タイヤの側面に小さな矢印を見つけて、「何の印だろう」と思ったことはないでしょうか。スタッドレスタイヤでは、この矢印は溝の中にある「プラットホーム」の位置を示す目印です。プラットホームは新品の溝が50%すり減ると現れる、冬用タイヤの使用限度のサインです。ただし、タイヤの側面には別の目的の印もあります。
この記事は、YouTubeで反応のよかったショート動画の内容を、一次情報で確かめ直して詳しく解説したものです。JATMA(日本自動車タイヤ協会)・ブリヂストン・ダンロップ・トーヨー・ヨコハマ・JAF・国土交通省・NEXCO・e-Gov・秋田県警察の資料をもとに、矢印の見分け方、「50%」の数字の根拠、法令や規則での位置づけを整理します。スリップサインの制動距離はこちらの記事、高速道路の冬用タイヤ規制はこちらの記事、向きを指定する矢印はこちらの記事で解説しています。
📋 この記事の要点
✔ 冬用タイヤの側面の矢印(資料により「↑」「⇧」と表記)は、延長線上の溝の中にあるプラットホームの位置の目印。新品の溝が50%摩耗すると現れ、露出したら冬用としては使えない(JATMA・ブリヂストン・JAF)
✔ 側面の印は3種類。プラットホームの矢印/スリップサインの△印/向きを指定するROTATIONの矢印は別のもの
✔ 夏用の使用限度はスリップサインの1.6mm(保安基準)。50%以上摩耗した冬用タイヤは、1.6mmまでは夏用として使えるが、制動距離は長くなりやすい(JATMA・ブリヂストン)
✔ 「50%」は保安基準の数字ではない。JATMA掲載の都道府県の規則の抜粋で、スノータイヤなどの摩耗を「50パーセント」で区切っていたのは10県(福島県のみ「摩耗が50パーセント以下のもの」という書き方。当サイト集計)
✔ 溝が残っていてもゴムは硬くなる。ブリヂストンは5年で点検、10年たったものは避けるよう案内し、JAFは一般に3〜5シーズンとしている(いずれも目安。5年の数え方は資料で違う)
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この記事の元になった、かーぎーくんのショート動画です。動画では触れられなかった詳しい内容や条文・公式情報は、このあと記事で確認できます。
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側面の矢印は3種類|プラットホームの目印はどれ?
JAFは、スタッドレスタイヤの交換の目安の解説で、「タイヤ側面に刻まれた矢印マークが示すトレッド面の溝を確認すると、プラットホームが露出しているかどうかを判断できます」と案内しています。ただ、タイヤの側面にはほかにも印があるため、まず見分け方を整理します。

📊 タイヤ側面の印の見分け方(JATMA・ブリヂストン・ダンロップ・ヨコハマより)
| 印 | 何の目印か | 資料の記載 |
|---|---|---|
| プラットホームの位置を示す矢印 | 溝の底にあるプラットホーム(新品の溝の50%で現れる、冬用タイヤの使用限度のサイン)の位置 | JATMAは「両側面にそれぞれ周上4ヶ所以上に表示」、ブリヂストンは「タイヤサイド部の周上4カ所にある「↑」マークの延長線上」(2012年のニュースリリース)、ダンロップは「全4カ所」と記載 |
| スリップサインの位置を示す△印など | 残り溝1.6mmで現れるスリップサイン(夏用・冬用とも使用限度)の位置 | JATMAは「△印等が、タイヤの両側面にそれぞれ周上4ヶ所以上表示」と記載 |
| ROTATION+矢印、OUTSIDE/INSIDE | タイヤを取り付ける向きの指定(摩耗の目印ではない) | ブリヂストンは「「ROTATION」という文字とともに進行方向を示す矢印が刻印」、「外側になるほうには「OUTSIDE」、内側になるほうには「INSIDE」」と記載。夏タイヤでも冬タイヤでも見分け方は同じ |
矢印の形の書き方は資料によって違い、ブリヂストン・ダンロップ・トーヨーは「↑」、JAFとJATMAは「⇧」と書いています。ブリヂストンは、向きや回転方向の指定の見分け方は、夏タイヤでも冬タイヤでも同じとしています。そのため、スタッドレスに「ROTATION」の矢印がある場合は、それとは別にプラットホームの矢印もあると考えられます(当サイトの整理)。向き指定の矢印はMAX PRESSと向きの指定を解説した記事にまとめています。
プラットホームの見つけ方と、「50%」が示す深さ
ブリヂストンは、プラットホームを「縦溝底部にある突起、プラットホームは溝の残りが約50%になると顔を出します」と説明しています。JATMAも、「タイヤがすり減って残り溝が新品時の50%になると溝が途切れこの目印が現れます」としています。

見つけ方と確認のしかた
📊 プラットホームの確認の手順(JAF・ブリヂストン・ダンロップ・JATMAより)
| 手順 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | タイヤ側面の矢印を探す | JAF(側面の「⇧」印)、ブリヂストン・ダンロップ・トーヨー(側面の「↑」) |
| 2 | 矢印の延長線上にあるトレッド面の溝の中を見る | ブリヂストン・ダンロップ・トーヨー(矢印の延長線上にプラットホーム) |
| 3 | 突起が地面に触れる高さ(溝が途切れた状態)になっていないか確認する | JATMA(溝が途切れてこの目印が現れる)、JAF(プラットホームが地面に触れる状態になっていたら限界) |
| 4 | 4か所のどこか1か所でも露出していたら、冬用としては使えない | ダンロップ(「全4カ所の内、1カ所でも露出したらスタッドレスタイヤとして使用できません」) |
| 5 | 4本すべてのタイヤで確認する | 当サイトの整理。JATMAは、冬用タイヤは全車輪に装着しないと挙動が安定しないとしている |
「50%」は何mm?
JAFは、スタッドレスタイヤは「一般的に新品時の溝の深さ(約10mm)から50%摩耗し、溝の深さが約5mmになった時点が交換の目安」と説明しています。NEXCO東日本も、冬道で安全に走るには「溝の深さが新品から50%程度摩耗したタイミング(5mm)が交換時期」とし、東北支社の発表では100円玉をタイヤの溝に差し込んで「1」の字が見えたら、残り溝は約5mmと案内しています。

新品の溝が約10mmなら、50%は約5mmで、スリップサインの1.6mmとの差は5mm−1.6mm=約3.4mmです(当サイト計算)。ただし50%は「新品時の溝」に対する割合で、JAFが「一般的に約10mm」と書いているように、新品の溝の深さはタイヤによって違うと考えられます。そのため、「5mm」は例で、100円玉の目安とプラットホームの位置が一致しないタイヤもありえます。確実なのは、プラットホームの確認とタイヤ店での点検です。
50%を超えたスタッドレスは、夏用として使える?
JATMAの基準書は、「50%以上摩耗した冬用タイヤは、1.6mm(スリップサイン露出)までは夏用タイヤとして使用できる」としています。一方、ブリヂストンは、夏タイヤと比べると止まりにくく、制動距離も長くなりやすいため、そのままの使用はあまりおすすめできないとしています。スリップサイン直前の制動距離の差は、こちらの記事で一次資料をもとに検証しています。
「50%」の根拠|保安基準にはなく、10県の規則に書かれている
結論から言うと、全国一律の法令で「冬用タイヤは溝50%まで」と定めているものは、今回確認した範囲では見つかりませんでした。トーヨータイヤも、スタッドレスの使用限度は「夏用タイヤのように道路運送車両の保安基準には定められていません」と説明しています。確認できたのは、次の2つです。
📜 保安基準の細目告示 第89条第4項第2号(国交省掲載の2025.1.10版・要約)
空気入りゴムタイヤの滑り止めの溝は、接地部の全幅にわたる凹部(サイピング、プラットフォーム及びウエア・インジケータの部分を除く)のいずれの部分でも1.6mm以上の深さを有すること。深さの判定はウエア・インジケータ(スリップサイン)で判定してもよい。
つまり、保安基準が定めるのは1.6mmで、プラットホームの部分は、この溝の深さの測定から除かれています(表記は「プラットフォーム」)。最新の告示は国土交通省のページで確認してください。
📜 道路交通法 第71条第6号(運転者の遵守事項)
前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項。
雪道の滑り止めの措置は、この規定にもとづき、各都道府県の公安委員会が規則(施行細則・道路交通規則)で定めています。JATMAは、沖縄県を除く各都道府県の規則の抜粋(2026年8月現在)を掲載しています。当サイトでその46都道府県分の抜粋を確認したところ、摩耗の条件が書かれているのは12県で、うち「50パーセント以上摩耗していないものに限る」などと50%を明記していたのは次の10県でした。
📊 規則に「50%」と書かれている10県(JATMA掲載の抜粋から当サイトが集計)
| 県 | 規則と条項(JATMAの表記) | 摩耗の条件の書き方(抜粋) |
|---|---|---|
| 岩手県 | 道路交通法施行細則 第14条第6号 | 雪路用タイヤとして製作されたもので接地面の突起部が50パーセント以上摩耗していないものに限る |
| 宮城県 | 道路交通規則 第14条第1号 | 接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る |
| 秋田県 | 道路交通法施行細則 第11条第5号 | 接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る(秋田県警察の全文で直接確認) |
| 山形県 | 道路交通規則 第15条第1号 | 接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る |
| 福島県 | 道路交通規則 第11条第1号 | 接地面の突出部の摩耗が50パーセント以下のものに限る(JATMAの抜粋の表記) |
| 石川県 | 道路交通法施行細則 第12条第1号 | 接地面の突出部が五十パーセント以上摩耗していないものに限る |
| 福井県 | 道路交通法施行細則 第16条第2号 | 接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る |
| 兵庫県 | 道路交通法施行細則 第9条第3号 | 接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る |
| 鳥取県 | 道路交通法施行細則 第9条第22項第1号 | 接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る |
| 広島県 | 道路交通法施行細則 第10条第2号 | 接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る |
残る2県は、奈良県が「接地面の突出部が摩耗していないものに限る」(数字なし)、島根県が「効果限界線以上に磨滅していないものに限る」と書いています。それ以外の34都道府県の抜粋には、摩耗の条件の記載がありません。たとえば東京都道路交通規則(第8条第6号)の抜粋は「タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること」で、摩耗の条件はありません。トーヨータイヤも、規則の書き方は「全国共通ではなく、自治体ごとに少しずつ異なる」とし、「プラットホームが露出していない」という基準を満たしていれば、どこへ行っても間違いないと説明しています。
📜 秋田県道路交通法施行細則 第11条第5号(秋田県警察掲載の令和7年12月15日施行版)
積雪又は凍結のため滑るおそれのある道路において、自動車(小型特殊自動車を除く。)又は原動機付自転車を運転するときは、全車輪に滑り止めの性能を有するタイヤ(接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る。)又は鎖を取り付ける等滑り止めの措置を講ずること。この場合において、被けん引車は、そのけん引する自動車の一部とみなす。
条文の書きぶりから、摩耗が進んだスタッドレスは、これらの県では「滑り止めの性能を有するタイヤ」の条件に当てはまらない、と読めます(当サイトの整理)。ただし、実際に取締りでどう適用されるかは確認できませんでした。
違反した場合の罰則
公安委員会の定めた事項に違反した場合は、道路交通法第120条第1項第10号により5万円以下の罰金が定められています。反則金は、道路交通法施行令の別表第六で、公安委員会遵守事項違反として大型車7,000円、普通車・二輪車6,000円、原付等5,000円です(JATMAも同額を案内)。違反点数の表(別表第二)には、この違反の項目は確認できませんでした(e-Govで確認)。
高速道路の冬用タイヤ規制では?
高速道路の冬用タイヤ規制そのものは別の記事で整理しています。NEXCOの案内で、規制時の通行条件としての「溝の深さ」の数字は確認できませんでした。一方、国土交通省の大型車の運送事業者向けの注意喚起(2021年1月掲載)は、「冬用タイヤの溝深さが新品時の50%以上あることを確認」「溝深さ50%を示す『プラットホーム』で、運行前に必ず確認してください」と呼びかけ、交通渋滞等を引き起こした運送事業者等には監査を行い、措置が不十分と判断されれば処分の対象になるとしています。
なお、バス・トラック事業者向けには、国土交通省が2021年1月26日に運輸規則等の解釈及び運用を改正し、整備管理者が、雪道を走る自動車のタイヤの溝の深さが、タイヤ製作者の推奨する使用限度よりすり減っていないことを確認するルールにしました(法令ではなく通達。改正文の注記は、国内メーカー等の冬用タイヤでは使用限度の目安として、新品時の50%でプラットホームが現れるとしています)。現行の本文は国土交通省で確認してください。
溝が残っていても交換を考える理由|ゴムの硬化と年数
ブリヂストンは、スタッドレスが滑りにくいのは柔らかいゴムが路面に密着するからで、使用期間が長くなるにつれてゴムが徐々に硬くなると説明しています。そのため、「たとえ溝の深さが50%以上残っていたとしても、ゴムが硬くなったら十分な性能は得られなくなります」としています。ゴムの硬さは専用の硬度計で測定でき、使用開始から数年たっている場合は、タイヤ専門店での点検がすすめられています。
📊 年数の目安(資料ごとの違い)
| 資料 | 点検の目安 | 交換・使用を避ける目安 |
|---|---|---|
| JAF(スタッドレスの使用限度の解説) | (記載なし) | 一般的には3シーズンから5シーズン。使用環境によって摩耗や劣化の具合が変わる |
| ブリヂストン(スタッドレスの寿命の解説) | 使用開始から5年 | 10年経ったスタッドレスは使うのを避ける(まとめでは「製造後10年が交換の目安」) |
| ブリヂストン(タイヤの寿命の解説) | 製造から5年を過ぎたら専門店で点検 | 製造から10年が経過している場合は交換を推奨 |
| JATMA(基準書2023年版) | 使用開始後5年以上経過したタイヤは点検 | 製造後10年経過したタイヤは交換をお奨め。10年は目安で使用期限ではない |
このように、「5年」を使い始めから数える資料と、製造からと書く資料があります(ブリヂストンの2つの解説でも書き方が違います)。製造年週は、タイヤ側面の4桁の数字で確認できます(読み方はこちらの記事で解説)。スタッドレスの寿命の全体像はこちらの記事にもあります。
よくある質問
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📖 タイヤ側面の「MAX PRESS」は入れる空気圧ではない?指定空気圧との違いとkPa・psiの単位を一次情報で解説
まとめ
タイヤ側面の小さな矢印は、スタッドレスでは溝の中のプラットホームの位置を示す目印で、プラットホームは新品の溝が50%すり減ると現れる、冬用タイヤの使用限度のサインです。スリップサイン(1.6mm)や向き指定の矢印とは別のものです。「50%」は保安基準の数字ではなく、確認できた範囲では、JATMA掲載の規則の抜粋で10県が条文に書いていました。
冬の前に、①製造年週 ②矢印の延長線上の溝(4か所×4本) ③ひび割れや偏摩耗を確認し、迷ったらタイヤ店に相談してください。
🔗 出典(一次情報・公式資料)
• JATMA「冬道走行とタイヤ」(都道府県の規則の抜粋、2026年8月現在)
• JATMA「タイヤのおはなし 乗用車用タイヤ編」(2022.2)
• JATMA「自動車用タイヤの選定、使用、整備基準 乗用車用タイヤ編」2023
• ブリヂストン タイヤセーフティーレポート「スタッドレスタイヤの「プラットホーム」って何?」(2012年)
• ブリヂストン「取り付ける向きが決まっているタイヤとは?見分け方を解説」
• トーヨータイヤ ON THE ROAD「スタッドレスタイヤの”使用限度”の根拠とは?」
• トーヨータイヤ ON THE ROAD「スタッドレスタイヤの「プラットホーム」を見たことありますか?」
• JAF「スタッドレスタイヤの使用限度と正しい保管方法とは?」
• JAF「タイヤ交換の目安はいつ?交換が必要なサインや寿命を長持ちさせる方法を解説」
• 国土交通省「冬用タイヤの溝深さに注意!」(大型車向け、2021年掲載)
• 国土交通省 報道発表「冬用タイヤの安全性を確認することをルール化しました」(2021年1月26日)
• 秋田県警察「秋田県道路交通法施行細則(全文)」令和7年12月15日施行


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