雪道でノーマルタイヤはどれだけ止まれない?JAFテストの制動距離と、冬用タイヤ規制・チェーン規制・溝50%を一次情報で確認

「雪道でノーマルタイヤ(夏タイヤ)を履いていると、どれだけ止まれないのか」。この記事は、解説動画(かーぎーくんと、冬のクルマ担当のゆきなの対談)の内容を、出典つきで詳しくまとめ、動画では触れきれなかった補足と、別の切り口の整理を加えたものです。

確認したのは、JAFユーザーテスト(結果の図を開いて数字を確認)、国土交通省、NEXCO中日本・西日本、日本自動車タイヤ協会(JATMA)、警視庁、東京都例規集、e-Gov法令検索の現行条文です。公式の資料に書かれていたことだけを書き、確認できなかったことは「確認できなかった」と明記しています(確認日: 2026年10月24日)。

📋 この記事の要点

✔ JAFのテスト(2017年2月・時速40km・新品タイヤ・ABS作動・3回の平均)で、圧雪路の制動距離はノーマル29.9m・スタッドレス17.3m(約1.7倍)。氷盤路はノーマル105.4m・スタッドレス78.5m・ノーマルに非金属チェーンを着けて59.0m(ただしチェーンも圧雪路では28.4mで、ノーマルとほぼ同じ)

✔ 同じJAFの登坂テストでは、圧雪路の勾配12%の坂を平らな場所から発進したとき、ノーマルタイヤだけが上れなかった(前輪駆動のコンパクトカー)

✔ 4WDでも、止まる距離は短くならない。JAFの2018年のテストで、平らな圧雪路は2WD・4WDとも約20〜22m、勾配9%の下り坂は2WD約29〜33m・4WD約35〜40m(4台とも別の車種)

✔ 高速道路の冬用タイヤ規制は冬用タイヤかチェーンなどが必要、チェーン規制はスタッドレスでも4WDでもチェーンが必要(NEXCO・国土交通省)

✔ 積雪・凍結路の滑り止めは、道路交通法第71条第6号にもとづく都道府県の規則の義務(東京都は道路交通規則第8条第6号)。普通車の反則金は6,000円。冬用タイヤの溝は新品の50%以上が目安(JATMA)

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1. 動画の内容(要約)

動画は、疑問の順(どれだけ止まれないのか → 走るほうは大丈夫なのか → 4WDなら大丈夫なのか → 高速道路の規制は → 法令と溝は → 結局どうすればいいのか)に、5つのポイントで進みます。聞き役のかーぎーくんが質問し、冬のクルマ担当のゆきなが、公式の資料で確認できた範囲だけで答える形です。

📊 動画の流れ(章ごとの要約)

時間 章 内容
00:00 導入 今日の疑問と、担当のゆきなの紹介。確認日は2026年10月24日
00:41 1つ目 JAFテストの制動距離 テストの条件(2017年2月・士別市・時速40km・新品6種類・ABS作動・3回の平均)と結果。圧雪路は29.9m対17.3m、氷盤路は105.4m・78.5m・59.0m(59.0mはノーマルに非金属チェーンを着けた場合。チェーンも圧雪路は28.4mで、ノーマルとほぼ同じ)。スタッドレスが止まった地点でのノーマルの速度(目安の計算)
02:10 2つ目 登坂テスト 圧雪路の勾配12%では、平らな場所から発進するとノーマルだけが上れなかった。勾配20%は平らな場所から上れたのはスタッドレスだけ。氷盤路の勾配9%はスタッドレス+チェーンで上れた
02:39 3つ目 4WDなら大丈夫? JAF 2018年のテスト。登坂は4WDが有利だが、急ブレーキの距離は平らな路面で差がなく、下り坂では4WDのほうが長かった(車種は4台とも別)
03:40 4つ目 高速道路の規制 冬用タイヤ規制(NEXCO中日本)、冬用タイヤの見分け方(NEXCO西日本)、チェーン規制(国土交通省。時期や確認方法はNEXCO中日本の案内でも確認)。チェーンの種類はJAFの説明も紹介(布製カバーは規制に対応できない可能性がある)
04:47 5つ目 法令と冬用タイヤの溝 道路交通法第71条第6号(各都道府県の公安委員会が規則で定める)と東京都道路交通規則第8条第6号、反則金と違反点数(警視庁)、溝は新品の50%以上(JATMA)
06:03 結局どうすればいい? 走らない選択、冬用タイヤを4輪とも+チェーン携行、急のつく運転を避ける(この章は、当チャンネルの整理)
06:30 まとめ 5つのポイントの振り返りと、規制や条文は更新されることがある点の注意

2. 動画で触れきれなかった補足

(1) JAFの制動テスト2017年: 条件と全12個の数字

JAFユーザーテスト「走れても止まれない、雪道のノーマルタイヤ」(JAFのページ)は、2017年2月13日に北海道士別市の交通科学総合研究所で行われました。時速40kmから急ブレーキを踏み、制動距離を6種類のタイヤ(すべて新品)で測っています(ABS作動、制動距離はそれぞれ3回の平均、コース脇に10m間隔でラバーコーンを設置)。路面は、雪が踏み固められた圧雪路と、凍結した氷盤路(アイスバーン)の2種類です。

JAFテスト2017年 時速40kmからの制動距離(6種類のタイヤ・圧雪路と氷盤路)
図1:JAFテスト(2017年)のタイヤ別の制動距離(JAFの公開データをもとにした自作の図)

📊 時速40kmからの制動距離(JAF 2017年2月・新品タイヤ・ABS作動・3回の平均)

タイヤ 圧雪路 氷盤路 JAFの説明(要旨)
ノーマルタイヤ(雪道以外で使用する一般的なタイヤ=夏タイヤ) 29.9m 105.4m 圧雪路はスタッドレスの約1.7倍。氷盤路は非金属チェーンの約1.8倍
スタッドレスタイヤ(特殊なゴムと溝をもつ雪道・凍結路用) 17.3m 78.5m どちらの路面でも他のタイヤより距離は短め。ただし氷盤路の距離は長くなるので過信は禁物
ノーマル+チェーン(テストで使用したのは一般的な非金属タイプ) 28.4m 59.0m 氷盤路で最も短かった。圧雪路は28.4mで、ノーマル(29.9m)とほぼ同じ。JAFは「チェーンは、種類や路面状況によって制動距離が長くなることもある」と注意
オールシーズンタイヤ(季節を問わず走行できるタイヤ) 22.7m 101.1m 氷盤路では「軒並み制動距離が長く」なったタイヤの一つ
ノーマル+オートソック(特殊繊維製の緊急用滑り止め) 20.1m 99.2m 短い距離で止まれたが、安定した性能を得ることが難しいので、あくまで緊急用
ノーマル+スプレーチェーン(液剤を塗布する緊急用滑り止め) 24.1m 112.8m 同上(氷盤路では6種類のなかで最長)

JAFのまとめは「雪道でのノーマルタイヤは、スタッドレスタイヤなどと比べて明らかに制動距離が長くなる」「雪道をノーマルタイヤで走行することは極めて危険なので、スタッドレスタイヤやチェーンを必ず装着する」「雪や雨が降ったあとの路面は凍結していることもあるので、一見、路面に雪がないように見えても走行には十分注意が必要である」です。

数字の確認方法:このJAFのページは、結果が画像(図)で載っています(本文のテキストには数字が出てきません)。この記事の数字は、図を実際に開いてすべて目視で確認し、圧雪路・氷盤路それぞれの写真に付いた数字とも一致することを確かめたものです。取り違えやすい数字なので、引用するときは図で確かめてください。
この数字の限界:(1)テストは2017年(9年前)で、車・タイヤは当時のものです。JAFの雪/凍結のテスト一覧(確認日時点)に、これより新しい「ノーマル対スタッドレス」の制動テストは見当たりませんでした。(2)制動テストの車の駆動方式・車種は、このページに書かれていません。(3)オールシーズンタイヤにスノーフレークマークがあったかも書かれていません。(4)すべて新品のタイヤでの結果で、すり減ったスタッドレスの数字ではありません。数字は目安として読んでください。

(2) 登坂テスト(JAF 2017年2月12日)

同じ年に、JAFは登坂のテスト(JAF「雪道での登坂テスト」)も行っています。前輪駆動のコンパクトカーで、全長50mの坂を、6種類の新品タイヤ・各3回で試しました。

📊 圧雪路・氷盤路の登坂の結果(JAF 2017年)

条件 上れた 上れなかった
圧雪路 勾配12%・平らな場所から発進 スタッドレス・オールシーズン・チェーン・オートソック・スプレーチェーン ノーマルだけ(スリップして空転)
圧雪路 勾配12%・坂の途中から発進 スタッドレス・チェーン・オートソック ノーマル・オールシーズン・スプレーチェーン
圧雪路 勾配20%・平らな場所から発進 スタッドレスだけ 他のタイヤは少し上れても、すぐスリップ
圧雪路 勾配20%・坂の途中から発進 (なし) スタッドレスでもスリップして上れなかった
氷盤路 勾配9%・平らな場所から発進(スタッドレスとスタッドレス+チェーンのみ) スタッドレス+チェーン スタッドレス(チェーンなし)

JAFは「ノーマルタイヤは、雪道の勾配12%の坂道でさえ上れない」とまとめ、スタッドレスは登坂性能が高い一方、雪や雨のあとの凍結路面などではその限りではない、と注意しています。国土交通省は、チェーン規制のページの「スタッドレスタイヤでも規制対象なの?」の項で、参考リンクにJAFの「雪道での登坂テスト」を挙げています。冬の登坂のJAFテストを屋根の雪の話とあわせて整理した記事は、こちらです。

(3) 4WDのテスト(JAF 2018年2月14日)

JAFの「4WDなら雪道でも安心?」(JAFのページ)は、2WD(前輪駆動)2台と4WD 2台の計4台に、新品のスタッドレスを履かせて圧雪路で比べたテストです。登坂は、勾配9%は4台とも上りきり、勾配20%は4WDの2台が安定して上りきった一方、2WDの2台は途中でスリップして上りきれませんでした。

JAF 4WDと2WDの急ブレーキ(圧雪路・平らな路面と下り坂)
図2:JAFテスト(2018年)の急ブレーキ(時速40km・ABS作動)の制動距離(JAFの公開データをもとにした自作の図。4台は別の車種)

📊 時速40kmからの急ブレーキの制動距離(圧雪路・新品スタッドレス・ABS作動)

車 駆動 平らな路面 勾配9%の下り坂
2WD ① 前輪駆動 20.6m 29.1m
2WD ② 前輪駆動 22.0m 32.9m
4WD ③ 4WD 22.0m 35.3m
4WD ④ 4WD 20.0m 39.6m

JAF本文のまとめは「平坦路の制動距離は、2WDと4WDのいずれの車も20m〜22mと、大きな差はなかった」「勾配9%の下り坂は、2WDの2台は約29m〜33m、4WDの2台は約35m〜40mと、2WDより長くなった」「車両重量が最も重かった車は、下り坂の制動距離が平坦路に比べて約2倍長くなった(39.6m対20.0m)」「4WDの車であっても制動距離が短くなることはありません」です。4台は車名がすべて別(JAFの結果表で確認)なので、同じ車で駆動方式だけを変えた比較ではありません。「4WDにするとブレーキが○m伸びる」とは読まないでください。国土交通省は、4WDが重量が大きいために下り坂で止まるまでの距離が長くなることを理由に、チェーン規制中は4WDもチェーンが必要としています。4WDと法令の関係を車種別に整理した記事は、こちらです。

(4) 高速道路の「冬用タイヤ規制」と「チェーン規制」

規制の名前は似ていますが、通れる車が違います。要点を、公式の案内を並べて整理します。

📊 冬用タイヤ規制とチェーン規制(NEXCO中日本・西日本、国土交通省、JAF)

項目 冬用タイヤ規制 チェーン規制
いつ 冬の高速道路で、規制を行っているとき(NEXCO中日本) 大雪特別警報や、大雪に対する緊急発表が行われるような異例の降雪のとき(国土交通省。NEXCO中日本の案内も同様)
通れる車 冬用タイヤ(スタッドレスなど)またはタイヤチェーンなどの滑り止めを装着した車。四輪駆動車でも、装着していない車は走行できない。必要な装置は都道府県によって異なる(NEXCO中日本)。JAFは「駆動輪へのチェーン装着」または「全車輪に冬用タイヤ装着」と説明 スタッドレスでも4WDでも、タイヤチェーンを着けていない車は通れない(国土交通省)
チェーン チェーンなどの滑り止め装置があれば走行できる 自動車用品店などで売っているものなら問題ない。スプレーのように薬剤を吹き付けるタイプは通れない。駆動輪に着けるのが基本(国土交通省)。JAFの質問箱(2025年7月現在)は、金属タイプとウレタン&ゴムタイプは「まず問題なく通行可能」、布製カバーは「チェーン規制時には現場係官の指示に従ってください」という注意書きがあり、規制に対応できない可能性があると説明
規制の手前で (規制中に装備も携行もなければ)最寄りのICで降りる(NEXCO中日本) 規制区間の手前で、タイヤチェーンの装着状況を確認する(国土交通省・NEXCO中日本)

チェーン規制の区間は国土交通省のページに一覧がありますが、掲載時期が古い記述(平成29年度の実績)を含み、変更されることがあります。実際の区間・標識の根拠・罰則の整理は、冬用タイヤ規制とチェーン規制の違いの記事に詳しくまとめています。NEXCO中日本は、チェーンは長時間使っていると切れてしまうため、長大トンネルやトンネル連続区間の前後ではこまめな着脱が必要とし、規制中にチェーンを携行しているときは、路肩ではなく最寄りのSA・PAで装着するよう案内しています。

(5) 「冬用タイヤ」とは? 見分け方とオールシーズンタイヤ

📊 冬用タイヤの見分け方(NEXCO西日本・JAF)

タイヤ 見分け方 冬用タイヤ規制での扱い
スタッドレスタイヤ サイドウォール(側面)のスタッドレス表記(国内表記) 冬用タイヤ。全車輪に装着(NEXCO西日本)
スノータイヤ 側面に「SNOW」の文字(NEXCO西日本) 冬用タイヤ。全車輪に装着
オールシーズンタイヤ(スノーフレークマークあり) 山の中に雪の結晶が描かれたスノーフレークマーク(国際表記) 全車輪に装着。冬用タイヤ規制では走行できる(NEXCO西日本・JAF)。ただしチェーン規制では、チェーンが必要
ノーマルタイヤ(夏タイヤ) — 冬用タイヤではない。滑り止め(チェーンなど)を着ければ、冬用タイヤ規制の区間は通行できる(NEXCO)

NEXCO西日本は、オールシーズンタイヤを「ちらつく程度の降雪で路面と一部接触可能な積雪状況下での使用を想定したタイヤ」と説明し、冬の高速道路では気象状況が急に変わり大雪になることもあるため、オールシーズンタイヤの中でもスノーフレークマークが表示されているタイヤを全車輪に装着するよう案内しています。

(6) 法令: 滑り止めの義務と反則金

積雪・凍結した道路での滑り止めの義務は、道路交通法第71条第6号にもとづいて、各都道府県の公安委員会が規則で定めています。

📜 道路交通法 第71条第6号(原文引用・e-Gov法令検索)

「前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」

📜 東京都道路交通規則 第8条第6号(原文引用・東京都例規集)

「積雪又は凍結により明らかにすべると認められる状態にある道路において、自動車又は原動機付自転車を運転するときは、タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること。」

JATMAは、この義務が「沖縄県を除く」都道府県の道路交通法施行細則または道路交通規則に規定されているとして、各県の条文の抜粋(2026年8月現在)を載せています。書き方は県ごとに違います。たとえば次のとおりです(JATMAの抜粋を読んだもので、東京都以外の例規集の本文は今回確認していません)。

📊 都道府県による規則の書き方の違い(JATMAの抜粋より)

都道府県 書かれている内容(要旨)
東京都(第8条第6号) 「タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること」(原文は上の引用)
北海道(施行細則第12条第2号) 「スノータイヤを全車輪に装着し、又はタイヤ・チェーンを取り付ける等滑り止めの措置を講ずること」
岩手・宮城・秋田・山形・石川・福井・兵庫・鳥取・広島など スノータイヤ(雪路用タイヤ)は「接地面の突出部(突起部)が50パーセント以上摩耗していないもの」に限る、という趣旨の書き方(福島県は「摩耗が50パーセント以下のもの」と記載)
福岡県(施行細則第14条第5号) 「滑り止めに必要な措置を講ずること」

📊 滑り止めの措置をしなかったときの扱い(公安委員会遵守事項違反)

項目 内容 出典
罰則の枠組み 道路交通法第120条第1項第10号「五万円以下の罰金」(第71条第6号の違反) e-Gov法令検索
反則金 大型車7,000円・普通車6,000円・二輪車6,000円・原付5,000円(小型特殊車・軽車両も5,000円) 警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」(2026年4月1日更新)
違反点数 警視庁の「交通違反の点数一覧表」(2026年4月1日更新)に、この項目は見当たらない。「高速自動車国道等運転者遵守事項違反」は別の項目(2点) 警視庁

国土交通省 関東地方整備局は、積雪または凍結で滑るおそれのある道路を通行するときは冬用タイヤやタイヤチェーン等を装着することが義務づけられており、違反すると罰則の対象になる、としています。なお、規則の「要件」は東京都の場合「明らかにすべると認められる状態」で、どの程度の路面が当たるかは現場の状況と都道府県の規則によります。

道路法の条文(参考。大意):道路管理者は、道路の破損・欠壊などで交通が危険であると認められる場合や、道路に関する工事のためやむを得ないと認められる場合に、区間を定めて道路の通行を禁止・制限でき(道路法第46条第1項。e-Govで原文を確認)、その禁止・制限に違反して通行したときは「六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金」と定められています(第103条第3号)。ただし、冬用タイヤ規制・チェーン規制がどの条文にもとづくかを明示した公式ページは、今回確認できませんでした(詳しい整理はこちらの記事にあります)。

(7) 冬用タイヤの溝: 新品の50%と、夏タイヤの1.6mmは別の話

冬用タイヤの溝は新品の50%まで(プラットホーム)
図3:新品の溝と、50%すり減ってプラットホームが表面に出た状態のイメージ(自作の図。実際の形・位置はタイヤごとに異なります)

JATMAは、積雪路・凍結路を走るときは、冬用タイヤの残り溝が新品時の50%以上あることを確認するよう案内しています。プラットホーム(溝の途中の段差)が設けられているタイヤは、これが露出しているかで判断し、溝深さが50%未満のタイヤは冬用タイヤとしては使わないとしています。国土交通省の資料(運送事業者向け)も、溝深さ50%を示す「プラットホーム」で確認するよう案内し、一部の海外メーカー品は除くとしています。タイヤの使用限度は残り溝1.6mm(スリップサインが出る。小形トラック用タイヤは高速道路で2.4mm以上)で、冬用の「50%」とは別の話です(JATMA)。プラットホームの見つけ方と50%の根拠は、こちらの記事にまとめています。

チェーンの速度:JATMAは、チェーン装着時の走行速度を、積雪路・凍結路で金属チェーン30km/h以下、非金属チェーン50km/h以下としています。積雪・凍結していない道路でチェーンを着けて走ると、タイヤ・チェーン・車両を損傷したり、スリップしたりするおそれがあるので避けるよう案内しています。

3. 違った観点から整理する

(1) 「距離」を「止まった地点での速度」に置き換える(当サイトの計算)

「圧雪路で12.6m長い」と言われても、実感がわきにくいかもしれません。そこで、JAFの数字から、スタッドレスが止まった地点を、ノーマルがまだ何km/hで走っているかを計算してみました。ブレーキの減速が止まるまで一定だったと仮定すると、止まるまでの距離は速度の2乗に比例するので、速度は「40km/h × √(1 − 先に止まった車の距離 ÷ ノーマルの距離)」になります。

スタッドレスが止まった地点を、ノーマルは何km/hで通るかの目安の計算
図4:JAFの数字から計算した、先に止まった車の停止地点でのノーマルの速度(当サイトの計算。実測ではありません)

📊 先に止まった車の停止地点で、ノーマルが走っている速度の目安(時速40kmから)

路面 比べる相手 距離の差 相手が止まった地点でのノーマルの速度(目安)
圧雪路 スタッドレス(17.3m) 29.9 − 17.3 = 12.6m 約26km/h
氷盤路 スタッドレス(78.5m) 105.4 − 78.5 = 26.9m 約20km/h
氷盤路 ノーマル+非金属チェーン(59.0m) 105.4 − 59.0 = 46.4m 約27km/h
計算の前提と限界:(1)ブレーキの利きが止まるまで一定という単純な仮定です。(2)実際の制動は路面・ABSの作動・タイヤで変わり、JAFの数字は3回の平均です。(3)この表は実測の速度ではなく、距離の差を体感に置き換えるための目安です。時速40kmは秒速に直すと約11.1mです。

(2) 数字は「条件」で変わる: JAFとJATMAを並べる

JATMA(日本自動車タイヤ協会)も、制動距離を、スタッドレスを100とした指数で公表しています(「冬用タイヤの必要性」のページ)。JAFの数字と並べると、次のようになります。試験条件が違うので、優劣を比べるものではありません。

📊 JAF(2017年)とJATMAの制動距離の比較(条件つき)

項目 JAF(2017年2月) JATMA(制動距離指数)
雪の路面でのノーマルとスタッドレスの比 圧雪路: 29.9 ÷ 17.3 = 約1.73倍(JAFは「約1.7倍」) 積雪路面: スタッドレス=100に対し、ノーマル160(1.6倍)。初速40km/h
氷の路面での比 氷盤路: 105.4 ÷ 78.5 = 約1.34倍(初速40km/h) 凍結路面: スタッドレス=100に対し、ノーマル156(1.56倍)。初速25km/h
試験条件 北海道士別市・新品6種類・ABS作動・各3回の平均 タイヤ195/65R15、空気圧220kPa、乗用車(後輪駆動・2000cc)、タイヤメーカーのテストコース、ABS有り

読み取れるのは、(1)雪の路面では、ノーマルはおおよそ1.6〜1.7倍の距離が必要という点で、2つの数字が近いこと、(2)氷の路面は、試験の初速・車・路面などの条件が違うため、1つの倍率では言い切れないことです(JAF約1.34倍・JATMA約1.56倍の違いの原因は、この2つの資料だけでは切り分けられません)。JATMAは、降雪地域以外の都市圏(東京・愛知・大阪・広島・福岡)でも、突然の降雪・凍結による事故が起きていると述べ、2022年1月の首都圏の降雪では、ノーマルタイヤのまま走行した車両による立ち往生やスリップが交通渋滞・事故・通行止めを引き起こした、としています。

(3) 見た目では分からない路面(JAF 2013年)

JAFは、2013年1月のテスト(ブラックアイスバーンのテスト)で、時速40kmからの制動距離を4種類の路面で測りました(ABS作動、各3回の平均)。このページには、使ったタイヤの種類は書かれていません(圧雪路の説明に「スタッドレスタイヤが効果を発揮する」とあります)。

JAF ブラックアイスバーンのテスト 4種類の路面の制動距離
図5:JAFテスト(2013年)の路面別の制動距離(JAFの公開データをもとにした自作の図)
路面 制動距離 JAFの説明(要旨)
ウェット路面(雨天時) 11.0m 季節を問わず、乾いた路面より若干の注意が必要
圧雪路 20.2m スタッドレスが効果を発揮するが、十分な注意が必要
氷盤路(アイスバーン) 84.1m スケートリンクのような路面で、制動距離が限りなく伸びる
ブラックアイスバーン 69.5m 黒く見えるのに表面が凍っている。氷盤路と同じように滑った

JAFは、ブラックアイスバーンとウェット路面は見た目にほとんど差がないのに、制動距離には50m以上の差があったとし、風が吹きさらしで凍結しやすい橋の上やトンネルの出入り口、道路の日陰の部分、ブレーキや発進が繰り返される交差点の停止線の手前(路面が磨かれて滑りやすい)にも注意するよう呼びかけています。

(4) よくある誤解を、公式の資料で検証する

📊 よくある思い込みと、確認できたこと

よくある思い込み 確認できたこと 出典
ノーマルでも、少しの雪なら走れるから大丈夫 国土交通省 関東地方整備局は「最近の普通タイヤは性能が向上しています。多少の雪でも平地であれば走れるかもしれません。しかし、タイヤチェーン未装着の場合、緩い上り坂でも限界を超えて、立ち往生する恐れがあります」と案内。JAFの登坂テストでは勾配12%でノーマルだけが上れなかった 国土交通省 関東地方整備局、JAF
スタッドレスなら、氷の上でも止まれる 氷盤路でもスタッドレスは78.5m。JAFは「氷盤路の制動距離は長くなるので過信は禁物」 JAF
4WDなら、止まるのも大丈夫 4WDでも制動距離は短くならない。下り坂は4WDのほうが長かった(車種は別) JAF
スタッドレスを履いていれば、どの規制も通れる チェーン規制では、スタッドレスでも4WDでも、チェーンがないと通れない 国土交通省、NEXCO
オールシーズンタイヤなら雪道は万能 ちらつく程度の降雪を想定したタイヤ。スノーフレークマーク付きは冬用タイヤ規制で走行できるが、チェーン規制ではチェーンが必要。氷盤路の制動距離はJAFのテストで101.1m(スノーフレークの有無は記載なし) NEXCO西日本、JAF
スプレーチェーンやオートソックで十分 JAFは「緊急用」とし、性能を安定して得にくいと説明。氷盤路ではスプレーチェーン112.8m、オートソック99.2m。スプレー式は、チェーン規制の区間は通れない JAF、国土交通省
溝が残っていれば、スタッドレスとして使える 残り溝が新品の50%未満のタイヤは、冬用タイヤとしては使わない。夏タイヤの限度1.6mmとは別 JATMA

(5) 立場別・場面別: 公式の案内から整理すると

次の表は、公式の資料に書かれている案内を、場面ごとに当サイトが整理したものです(個別の判断を示すものではありません)。

📊 場面ごとの、公式の案内(当サイトの整理)

場面 公式の案内 出典
雪があまり降らない地域で、雪や凍結の予報が出た 突然の降雪・凍結による事故は都市圏でも起きている。走らずに済ませる、という選択もある(当サイトの整理)。走る場合は、冬用タイヤへの履き替え、またはチェーン。雪が少ない地域では、冬季にスタッドレスへ履き替えることが多いレンタカーという方法もある(予約時に確認) JATMA、JAF
雪山・スキー場へ、自分の車で行く 冬用タイヤを4輪とも装着し、チェーンも携行(NEXCOもJAFも、スタッドレスを着けていてもチェーンを携行するよう案内。JAFは、チェーンとジャッキは必須としている)。チェーン規制では4WDも対象 NEXCO、国土交通省
高速道路を使う 規制中に装備も携行もなければ、最寄りのICで降りることになる。チェーンを携行していれば、SA・PAで装着すれば走行できる NEXCO中日本
車を持っていない旅行者 レンタカーは、予約時にスタッドレスかどうか確認(JAF) JAF

(6) 「やらなかったら」どうなるか: 法令の面と、現実の面

法令の面:普通車の反則金は6,000円で、違反点数の項目は見当たりません(警視庁)。罰則の枠組みは「五万円以下の罰金」(道路交通法第120条第1項第10号)です。

現実の面:国土交通省 関東地方整備局は、雪道で立ち往生して道路をふさぐと、渋滞の原因になるだけでなく、救急車やパトカーなどまで止めてしまうことにもなる、としています。JATMAは、2026年2月の降雪時(中国エリア)にJAFのロードサービスの救援要請が、降雪前週3日間の1,183件から、降雪3日間は1,517件(前週比128%)に増えたというJAFのデータを載せています。

4. よくある質問

Q. 数センチの雪でも、ノーマルタイヤは危険ですか?

A. JAFのテストは圧雪路と氷盤路で、「数センチの浅い雪」での測定は確認できませんでした。国土交通省 関東地方整備局は、多少の雪でも平地なら走れるかもしれないが、チェーン未装着だと緩い上り坂でも立ち往生するおそれがある、と案内しています。法令上の要件は、東京都の場合「積雪又は凍結により明らかにすべると認められる状態」で、どの程度の路面が当たるかは現場の状況と各都道府県の規則によります。

Q. スタッドレスなら、氷の上でも安心ですか?

A. いいえ。JAFのテスト(2017年)で、氷盤路のスタッドレスは時速40kmから78.5m。ノーマルに非金属チェーンを着けた59.0mよりも長く、JAFは過信は禁物としています。

Q. オールシーズンタイヤは、雪道を走れますか?

A. NEXCO西日本は、ちらつく程度の降雪を想定したタイヤと説明し、スノーフレークマークがあるものを全車輪に装着するよう案内しています。JAFの「オールシーズンタイヤって、どんなタイヤですか?」(2024年5月現在)は、サイドウォールにスノーフレークマークが付いたタイヤは冬用タイヤ規制でも走行できるが、「全車両チェーン装着規制」ではオールシーズンタイヤもチェーンを装着しなければ通行できない、と説明しています。同じJAFのページは、2017年のテストの数字(圧雪路22.7m・氷盤路101.1m)を挙げ、氷盤路ではスタッドレスより20m以上延びて、むしろノーマルに近い数値だとしています。ただしテスト用のオールシーズンタイヤに、スノーフレークマークがあったかは書かれていません。

Q. ノーマルタイヤにチェーンを着ければ、高速道路の冬用タイヤ規制を走れますか?

A. はい(金属・ウレタン&ゴムタイプ)。NEXCO中日本・西日本は、冬用タイヤ規制では、冬用タイヤまたはタイヤチェーンなどの滑り止め装置があれば走行できると案内しています(必要な装置は都道府県によって異なります)。JAFの質問箱(2025年7月現在)は、金属タイプとウレタン&ゴムタイプは「まず問題なく通行可能」としています。布製カバーは、JAFが「チェーン規制時には現場係官の指示に従ってください」という注意書きがあり、規制に対応できない可能性があると説明しています。チェーンの速度は、JATMAによると、積雪路・凍結路で金属チェーンは30km/h以下、非金属チェーンは50km/h以下です。

Q. 冬用タイヤの溝は、どこまで使えますか?

A. JATMAは、積雪路・凍結路では残り溝が新品時の50%以上あることを確認するよう案内し、50%未満は冬用タイヤとしては使わないとしています。プラットホームがあるタイヤは、これが露出したら使えません。夏タイヤの使用限度の1.6mm(スリップサイン)とは別の基準です。

まとめ

(1)JAFのテスト(2017年・時速40km・新品・ABS作動)で、圧雪路の制動距離はノーマル29.9m・スタッドレス17.3m(約1.7倍)、氷盤路はノーマル105.4m・スタッドレス78.5m・ノーマルに非金属チェーンを着けて59.0m(チェーンも圧雪路は28.4mでノーマルとほぼ同じ)。(2)圧雪路の勾配12%の坂を平らな場所から発進すると、ノーマルだけが上れませんでした。(3)4WDでも制動距離は短くならず、下り坂では4WDのほうが長い結果でした(車種は別)。(4)高速道路の冬用タイヤ規制は冬用タイヤかチェーン、チェーン規制はスタッドレスでも4WDでもチェーンが必要です。(5)積雪・凍結路の滑り止めは都道府県の規則の義務(普通車の反則金6,000円)で、冬用タイヤの溝は新品の50%以上が目安です。

ここからは当チャンネルの整理です。結論は、雪や凍結が予想されるならまず走らない、走るなら冬用タイヤを4輪とも着け、チェーンも携行し、急のつく運転を避けて車間距離を多めにとること。規制や条文は更新されることがあるので、走る地域・道路の最新の案内で確認してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。JAFのテスト結果は、当時の車・タイヤ・路面などの条件で行われたもので、実際の制動距離は車・タイヤ・路面・速度によって変わります。「止まった地点でのノーマルの速度」は当サイトの目安の計算で、実測ではありません。規制の内容、チェーン規制の区間、法令・反則金は、道路・都道府県・年度によって異なり、変更されることがあります。個別の判断や最新の内容は、道路管理者(国土交通省・NEXCO各社)、警察、都道府県公安委員会、JAF、タイヤメーカーなどの公式情報でご確認ください(確認日: 2026年10月24日)。

参考(一次情報・公的機関・JAF・業界団体): JAFユーザーテスト 走れても止まれない、雪道のノーマルタイヤ/JAFユーザーテスト 雪道での登坂テスト/JAFユーザーテスト 4WDなら雪道でも安心?/JAFユーザーテスト ブラックアイスバーン/JAF 高速道路の冬用タイヤ規制・チェーン規制はどんなチェーンでも対応できる?/JAF 雪道・アイスバーンでの運転の注意点/JAF 「オールシーズンタイヤ」って、どんなタイヤですか?/国土交通省 チェーン規制について/国土交通省 関東地方整備局 雪道の安全走行のために/国土交通省 冬用タイヤの溝深さに注意!(大型車)/NEXCO中日本 冬の雪道ドライブガイド/NEXCO西日本 冬用タイヤ/日本自動車タイヤ協会 冬道走行とタイヤ/同 冬用タイヤの必要性/同 安全に乗るために/e-Gov法令検索 道路交通法(第71条・第120条)/同 道路法(第46条・第103条)/東京都例規集 東京都道路交通規則(第8条)/警視庁 反則行為の種別及び反則金一覧表/警視庁 交通違反の点数一覧表

図はすべて自作のイラスト・表です(AI生成なし)。JAFなどの公開データをもとに作図し直したもので、実際の車・タイヤの形は使っていません。

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