高速の非常電話は何mおき?本線1km・トンネル200mの根拠と、運用停止・#9910の使い分け

高速道路の路肩にある黄色い箱、「非常電話」。何mおきに置かれているのか、受話器を取るとどこにつながるのか、スマホがある今もまだ使えるのか。YouTubeのショート動画「高速の非常電話は何mおき?」で紹介した内容を、公式の案内と国土交通省の基準、道路交通法の条文で確かめ直し、動画では触れられなかった運用停止の動きや#9910との使い分けも加えて整理します。

📋 この記事の要点

✔ NEXCO(東日本・中日本・西日本)の非常電話は本線上1kmおき、トンネル内200mおき。首都高速は約500mおき、トンネル内100mおき(各社の公式案内)

✔ 受話器を取ると道路管制センターの係員が出る。料金は不要で、一般電話にはつながらない。NEXCO西日本は「ボタンがないタイプでも受話器を上げただけでおよその位置がわかる」と案内

✔ トンネル内は、国土交通省の基準で非常電話200m以下・押ボタン式通報装置50m・消火器50mが標準。消火栓も50mだが、設置されているのは一部のトンネル

✔ 2025年1月(東北支社)から、NEXCO東日本の一部区間で非常電話の運用停止が始まっている(トンネル内・SA/PAは継続と発表されたのは東北・関東)。代わりに携帯電話から#9910(LINEも可)

✔ 故障したら、ガードレールの外など安全な場所へ避難してから通報。停止表示の義務は道路交通法第75条の11、違反は1点・6,000円(普通車)

🎬 動画で見る(ショート)

この記事の元になった、かーぎーくんのショート動画です。動画では触れられなかった詳しい内容や条文・公式情報は、このあと記事で確認できます。

▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)

動画の補足と訂正:動画では、携帯電話が普及した今も「トンネルの中や山間部など電波が届きにくい場所のために設置され続けている」と紹介しました。今回あらためて公式発表を確認したところ、NEXCO東日本は2025年1月(東北支社)から一部区間で非常電話の運用を停止しており、東北支社は理由を「老朽化」と「利用実態が携帯電話に移行していること」と説明しています(北海道支社・関東支社の発表では理由は「携帯電話の普及」)。電波が届きにくいことを理由に挙げた公式資料は確認できませんでした。動画の「スマホの電池切れや故障への備え」という説明も、公式資料では確認できませんでした。トンネル内とSA・PAの非常電話は継続する、と明記されているのは東北支社・関東支社の発表です。あわせて、「1km・200m」はNEXCOの数字で、首都高速は500m・100mと異なること、位置は「およその位置」であること、トンネル内の消火栓は「一部のトンネル」にだけあることも補足します。

1. 非常電話は何mおき?設置間隔と設置場所

NEXCO3社(東日本・中日本・西日本)の案内では、非常電話は本線上に1kmおき、トンネル内に200mおきに設置されています。NEXCO西日本は、このほかインターチェンジ、SA・PA、バスストップ、非常駐車場にも設置されていると案内しています。首都高速は間隔が短く、公式サイトで「約500m間隔(トンネル内では100m間隔)」としています。

非常電話の設置間隔(NEXCOは本線1km・トンネル内200m、首都高速は約500m・100m)
図:非常電話の設置間隔。間隔は実寸の比率で描いた模式図(自作イラスト)

📊 運営会社ごとの非常電話の設置間隔

運営会社 本線上 トンネル内 出典
NEXCO東日本 1kmおき(発表文では「約1km間隔」) 200mおき 公式FAQ、公式発表文
NEXCO中日本 1kmおき 200mおき 公式FAQ
NEXCO西日本 1kmおき 200mおき 公式サイト
首都高速 約500mおき 100mおき 公式サイト
阪神高速 300〜500mおき(要確認・二次情報) 100mおき(要確認・二次情報) 乗りものニュースの記事(公式では確認できませんでした)

トンネル内の「200m」は、国の基準が根拠

トンネル内の設置間隔には、国土交通省の「道路トンネル非常用施設設置基準」(2019年3月通知)があります。道路構造令に従って新設・改築する道路のトンネルのうち延長100m以上が対象で、通話型通報設備として非常電話を設置する場合の間隔は200m以下を標準とされています。トンネルの長さと交通量で決まる等級のうち、AA・A・B・Cでは設置する設備として示されています(最も小さい等級Dは対象外)。

2. 受話器を取るとどうなる?

使い方は、受話器を取るだけです。NEXCO西日本は「道路管制センターの係員が応答いたします」と案内し、事故や故障の状況、負傷者の有無を伝えるよう呼びかけています。公式の案内で確認できた特徴は次のとおりです。

項目 公式の案内の内容 出典
つながる先 道路管制センターの係員。首都高速は交通管制室 NEXCO西日本・東日本、首都高速
料金・つながり方 料金は不要。一般電話にはつながらない NEXCO中日本
操作 ほとんどの機種は、受話器を取ればつながる。一部の道路には、ダイヤル式・押ボタン式の機種もある NEXCO中日本
話すのが難しいとき 「故障・事故・救急・火災」のボタンがある機種では、あてはまるボタンを押す。会話が難しい場合は、受話器を叩くなどの合図で知らせる NEXCO西日本
位置 ボタンがないタイプでも、受話器を上げただけでおよその位置がわかる NEXCO西日本
通報のあと 道路管制センターの指示で交通管理隊が現地に急行する。情報板で後続車に注意を促す。安全な場所で待つ NEXCO西日本

「場所も自動で伝わる」と聞くと、場所を何も言わなくてよいように思えますが、公式の表現は「およその位置がわかる」です。正確な地点まで保証する記載は、今回確認した公式資料にはありませんでした。係員に聞かれたときのために、路肩のキロポストの数字や近くのIC名などを答えられると安心です。首都高速は、通報時に伝えることとして、発生場所・けが人の有無・故障や事故の内容・名前・車種・ナンバー・停止場所を挙げています。

非常電話まで歩くときの注意:NEXCO中日本は、他の通行車両に十分気をつけて、ガードレールの外側などの安全な場所を歩いて探すよう案内しています。NEXCO西日本と首都高速は、非常電話で通報するために道路を歩いたり横断したりしている最中の事故に、特に注意するよう呼びかけています。

3. トンネル内の設備(非常電話・押ボタン・消火器・消火栓)

トンネルの中には、非常電話のほかにも、火災などに備えた設備があります。国土交通省の基準で標準とされている設置間隔と、NEXCOの案内を並べると、次のようになります。

トンネル内の非常電話・押ボタン式通報装置・消火器・消火栓の設置間隔
図:トンネル内の設備の設置間隔(200mぶんの模式図。自作イラスト)

📊 トンネル内の主な設備の設置間隔

設備 国土交通省の基準(標準) NEXCOの案内 備考
非常電話(通話型通報設備) 200m以下 200m間隔 等級AA〜Cで設置
押ボタン式通報装置(操作型通報設備) 50m 50m間隔(ランプがつくまで押すと、自動的に火災が通報される) 等級AA〜Cで設置
消火器 50m 50m間隔に2本ずつ 等級AA〜Bで設置
消火栓 50m 一部のトンネルに50m間隔(設置されていないトンネルもある) 等級AA・Aで設置

動画では「消火器や消火栓が50mおき」と紹介しましたが、消火栓がないトンネルもあります。NEXCO東日本は、消火栓について「設置されていないトンネルもあります」と案内しています。

非常口の先はどこにつながる?

国土交通省の基準では、避難通路は「道路トンネルに接続して設置され、当該トンネルの外へ直接通じている構造」とされています。NEXCO東日本は、火災が拡大して手に負えなくなったときは、煙の流れを見て非常口や避難連絡坑の場所を確認し、トンネル内のスピーカーやラジオ再放送の指示に従って避難するよう案内しています。非常口の先がどこにつながるかは、トンネルの構造によって異なります。

4. 運用停止の動きと、#9910・LINEの使い分け

NEXCO東日本の一部区間で、非常電話の運用停止が始まっています

携帯電話の普及を理由に、非常電話の運用を一部区間でやめる動きがあります。NEXCO東日本の公式発表で確認できたものは次の5件です。

📊 NEXCO東日本の非常電話の運用停止(公式発表)

発表日・支社 時期 主な区間 備考
2024年12月26日 東北支社 2025年1月から順次(明かり部) 百石道路、東北中央道、秋田道、三陸道、仙台東部・北部・南部道路など10区間 「老朽化」と「利用実態が携帯電話に移行」。その後撤去する計画
2025年9月10日 北海道支社 2025年10月から 深川・留萌自動車道 深川JCT〜深川西IC、日高自動車道 苫小牧東IC〜沼ノ端西IC(いずれも上下線) 理由は「携帯電話の普及」
2025年9月16日 関東支社 2025年10月から 富津館山道路 富津竹岡IC〜富浦IC、東水戸道路 水戸南IC〜ひたちなかIC トンネル部は除く。理由は「携帯電話の普及」
2025年11月10日 東北支社 2025年11月から順次(範囲拡大) 百石道路、釜石自動車道、秋田自動車道、三陸自動車道、仙台東部道路、山形自動車道、磐越自動車道などの一部(16区間) トンネル内とSA・PAの非常電話は継続。理由は「老朽化」と「利用実態が携帯電話に移行」
2026年4月27日 関東支社 2026年5月11日から順次 横浜新道 新保土ヶ谷IC〜狩場IC、横浜横須賀道路 狩場IC〜馬堀海岸IC・釜利谷JCT〜並木IC(いずれも上下線) トンネル部と休憩施設は除く

阪神高速も、報道(乗りものニュース、2026年9月4日付)によれば、2026年9月8日から西船場JCT〜南港JCTで非常電話の運用を順次停止すると報じられました。ただし、阪神高速の公式発表のページは確認できなかったため、要確認(二次情報)です。NEXCO中日本とNEXCO西日本については、今回確認した範囲では停止の発表は見つかりませんでした。走る区間の最新の状況は、各社の公式サイトで確認してください。

非常電話が使えないとき:道路緊急ダイヤル「#9910」

NEXCOの発表では、運用停止区間では「#9910(道路緊急ダイヤル)」を使うよう案内されています。国土交通省によると、#9910は全国共通で24時間受付・無料です。穴ぼこや路肩の崩壊、落下物、路面の汚れなど道路の異状が対象で、NEXCO西日本は故障車の通報にも使えると案内しています。2024年3月29日からは、LINEアプリからの通報も始まっています。

📊 通報手段の使い分け(公式の案内による)

状況 通報手段(公式の案内) 注意点
事故 110番、または非常電話(NEXCO西日本) 国土交通省は「事故情報は、警察(110番)へ連絡してください」と案内
故障 非常電話、または#9910(NEXCO西日本) 非常電話が使えないときは、安全な場所に停車して携帯電話・公衆電話で#9910(NEXCO中日本)
落下物・路面の異状 非常電話、または#9910 道路名・進行方向・キロポスト・周辺の施設を確認して伝える(国土交通省)
携帯電話のかけ方の注意:運転中の携帯電話の通話は道路交通法で禁止されています(第71条第5号の5)。NEXCO西日本は、同乗者からかけてもらうか、休憩施設など安全な場所に停車してからかけるよう案内しています。また、#9910は衛星電話と「050」のIP電話からは通話できません(NEXCO西日本)。

5. 故障したときの手順と法令の根拠

高速道路で故障したときの避難のようす(日本は左側通行)
図:故障したときは、路肩で後方に合図し、全員がガードレールの外へ避難してから通報する(自作の模式図。日本は左側通行)

NEXCO西日本は、事故・故障でやむを得ず停止したときの行動を、次の4つにまとめています。

順番 行動 公式の案内のポイント
1 歩き回らない 停止した車の運転者や同乗者が後方から来た車にはねられる事故が多発。車外への避難中、事故当事者同士の話し合い中、路肩でのパンク修理中などに注意
2 後続車に合図 ハザードランプ、発炎筒、停止表示器材で後続車に知らせる。発炎筒・停止表示器材は、車の後方に無理のない範囲で設置する
3 安全な場所へ避難 運転者も同乗者も全員、ガードレールの外など安全な場所へ。「車内は安全地帯ではありません」
4 通報 110番・非常電話・#9910のいずれかで、事故や故障の状況を通報する

停止表示は道路交通法の義務(第75条の11)

項目 内容 根拠
表示の義務 本線車道などや、これに接する路肩・路側帯で運転できなくなったときは、停止している旨を表示しなければならない 道路交通法第75条の11第1項
表示の方法 停止表示器材を、後方から進行してくる自動車の運転者が見やすい位置に置く。夜間は夜間用、昼間は昼間用。トンネルの中など視界が200m以下の場所では夜間用 道路交通法施行令第27条の6
移動の措置 速やかに本線車道等以外の場所へ移動するため必要な措置をとる 道路交通法第75条の11第2項
停車できる場合 高速自動車国道等は停車・駐車が禁止。ただし、故障などでやむを得ない場合に、十分な幅員がある路肩や路側帯に停車するときは除く 道路交通法第75条の8第1項第2号
違反したとき 故障車両表示義務違反。1点・反則金6,000円(普通車)。罰則は5万円以下の罰金 施行令別表第二・別表第六、道路交通法第120条第1項第13号

発炎筒など、灯光を発する「非常信号用具」は、道路運送車両の保安基準第43条の2が、自動車(二輪車などを除く)に備えるよう定めているものです。一方、施行令第27条の6が指す停止表示器材の基準(道路交通法施行規則第9条の17・第9条の18)は、「停止表示板」と「停止表示灯」を定めており、発炎筒の記載はありません。NEXCO西日本も「ハザードランプ、発炎筒、停止表示器材」と並べて案内しています。停止表示器材の基準や、器材の使い方の詳細は、別記事「三角表示板、高速道路での使用義務と正しい使い方」で解説しています。

トンネル内で故障した場合、NEXCO西日本は、路肩が狭いためできるだけトンネルの外に出るか、非常駐車帯に入るよう案内しています。やむを得ず車線上に停車したときは、停止表示板を置き、非常電話で通報し、同乗者も車から降りて非常駐車帯・非常口などの安全な場所に避難します。

6. よくある質問

Q. 非常電話の利用に料金はかかりますか?

A. NEXCO中日本は「料金は不要」と案内しています。なお、非常電話は一般の電話にはつながりません。

Q. うまく話せない場合はどうすればよいですか?

A. NEXCO西日本によると、「故障・事故・救急・火災」のボタンがある機種では、あてはまるボタンを押します。会話が難しいときは、受話器を叩くなどの合図で緊急事態を知らせます。ボタンがないタイプでも、受話器を上げただけでおよその位置がわかる、と案内されています。

Q. 非常電話が見つからないときは?

A. NEXCO中日本は、他の通行車両に十分気をつけて、ガードレールの外側などの安全な場所を歩いて探すよう案内しています。使えないときは、安全な場所に停車して、携帯電話や公衆電話で道路緊急ダイヤル#9910に連絡します。

Q. 運用停止の区間で故障したら、どうすればよいですか?

A. NEXCO東日本は、運用停止の区間では#9910の利用を案内しています(LINEでも通報できます)。事故の場合は110番です。先に、ガードレールの外など安全な場所へ避難してから通報してください。トンネル内とSA・PAの非常電話は、東北支社・関東支社の発表では継続されています。

まとめ

非常電話は、NEXCOの高速道路では本線上1kmおき・トンネル内200mおき、首都高速では約500mおき・トンネル内100mおきに設置されています。受話器を取ると道路管制センターの係員が出て、ボタンのないタイプでも「およその位置」が伝わります。トンネル内には、非常電話のほか押ボタン式通報装置・消火器(50mおき)、一部のトンネルには消火栓があります。

一方で、NEXCO東日本の一部区間では、老朽化と携帯電話への移行を理由に非常電話の運用停止が進んでいます。そうした区間や非常電話が見当たらないときは、安全な場所へ避難したうえで、#9910(LINEも可)や110番を使います。故障したら、まず後続車に合図し、全員でガードレールの外など安全な場所へ。通報はそのあとです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。設置間隔・運用停止区間・法令・反則金は変更されることがあります。最新の内容や個別の判断は、各道路会社(NEXCO・首都高速など)・国土交通省・警察庁・各都道府県警察の公式情報でご確認ください(確認日: 2026年10月)。図は模式図で、実際の機器の形や配置は道路・トンネルによって異なります。

参考(公式・一次情報): NEXCO西日本 もしもの時は?緊急時の対処法/NEXCO西日本 よくあるご質問(もしもの時は)/NEXCO中日本 非常電話について教えてください/NEXCO東日本 非常電話について教えてください/NEXCO東日本 トンネル内で事故や火災が発生したら(PDF)/NEXCO東日本 北海道支社 非常電話(一部)運用停止(2025年9月10日)/NEXCO東日本 東北支社 運用停止(範囲拡大)(2025年11月10日)/NEXCO東日本 関東支社 運用停止(2026年4月27日)/首都高速 事故・故障のときは/国土交通省 道路緊急ダイヤル(#9910)/国土交通省 道路トンネル非常用施設設置基準(PDF)/e-Gov法令検索 道路交通法(第71条・第75条の8・第75条の11・第120条)/同 道路交通法施行令(第27条の6・別表第二・別表第六)/同 道路交通法施行規則(第9条の17・第9条の18)/同 道路運送車両の保安基準(第43条の2・第43条の4)/警視庁 違反点数/乗りものニュース 阪神高速の非常電話の運用停止(2026年9月4日、二次情報)

図はすべて自作のイラストです(AI生成なし)。

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