触れきれなかった補足
規約の位置づけ:公取協の「会員店」で運用されるルール
「自動車業における表示に関する公正競争規約」は、公取協の説明では、業界が自主的に設定した、自動車を販売する際の表示と景品提供のルールです。景品表示法に基づいて消費者庁・公正取引委員会から認定を受けたものですが、法律そのものではありません。公取協は、この規約に賛同して入会した販売店を「会員店」としています。会員でない店を含め、すべての店が同じ運用とは限りません。なお、景品表示法には、規約とは別に事業者一般に向けた不当な表示の禁止があります。
📜 景品表示法 第5条(不当な表示の禁止)冒頭(原文)
「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。」(以下、第1号〜第3号は、品質・規格その他の内容が実際のものより著しく優良と示す表示、価格その他の取引条件が著しく有利と誤認される表示などを挙げています)
展示車のプライスボードに載る項目(公取協会員店)
公取協は、会員店の展示車のプライスボードに、次の項目が表示されると説明しています(公取協「中古車規約のポイント 必要表示」)。
| 項目 | 公取協の説明(要点) |
|---|---|
| 販売価格 | 購入に際して最低限必要な全ての費用を含めた「支払総額」と、内訳の「車両価格」「諸費用」 |
| 初度登録年月 | 登録車は初度登録年月、軽自動車は初度検査年 |
| 車名及び主な仕様区分 | エンジン排気量、ボディタイプ、グレード、ミッションタイプ等、車両を特定する情報 |
| 定期点検整備の有無 | 納車時までに実施して販売する場合は「定期点検整備付き」、実施しない場合は「定期点検整備なし」 |
| 保証の有無 | 保証に要する費用が車両価格に含まれる場合は「保証付き」(保証内容・保証期間又は保証走行距離数も表示)、それ以外は「保証なし」 |
| 走行距離数 | 走行距離計のキロ数。疑義があれば「?」と推定キロ数か「不明」。改ざんされている旨、交換されている旨と交換前後のキロ数も表示 |
| 修復歴の有無 | 規約と日査協の判断基準に基づき、骨格に当たる部位の修正・交換歴があると判断された場合に「有」。別途書面で修復箇所を表示 |
| 使用歴 | 自家用、営業用、レンタカー、その他 |
| 前使用者の点検整備記録簿の有無 | 展示時点から遡り2年以内に定期点検整備が行われ、記録簿が備え付けられている場合に「有」 |
| 自動車検査証の有効期限 | 有効期限の年月日 |
| 自動車リサイクル料金 | 「預託済み」か「未預託」(未預託の場合は廃棄時に支払いが必要な旨) |
修復歴:規約の原文と、書面・広告での表示のしかた
📜 中古車施行規則 第14条(原文)
「修復歴(車体の骨格に当たる部位の修正及び交換歴)」とは、販売する中古自動車について、次に掲げる車体の骨格に当たる部位を修正及び交換することにより復元されたものをいう。①フレーム(サイドメンバー) ②クロスメンバー ③フロントインサイドパネル ④ピラー(フロント、センター及びリア) ⑤ダッシュパネル ⑥ルーフパネル ⑦フロアパネル ⑧トランクフロアパネル
第15条は、修復歴がある場合に「有」、ない場合に「無」と表示するとしています。規約第12条は、修復歴がある車両について修復歴の部位を、書面を用いて明瞭に表示するよう定めています。展示車は外部から見やすい場所に表示し、購入者にはその書面を交付します。販売店は書面の写しを、作成した日から2年間保存します(施行規則第18条第2項)。
広告での扱いには違いがあります。インターネット・新聞・雑誌等の広告では、施行規則第18条により、「修復歴の部位については尋ねられたい旨」の付記で代えることができます。一方、インターネットの広告で中古自動車の通信販売を行う旨を表示する場合は、広告に表示する(規約第12条第4項)とされています。気になる車の広告が通信販売の旨を表示していないときは、部位を販売店に尋ねます。
📜 規約第14条(不当表示の禁止)より(原文)
「修復歴があるにもかかわらず、その旨を表示しないことにより、修復歴がないかのように誤認されるおそれのある表示」「冠水車であるにもかかわらず、その旨を表示しないこと等により、冠水車でないかのように誤認されるおそれのある表示」は、してはならない。
「事故歴」「事故車」という言葉を定義した条文は、規約集(2025年4月版)の全文を検索して確認しましたが、見つけられませんでした(「存在しない」とは断定しません)。修復歴の判断基準は、公取協(規約)・日査協(修復歴判断基準)・日本オートオークション協議会(修復歴判定基準)の3団体で同一の基準とされ(2019年3月26日付の公取協のお知らせ)、2019年4月1日には、損傷の大きさの基準(「軽微なもの(500円玉程度)」から「小さなもの(カードサイズ未満)」へ)などが変更されました。判断基準の別紙(日査協資料の抜粋)には、部位ごとに「修復歴とするもの」と「修復歴としないもの」があり、たとえば小さな凹みやその修理跡などが「修復歴としないもの」に挙げられています(小さな損傷の大きさはカードサイズ(8.5cm×5.4cm)とされています)。そのため「修復歴なし」は、骨格部位に損傷や修理跡が全くない、という意味とは限りません(この別紙は2019年の資料で、最新の基準は日査協で確認してください)。部位ごとの表は、当サイトの 「修復歴なし」の意味は?中古車の骨格8部位・カードサイズ基準・走行距離の表示ルール で詳しく扱っています。
骨格部位の名称変更(案):定義は変わらないとされています
公取協は2026年4月8日付の資料で、中古車施行規則の改正(案)を公表しました(2026年3月24日の第152回理事会で承認とされ、消費者庁・公正取引委員会への承認申請の手続きを進めるところで、施行日は「分かり次第、改めてお知らせ」とされていました)。内容は、日査協の修復歴判断基準で骨格部位の名称が変わることを踏まえた名称の変更で、公取協は「部位の名称の変更のみで、修復歴の定義が変更されるものではない」と説明しています。2026年10月24日時点で、公取協の新着情報(10月14日分まで)に施行の掲載は見つけられませんでした。
| 現行(規約集 2025年4月版) | 改正(案) |
|---|---|
| ①フレーム(サイドメンバー) | サイドメンバー・フレーム |
| ②クロスメンバー | (変更なし) |
| ③フロントインサイドパネル | インサイドパネル |
| ④ピラー(フロント、センター及びリア) | ピラー |
| ⑤ダッシュパネル ⑥ルーフパネル ⑦フロアパネル ⑧トランクフロアパネル | (変更なし) |
車両状態証明書(日査協)の欄と記号
日査協の案内によると、車両状態証明書は「その車の修復歴の有無が判ります。傷や凹み、補修跡等を記号と数字で表示しているので、現車と照らし合わせて確認できます。走行キロ数を確認しておりますので安心です」と説明されています。実施するのは、日査協が定める査定業務実施店登録をされている事業者で、証明の対象は乗用車・商用車・小型トラック(2tベース)、大型車・特殊車(特装車)・バス・二輪車等は対象外です。

| 記号 | 意味(日査協の説明・要点) |
|---|---|
| M | 修復歴 |
| W0〜W3 / XM | W=板金修理跡(W0〜W3の4段階)、XM=交換跡(ねじ止め外板・溶接止め外板) |
| U・A・P・UA・S・C・T と 大きさ0〜3 | 凹み・傷・変色・傷を伴う凹み・さび・腐食・割れなどの損傷の種類と、大きさ(0=500円玉サイズ未満〜3=A4サイズ超)。全記号と大きさの意味は、当サイトの 「修復歴なし」の意味は?中古車の骨格8部位・カードサイズ基準・走行距離の表示ルール の表にまとめています |
支払総額:規約の原文と、公取協の改善要請
📜 中古車施行規則 第6条(原文・要点)
「車両価格とは、店頭において車両を引き渡す場合の消費税を含めた現金価格で、展示時点で既に装着済みの装備等を含む価格をいう。」「諸費用とは、保険料、税金(法定費用含む。)、登録等に伴う費用(新規登録又は移転登録を行う場合の検査登録手続代行費用及び車庫証明手続代行費用)をいう。」「前項に定める価格は、「支払総額」の名称で表示するものとする。」
第6条第3項は、車両価格と諸費用を併記し、価格には保険料・税金・登録等に伴う費用等が含まれている旨、そして「登録等の時期や地域等について一定の条件を付した価格である旨」を表示するとしています(電波媒体や新聞の突き出し広告等は省略可)。支払総額は、条件つきの価格です。
公取協の消費者向けマニュアルは、「クルマはプライスボードに表示してある車両本体価格だけでは買えません」と説明し、見積書を出してもらい、複数の販売店の見積書を家で並べて比べることを勧めています。自宅などへの納車を頼むときの費用については、マニュアルが納車費用を「販売店が『ユーザーの依頼によって』、指定した場所に届けるための費用です。納車日に販売店に直接取りに行く場合は払う必要はありません。」と説明しています(筆者の整理:車両価格が「店頭で引き渡す場合」の価格とされているため、自宅への納車を頼むと別の費用になる場合があります)。
2026年8月31日、公取協は、「広告等に表示された『支払総額』では購入できない」という苦情相談(2024年8月〜2025年3月)が多く寄せられていた、大手中古車専業店や未使用車専門店等20社48店舗を対象に販売実態を調べ、問題が認められた14社に改善を要請しました。調査の対象は苦情が多かった店で、業界全体の割合を示すものではありません(社名は資料に載っていますが、この記事では書きません)。
| 問題とされた例(公取協の資料の要旨) | 公取協の要請 |
|---|---|
| 広告の「支払総額」に含まれていないパック商品の費用を見積書に計上し、不要と伝えても外せないと説明 | 「支払総額」に含まれないオプション等の費用を別途請求しない。パック商品を購入するかどうかはお客様の選択に委ねるべきもので、購入を条件としない |
| 管轄運輸支局内(同一都府県内)の登録なのに、「管轄外手続代行費用」を「支払総額」とは別に請求 | 管轄運輸支局内で登録(届出)した場合の費用を「諸費用」に含めて「支払総額」を表示。管轄内の登録の場合は「管轄外手続代行費用」を請求しない |
| 諸費用に「ETCセットアップ費用」を含めて「支払総額」を表示し、不要と伝えても必ず必要と説明 | 諸費用に含められるのは、保険料、税金(法定費用含む。)、登録等に伴う費用(検査登録手続代行費用及び車庫証明手続代行費用)に限られる。ETCセットアップ費用等のオプションの費用は諸費用に含めない。実施を条件としない |
| 「納車準備費用」の名称で、洗車やクリーニングのための費用を、車両価格に含めず諸費用に含めて請求 | 洗車やクリーニングなど、販売の準備行為や中古車の商品化のための作業の費用は、「車両価格」に含めて表示 |
| プライスボードに「支払総額」よりも「車両価格」を大きく表示 | 内訳の「車両価格」を、「支払総額」よりも大きく目立つように表示しない |

📜 公取協 2026年8月31日の資料「公取協の今後の対応」より(原文)
「表示した「支払総額」で販売しない場合は、「不当な価格表示」に該当し、重大な規約違反となります。」
公取協のQ&A(掲載時期は不明)には、「点検、クリーニング等の「納車準備費用」については、本来、車両価格に含まれているべきものであるため、支払う必要はないものと考えられます」「諸費用の額について高い安いは一概に言えませんが、諸費用の内容については販売店に詳しい説明を求め、十分、納得した上で契約することが大切」という記載があります(中古車Q&A 高額な諸費用を請求された)。
保証:規約の定義と、公取協の見解
📜 中古車施行規則 第11条(原文・要点)
「保証付き」とは、販売業者又は製造業者の保証に要する費用が車両価格に含まれ、保証書が付いているものをいう(表示するときは「保証の内容」及び「保証期間又は保証走行距離数」を付記)。「保証なし」とは、保証に要する費用が車両価格に含まれていないものをいい、有償で保証をつける場合には、その旨を表示する。保証書とは、「販売業者又は製造業者が自己の販売又は製造する自動車について、一定の条件の下に一定期間内に発生した故障に対して、主として無償修理する旨等を記載した書面」をいう。

施行規則は、保証書を公取協の定める保証書作成要領に基づいて作成すること、購入者に保証書を交付すること、保証書の写しを保証満了日まで保存することも定めています。公取協のQ&Aは、「保証付き」の表示なのに保証費用を別に請求された例について「保証費用の5万円はあらかじめ販売価格に含めて表示すべきもの」、保証のための定期点検整備費用を別途請求された例について「別途、保証のための整備費用を支払う必要はないものと考えられます」と説明しています。また、「車検整備付き」と表示された車に「納車整備費用」を請求された例では、「その他の整備費用を支払う必要はないものと考えられます」としています。
2025年度の公取協の相談事例には、「車検整備付」と表示された車で、整備のパック費用が必要と言われた、総額内で車検は行うが最低限必要な部品交換は別途請求すると説明された、といった例も載っています(個別の事例で、どの店かは書きません)。「車検整備付」「保証付き」の表示があっても、何が総額に含まれ、何が別料金かは、見積書で確認することが必要です。
「現状販売」「保証なし」と民法・消費者契約法
📜 民法 第562条第1項(原文)
「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。」(第2項:不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、追完を請求できない)
📜 民法 第566条(原文)
「売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。」
第566条の期間制限は、条文のとおり種類・品質の不適合について定めたものです(数量に関する不適合は、この条文には書かれていません)。第563条は、追完の催告をしても期間内に追完がないときは、買主が不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる、と定めています(追完が不能な場合などは、催告なしで請求できます)。「現状販売」「保証なし」と書かれた契約で、責任がどこまで免除されるかは、契約の内容や事情で変わります。消費者契約法第8条第1項第1号は、「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項」を無効としていますが、同条第2項には、契約不適合の場合に事業者が追完責任や代金減額の責任を負うこととされているときの例外もあり、条文だけで結論は決められません。
公取協のQ&Aには、修復歴に関する見解もあります。「修復歴『無』と表示されていたのに修復歴があった」「軽い板金修理をしていると説明されたが修復歴に当たった」「販売店も修復歴車と知らずに販売していた」という例について、公取協は、いずれもキャンセルを要求することは可能であると考えられるとし(Q6では「この場合、現状販売であることは関係ありません」とも書いています)、根拠として民法の錯誤を挙げています。ただし、これは「考えられる」という見解で、個別の結論ではありません。また、Q&Aには民法の改正前の用語(「売主の瑕疵担保責任」)が使われている項目があり、現行の条文は契約不適合責任(民法第562条以下)です。
契約の前に:約款・注文書・クーリング・オフ
公取協のマニュアル(中古車編「契約にあたって」「販売店へ行ってみる」)から、契約の前に確認することをまとめます。
| 確認すること | 公取協のマニュアルの記載(要旨) |
|---|---|
| 約款 | 注文書の裏の約款を読む。「注文書に署名・捺印した時期をもって契約成立とする」「キャンセルした場合には、車両代金の2割をキャンセル料として払うものとする」と書いてある店もある例が挙げられています。キャンセル料が2割と定められていても、合理的な根拠がなければ支払う必要はないでしょう(消費者契約法)とも書かれています |
| 口頭の約束 | 口頭で約束したことは、注文書の備考欄に書いてもらう。「特に走行距離や、修復歴に関しては、公取協にも相談が多く寄せられますので、必ず紙面に残すようにしましょう」 |
| 注文書の控え・保証書 | 注文書の控えと保証書は、きちんと保管する(トラブル解決の鍵になることが多い) |
| 契約成立前と後 | 約款に定められた契約の成立時期より前であればキャンセルは可能。後であった場合は難しくなり、キャンセル料も発生してくるでしょう、と説明されています(公取協マニュアル「販売店へ行ってみる」) |
| 誘い文句 | 「今決めていただければ安くしますよ」「他の営業所に希望のクルマがあります」「他人に売らないで取っておきますから…」は、冷静に。見積書は家に持ち帰って考える |
| 現車確認・試乗 | 「中古車は品質や状態が一台一台異なる商品ですから、現車確認をおすすめします」「できるだけ試乗をさせてもらいましょう」。ネットで買う場合は、納車まで車を確認できない等のデメリットを理解する |
| 納車のとき | 昼間の明るい中で確認。注文書と車を比較し、車検証と保証書を受け取って記載内容を確認 |
クーリング・オフ:国民生活センターの「クーリング・オフ」のページが挙げる、特定商取引法でクーリング・オフができる取引は、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入(8日間)と、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引(20日間)です。店舗で買う中古車は、この中に入っていません。自動車の購入にクーリング・オフが使えない根拠の条文は、当サイトの 「修復歴なし」の意味は?(契約後の権利の章) に載せています。契約後のキャンセルの考え方は、当サイトの 契約後のキャンセル、クーリングオフは車に適用される? もあわせてご覧ください。
リコール・走行距離・冠水車の表示
| 項目 | 公式の記載(要旨) |
|---|---|
| リコールの検索 | 国土交通省のリコール情報検索は、車名・型式・届出日からリコール等の内容を検索できる。「個別の車台番号から対象の届け出をお調べになりたい場合は、自動車メーカー、及び販売会社にお問い合わせ下さい」。車台番号の範囲に入っていても、仕様(自動変速機・手動変速機の違い、ターボの有無等)により対象外の場合もある。輸入車は、車台番号ではなくシリアル番号で届け出がされている場合がある。このページの検索対象は2026年8月31日までの届出で、それ以降の届出は国土交通省のリコールのページ(https://www.mlit.go.jp/jidosha/recall.html)で確認します |
| リコールの修理 | 自動車メーカーが国土交通大臣に届出を行ったうえで、無料で回収・修理を行う制度。国土交通省は、リコール・改善対策の際には、安全確保の観点などから修理を受けるようにしましょうと案内 |
| 改善実施の識別 | 国産車メーカー各社は、改善実施の有無をペイント等で識別していたが、令和8年4月1日以降は、各メーカーホームページのリコール等対象検索で車台番号を入力して実施の有無を識別できるようになる(国土交通省) |
| 走行距離の表示 | 走行距離計の交換・疑義・改ざんは、規約第12条で書面に表示する。交換の車(取替え前後のキロ数・実施事業者・年月日を示す書類が備え付けられている車)と改ざんが判明した車には、公取協のシールを運転席側のセンターピラーに貼る(規約第12条の2) |
| 走行メーター管理システム | 日本オートオークション協議会のシステムで、日査協・中販連の支所が受付。手数料1,500円、現車の持ち込みが必要。オートオークションへの出品歴がないなど、データのない車はチェックできない |
| 冠水車 | 規約第14条は、冠水車であるのにその旨を表示しない等により、冠水車でないかのように誤認させる表示を禁止。国土交通省は、水に浸った車両は外観上問題がなさそうでも、感電事故や電気系統のショートによる車両火災のおそれがあるとして、自分でエンジンをかけず、ハイブリッド車・電気自動車は高電圧バッテリーをむやみに触らないよう案内 |
相談先
消費者ホットライン「188」は、消費者庁の説明では、地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内するもので、消費者庁につながるものではありません。公取協の消費者相談室(電話03-5511-2115、10〜12時・13〜16時、土日祝を除く)は、電話での相談だけを受け付け、相手方との交渉・斡旋は行っていません。相談員が内容を聞き、対応方法や法的な考え方についてアドバイスを行う窓口とされています(いずれも2026年10月24日に公式ページで確認)。
3. 違った観点から整理する
① 買うまでの6つの場面で、何を確かめるか(時系列)
動画は「修復歴→支払総額→保証→契約の前」と話題ごとに進みました。ここでは、買うまでの時間の流れで並べ直します(各場面の項目は、規約・公取協のマニュアル・民法の記載をもとにした筆者の整理です)。

| 場面 | 確かめること | 見る場所・根拠 |
|---|---|---|
| 1 広告(ネット・チラシ) | 支払総額の表示と内訳、修復歴の有無、保証の有無、走行距離、「通信販売の旨」の有無 | 規約第11条・第12条・施行規則第6条。広告では修復歴の部位が「尋ねられたい旨」の付記のことがある |
| 2 来店(現車) | プライスボードの項目、現車・エンジン始動・試乗、修復歴の部位(書面)、証明書の発行者・検査日 | 公取協「必要表示」・マニュアル / 日査協 V-CON |
| 3 見積 | 内訳(車両価格・諸費用)、諸費用の項目が規約の範囲か、自分の登録地でも同じ総額か、複数店の見積書の比較 | 施行規則第6条 / 公取協 2026年8月31日の資料 |
| 4 契約 | 約款(契約成立の時期・キャンセル料)、口約束は備考欄、保証書の内容、走行距離・修復歴は紙に残す | 公取協マニュアル「契約にあたって」 |
| 5 納車 | 注文書と車の照合、車検証・保証書の確認、リコールの有無(車台番号)、メーター交換・改ざんのシール | 公取協マニュアル「さあ、納車」/ 国土交通省 / 規約第12条の2 |
| 6 納車後 | 不具合や不一致は早めに連絡。種類・品質の不適合を知った時から1年以内の通知(民法第566条)。書類を保管。相談は188・公取協 | 民法第562条・第566条 / 国民生活センター |
② 規約が決めていること・決めていないこと(筆者の整理)
規約は表示と景品のルールです。次の表は、規約や公式資料の記載から、「規約で決まっていること」と、「規約集の中では確認できなかったこと」を分けた筆者の整理です。
| 言葉 | 規約・公式資料で確認できたこと | 確認できなかったこと・注意 |
|---|---|---|
| 修復歴なし | 骨格8部位に修復歴がない、という意味(施行規則第14条) | 「事故なし」と同じ意味とまでは言えない(骨格部位でも小さな損傷などは基準で修復歴としない扱いがある)。「事故歴」「事故車」の定義は規約集では見つけられなかった |
| 支払総額 | 車両価格+諸費用。諸費用の範囲は限定されている。表示した支払総額で販売しない場合は不当な価格表示(公取協) | 条件つきの価格(登録等の時期や地域)。自分の条件で同じ総額かは見積書で確認 |
| 保証付き | 保証費用が車両価格に含まれ、保証書が付いている。保証の内容と期間・走行距離を表示 | 何が無償で直るかは保証書の内容による。規約集に「全部直る」という定義はない |
| 車検整備付き / 定期点検整備付き | 「定期点検整備付き」は、車両価格に整備費用を含めて表示(施行規則第13条)。公取協Q&Aは「車検整備付き」で別の整備費用は不要との見解 | 整備の中身(交換部品など)の範囲は、見積書・整備内容で確認 |
| 現状販売 | 規約集(2025年4月版)の全文に「現状」の語は見つけられなかった。公取協のQ&Aは「現状販売(保証なし・定期点検整備なし)」と書いている | 責任の範囲は契約の内容と事情で変わる(民法・消費者契約法)。困ったら188 |
③ よくある誤解を、公式の記載で検証する
| よくある言い方 | 確認できたこと |
|---|---|
| 「修復歴なし」は事故にあっていない車 | そうとは言い切れない。規約の「修復歴」は骨格の8部位が対象で、ドア・バンパーは名前にない。骨格部位でも、小さな損傷などは基準で修復歴としない扱いがある。証明書では板金修理跡(W)や交換跡(XM)が別の記号で示される |
| 支払総額が書いてあれば、それ以上は一切かからない | 規約上、表示した支払総額で販売しない場合は不当な価格表示。ただし支払総額は登録等の条件つきの価格で、公取協は2026年8月に、苦情が多かった店に改善を要請(調査対象は一部の店)。見積書で確認する |
| 保証付きなら何でも無償で直る | 「保証付き」の定義は、費用が車両価格に含まれ保証書が付いていること。対象と期間は保証書で決まる(保証書は、一定の条件の下に一定期間内に発生した故障に対して主として無償修理する旨を記載した書面) |
| 現状販売なら、壊れても自己責任 | 条文だけでは言い切れない。民法には契約不適合の場合の追完請求・代金減額などの定め(第562条以下)と、種類・品質の不適合を知った時から1年以内の通知(第566条)がある。免責条項の効力は契約の内容と事情で変わる |
| メーターの数字は、そのまま実走行距離 | 交換・疑義・改ざんは書面で表示するルール。走行メーター管理システムは、オークション出品歴がない車はチェックできない。書面・記録簿・システムを重ねて確かめる |
| 公取協の規約は、どの中古車店にも同じように適用される | 公取協の説明では「会員店」で運用。会員でない店は同じ運用とは限らない(景品表示法の不当表示の禁止は事業者一般に及ぶ) |
④ 公取協の相談件数で見る「つまずきやすい場所」(2025年度)
公取協の「2025年度 消費者相談レポート」によると、2025年度の相談受付は全体で6,050件、四輪車は5,658件で、そのうち中古車は3,587件(63.4%)でした。中古車関係の内訳は次のとおりです(表5)。これは相談の件数で、販売台数あたりのトラブル発生率ではありません(レポートに販売台数の記載はありません)。
| 分類 | 件数 | 割合 | 内訳・備考(レポートの記載) |
|---|---|---|---|
| 品質・機能 | 2,029件 | 56.6% | 不調・故障1,612件、修復歴の疑義218件、走行距離の疑義60件、違法改造25件、冠水車25件、その他89件 |
| 契約・取引方法 | 875件 | 24.4% | 契約と内容が異なる529件など。このうち1割以上が「中古車の不適切な販売(表示された支払総額で購入できない)」に関する相談 |
| キャンセル | 565件 | 15.8% | 消費者の自己都合485件、事業者の都合24件など |
| 付帯費用・その他 | 118件 | 3.3% | 付帯費用31件(税金10件・諸費用19件など)、その他87件 |
レポートは、有料の保証やオプションの購入を強制された等の「中古車の不適切な販売」に関する相談が、支払総額の表示に関するルールの普及促進活動やPR活動を続けた効果もあり、前年度比29%減だったと説明しています。一方で、レポートは、2025年度は前年比で「不調・故障」が381件、「修復歴の疑義」が28件増えたと記しています。
筆者の計算では、修復歴の疑義218件は、中古車関係の相談3,587件の約6.1%、品質・機能の相談2,029件の約10.7%に当たります(218÷3,587、218÷2,029)。
4. よくある質問
📚 あわせて読みたい
▶ 「修復歴なし」の意味は?中古車の骨格8部位・カードサイズ基準・走行距離の表示ルールを規約と国交省資料で確認
まとめ
中古車を買う前の確認は、修復歴(規約では骨格8部位の修正・交換による復元。「修復歴なし」は「事故なし」と同じ意味とは言えない)、支払総額(車両価格+諸費用。内訳と、自分の登録地での総額を見積書で)、保証(保証書で内容と期間・走行距離を)、契約の前の書面と確認(約款・注文書の備考欄・リコール・走行距離)の4つに整理できます。
これらは「この車は買うな」と判断する材料ではなく、表示と実際が合っているかを自分で確かめるための項目です。迷ったときは、消費者ホットライン188や公取協の消費者相談室に相談できます。規約・基準は改正されることがあるため、購入の前に最新の情報を公式サイトで確認してください(骨格部位の名称変更案など)。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。確認日は2026年10月24日で、規約・施行規則・判断基準・法令・料金・手続きは改正・変更されることがあります(規約の骨格部位の名称変更案は、施行日を確認できていません)。規約・条文の引用は、原文を示した箇所のほかは要約(大意)を含みます。公取協の相談件数・改善要請の調査結果は、相談や調査の対象の件数であり、業界全体の割合を示すものではありません。「筆者の整理」と書いた部分は、公式資料の記載をもとにした筆者の整理で、公式の見解ではありません。個別の車・契約の判断は、販売店・日本自動車査定協会・自動車公正取引協議会・消費生活センターなどの公式情報や窓口でご確認ください。特定の販売店・メーカー・車種を評価するものではありません。
参考(一次情報・公的機関・業界団体): 自動車公正取引協議会「自動車公正競争規約集」(2025年4月版。規約第11条・第12条・第12条の2・第14条、施行規則第6条・第11条〜第19条)/公取協「中古車規約のポイント 必要表示」/公取協「中古車規約のポイント 不当表示」/公取協「自動車公正競争規約とは」/公取協 AFTC INFORMATION 2026年8月31日(販売実態のモニタリング結果を踏まえた改善要請)/公取協 AFTC INFORMATION 2026年4月8日(施行規則改正(案)の公表)/公取協 AFTC INFORMATION 2026年4月10日(環境性能割の廃止)/公取協 AFTC INFORMATION 2026年5月7日(修復歴の不当表示への措置)/公取協 AFTC INFORMATION 2019年3月26日(日査協の修復歴判断基準の変更)/公取協「2025年度 消費者相談レポート」/公取協「上手なクルマの買い方マニュアル 中古車編」/公取協「クルマ購入等に関するご相談(Q&A)中古車」/公取協 走行メーター管理システム/公取協 走行距離計交換歴車・改ざん歴車シール/公取協 消費者相談室のご案内/日本自動車査定協会 車両状態証明事業(V-CON)/日査協 車両状態証明書の見方/日査協 走行メーター管理システムについて/国土交通省 リコール情報検索/国土交通省 自動車のリコール制度について/国土交通省 リコール・改善対策の届出(令和8年分)/国土交通省 浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ/国民生活センター 中古自動車/国民生活センター クーリング・オフ/消費者庁 消費者ホットライン/東京都主税局 自動車税環境性能割及び軽自動車税環境性能割は廃止されました/e-Gov法令検索 民法(第562条・第563条・第566条)/e-Gov法令検索 消費者契約法(第8条)/e-Gov法令検索 不当景品類及び不当表示防止法(第5条)
図はすべて自作のイラスト・図表です(AI生成なし)。車両状態証明書の図は、日査協の見本の説明をもとにした模式図で、実物の画像は使っていません。

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