窓ガラスに貼るフィルムやステッカーは、どの窓に貼るか、貼った状態でどれくらい透明か、何を貼るかの3つで、車検や保安基準での扱いが変わります。YouTubeのショート動画「窓のフィルム・ステッカー、貼る場所と濃さで車検に通らないことがある」で紹介した3つの落とし穴を、条文と公式情報で詳しく解説した記事です。
フィルムの透過率の測り方や選び方は別の記事で解説しているので、この記事では、「何が貼れるのか」「前面ガラスのどこに貼れるのか」を中心に、保安基準第29条・細目告示第195条・自動車技術総合機構の審査事務規程・国土交通省の資料で確認した内容をまとめます(2026年10月時点)。
📋 この記事の要点
✔ 貼った状態で可視光線透過率70%以上が求められるのは、前面ガラスと運転席・助手席の側面ガラス(運転者が交通状況を確認するために必要な視野の範囲)。運転者席より後方の窓は、この基準の対象外
✔ 前面ガラスと前席の側面ガラスには、検査標章など法令で列挙されたもの以外は貼り付けてはならない。ただし、貼った状態で透明で、必要な視野の範囲の透過率が70%以上確保できるものは貼れる
✔ 前面ガラスの上端から20%以内は70%の対象外。ただし透明で、交通信号機を確認できることが条件
✔ ドライブレコーダーの前方カメラなどは、乗用車(乗車定員10人未満)の場合、ルームミラーで隠れる範囲・上端20%以内・下縁150mm以内などの決められた範囲に貼る
✔ 検査標章(車検ステッカー)は、2023年7月以降、運転者席側の上部で、車両中心から可能な限り遠い位置に貼るよう、国土交通省が案内している
🎬 動画で見る(ショート)
この記事の元になった、かーぎーくんのショート動画です。動画では触れられなかった詳しい内容や条文・公式情報は、このあと記事で確認できます。
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📑 目次
1. 窓ごとの決まり:70%が必要なのは前面ガラスと運転席・助手席の窓
2. 「貼った状態」の70%:カタログの数字だけでは判断できない
1. 窓ごとの決まり:70%が必要なのは前面ガラスと運転席・助手席の窓

道路運送車両の保安基準第29条第3項は、前面ガラスと側面ガラス(告示で定める部分を除く)は、運転者の視野を妨げないものとして、ひずみや可視光線の透過率などの基準に適合しなければならないと定めています。細目告示第195条はこれを受けて、次のように定めています。
📜 細目告示 第195条第3項・第4項(要約)
第3項: 前面ガラスと側面ガラスは、透明で運転者の視野を妨げるひずみがなく、運転者が交通状況を確認するために必要な視野の範囲に係る部分の可視光線透過率が70%以上であること。第4項: 保安基準第29条第3項の「告示で定める部分」は運転者席より後方の部分とする。これには、運転者席より後方の座席等の側面ガラスと、運転席のヘッドレスト前縁を含み車両中心線に直交する鉛直面より後方の側面ガラスが含まれる。
📊 窓の位置と70%基準の関係
| 窓の位置 | 70%基準 | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 前面ガラス | 対象(必要な視野の範囲) | 保安基準第29条第3項、告示第195条第3項。上端20%以内などは「必要な視野の範囲」から除かれる(下の「2.」で説明) |
| 運転席・助手席の側面ガラス | 対象 | 運転席ヘッドレスト前縁を含む鉛直面より前の部分。国土交通省は、前面ガラスと運転席・助手席の側面ガラスへの、可視光線透過率70%未満の着色フィルム等の貼り付けを禁止していると案内 |
| ヘッドレスト前縁を含む鉛直面より後ろの側面ガラス | 対象外 | 告示第195条第4項第2号。運転席を最後端、背もたれを後方25度に近い角度に調整した状態で見る |
| 後席の側面ガラス | 対象外 | 告示第195条第4項第1号(運転者席より後方の座席等の側面ガラス) |
| リアガラス(背面ガラス) | 対象外 | 第29条第3項の対象が「前面ガラス及び側面ガラス」のため。JAFも、後部座席の側面窓やリアウインドウにはこの規制は適用されないと案内 |
2. 「貼った状態」の70%:カタログの数字だけでは判断できない
細目告示第195条第5項第7号は、窓ガラスに「装着され、貼り付けられ、又は塗装された状態において」透明であるものを認め、そのうち必要な視野の範囲は可視光線透過率が70%以上であることが確保できるものとしています。つまり、判断されるのはフィルム単体の数字ではなく、貼った後の窓の状態です。
JAFのQ&A(2022年8月現在)は、フィルム自体が70%以上でも、すでに着色された窓ガラスに貼ると70%未満になることがあるので、自分の車に貼ったときに70%以上確保できるかを事前に確認する必要があると説明しています。国土交通省は、運転者の視野の妨げになり、歩行者を含む他の交通状況を確認できなくなって危険なため、70%未満の貼り付けを禁止しているとしています。
車検では、自動車技術総合機構の審査事務規程(第9章9-4)により、必要な視野の範囲にフィルム類などが装着・貼り付け・塗装されていることが確認されたとき、可視光線透過率測定器で透過率を計測することになっています(測定器は受検車両ごとに校正)。
「必要な視野の範囲」から除かれる範囲(第195条第6項)
70%を求められるのは、運転者が交通状況を確認するために必要な視野の範囲です。告示は、次の範囲を、この「必要な視野の範囲」から除いています(後写鏡などを確認するために必要な範囲は除かれません)。
| 除かれる範囲 | 内容 |
|---|---|
| 前面ガラスの上端 | 車両中心面と平行な面上のガラス開口部の実長の20%以内の範囲 |
| 扉等より上方の窓 | 側面ガラスのうち、自動車の側面に設けられた扉等より上方に設けられた窓ガラスの範囲 |
| 扉等の下部の窓 | 側面ガラスのうち、扉等の下部に設けられた窓ガラスの範囲 |
| 大型の乗合車などの扉の窓の下側 | 乗車定員11人以上の自動車(およびその形状に類する自動車)の扉の窓ガラスのうち、運転者席の座面を含む水平面より下方の範囲 |
「透明」とは、何が見えること?(第195条第7項)
| 範囲 | 貼った状態で確認できなければならないもの |
|---|---|
| 必要な視野の範囲 | 他の自動車、歩行者等 |
| 前面ガラスの上端20%以内、扉等より上方の窓 | 交通信号機 |
| 扉等の下部の窓、11人以上の車の扉の窓の下側 | 歩行者等 |
動画で紹介した「前面ガラスの上から20%以内は70%の範囲の外。ただし信号機が見える透明さは必要」は、この第6項第1号と第7項第2号に当たります。70%の対象外であることと、何を貼ってもよいことは別です。上端20%以内であっても、透明で信号機を確認できる状態であることが求められます。
3. 窓に貼れるもの・貼れないもの:第29条第4項の列挙

保安基準第29条第4項は、前項の窓ガラス(前面ガラスと、運転者席より後方を除く側面ガラス)について、次に掲げるもの以外のものを、装着・貼り付け・塗装・刻印してはならないと定めています。
📊 第29条第4項に列挙されているもの
| 列挙されているもの | どんなもの |
|---|---|
| 整備命令標章 | 地方運輸局長が整備命令を出したときに自動車の前面に貼る標章(道路運送車両法第54条の2) |
| 臨時検査合格標章 | 臨時検査の結果、保安基準に適合すると認められた検査対象外軽自動車の使用者に交付される標章(道路運送車両法第63条第5項) |
| 検査標章 | いわゆる車検ステッカー |
| 保安基準適合標章 | 中央点線のところから二つ折りにしたものに限る |
| 保険標章・共済標章・保険・共済除外標章 | 自動車損害賠償保障法に基づく標章 |
| 道路交通法第63条第4項の標章 | 警察官が、整備不良の故障車両の前面に貼り付ける標章 |
| 告示で定めるもの | 運転者の視野の確保に支障がないものとして告示で定めるもの(次の表) |
| 国土交通大臣・地方運輸局長が指定したもの | 個別に指定されたもの |
「告示で定めるもの」にあたる主なものは、細目告示第195条第5項に列挙されています(専ら乗用で乗車定員10人未満の自動車、貨物で車両総重量3.5t以下の自動車の場合)。
📊 告示で定められた主なもの(第195条第5項)
| 品目 | 主な条件 |
|---|---|
| 車室内に備える貼り付け式の後写鏡・後方等確認装置 | (第2号) |
| ドライブレコーダーの前方用カメラ・運転者用カメラ、道路等の通信設備との通信機器、車両間距離の測定機器、雨滴・温湿度・明るさの感知器など | 決められた範囲に貼ること(「4.」で説明)(第3号) |
| 公共の電波を受信するアンテナ | 乗用車では、試験領域Aは幅0.5mm以下で3本以下、試験領域Bは幅1.0mm以下(第4号) |
| 窓の曇りや、ワイパーの凍結を防ぐ機器 | 電熱線の幅・密度、貼る範囲などの条件あり(第5号) |
| 貼った状態で透明なもの | 必要な視野の範囲は透過率70%以上が確保できること(第7号) |
| 盗難防止装置の標識・盗難防止の刻印 | 側面ガラスの下縁から100mm以下で、かつ後縁から125mm以内(第8号) |
| リサイクル表示など、窓ガラスに係る情報の表示 | 運転者の視野の確保に支障がない位置のもの(第10号) |
このうち第7号が、動画の「透明で、必要な視野の範囲の透過率が70%以上のものは、貼ることができる」にあたります。透明なフィルムや、貼った状態で透明なステッカーであれば、70%以上が確保できる限り貼れる、という意味です。反対に、貼った状態で他の自動車や歩行者(上端20%以内などでは交通信号機)を確認できなくなるもの(絵柄や文字で視野をさえぎるものなど)は、列挙されたもの以外は貼れません。
4. 前面ガラスのどこに貼れる?ドラレコと車検ステッカーの位置

ドライブレコーダーなどのカメラ・感知器
細目告示第195条第5項第3号は、ドライブレコーダーの前方用カメラなどを、次の範囲に貼り付けることを認めています。専ら乗用で乗車定員10人未満の自動車、貨物で車両総重量3.5t以下の自動車の場合は、(1)・(2)のいずれかです。
| 範囲 | 内容 |
|---|---|
| (1) | 運転者席の運転者が、V1点から前方を視認する際に、ルームミラーで遮られる前面ガラスの範囲 |
| (2) | 試験領域Bと、試験領域Bを前面ガラスの水平方向に拡大した領域以外の範囲 |
| 例外(どちらでも貼れる範囲) | 前面ガラス上縁の、ガラス開口部の実長の20%以内、または前面ガラス下縁から150mm以内 |
試験領域は、JIS R 3212の附属書で定められた、前面ガラスの試験領域です(告示別添37)。具体的な位置は車によって異なるため、図では示していません。上記以外の自動車(乗用で乗車定員10人以上の車や、貨物で車両総重量3.5t超の車など)は、基準点と試験領域が別に定められています。取り付ける機器の取扱説明書や、取付店の案内もあわせてご確認ください。
検査標章(車検ステッカー)
検査標章は、道路運送車両法施行規則第37条の3で、前面ガラスの内側に前方から見やすいように貼り付けて表示すると定められています。国土交通省は、無車検運行の防止対策として、貼り付け位置を「前方から見やすい位置」から「前方かつ運転者席から見やすい位置」に変更し、令和5年(2023年)7月以降は運転者席側の上部で、車両中心から可能な限り遠い位置に貼るよう案内しています。ただし、この位置で運転者の視野を妨げる場合は、視野を妨げない前方かつ運転者席から見やすい位置とされています。
検査標章を表示せずに自動車を運行の用に供することは、道路運送車両法第66条第1項で禁止されています(第109条第9号に50万円以下の罰金の定めがあります)。
5. 基準に合わないとどうなる?
窓ガラスのフィルムやステッカーが基準に合わないと、次のような扱いになりえます。
| 場面 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 車検(継続検査) | 保安基準に適合しないと認められると、自動車検査証は返付されない。窓ガラスへの貼付物は審査事務規程7-55・8-55で審査される | 道路運送車両法第62条第2項、審査事務規程 |
| 不正改造 | 保安基準に適合しなくなる装置の取り付け等を行うと、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 道路運送車両法第99条の2・第108条(国土交通省の案内) |
| 整備命令 | 使用者に必要な整備が命じられ、従わない場合は使用停止や50万円以下の罰金 | 道路運送車両法第54条の2・第109条(国土交通省の案内) |
| 道路での運転 | 保安基準に適合しないため、交通の危険を生じさせ、または他人に迷惑を及ぼすおそれがある車両(整備不良車両)の運転は禁止。3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金 | 道路交通法第62条・第119条第2項第2号 |
反則金・違反点数の区分では、制動装置・かじ取装置・走行装置・自動運行装置・騒音防止装置に係るもの以外の整備不良は「自動車等整備不良(尾灯等)」とされ、普通車で1点・反則金7,000円と定められています(道路交通法施行令別表第二・別表第六、警視庁の点数表)。窓ガラスのフィルムは、この条文の定義上は「尾灯等」の区分にあたると読めますが、実際にどの区分でどう取り扱われるかを示す公開資料は確認できませんでした。整備不良車両にあたるかどうかは、交通の危険のおそれの有無を踏まえ、警察が個別に判断します。
6. よくある質問
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まとめ
窓に貼るフィルムやステッカーの決まりを、3点で整理します。(1)貼った状態で可視光線透過率70%以上が求められるのは、前面ガラスと運転席・助手席の側面ガラス(必要な視野の範囲)です。運転者席より後方の窓は、この基準の対象外です。(2)判断されるのは、フィルム単体ではなく貼った状態です。前面ガラス上端20%以内は70%の対象外ですが、透明で信号機を確認できることが必要です。(3)前面ガラスと前席の側面ガラスには、検査標章など列挙されたもの以外は貼れません。透明で70%以上が確保できるものや、ドライブレコーダーなどの決められた範囲の機器は例外です。
貼る前に、「どの窓か」「何を貼るか」「貼った状態の透過率はどれくらいか」の3つを確認しておくと、車検での不適合を避けやすくなります。迷ったときは、販売店・整備工場・フィルム施工店などにご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令・基準・運用は改正されることがあるため、個別の判断は、国土交通省・自動車技術総合機構(検査機関)・警察などの公式情報や、販売店・整備工場・施工店にご確認ください(2026年10月時点)。窓ガラスの貼付物の区分には、令和8年9月1日を境にした経過措置(国際基準UN R125への適合を含む区分)が審査事務規程に書かれています。2026年9月以降に製作された新しい型式の車は、適用される区分を施工店やディーラーにご確認ください。図の窓の形や寸法は模式的なもので、実際の車とは異なります。
参考(一次情報・公的機関・JAF): e-Gov法令検索 道路運送車両の保安基準(第29条・第44条)/国土交通省 細目告示 第195条(窓ガラス)(2025年6月17日版)/自動車技術総合機構 審査事務規程 7-55,8-55 窓ガラス貼付物等/同 第9章 9-4 窓ガラスの透過率/自動車技術総合機構 よくある質問(後付け自動車部品関係)/国土交通省 不正改造の具体例/国土交通省 不正改造に対する罰則等/国土交通省 検査標章(ステッカー)/同 貼り付け位置の変更のお知らせ(PDF)/e-Gov法令検索 道路運送車両法施行規則(第37条の3)/同 道路運送車両法(第54条の2・第62条・第66条・第99条の2・第108条・第109条)/同 道路交通法(第62条・第63条・第119条)/同 道路交通法施行令(別表第二・別表第六)/警視庁 違反点数/JAF クルマ何でも質問箱「自動車のフロントガラスに着色フィルムを貼ると違反になりますか?」(2022年8月現在)
図はすべて自作のイラストです(AI生成なし)。


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