車両火災の原因と防ぎ方、もし起きてしまったときの対処法

車両火災は、事故のときだけに起こるものではありません。JAFは、燃料やオイルの漏れ、バッテリー端子の緩みによるショート、車内に置いた物のレンズ効果など、日ごろの整備や車内の置き方が原因になる場合もあると説明しています。この記事では、総務省消防庁の統計、JAFの案内、国土交通省の発表をもとに、原因・予防・万一のときの行動・EVの注意点を整理しました。

📋 この記事の要点

✔ 総務省消防庁の統計では、令和5年中の車両火災は3,521件。原因別では排気管が652件(18.5%)で最多

✔ JAFが挙げる原因は、燃料・オイル漏れ、バッテリー端子の緩み、ウエスの置き忘れ、空ぶかし、車内の物の集光など

✔ 走行中に火災に気づいたら、ハザードランプ→路肩に停止→119番。一度避難したら車に戻らない(JAF)

✔ EVは、電池の熱暴走で消火が難しくなる。119番では「EV(電気自動車)が燃えている」と伝える(JAFトレーニングコラム)

✔ 国土交通省は、EVのバッテリー火災に対する保安基準を、2025年9月26日に改正すると発表

1. 車両火災の実態:統計と原因

総務省消防庁の令和6年版消防白書によると、令和5年中の車両火災の出火件数は3,521件(前年比112件増)でした。死者は105人(放火自殺者等63人を含む)、損害額は約23億3,258万円と報告されています。

📊 車両火災の出火原因(上位3位)

原因(消防庁の分類) 件数(令和5年中) 構成比
排気管 652件 18.5%
電気機器 332件 9.4%
交通機関内配線 298件 8.5%

📌 補足

出典は、総務省消防庁「令和6年版 消防白書」(令和5年中の統計)。「排気管」「電気機器」「配線」は、火災の統計上の分類で、上の3項目で全体の約36%です。

JAFの「クルマ何でも質問箱」では、車両火災の原因として、次のような例が挙げられています。日ごろの整備や車内の管理で、防げるものも少なくありません。

📊 JAFが挙げる車両火災の原因

原因 JAFの説明 予防のポイント
燃料・オイルの漏れ 車両火災の主な原因の一つ 車の下の染み・においに気づいたら早めに点検
バッテリー端子の緩み 緩みによるショートで火災につながる 定期点検でバッテリー端子を確認
エンジンルーム内のウエス置き忘れ エンジンルームに布などを置き忘れる 整備後は、道具や布を残していないか確認
エンジンの空ぶかし 駐車中、アクセルの誤踏でエンジンが高回転になり続ける エンジンをかけたまま、無人・仮眠にしない
車内の物のレンズ効果 フロントガラスに付けた透明な吸盤や、水入りのペットボトルなどが、光を集めることがある 車内に、光を集める物を置かない
ライターなどの放置 ダッシュボードなど直射日光の当たる場所に置くと、発生確率が高まる ライター・スプレー缶を車内に放置しない
交通事故 追突事故などをきっかけに発生する。高速道路は速度が高いぶん、事故直後の火災につながる場合がある 事故時は、まず安全確保と通報

2. 火災を防ぐための点検と習慣

JAFは、予防策として、ライターやスプレー缶を車内に放置しないこと、後付けの電装品(カーナビ、ドライブレコーダーなど)が正しく接続されているか確認すること、認可されていないマフラーを使わないことを挙げています。

📊 日常の予防チェック

チェック項目 見るポイント 頻度の考え方
車の下・エンジンルーム 油やガソリンのにおい、染みがないか 点検時・駐車場所を変えたとき
後付け電装品 配線がむき出し・挟まれていないか。取り付けに不安があれば専門店へ 取り付け時と、定期点検時
マフラー・排気まわり 破損・認可外の部品がないか 車検・点検時
車内の物 ライター・スプレー缶・水入りペットボトル・吸盤が、日光の当たる場所にないか 駐車前
駐車場所 枯れ草など燃えやすい物の近くにエンジンをかけたまま停めていないか 駐車時

⚠️ フロントガラスへの貼り付け物

JAFの案内では、フロントガラスなどに物を貼る場合は、道路運送車両の保安基準第29条と、その細目告示第195条に沿ったものである必要があります。吸盤や貼り付け物を使う前に、基準を確認しましょう。

📝 出かける前・停めるときのチェックリスト

☑️ ライター・スプレー缶を車内に置いていない

☑️ 水入りペットボトルや吸盤を、日の当たる場所に置いていない

☑️ 後付け電装品の配線に、不安な点がない

☑️ 車の下に、油やガソリンの染みがない

☑️ 枯れ草などの近くに停めていない

☑️ 整備後、エンジンルームに布や工具を残していない

3. 走行中に火災に気づいたら:行動の手順

JAFは、「早く知らせる」「早く消火する」「早く逃げる」を、火災のときの基本としています。最も強調されているのは、一度外に避難したら、再び車に戻らないことです。

🧭 走行中の車両火災の基本手順(JAFの案内より)

1

ハザードランプをつけて路肩に停める

後続車に、緊急事態であることを知らせます。

2

119番に通報する

携帯電話などで通報します。場所を伝えるときは、道路名や目印を伝えます。

3

自分と同乗者の安全を確保する

安全に避難できる範囲で、車から離れます。高速道路では、ガードレールの外側などに避難します(次の節)。

4

無理のない範囲で、初期消火を試みる

JAFは、上着などで炎を覆って鎮火させる方法や、ペットボトルの飲料水も役立つ可能性があるとしています。自分が危険にさらされる状況では行いません。

5

避難後は、車に戻らない

荷物や貴重品を取りに戻らないでください。

💡 ポイント

JAFは、スプレー式の消火器を車に常備することも紹介しています。使い方は、購入時の説明書で事前に確認しておきましょう。

4. 高速道路で火災・事故に遭ったとき

高速道路では、車外に出ること自体が危険です。JAFの「高速道路で事故や故障が発生したら」の案内では、次の手順が紹介されています。

📊 高速道路での基本手順

手順 JAFの案内
1. 停止 ハザードランプを点灯させ、路肩に寄せるか、可能な限り広い場所まで走行する
2. 同乗者の避難 同乗者をガードレールの外側に避難させる。橋や高架などで外側に避難できない場合は、車より後方に避難する
3. 警告表示 停止表示器材を置くことが、法令で定められている。発炎筒(非常信号用具)は、停止表示板の手前で後続車に注意を促すときに使う
4. 通報 非常電話か携帯電話で救援を依頼する。路肩のキロポストの数字を伝えると、場所を特定できる

⚠️ 車内・車の近くで待たない

火災の場合は、上の表の2(避難)を最優先にしてください。JAFは、高速道路上での作業は極めて危険なため、自分たちで対応せず、救援を待つよう案内しています。

5. EV(電気自動車)の火災:何が違うか

JAF交通安全トレーニングのコラム(2026年1月5日公開)によると、EVの火災は、リチウムイオン電池の内部ショートなどをきっかけに、電池セルが連鎖的に熱暴走を起こして広がります。密閉された電池パックの中で燃えるため、外から消火しにくく、長時間燃え続けることがあるとされています。

📊 EVの火災についての公開情報

項目 内容 出典
消火が難しい理由 電池が熱暴走を起こして連鎖する。密閉された電池パック内で燃えるため、外部から消火しにくい JAF交通安全トレーニング コラム(2026年1月5日)
異常を感じたとき ハザードランプ→路肩に停止→119番に「EV(電気自動車)が燃えている」と伝える→車から離れて避難 同上
消火活動 コラムでは、消火活動は行わないよう案内されている(ガソリン車の初期消火とは扱いが異なる) 同上
火災の発生率 コラムは、米国の運輸安全委員会(NTSB)の統計として、販売10万台あたりの火災件数を、EV約25台、ガソリン車約1,530台、ハイブリッド車約3,475台と紹介。米国のデータである点に注意 同上
国の基準 国土交通省は、EVのバッテリー火災に関する保安基準等の改正を、2025年9月26日に発表。新型車は2027年9月、継続生産車は2030年9月から適用 国土交通省 報道発表

📌 補足

国土交通省の改正は、バッテリーが異常発熱しても、乗員が避難する時間を確保するための要件です。具体的には、警報から5分間、火災・爆発・車内への煙の放出がないことなどを確認します。

⚠️ 注意

EVの火災は、発生率が高いわけではありません(コラムが紹介する統計では、ガソリン車やハイブリッド車より少ない数値)。ただし、起きたときは扱いが異なるため、119番の通報のときに「EV」と伝えること、自分で消そうとしないことを、あらかじめ知っておきましょう。

6. よくある質問

Q. 車両火災の原因で、いちばん多いのは何ですか?

A. 総務省消防庁の統計(令和5年中)では、排気管によるものが652件(18.5%)と最も多く、次いで電気機器が332件(9.4%)、交通機関内配線が298件(8.5%)でした。JAFは、これらに加えて、燃料・オイル漏れ、バッテリー端子の緩みなども原因として挙げています。

Q. 水入りペットボトルが、車内で火事の原因になるのですか?

A. JAFは、透明な吸盤や水入りのペットボトルなどが、レンズのように太陽光を集めて、部分的に高温になることがあると説明しています。車内の日の当たる場所には、置かないほうが安心です。

Q. 火が出たら、自分で消したほうがいいですか?

A. JAFは、上着などで炎を覆う、ペットボトルの水を使うなどの初期消火の例を紹介しています。ただし、自分が危険な状況では避難を優先します。EVの場合は、JAFのコラムが消火活動をしないよう案内しています。一度避難したら、車に戻らないでください。

Q. EVは、ガソリン車より火災が多いのですか?

A. JAFのコラムが紹介する米国NTSBの統計では、販売10万台あたりの火災件数は、EVが約25台、ガソリン車が約1,530台、ハイブリッド車が約3,475台です。米国のデータであり、日本の状況とは異なる可能性があります。

まとめ

車両火災は、事故だけでなく、燃料・オイル漏れ、バッテリー端子の緩み、車内に置いた物の集光など、日ごろの点検や置き方でも起こります。予防は、車内にライターやスプレー缶を放置しないこと、後付け電装品の配線確認から。万一のときは、ハザード→路肩に停止→119番、避難したら車に戻らないこと。EVの場合は、119番で「EV」と伝えることも大切です。

※本記事は、総務省消防庁・JAF・国土交通省の公開情報(2026年10月確認)をもとにした一般的な情報提供です。火災時の対応は状況により異なります。安全を最優先し、消火・避難の判断は、現場の状況に応じて行ってください。

参考: JAF「クルマ何でも質問箱」車両火災の原因は?(出典: 国土交通省「道路運送車両の保安基準」、トヨタ自動車株式会社)

アイキャッチ画像: Fire extinguisher placed inside vehicle trunk by Nenad Stojković, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

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