「ありがとう」の合図として使われることの多いハザードランプ。では、そもそも何のための装備で、どんなときに点けるのが本来の使い方なのでしょうか。法令で点灯が決まっている場面、警察や道路会社が呼びかけている場面、車の装備として自動で点滅する場面は、それぞれ位置づけが違います。
この記事では、道路交通法施行令・道路運送車両の保安基準・細目告示(e-Gov法令検索・国土交通省)と、JAF・NEXCO中日本・NEXCO西日本・名古屋高速道路公社・兵庫県警察の資料、ホンダと三菱自動車の公式ページをもとに、ハザードランプの「本来の使いどころ」を整理します。YouTubeのショート動画「ハザードランプ、『ありがとう』以外の本当の出番、知ってる?」の内容を、一次情報で確認し直して詳しくまとめた記事です。お礼のハザードそのものについては、サンキューハザードの記事で扱っています。
📋 この記事の要点
✔ 道路交通法令(施行令)でハザードの点灯が決まっているのは2つ。夜間、幅員5.5m以上の道路での停車・駐車(非常点滅表示灯又は尾灯。例外あり)と、通学通園バスの乗降のための停車(施行令第18条第2項・第26条の3第2項)
✔ ハザードを点けても、停車・駐車が禁止されている場所に停めれば違反。道路交通法第44条・第45条に、ハザードの点灯を例外とする定めは見当たらない
✔ 渋滞の最後尾での点灯は、法令の義務ではなくNEXCO中日本・兵庫県警・名古屋高速などの呼びかけ。資料ごとに「いつ点けるか」の書き方が違う
✔ 急ブレーキで自動点滅する装備は車種による。ホンダ フィットは60km/h以上で急ブレーキ、三菱デリカD:5は急ブレーキ時またはABS作動時(保安基準では緊急制動表示灯は「備えることができる」=任意)
✔ 高速道路で故障したら、JAFはハザード点灯→路肩へ→停止表示器材を後方に→ガードレールの外へ避難→救援依頼の順で案内。停止表示器材の表示は道路交通法第75条の11が定めている
🎬 動画で見る(ショート)
この記事の元になった、かーぎーくんのショート動画です。動画では触れられなかった詳しい内容や条文・公式情報は、このあと記事で確認できます。
▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
1. ハザードランプ(非常点滅表示灯)の位置づけを一覧で確認
ハザードランプは、法令上は「非常点滅表示灯」といいます。道路運送車両の保安基準第41条の3は、自動車に非常点滅表示灯を備えることを求め(二輪自動車、幅0.8m以下の自動車、最高速度40km/h未満の自動車などは除く)、第2項で「非常時等に他の交通に警告することができる」ものと定めています。点灯が必要な場面は、道路交通法ではなく道路交通法施行令に書かれています(道路交通法の条文には「非常点滅表示灯」の語は出てきません。今回、e-Gov掲載の条文で確認しました)。なお、e-Govの全文検索では、液化石油ガス法施行規則にも、LPガスの充てん作業中に非常点滅表示灯を点灯する定めがありました(一般の運転とは別の特殊な場面です)。
📊 ハザードランプの使われ方と、法令上の位置づけ
| 場面 | 位置づけ | 根拠・出典 |
|---|---|---|
| 夜間、幅員5.5m以上の道路で停車・駐車 | 点灯が必要(非常点滅表示灯又は尾灯。例外あり) | 道路交通法施行令 第18条第2項 |
| 通学通園バスが乗降のため停車 | 点灯が必要 | 施行令 第26条の3第2項 |
| 渋滞の最後尾 | 条文に定めは見当たらない。道路会社・警察が呼びかけ | NEXCO中日本・名古屋高速道路公社・兵庫県警察の資料 |
| 急ブレーキ | 車の装備(緊急制動表示灯は「備えることができる」) | 保安基準 第41条の4、細目告示 第217条、メーカー資料 |
| 高速道路で故障・事故のため停止 | 表示が義務なのは停止表示器材。ハザードは道路会社・JAFの案内(夜間は上の1行目の規定) | 道路交通法 第75条の11、施行令 第27条の6、JAF・NEXCO |
2. 道路交通法令で点灯が決まっている2つの場面(夜間の駐停車・通学通園バス)
夜間、幅員5.5m以上の道路に停車・駐車しているとき
📜 道路交通法施行令 第18条第2項(条文の要約)
自動車(大型自動二輪車、普通自動二輪車及び小型特殊自動車を除く。)は、夜間、道路(歩道又は路側帯と車道の区別のある道路においては、車道)の幅員が5.5メートル以上の道路に停車し、又は駐車しているときは、車両の保安基準に関する規定により設けられる非常点滅表示灯又は尾灯をつけなければならない。ただし、次の場合は除く。(1)保安基準に適合する駐車灯をつけているとき (2)高速自動車国道及び自動車専用道路以外で、後方50メートルから明りょうに見える程度に照明された場所のとき (3)高速自動車国道及び自動車専用道路以外で、夜間用停止表示器材又は警告反射板を後方から見やすい位置に置いたとき

| ポイント | 条文から読み取れること |
|---|---|
| 「夜間」とは | 道路交通法第52条第1項は、夜間を「日没時から日出時までの時間」と定義している |
| ハザードでなくてもよい | 点けるのは「非常点滅表示灯又は尾灯」。ハザードに限った書き方ではない。JAFのQ&Aは「ハザードランプ(非常点滅表示灯)を点灯しなければならない」と簡潔に書き、二輪車などはテールランプで代用すると説明している |
| 高速道路では例外が狭い | 上の(2)(3)の例外は「高速自動車国道及び自動車専用道路以外」に限られる。高速道路・自動車専用道路では、駐車灯をつけている場合などを除き、非常点滅表示灯又は尾灯が必要(条文の読み) |
| 対象になる道路 | この規定が点灯を求めるのは、幅員5.5m以上の道路(歩道・路側帯と車道の区別があれば車道の幅員) |
通学通園バスが、児童・生徒・幼児の乗降のために停車するとき
📜 道路交通法施行令 第26条の3第2項(条文の要約)
通学通園バスは、小学校等の児童、生徒又は幼児の乗降のため停車しているときは、車両の保安基準に関する規定に定める非常点滅表示灯をつけなければならない。
通学通園バスとは、同条第1項によると、専ら小学校・中学校・特別支援学校・幼稚園・保育所などに通う児童・生徒・幼児の運送を目的とする自動車である旨を表示しているものです。一方、ほかの運転者には、道路交通法第71条第2号の3が、乗降のために停車している通学通園バスの側方を通過するときは徐行して安全を確認することを求めています。
ハザードを点けても、停車・駐車が禁止の場所は違反
動画でも触れたとおり、ハザードを点灯していても、停車・駐車が禁止されている場所に停めることが認められるわけではありません。道路交通法第44条は、道路標識等で禁止された場所のほか、次の場所での停車・駐車を禁じ、例外は「法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合」としています。ハザードの点灯を例外とする定めは、第44条・第45条の条文に見当たりませんでした。
| 条文 | 禁止の内容 | 主な場所(条文より) |
|---|---|---|
| 第44条(停車も駐車も禁止) | 停車も駐車もしてはならない | 交差点・横断歩道・踏切・坂の頂上付近・トンネルなど/交差点の側端や曲がり角から5m以内/横断歩道の前後5m以内/バス停の標示柱から10m以内(運行時間中)/踏切の前後10m以内 など |
| 第45条(駐車のみ禁止) | 駐車してはならない(警察署長の許可がある場合を除く) | 車の出入口から3m以内/道路工事区域の側端から5m以内/消火栓などから5m以内/火災報知機から1m以内 など |
なお、同法第2条は、駐車を、客待ち・荷待ち・故障などで継続的に停止すること(貨物の積卸しで5分以内のもの、人の乗降のための停止を除く)、または運転者が車を離れてすぐに運転できない状態で停止することと定め、停車は駐車以外の停止としています。
3. 渋滞の最後尾で後ろに知らせる

渋滞の最後尾でハザードを点灯する使い方は、道路交通法施行令や保安基準に定めがありません(条文の検索で確認)。一方で、高速道路会社と警察が、追突を防ぐ呼びかけとして案内しています。資料ごとに「いつ点けるか」の書き方が違うので、分けて整理します。
📊 渋滞での点灯についての各機関の案内(要約)
| 資料 | 対象の場面の書き方 | 案内の内容 |
|---|---|---|
| NEXCO中日本 ドライバーズサイト(走行時のマナー) | 渋滞に遭遇し、低速走行や停止をする場合 | ハザードランプを点灯して、追突されないよう後続車に合図する |
| NEXCO中日本「安全走行のお願い」(2026年7月作成のPDF) | 渋滞末尾で停止・減速する際 | ハザードランプを点灯して後続車に合図。渋滞末尾に近づいたときも点灯し、車間距離を十分に確保する |
| 兵庫県警察 高速道路交通警察隊の資料 | 渋滞や進路の異常を認めて停止するとき | 後続車などに注意を呼びかけ、事故を防止するために活用する |
| 名古屋高速道路公社 | 前方に渋滞を発見したとき | ブレーキを踏んでからではなく、直ちにハザードを点滅させ、その後にブレーキを踏む(ブレーキの後の点滅では効果が薄いとしている) |
NEXCO中日本の同じ資料には、2025年に同社が管理する高速道路で交通死亡事故が21件あり、本線上に停止した車両や車外に出た人に後続車が追突する形態が死亡事故全体の約5割を占めること、渋滞の中や最末尾付近は追突事故が発生しやすいことも書かれています。
4. 急ブレーキで自動点滅する装備

急ブレーキをかけたときに、ハザードが自動で点滅して後続車に知らせる装備があります。呼び名もメーカーごとに違います(ホンダ=エマージェンシーストップシグナル、三菱=ESS〔緊急制動信号システム〕、保安基準=緊急制動表示灯)。作動条件も、車種ごとに次のとおり違います。
| 資料 | 作動の条件 | その他の記載 |
|---|---|---|
| ホンダ フィット(2023年版の取扱説明書) | 60km/h以上で走行しているときに急ブレーキをかけると作動 | 制動灯が点灯し、非常点滅表示灯が高速で点滅、メーター内の方向指示器表示灯も左右同時に高速で点滅。ハザードスイッチがONのときは作動せず、ABSが一定時間以上作動しないときは作動しない場合がある。追突を完全に防ぐものではない |
| 三菱自動車 よくあるお問い合わせ(デリカD:5・2007年1月〜) | 急ブレーキ時またはABS作動時に、ハザードが自動で点滅 | 点滅速度は通常の約2倍。記載の数値は参考値(設計値・実測値)で、車両状態や測定方法などで異なるとされている |
国の基準では、保安基準第41条の4が緊急制動表示灯を「備えることができる」と定め、任意の装備です。使う灯火は制動灯・補助制動灯・方向指示器・補助方向指示器のいずれかと定められています。また細目告示第217条は、非常点滅表示灯は手動で操作するものを原則としつつ、「緊急制動表示灯の作動が停止した場合」「衝突事故にあった場合」などは自動で作動させることができるとしています。ホンダの自動点滅がこのどの規定に当たるかは、取扱説明書や告示からは確認できませんでした。
5. 故障・事故で止まったとき(高速道路)
動画の最後で触れた、高速道路で故障したときの手順です。JAFのQ&A「高速道路で事故や故障が発生したらどうすればいいのですか?」は、次のように案内しています。
| 順番 | JAFの案内 | 補足(条文・ほかの資料) |
|---|---|---|
| 1 | ハザードランプを点灯させ、路肩に寄せる。橋やトンネルなど路肩が狭い・ないときは、可能な限り広い所まで自走する | 高速自動車国道等での停車・駐車は原則禁止。故障などでやむを得ず、十分な幅員がある路肩・路側帯に停めるのは例外(道路交通法第75条の8第1項第2号) |
| 2 | 同乗者を避難させたうえで、停止表示器材などを車の後方に置く | 道路交通法第75条の11第1項が「故障その他の理由により停止している」ことの表示を、施行令第27条の6が停止表示器材を後方から見やすい位置に置く方法を定める。NEXCO中日本・西日本は、発炎筒・停止表示器材の設置は「無理のない範囲で」と案内している。NEXCO中日本は、移動するときは車線から離れ、ガードレールなどの防護柵の外側の安全な場所を通るよう求め、「絶対に歩き回らない」ことも呼びかけている。無理なときは、設置より避難を優先する |
| 3 | ガードレールの外側に避難する。橋や高架など外側に避難できない場合は、追突に巻き込まれないよう、車より後方に避難する | NEXCO中日本・NEXCO西日本も、運転者・同乗者の全員が防護柵の外など安全な場所へ避難するよう案内 |
| 4 | 非常電話か携帯電話で救援を依頼する | JAFは、非常電話は1kmおきに設置、携帯電話では路肩のキロポストの数字を伝えるよう案内 |
停止表示器材は、道路交通法施行規則が「停止表示板(三角形)」と「停止表示灯(点滅式・紫色)」を定めています。JAFは、発炎筒(非常信号用具)は法令に用途の規定がなく、停止表示器材が必須と説明しています。NEXCO中日本・西日本は、「ハザードランプ」「発炎筒」「停止表示器材」を並べて後続車への合図として案内し、名古屋高速道路公社は「路肩での停車は後続車が追突する危険性が極めて高い」として非常駐車帯への停車を呼びかけ、やむを得ず停車するときは三角停止表示板を車の後方に(できれば2つ)置き、ハザードを点灯するよう案内しています。資料によって「停止表示器材」「三角停止表示板」「発炎筒」と呼び方や組み合わせが異なるため、車に積んでいる器材の種類を確認しておくと安心です。
6. よくある質問
📚 あわせて読みたい
▶ サンキューハザードは違法?何回点滅が正解?JAF調査の85.6%の意味と非常点滅表示灯の法令を条文で確認
まとめ
ハザードランプ(非常点滅表示灯)の本来の使いどころを整理します。(1)道路交通法令(施行令)で点灯が決まっているのは、夜間・幅員5.5m以上の道路での停車・駐車(非常点滅表示灯又は尾灯。例外あり)と、通学通園バスの乗降のための停車の2つです(施行令第18条第2項・第26条の3第2項)。点けても、停車・駐車が禁止された場所での違反は変わりません。(2)渋滞の最後尾での点灯は義務ではなく、NEXCO中日本・兵庫県警・名古屋高速などの呼びかけです。(3)急ブレーキでの自動点滅は車種ごとの装備で、条件はメーカーの説明書で確認します。(4)高速道路での故障では、ハザードに加えて停止表示器材の表示と、ガードレールの外への避難が案内されています。
「法令で決まっていること」「呼びかけ」「車の装備」を区別しておくと、ハザードの使いどころが整理しやすくなります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。法令・基準は改正されることがあり、装備の有無や作動条件は車種によって異なります。最新の内容や個別の判断は、警察・国土交通省・道路会社・自動車メーカーなどの公式情報でご確認ください(確認日:2026年10月)。
参考(一次情報・公的機関・道路会社・メーカー・JAF): e-Gov法令検索 道路交通法施行令(第18条・第26条の3・第27条の6)/同 道路交通法(第2条・第44条・第45条・第52条・第71条・第75条の8・第75条の11)/同 道路交通法施行規則(第9条の17・第9条の18)/同 道路運送車両の保安基準(第41条の3・第41条の4)/国土交通省 細目告示 第217条(非常点滅表示灯)/同 第217条の2(緊急制動表示灯)/NEXCO中日本 ドライバーズサイト(走行時のマナー)/NEXCO中日本 安全走行のお願い(PDF)/NEXCO中日本 事故・故障の場合/NEXCO西日本 事故・故障の場合/名古屋高速道路公社 追突を〈されない〉〈しない〉運転/兵庫県警察 高速道路交通警察隊 誤りです!高速道路のこんな認識・走り方(PDF)/JAF 高速道路で事故や故障が発生したらどうすればいいのですか?/ホンダ フィット 取扱説明書 エマージェンシーストップシグナル/三菱自動車 よくあるお問い合わせ ESS(緊急制動信号システム)とは?/乗りものニュース(報道・二次情報)「渋滞最後尾のハザード点灯」高速隊も呼びかけ
図はすべて自作のイラストです(AI生成なし)。実際の道路や車の見え方は、場所や車種によって異なります。


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