夏の駐車場で、車内にモバイルバッテリーを置いたまま買い物に行く。「少しの間だから」と思いがちですが、NITE(製品評価技術基盤機構)は、暑い日の車内にリチウムイオン電池の製品を放置しないよう、繰り返し呼びかけています。ポータブル電源も同じリチウムイオン電池の製品です。
この記事では、NITEの2026年7月の発表資料、JAFの車内温度テスト、消防庁・東京消防庁、経済産業省、国土交通省などの公開情報をもとに、車内で起きた事故の内訳、車内の温度、ポータブル電源の注意点、車を降りるときの行動を整理しました。YouTubeで反応のよかったショート動画の内容を、最新の資料で詳しく解説した記事です。リチウムイオン電池の事故全般やPSEマーク、処分の方法は、当サイトの解説記事もご覧ください。
📋 この記事の要点
✔ NITEの集計(2021〜2025年)で、自動車内でのリチウムイオン電池搭載製品の事故は124件。内訳はモバイルバッテリー49件(39.5%)、電動工具21件、ポータブル電源13件(10.5%)
✔ モバイルバッテリーの車内事故49件のうち、38件は「充電中でも使用中でもない」ときに起きている(NITE)。置かれていた時間や場所の内訳は、資料には示されていない
✔ JAFのテスト(気温35℃・2012年8月)では、車内最高57℃・ダッシュボード最高79℃(黒い車)。春先(外気23.3℃)でもダッシュボード付近は70.8℃。Ankerは使用0〜40℃・保管0〜35℃と案内(同社製品の例)
✔ NITEは「事故は真夏以外でも、天気の良い暑い日に発生」と指摘。快晴・気温30℃の日(2022年10月)、駐車から約2時間後に車内で出火した事例がある
✔ ポータブル電源は、NITEが「モバイルバッテリーと同様の注意」と案内。経産省のFAQは、交流100Vを出力できるポータブル電源を、PSEマークの対象となるモバイルバッテリーとしては扱わない、と整理している
🎬 動画で見る(ショート)
この記事の元になった、かーぎーくんのショート動画です。動画では触れられなかった詳しい内容や条文・公式情報は、このあと記事で確認できます。
▶ YouTubeで見る(YouTube「くるまのかーぎーくん」)
・動画の「リコール対象の事故は5年で363件」は、NITEの2025年6月の発表(2020〜2024年、リチウムイオン電池搭載製品全体)の数字です。2026年7月の発表では、2021〜2025年で453件に更新されています(モバイルバッテリーに限ると69件)。
・消防庁の調査は、動画で紹介した2026年1月公表分に続いて、2026年3月26日に令和7年(1〜12月)分が公表されました(本文で紹介します)。
・動画の「使用は40度まで、保管は35度まで」はAnker社の案内です。他社の製品やポータブル電源にそのまま当てはまるとは限りません。
📑 目次
1. 車内で起きた事故は124件。内訳をNITEの集計で見る
2. 車内は何℃になる?JAFの2つのテストとメーカーの温度の目安
車内で起きた事故は124件。内訳をNITEの集計で見る
NITEは2026年7月15日の発表で、2021〜2025年の5年間に通知を受けたリチウムイオン電池搭載製品の事故2,140件のうち、自動車内で起きたものが124件あったと公表しています(割合は当サイトで計算すると約5.8%)。製品別ではモバイルバッテリーが49件(39.5%)で最多、次いで電動工具21件(16.9%)、ポータブル電源13件(10.5%)、スピーカー6件、照明器具5件でした。

充電中でも使用中でもないときが93件
📊 車内の事故124件・モバイルバッテリー49件の「事故のときの状態」(NITE 別紙1 表3・表4)
| 事故のときの状態 | 車内の事故(全製品124件) | うちモバイルバッテリー(49件) |
|---|---|---|
| 充電中 | 16件 | 6件 |
| 使用中 | 12件 | 5件 |
| 充電中かつ使用中 | 1件 | 表に記載なし |
| 充電中や使用中ではない | 93件 | 38件 |
| 不明 | 2件 | 表に記載なし |
「充電中」には、充電直後(約1時間以内)も含まれます。表は、車内の事故のうち充電も使用もしていないときが大きな割合を占めていることを示しています。
車内以外も含めたモバイルバッテリー全体では、NITEの事故件数は2021年51件から2025年192件へ、3倍以上に増えました。消防庁が把握した出火件数も、令和4年122件、令和5年182件、令和6年290件、令和7年482件(前年比約7割増)と増えています。集計の主体が違うため、両者の件数は足したり比べたりできません。
消防庁の令和7年の調査で、モバイルバッテリーの出火原因として示された件数は、外部衝撃41件、高温下での使用・保管23件、製品の欠陥18件、分解11件、充電方法の誤り11件などでした(原因別の合計は105件で、出火482件の一部です)。消防庁は、ポータルサイトで「車内、かばんの中や布団の中など」での「高温下での放置・使用」を主な出火原因の一つとして説明しています。
車内は何℃になる?JAFの2つのテストとメーカーの温度の目安
JAFは、車内の温度を測ったテストを2つ公開しています。どちらも車の中の空気やダッシュボードなどの温度で、電池本体の温度ではありません。
📊 JAFユーザーテスト(夏): 2012年8月22・23日・埼玉県戸田市・気温35℃・ミニバン5台・正午から4時間
| 車両の条件 | 車内最高 | 車内平均 | ダッシュボード最高 |
|---|---|---|---|
| 対策なし(黒) | 57℃ | 51℃ | 79℃ |
| 対策なし(白) | 52℃ | 47℃ | 74℃ |
| サンシェード装着 | 50℃ | 45℃ | 52℃ |
| 窓開け(3cm) | 45℃ | 42℃ | 75℃ |
| エアコン作動 | 27℃ | 26℃ | 61℃ |
JAFは、サンシェードや窓開けでは車内温度の上昇を防げないとまとめています。ダッシュボードに置いたスマートフォンは高温に耐えられず、一時的に使用不能になりました。

春先でも高温になる(JAF・2007年4月)
2007年4月26日のテストでは、外気温が最高23.3℃の日に、ダッシュボード付近が70.8℃、フロントガラス付近が57.7℃、運転席の顔付近が48.7℃になりました。NITEも、事故は「真夏以外でも、天気の良い暑い日に発生している」と指摘し、2026年のチェックリストでは「暑い日はダッシュボードの上だけでなく、座席の上などの車内全体が高温になる」としています。
メーカーが示す温度の目安(Ankerの例)
Anker Japanは、モバイルバッテリーの使用温度範囲を0〜40℃、保管温度範囲を0〜35℃と案内しています(35℃以下の涼しく乾燥した環境がおすすめ。2025年2月公開)。JAFの夏のテストで、車内の最高温度はエアコン作動(27℃)以外の4条件で45〜57℃でした。つまり、車内の温度は、この範囲を上回る場合があるということになります。
NITEの事故事例で見る「少しの間」「真夏だけ」ではない
📊 NITEが公表した、自動車内に置いたモバイルバッテリーの事故事例
| 発生 | 状況 | NITEの記載 |
|---|---|---|
| 2021年8月(鹿児島県) | 車内に置いたモバイルバッテリー付近から出火 | 焼損が著しく原因は特定できず。約8年の使用で劣化していたことに加え、高温の車内に置かれていたことから、電池セルが異常発熱した可能性(2024年7月発表) |
| 2022年10月(兵庫県) | 屋外駐車場の車内に、充電コードのみ接続して置いた。11時頃に駐車して車を離れ、13時頃に出火。天気は快晴・気温30℃ | 高温の自動車内に放置していたことが要因の一つと推定(2023年6月発表) |
| 2023年8月(熊本県) | 自動車内でモバイルバッテリーを焼損する火災 | 詳細な事故原因の特定には至らず、電池セルが異常発熱し発火したと推定(2025年6月発表) |
| 2024年7月(滋賀県) | 店舗の駐車場で、車内に置いていたモバイルバッテリーと周辺を焼損 | セルが内圧上昇による膨張で破裂し、噴出した可燃性ガスに引火したと推定(2026年7月発表) |
消費者庁の2026年9月17日付のポスターも、「店舗の駐車場で、炎天下の乗用車のダッシュボード上にモバイルバッテリーを置いていたところ、火災が発生した」という事例を紹介しています(消費者庁の事故情報データバンクに寄せられた情報で、事実関係・因果関係が確認されていないものを含みます)。
これらは個別の事故で、「車内に置けば必ず発火する」という意味ではありません。原因もNITEが「推定」したものです。一方で、NITEが示す行動はシンプルで、「車を離れるときは、リチウムイオン電池を使用している製品を車内に放置しない」ことです。2022年10月の事例では、駐車から出火まで約2時間でした。何分までなら安全かという基準は、確認できた公的資料にはありません。
ポータブル電源は?モバイルバッテリーとの共通点
NITEの集計では、ポータブル電源の事故は2021〜2025年に147件(年別14・21・28・41・43件)。車内の事故でも13件ありました。消防庁の調査でも、令和7年のポータブル電源からの出火は51件でした。
📊 NITEが示すポータブル電源の注意点(2024年8月の注意喚起)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本の考え方 | リチウムイオン電池を使うポータブル電源は、モバイルバッテリーと同様の注意が必要。総エネルギー量が大きい製品は事故時の発熱量も大きくなるため、大容量のものはより注意 |
| 衝撃 | 落としたりして衝撃を与えない。強い衝撃の後に発熱・変形などの異常を感じたら、すぐに使用を中止して販売事業者などの窓口に相談 |
| 温度・保管 | 高温環境下での使用は控える。長期間使わないときは、箱に入れて直射日光の当たらない冷暗所に保管 |
| 屋外 | 防水・防塵性能のある製品の使用を検討(事例: 屋外で充電中、覆いが不十分で雨水が浸入し短絡した可能性のある出火) |
| リコール | リコール品もある。使用前に、メーカーのお知らせやリコール情報を確認 |
エンジン式の携帯発電機とは別物
同じNITEの注意喚起には、ガソリンなどで動くエンジン式の携帯発電機の事故も載っています。こちらは一酸化炭素中毒の危険があり、屋外であっても自動車内やテント内で使用すると屋内と同等の危険性があるとされています。バッテリー式のポータブル電源とは別の製品です。
PSEマークとの関係
経産省のFAQによると、モバイルバッテリーは電気用品安全法の規制対象で、2018年2月1日以降は丸形のPSEマークがないものは販売できません(経過措置は2019年1月31日まで)。一方、交流100Vを出力できるポータブル電源は、「モバイルバッテリーとして扱わず非対象」と整理されています。ポータブル電源が他の法令や規格でどう扱われるかは、この記事では確認していません。PSEマークの有無だけで安全を判断せず、販売元の連絡先・日本語のサポート・リコール情報・取扱説明書の使用温度を確認してください。
なお、車載で使うジャンプスターターは、直流5Vの出力端子があり電子機器の外付け電源にも使えるものについて、同FAQが扱い方を示しています(本体にキャパシタや保護装置があるものは非対象、クリップコード側にだけ保護装置があるものは対象)。
車を降りるとき・異常に気づいたとき・買うときの確認

車を降りるとき
NITEは、車を離れるときは車内に放置しないこと、カバンの中でも直射日光の当たる場所に放置しないこと、落とす・強く押す・硬い物を重ねるなどの衝撃や圧力を避けることを挙げています。東京消防庁の2024年7月の発表では、令和5年中のリチウムイオン電池搭載製品の火災167件(過去最多・速報値)のうち、非充電中(待機中)が65件で、熱がこもりやすい鞄に入れていたモバイルバッテリーからの出火なども起きていました。
車内で充電するとき
同じ東京消防庁の発表では、出火時の状況は「充電中」が82件で最多でした。NITEは、安全な場所で目の届くところで充電する(外出時・就寝時の充電を避ける)、指定された充電器を使うとしています。2022年10月の事例では、充電コードをつないだ状態で車を離れていました(NITEが要因として挙げているのは高温の車内への放置です)。
異常に気づいたとき・発火したとき
充電できない、不意に電源が切れる、充電中に以前より異常に熱い、膨らんで変形している、焦げたにおいや化学薬品のようなにおいがする、強い衝撃の後に変形している。こうした異常があれば、NITEは使用を中止し、金属缶や土鍋など燃えない容器に入れて、販売店やメーカーに相談するよう案内しています。膨らんだ電池を押し戻して発火した事故もあります(詳しくは膨らんだバッテリーの対処の記事)。
発火したときは、煙や炎が出ている間は近寄らず、身の安全を確保して周囲に知らせ、119番通報します。モバイルバッテリーのような小型の製品は、火花が収まってから消火器や大量の水で消火でき、消火後は可能な限り水没させた状態で消防に伝えます。対処が難しいときは無理をせず119番通報してください(NITE・消防庁)。
買うときの確認
リコール対象の製品による事故は、2021〜2025年で453件(リチウムイオン電池搭載製品全体)あります。購入前と購入後に、NITE SAFE-Liteや消費者庁リコール情報サイトで確認できます。NITEのチェックリストには、他の類似製品と比べて極端に安くないか、販売元の連絡先と日本語サポートがあるか、PSEマークの近くに事業者名があるか、も挙げられています。国民生活センターも、製造・販売元や型式が明示されていない商品の購入は避けるよう呼びかけています。
飛行機に乗るとき(2026年4月24日から)
車で空港に向かうときは、国土交通省のルールも確認してください。2026年4月14日の発表で、同月24日から機内持込みのルールが追加されました。
📊 国土交通省「モバイルバッテリーの機内持込みのルール」(2026年4月24日〜)
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 預け入れ荷物 | 預入(受託)手荷物に入れることは禁止。必ず機内に持ち込む |
| 容量 | ワット時定格量160Whまで。160Whを超えるものは持込み禁止 |
| 個数 | 2個(160Wh以下)まで(4月24日からの追加) |
| 機内での充電 | 機内でモバイルバッテリー自体に充電しない。モバイルバッテリーから他の電子機器にも充電しない(国交省の資料では、この項目は罰則の対象として挙げられていない項目。「しないでください」と記載) |
| 保管場所 | 座席上の収納棚に入れず、座席ポケットなど手元に保管。端子の短絡(ショート)も防ぐ |
航空会社によっては、より厳しいルールがあります。国交省の資料では、リチウムイオン電池を内蔵し、他の電子機器を充電する目的のものを対象としています。ポータブル電源を飛行機で運べるかは、容量(Wh)と、国土交通省・航空会社の最新の案内で個別に確認してください。鉄道・高速バス・宿泊施設などは、事業者ごとにルールがあります(NITE別紙4)。
よくある質問
まとめ
(1)NITEの集計では、2021〜2025年に車内で起きたリチウムイオン電池製品の事故が124件あり、モバイルバッテリーが49件、ポータブル電源が13件でした。モバイルバッテリーの車内事故のうち38件は、充電中でも使用中でもないときです。(2)JAFのテストでは、車内の温度は夏だけでなく春先でも高くなります。Ankerは使用0〜40℃・保管0〜35℃と案内しており、車内の温度はこの範囲を上回る場合があります(ただし、電池本体の温度や発火の基準を示した資料は確認できませんでした)。(3)ポータブル電源も「モバイルバッテリーと同様の注意」です。(4)車を離れるときは持ち出し、異常があれば使用を中止し、購入前後にリコール情報を確認します。飛行機では2026年4月24日から、持込みは2個まで、機内での充電はしないルールです。
「少しの間だから」という判断を支える公的な基準は、見つかりませんでした。車を降りるときに持ち出す、という行動がいちばんシンプルな備えです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。製品ごとの使用・保管温度や異常時の対応は異なります。必ずお手持ちの製品の取扱説明書やメーカーの案内でご確認ください。法令や航空会社のルールは変更されることがあります(2026年10月時点)。事故件数は、NITE・消防庁・東京消防庁でそれぞれ集計の対象や定義が異なります。
参考(一次情報・公的機関・JAF・メーカー): NITE 『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を(2026年7月15日)/NITE 同(2025年6月26日)/NITE 真夏の製品事故アラート(2024年7月12日)/NITE 夏に気を付けたい製品事故(2023年6月27日)/NITE PSマガジン(2024年8月27日・ポータブル電源)/JAF 真夏の車内温度/JAF 春の車内温度/Anker Japan モバイルバッテリーの安全な使い方/消防庁 リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果(令和7年)/消防庁 リチウムイオン電池総合対策ポータルサイト/東京消防庁 リチウムイオン電池搭載製品からの出火が過去最多/経済産業省 モバイルバッテリーに関するFAQ/国土交通省 モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルール/消費者庁 注意喚起ポスター/国民生活センター 見守り新鮮情報 第514号/消費者庁リコール情報サイト/NITE SAFE-Lite
図はすべて自作のイラストです(AI生成なし)。図の件数・温度は、NITE・JAFの公表値をもとにしています。


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