トルクレンチの「精度±3%」は、KTCは「RD(リードスケール)」、TONEは「読み取り値」(機械式プレセット形が対象かは未確認)に対する割合と書いた数字です。成り立つ範囲の書き方は会社で違います。
ホイールナットの規定トルクを守るための工具なのに、トルクレンチの「精度±3%」「測定範囲」「能力範囲」の意味は、箱や取扱説明書を読んでも分かりにくいところがあります。この記事では、規格(JIS B 4652、ISO 6789)、KTC・TONE・東日製作所(取扱説明書は販売店掲載のPDF)・SK11の公式の資料、トヨタ・日産・ホンダ・マツダ・スズキの取扱説明書やFAQ、JAF、国交省、JATMAのサイトに掲載された資料を、原文の語句を引用して並べました。どの製品がよい、という順位やおすすめ、価格は書いていません。
📋 先に結論:この記事で分かること
✔ トルクレンチのJISとして知られる「JIS B 4650」は古い番号で、JIS B 4652:2008の制定により廃止され(2008年4月20日と、販売サイトの状態表示にあります)、現行のトルクツールのJISはJIS B 4652:2008です(転載サイトで読んだ文面。2008年版より新しい版がないかは確認できていません)。
✔ 「測定範囲」の定義は、規格の版で違います。JIS B 4652:2008は「最大トルクの20 %〜100 %」、ISO 6789-1:2017の目盛付きプリセット式は最低目盛の値から最大トルクの100%まで(英文の趣旨)です。ホイールナットに使う機種(測定範囲の上限が100〜300N·m)を公式の機種表で計算すると、最小÷最大は13〜21%で、20%ぴったりでない例があります(当サイトの計算)。
✔ 「±3%」は、規格の表の許容差(最大トルクが10N·m超で±4%、10N·m以下で±6%など)より狭い、メーカーの自主表示です(ISO 6789-1:2017は、メーカーがより小さい許容差を主張した場合は、その値を守ることを求めています)。分母は、KTCが「RD(リードスケール)」(100N·mなら97〜103N·m)、TONEが「読み取り値」(FAQの対象は電子式3種と「トルクレンチ」で、機械式プレセット形を含むかは確認できていません)と書いています。東日とSK11は、確認した資料(取扱説明書など)に分母の説明が見つかりませんでした。KTCのGW600以上(±4%)やSK11の左回転(±4%)は、規格の10N·m超(±4%)と同じ幅です。
✔ 校正の周期は、JISが使用者の管理手順がない場合の初期値として「12か月又は約5 000回」、KTC(「年1回以上」)、TONE(目安として1年に1回、または10万回締付け毎)、SK11(年1回)です。KTCは、校正証明書は校正した時点の精度を示すもので、その後の精度を保証するものではないと書いています。
✔ 車側の規定トルクは、確認した資料で85〜147N·mに散っています。測定範囲の上限が100N·mの機種には、103N·m・108N·m・127N·mは届きません(当サイトの計算)。
✔ 「カチッ」のあとに力を加え続けない、緩めるのに使わない、保管時は最小値に戻す、といった使い方の注意は、KTC・TONE・東日の公式資料にそれぞれ書かれています(会社ごとに、書いてある項目は違います)。
規格:JISとISOは「測定範囲」と「許容差」をどう決めているか
日本のトルクツール(手で使う工具)のJISは、JIS B 4652:2008です。転載サイト(kikakurui.com)の文面では、「これによってJIS B 4650:2002は廃止され,この規格に置き換えられた。」「この規格は,2003年に第3版として発行されたISO 6789を基に,対応する部分については対応国際規格を翻訳し,」とあります。ISO 6789は2017年に分冊化され、現在はISO 6789-1:2017(設計・品質の適合試験と、適合宣言の最低要件)とISO 6789-2:2017(校正)です。ISOのサイトの表示(2026年11月7日)では、ISO 6789-1:2017は「Stage : International Standard to be revised [90.92]」で、改訂作業中の規格が置き換え先として示されています。ISO規格の本文は有料で、今回読めたのは、配布されている公開サンプル(12ページ分、5.1.8まで)です。JISの原本(JISC・日本規格協会)は、サイトがメンテナンス中で確認できていません。
JISの注記には、この規格の位置づけが書かれています:「この規格は,トルクツールの要求事項及び試験方法について規定するものであるが,それらにかかわる規定は,品質管理の目標値のために示すものであり,この規格によって適合性評価を行うことは,意図していない。」
- JIS B 4652:2008 5.1.3(測定範囲):「この規格に従った要求事項及び試験方法は,トルクツールの最大トルクの20 %〜100 %を規定の測定範囲とする。」
- 同 6.4(校正手順):「トルクツールは,最大トルクの20 %から始め,続けて約60 %,最後に100 %の値(又は,タイプⅡのクラスB及びクラス Eのツールに対しては,公称値又はセット値)で試験しなければならない。」
- 同 6.4 の続き:「最大トルクの20 %の目盛が存在しない場合は,次に低い目盛で許容差を決定しなければならない。」
- ISO 6789-1:2017 5.1.3(公開サンプル):「Setting torque tools of Type II (Classes A, D and G): From the lowest marked value to 100 % of the maximum torque value of the respective tool.」(目盛付きのプリセット式は、最低目盛の値から最大トルクの100%まで)
- 同:「Setting torque tools of Type II (Classes B, C, E and F): As specified by the manufacturer.」(トルク固定形・目盛なしは、メーカーが指定)
許容差(±○%)は、JISの5.1.5.2が「スケール又は表示器上でセットしたトルク値(クラスA,D,G),又は公称値(クラスB,E)の,校正装置の指示値からの許容差は,表3による。」と書いています。表3(タイプⅡ、プリセット式)の数値は、転載ページの画像を読んだ要約です。
| タイプⅡ(プリセット式)のクラス | 最大トルク10N·m以下 | 最大トルク10N·m超 |
|---|---|---|
| クラスA・B(目盛付きトルク可変形・トルク固定形) | ±6% | ±4% |
| クラスD・E・G(ドライバ形・目盛付きたわみバー形など) | ±6% | ±6%(最大トルクの区分に関係なく) |
ISO 6789-1:2017の公開サンプルも、数値は同じ形の表です。そのうえで、メーカーの自主表示については、「Where a manufacturer claims a smaller maximum permissible relative deviation than stated in Tables 3 and 4, each result shall lie within the claimed maximum permissible relative deviation.」(メーカーがより小さい許容差を主張する場合、すべての結果はその主張した許容差の中になければならない)とあります。また、用語について、「Sometimes the term “accuracy” is still used in place of the term “maximum permissible deviation” which is, however, not technically correct.」(「accuracy」という語は技術的に正しくない)とも書いています。
「±3%」の分母:メーカーが書いていること
KTCのトルク管理の冊子(71-24)のFAQ章には、「トルクレンチの精度表示はFS(フルスケール)ですか?RD(リードスケール)ですか?」という質問があり(同じ文は2023年の総合カタログにもあります)、答えは「KTCのトルクレンチはすべてRD(リードスケール)です。例えば精度が±3%の場合、100N・mでは97~103N・m、10N・mでは9.7~10.3N・mの誤差があります。」です。TONEのFAQは「ラチェットデジトルク・ハンディデジトルク・ドライバーデジトルク・トルクレンチの精度は「読み取り値」に対する精度です。」と書いています。ISO 6789-1:2017の3.1.4は、最大許容偏差(maximum permissible deviation)を、「maximum value of relative measurement deviation of the observed torque value on the torque measurement device measured as a percentage of the target torque value on the torque tool」(目標トルク値に対する百分率)と定義しています(「accuracy」という語は技術的に正しくない、という注記は上のとおりです)。一方、JIS B 4652:2008の6.4は、偏差の式について「偏差の評価は,次の式によって求める。」とし、「xa: トルクツールの指示値」「xr: 参照値(校正装置によって決定する。)」と書いています。KTC・TONEの「RD」「読み取り値」という書き方が、規格の式とどう対応するかは、今回読めた範囲では確認できていません。
東日製作所の取扱説明書は「精度 ACCURACY ±3%」、販売店掲載の総合製品案内(2020年9月版の抜粋)は「精度±3%」と書くだけで、分母の説明は、確認した資料(QL-MHの取扱説明書と、製品案内の抜粋)には見つかりませんでした。取扱説明書の末尾には「17.02.D」の表記があります。
「±3%」が成り立つ範囲の書き方は、会社によって違います。KTCと東日の確認した資料には、保証される範囲の明記が見つかりませんでした。SK11のデジタルトルクレンチの取扱説明書には、「精度保証範囲は、ISO・JIS 規格の測定範囲同様 最大測定トルク値の 20~100 %となります。それ未満の測定値の精度は、ISO・JIS 規格が定める 精度±6 %に準じています。」とあります。なお、SK11の「精度±6 %に準じています」は、精度保証範囲(20%)未満の範囲についての書き方です。SK11の資料には機種のタイプ・クラスが書かれていないため、規格の表との比較はしていません。SK11の取扱説明書は、「測定可能範囲」(SDT3-135は6.8〜135N·m)と「精度保証範囲」(27〜135N·m)を別に書いています。TONEのコラムは、「トルクレンチの精度は、能力範囲で保証していますので、この範囲であれば使用上の問題はありませんが、」と書き、別に「一般的に使いやすい範囲はトルクレンチの最大能力の30~80%をお勧めしています。」とも書いています。精度を保証する範囲と、使いやすいとされる範囲は、別の話です。
メーカーの表示を並べる:精度・測定範囲・校正
| 確認先 | 精度の表示(原文) | 測定範囲・能力範囲の表示 | 校正・点検の書き方(原文) |
|---|---|---|---|
| KTC プレセット型トルクレンチ GWシリーズ(チラシ No.75-33、2025年2月20日) | 「GW010-02~GW300-04は、測定方向は右方向(時計まわり)、測定精度±3%、36枚ギア」「GW600-06~GW1000-08は、左右両方向の測定が可能。測定精度は±4%、40枚ギア」 | 表の列「トルク測定範囲」(2〜10、5〜25、10〜50、20〜100、40〜200、60〜300、100〜600、150〜800、200〜1000。GW140-04は30〜140) | 「※測定精度を維持するため、定期的にトルク校正されることをお勧めします。」「年1回以上を推奨しています。」(FAQ。別の質問への答えは「大よそ一年程度を推奨しております。」)。機械式は「校正証明書は添付していません。」「製品完成時の計測データとして検査成績書をおつけしています。」「校正証明書が必要な場合は、有償にて承っております。」 |
| KTC デジラチェ(電子式。チラシ No.61-01) | 「トルク測定範囲内で右ねじ、左ねじ±3%+1digit、GEK030-R2とGEK030-C3についてはトルク測定範囲内で右ねじ、左ねじ±4%+1digit(digit=最小表示単位)」 | 「トルク測定範囲内で」(数値は機種の表) | 「測定精度を維持するため、定期的(年1回以上を推奨)に校正及び必要に応じて調整をされることをお奨めいたします。」。証明書:「2018年6月1日KTC出荷分よりデジラチェおよびデジラチェ[メモルク]シリーズには校正証明書を添付しています。」(FAQ) |
| TONE(FAQ、コラム(2016年5月9日・2024年9月27日)、取扱説明書。PDFは画像のため、数字は目で読んだもの) | FAQ:「…トルクレンチの精度は「読み取り値」に対する精度です。」(機械式プレセット形を含むかの記載は見つけられませんでした)。取扱説明書(プレセット形・単能形)には、トルク精度±3%、修理後は±4%以内を合格とする、と書かれています | 「トルクレンチの精度は、能力範囲で保証していますので、」(コラム)。能力範囲の表は最小〜最大(例:20〜100、30〜140、40〜200、40〜300 N·m) | 「目安として1年に1回の精度確認をしましょう。」(コラム)。取扱説明書(目で読んだもの)には、目安として1年に1回、または10万回締付け毎の定期点検(有償)、校正証明書は、未使用なら校正日から3年まで、3年未満で使い始めた場合は使用開始から1年間(または「修理・点検」に記載の締付回数まで)、と書かれています。単能形(IM-KO072)の見出しには、TONEがトルク設定を行った場合に有効、という趣旨の括弧書きがあります |
| 東日製作所 QL-MH型(取扱説明書は販売店掲載のPDF。同社の公式サイトは調査時に障害告知中) | 「精度 ACCURACY ±3%」 | 列「トルク調整範囲 [N・m] 最小(Min) 最大(Max)」(例:20〜100、30〜140、40〜200、40〜280) | 「日常点検には東日のトルクレンチチェッカをご利用ください。」「校正には東日のトルクレンチテスタをご利用ください。」。周期の数字は、確認した資料にはありませんでした |
| SK11(藤原産業) デジタルトルクレンチ SDT(電子式) | 「精度:+/- 3%(右回転) +/- 4%(左回転)」 | 「精度保証範囲は、ISO・JIS 規格の測定範囲同様 最大測定トルク値の 20~100 %となります。」 | 「本製品の精度を保つため定期的(年1回)な校正を推奨致します。」 |
KTCは、校正証明書の意味を次のように書いています:「ありません。校正証明書は校正した時点の精度を証明するもので、その後の精度を保証するものではありません。」(KTCの冊子71-24のFAQ章。「校正証明書に有効期限はありますか?」への答え)。JISの校正周期の初期値は、5.3.2に「使用者が管理手順を利用しない場合には,再校正周期の初期設定値として,12か月又は約5 000回の使用期間を適用することができる。」とあります。
機種ごとの最小÷最大を、公式の機種表から計算すると、20%ぴったりのものが多い一方、そうでない機種もあります(当サイトの計算)。KTCのGW600-06は100〜600で16.7%、TONEのT4MN300-QLは40〜300で13.3%、東日のQL280N-MHは40〜280で14.3%です。20〜100%はおおむね当てはまりますが、全機種ではありません。
車側の数字:規定トルクは、車種で違う
ホイールナットの規定トルクは、自動車メーカーの取扱説明書やFAQに載っています。確認できた範囲は、次のとおりです(各社1〜3車種で、全車種ではありません)。
| 車・資料 | 原文のトルク | 版・日付(確認できた範囲) |
|---|---|---|
| トヨタ カローラ(取扱書PDF) | 「ホイールの交換後は、すぐに103N・m(1050kgf・cm)の力でナットを締める」「締め付けトルク:103N・m」 | ファイル名に202107。PDFの作成日は2021年5月26日。版の記載は未確認 |
| 日産 ノート(E13) | 「108N・m(11kg・m)」 | FAQ更新2026年1月16日 |
| 日産 デイズ(AA1) | 「88~108N・m(9~11kg・m)」 | FAQ更新2026年1月16日 |
| 日産 サクラ(KE0) | 「98N・m(10kg・m)」(取扱説明書も「ホイールナットの締め付けトルクは、98N・m(10kg・m)です。」) | FAQ更新2026年1月16日。取扱説明書のURLに2406 |
| ホンダ N-WGN(2026) | 「ホイールナット締め付けトルク108 N・m(11 kgf・m)」 | URLに2026 |
| ホンダ CR-V e:HEV(2026) | 「標準で装着されているタイヤのホイールナット締め付けトルクは127N・m(13kgf・m)です。」 | URLに2026 |
| ホンダ N-VAN(応急用スペアタイヤ装着) | 「98~118N・m(10.0 ~12.0kgf・m)」 | URLに2019 |
| マツダ ロードスター(ND) | 「108N・m~147N・m (12kgf・m~14kgf・m)」 | 版は未確認 |
| スズキ ハスラー(取扱説明書PDF) | 「締め付けトルク:85 N・m」「(870 kgf・cm)」 | 版は未確認 |
マツダの原文は「108N・m~147N・m」と「12kgf・m~14kgf・m」を併記していますが、12〜14kgf·mをN·mに換算すると117.7〜137.3N·mで、原文の数字とは一致しません(計算)。原文のまま載せました。単位は、1 kgf·m=9.80665 N·mです。
測定範囲の表示と、これらの規定トルクを突き合わせると、次のようになります(機種の測定範囲は、KTC・TONE・東日の公式の機種表の数字で、○は範囲内、×は範囲外です。当サイトの計算で、各社の保証を示すものではありません)。
| 測定範囲(N·m) | 85 | 98 | 103 | 108 | 127 | 147 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20〜100(KTC GW100-04、TONE T4MN100-QL、東日 QL100N4-MH) | ○ | ○ | × | × | × | × |
| 30〜140(KTC GW140-04、TONE T4MN140-QL、東日 QL140N-MH) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
| 40〜200(KTC GW200-04、TONE T4MN200-QL、東日 QL200N4-MH) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 40〜280(東日 QL280N-MH) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
「増し締め」の意味は、資料で違います。JAFは、スペアタイヤ交換の手順で「クルマの取扱説明書に記載されている規定のトルク(締め付ける力)で増し締めします。」と書き、これはジャッキを下ろしたあとの本締めのことです。タイヤ交換後しばらく走ったあとの確認は、スズキ(ハスラー)の取扱説明書に「タイヤを交換してしばらく走行したあと、ホイールナットにゆるみがないか確認してください。」「アルミホイール装備車は、タイヤを交換してから1,000 km 程度走行したあとに、ホイールナットにゆるみがないか点検してください。」とあります。タイヤメーカー(コンチネンタル)は「新しいタイヤに交換した時は、交換後50-100kmを目安に走行してからホイールナットの増し締めをしましょう。」と書いています。
50〜100kmという数字は、確認できた公的な資料では大型車向けのものでした。国土交通省東北運輸局の別紙(バス・トラック事業者用)に「車輪脱着作業後、50~100 ㎞走行後を目安に増し締めを行うこと。」、JATMAのサイトに掲載された資料(題名に「(大型トラック・バス)」とあります)に「ホイール取付け後、50~100km 走行を目安に、できるだけ早い時期に「ホイールナット の増し締め」を行います。」とあります。トヨタ(カローラの取扱書の全文)、日産(ノート・デイズ・サクラの3車種のFAQと、サクラの取扱説明書のタイヤ交換のページ)、ホンダ(N-WGN・CR-V・N-VANのタイヤ関連のページ)、マツダ(ロードスターの規定トルクのページ)では、50〜100kmの記載は確認できませんでした(ホンダ・マツダは取扱説明書の全文ではなく、該当ページだけを見ています)。
使い方・保管:各社の公式資料が書いている注意
- 保管(KTC):「※保管時には設定トルクを最低値にしてください。」、(TONE)「スプリングのへたりやクセによる精度低下を最小限に抑える為、トルクレンチは能力範囲の最小値に戻して管理・保管してください。」。東日は「長期間使用しないときは、最低目盛りにセットし、防錆油を塗布し、乾燥した場所に保管する。」と、長期間の場合として書いています。
- 「カチッ」のあと(KTC):「通知後も正しくトルクがかかっているかを確認するために力をかけ続けたり2回以上「カチッ」を繰り返すと、必要以上のトルクがかかり締め過ぎ(オーバートルク)の状態になってしまいます。」「正しく締結できているか確認する際には、再度締め込みを行うのではなく、一度緩めてから再びトルクレンチで締め付けましょう。」
- 緩めるのに使わない(東日):「ねじの戻しには、過大なトルクが加わりトルクレンチの破損に伴い事故やけがの原因になります。」。検査用について(東日の取扱説明書の注記):「注1 検査用には使用できません。」
- インパクトレンチとの併用(KTC):「例えばインパクトレンチで仮締めをし、トルクレンチで規定値までトルク管理する場合、トルクを締め過ぎないように注意しましょう。インパクトレンチの仮締め段階で締め過ぎている際は、トルクレンチの測定数値は正確な数値ではありません。」
- 力のかけ方(東日):「力の方向はトルクレンチに直角に(許容 ±15°)(図4)」「パイプなどを用いてハンドル部を長くして使用しない。」
読み違えやすい点:資料の文面との対応
| 見るところ | 資料が書いていること |
|---|---|
| 「±3%」が効く範囲 | TONEは「能力範囲で保証」、SK11は範囲外を±6%に準じるとし、KTCのプレロック型は「プレロック型トルクレンチの設定トルクは出荷時は精度保証範囲の最小値に設定されています。」と書いている(冊子71-24)。表示の「精度」の近くに、「精度保証範囲」「能力範囲」など、精度が成り立つ範囲が書かれているかを見る(書かれていなければ、メーカーに確認する)。「測定可能範囲」のように、それより広い範囲が別に書かれている場合もある |
| 「測定範囲」の下限 | JIS B 4652:2008は最大トルクの20%。ISO 6789-1:2017の目盛付きプリセット式は最低目盛から。ホイールナットに使う機種では、最小÷最大が13〜21%の例がある(当サイトの計算) |
| 「±3%」の分母 | KTCは「RD(リードスケール)」と書き、100N·mなら97〜103N·m。TONEは「読み取り値」(FAQの対象は電子式3種と「トルクレンチ」で、機械式プレセット形を含むかの記載は見つけられませんでした)。東日・SK11は、確認した資料に分母の説明がない |
| 規格の許容差と「±3%」 | 規格の表は10N·m超で±4%、10N·m以下で±6%など。「±3%」はメーカーの自主表示。TONEは同じ取扱説明書で、製品は±3%、修理後は±4%以内を合格としている |
| 校正証明書の意味 | KTCの冊子:「校正証明書は校正した時点の精度を証明するもので、その後の精度を保証するものではありません。」。TONEは、証明書の有効期間(未使用3年・使い始めて1年など。単能形はTONEがトルク設定を行った場合に有効)を取扱説明書に書いている。JISの周期の初期値は12か月または約5 000回 |
| 「増し締め」 | JAFは、ジャッキを下ろしたあとの本締めのこと。50〜100kmの再確認は、確認した公的資料では大型車向け。スズキはしばらく走ったあとの確認、アルミホイールは1,000km程度 |
| 規定トルクの数字 | 確認した資料で85〜147N·m。TONEの単能形トルクレンチの取扱説明書(IM-KO072、No.2211)の、ホイルナット用の参考資料の表(目で読んだもの)は、スズキ車・日産軽自動車を85、トヨタ車・ダイハツ車を103、ホンダ車・日産車を108N·mとし、標準ホイールの値で目安だと注記している。日産の公式FAQ(デイズ88〜108、サクラ98)とは一致しない。手元の車の取扱説明書を一次情報にする |
| 単位 | 東日の取扱説明書は「計量法により重力単位系(kgf・cm, kgf・m)製品は、日本国内での販売ができません。」と書く。kgf·mの併記は車の取扱説明書に残り、マツダは換算が一致しない |
今回、確認できなかったこと
- JIS B 4652:2008が、2026年11月時点で現行か、より新しい版があるか。日本規格協会のサイトがメンテナンス中で、JIS原本は読めていません(転載サイトと、2026年4月改正のNITE文書がJIS B 4652を引用している点までです)。
- ISO 6789-1:2017の公開サンプル(5.1.8まで)より後の本文、ISO 6789-2:2017(校正)の本文。偏差の計算式、表示の条項は読めていません。
- 東日製作所の公式サイト(調査時は障害告知のみ)。取扱説明書は販売店掲載のPDFで読みました。校正周期の数字と、精度の分母の説明は確認できていません。
- TONEの取扱説明書のPDFは文字情報がなく、画像を目で読みました。そのため、その部分は引用符に入れず、要約で書いています(見出し名だけは「」で示しています)。
- アストロプロダクツ・旭金属工業(ASH)・エーモン・ロッキーなど、ほかのメーカーの取扱説明書。Snap-onは米国向けの資料のみで、日本向けは確認できていません。
- 各自動車メーカーの全車種の規定トルク。トヨタ・日産・ホンダ・マツダ・スズキの一部車種だけです。
- 乗用車で50〜100kmの増し締めを書いた、自動車メーカー・国土交通省の資料。確認した範囲では、大型車向けだけでした(ホンダ・マツダは該当ページだけを見ています)。
出典(確認日: 2026年11月7日)
- JIS B 4652:2008(転載)、JIS B 4650:2002の状態表示(販売サイト)、ISO 6789-1:2017、ISO 6789-2:2017、ISO 6789-1:2017の公開サンプル、NITE JCT20903
- KTC: チラシ No.75-33、チラシ No.61-01、FAQ、トルクレンチ解説、トルク管理の冊子、2023年総合カタログ
- TONE: FAQ、コラム(能力範囲)、コラム(精度確認・保管)、取扱説明書 IM-KO095、IM-KO072
- 東日製作所 QL-MH型 取扱説明書(販売店掲載)、総合製品案内(販売店掲載)、SK11 デジタルトルクレンチ取扱説明書
- 車: トヨタ カローラ、日産 ノートFAQ、デイズFAQ、サクラFAQ、サクラ取扱説明書、ホンダ N-WGN、CR-V e:HEV、N-VAN、マツダ ロードスター、スズキ ハスラー
- JAF(スペアタイヤの交換)、コンチネンタル(増し締め)、国土交通省 東北運輸局の別紙、JATMA掲載の資料(大型トラック・バス)
この記事は、規格と公式の表示の整理です。広告・アフィリエイトのリンクは含まれません。
アイキャッチ画像: “Torque wrench 20-220 Nm.jpg” by Lead holder (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0。今回取り上げた製品とは関係のない、プレセット式トルクレンチのイメージ写真です)

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