新車のカタログや販売店の店頭で、「JNCAPファイブスター獲得!」といった表記を見かけたことはないでしょうか。あるいは、雑誌やウェブの車種紹介記事で、星の数だけが紹介されているのを目にしたことがある人もいるかもしれません。これは、その車が国の第三者機関による厳格な安全性能評価で最高評価を得たことを示すもので、メーカーの自己申告ではない客観的な安全性の指標として、車選びの重要な判断材料になります。しかし、「星の数が多ければ良い車」という漠然とした理解にとどまっている人も多いのではないでしょうか。この記事では、JNCAP(自動車アセスメント)の評価の仕組み、星の数の意味、そして意外と知られていない「年度をまたいだ比較には注意が必要」という落とし穴まで、詳しく解説します。結果の具体的な確認方法といった実用的な情報もあわせて紹介します。
JNCAPは、単なる衝突テストの結果発表にとどまらず、予防安全性能・衝突安全性能・事故後の対応力という、車の安全性を多角的に評価する仕組みです。カタログのスペック表だけでは見えてこない「本当の安全性」を知るための強力なツールとして、ぜひ活用方法を身につけておきましょう。
📋 この記事でわかること
- JNCAP(自動車アセスメント)とは何か、運営主体と目的
- 評価を構成する3つの柱と、星1〜5つの決まり方
- 「ファイブスター」を獲得するための具体的な条件
- 結果の確認方法と、クラッシュテスト映像の見方
- 星の数だけで判断してはいけない理由
JNCAP(自動車アセスメント)とは何か
JNCAP(Japan New Car Assessment Program、自動車アセスメント)は、国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が共同で実施している、日本の新車安全性能評価制度です。メーカーが独自にアピールする安全性能とは異なり、国が主体となって統一された試験条件のもとで各車種を評価し、その結果を消費者に公表することで、①消費者がより安全な車を選べるようにする、②メーカーの安全な車づくりを促進する、③安全な車の普及を後押しする、という3つの目的を掲げています。日本国内で販売されている車種を対象に、原則として同一の条件・方法で試験が行われるため、メーカーやブランドをまたいだ横並びの比較ができるのが大きな特徴です。カタログの謳い文句だけでは判断しにくい「実際の安全性能」を、客観的な指標で確認できる点が、この制度の最大の価値といえるでしょう。
この制度が果たしてきた役割は、単なる情報公開にとどまりません。メーカー各社が「少しでも良い評価を得たい」と競い合うことで、結果的に業界全体の安全技術の底上げにつながってきたという側面もあります。実際、JNCAPの運用開始から現在までの間に、衝突被害軽減ブレーキをはじめとする予防安全技術は、一部の高級車だけの装備から、軽自動車を含む幅広い車種の標準装備へと急速に普及しました。消費者が安全性能を重視して車を選ぶようになったこと自体が、メーカー側の技術開発を後押しする好循環を生み出してきたといえるでしょう。
評価を構成する3つの柱
JNCAPの総合評価は、大きく分けて3つの評価項目から構成されています。ひとつ目は「予防安全性能評価」で、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱抑制といった、事故そのものを未然に防ぐための運転支援技術の性能を評価します。ふたつ目は「衝突安全性能評価」で、実際に衝突が起きてしまった場合に、乗員や歩行者をどれだけ守れるかを評価します。そして3つ目が「事故自動緊急通報装置」の評価で、エアバッグが展開するような大きな事故が起きたときに、自動的にコールセンターへ通報する仕組みが備わっているか(ナスバの説明による)を評価します。この3本柱を総合したスコアによって、最終的な星の数が決まる仕組みになっています。
この3本柱は、事故のプロセス全体をカバーするように設計されている点が特徴です。予防安全性能評価は「事故が起きる前」、衝突安全性能評価は「事故が起きた瞬間」、そして自動緊急通報装置の評価は「事故が起きた後」の対応力を、それぞれ表しています。事故そのものを防ぐ努力と、万が一事故が起きてしまった際の被害軽減・迅速な救助という、時系列に沿った3段階の安全性を総合的に評価する仕組みになっているというわけです。
ランク付けの仕組み、A〜Eから星1〜5つへ
予防安全性能と衝突安全性能は、それぞれ得点に応じてA・B・C・D・Eの5段階のランクに分類されます。Aがもっとも高い評価で、Eに近づくほど評価が低くなる仕組みです。この2つの合計得点をもとに、星1つから星5つまでの「総合評価」が決まります。なお、2019年度までは予防安全性能や衝突安全性能などがそれぞれ別々に評価されており、総合評価が使われているのは2020年度からです(ナスバ・国土交通省)。星5つ(ファイブスター)が、現時点でのJNCAPにおける最高評価であり、多くのメーカーが目指す到達点となっています。
「自動車安全性能 2026」では、ランクと星の数は次の得点で決まります(ナスバ「自動車アセスメントのご案内」)。ただし、星5つには合計得点に加えて、予防安全性能・衝突安全性能の両方がAランクで、事故自動緊急通報装置を備えていることが必要です。さらにAランクを取るには、得点だけでなく各評価項目でレベル4以上であることも必要です(ナスバ「よくある質問」)。
| ランク | 予防安全性能(89.6点満点) | 衝突安全性能(100点満点) |
|---|---|---|
| A | 72.48点以上 | 84.63点以上 |
| B | 52.48点以上72.48点未満 | 71.89点以上84.63点未満 |
| C | 34.72点以上52.48点未満 | 59.07点以上71.89点未満 |
| D | 17.28点以上34.72点未満 | 46.33点以上59.07点未満 |
| E | 17.28点未満 | 46.33点未満 |
| 総合評価 | 予防安全性能と衝突安全性能の合計得点 |
|---|---|
| ★★★★★ | 157.11点以上 |
| ★★★★ | 124.37点以上157.11点未満 |
| ★★★ | 93.79点以上124.37点未満 |
| ★★ | 63.61点以上93.79点未満 |
| ★ | 63.61点未満 |
この段階的な評価方式のメリットは、「合格・不合格」という単純な二択ではなく、車種ごとの安全性能の「差」を細かく可視化できる点にあります。同じ星4つの評価でも、得点の内訳を見ると、予防安全性能に強みがある車種と、衝突安全性能に強みがある車種とに分かれることがあります。総合評価の星の数だけを見て終わりにするのではなく、可能であれば内訳スコアまで確認することで、自分が重視したいポイントに合った車種を見極めやすくなります。
💡 ポイント
2026年度(自動車安全性能 2026)のJNCAPでは、予防安全性能評価89.6点満点、衝突安全性能評価100点満点、事故自動緊急通報装置8点満点の合計197.6点満点で評価されています。2024年度と2025年度は、予防安全性能85.8点満点、合計193.8点満点でした。2026年度は、衝突被害軽減ブレーキに、交差点で直進してくる二輪車の前方を自車が右折した場合と、交差点で自車の直進時に右から四輪車が進入してくる場合の評価が加わりました。ファイブスターを獲得するには、予防安全性能評価・衝突安全性能評価の両方でA評価を得た上で、事故自動緊急通報装置を備えていることが必要です。得点配分は年度によって見直されることがあり、ナスバも、評価内容の変更に伴い配点が変わるため、過去に実施した車種との点数の大小は直接比較できないと案内しています。最新の基準は、都度NASVA公式サイトで確認するのが確実です。
衝突安全性能評価の中身
衝突安全性能評価は、実際に車を衝突させる実車試験によって行われます。代表的な試験には、車の前面全体を固定壁に衝突させる「フルラップ前面衝突試験」、衝突相手の車との部分的な衝突を想定した「新オフセット前面衝突試験」(2024年度から。自車の乗員の保護に加えて、衝突相手の車への加害性の低減も評価します)、側面から衝突を受けた際の乗員保護性能を見る「側面衝突試験」などがあり、それぞれで乗員がどれだけ守られるかを測定します。あわせて、万が一歩行者と衝突してしまった場合に、頭部への衝撃をどれだけ緩和できるかを評価する「歩行者頭部保護性能試験」に加えて、脚部(膝部・脛部・大腿部)の保護性能も評価されています。2026年度からは、新オフセット前面衝突で後席の子どもの乗員が受ける衝撃なども、総合評価とは別に情報提供されるようになりました(ナスバ)。これらの試験結果は、単なる合否ではなく、細かく採点され、車種ごとの安全性能の違いを数値として比較できるようになっています。
これらの試験には、体格や年齢の異なる複数種類のダミー人形(クラッシュテストダミー)が使用され、頭部・頸部・胸部・腹部・大腿部など、身体の各部位にかかる衝撃データを詳細に計測します。単に「壊れにくい車」を評価するのではなく、「衝突時に車内の乗員がどれだけ生存・軽傷で済むか」という、人体への実際の影響に着目した評価方法である点が、JNCAPの衝突安全性能評価の大きな特徴です。試験の様子は動画で公開されていることも多く、実際にボディがどのように変形し、車内空間(サバイバルスペース)がどの程度確保されているかを視覚的に確認することができます。文章や数値だけでは伝わりにくい迫力を、実際の映像で体感してみることをおすすめします。
予防安全性能評価の中身
予防安全性能評価では、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)、車線逸脱抑制(レーンキープアシストなど)、高機能前照灯、ペダル踏み間違い時加速抑制といった、事故を未然に防ぐための運転支援技術の性能が評価されます(国土交通省・ナスバ「自動車安全性能2025」パンフレットの評価項目)。以前の記事では後方視界情報提供装置も挙げていましたが、ナスバの沿革では、後方視界情報の試験は2023年度に終了したと記されています。衝突被害軽減ブレーキの試験は、前方の歩行者(昼間・夜間)、前方の自転車、交差点での右折時の対向車、交差点での右左折時の横断歩行者などについて行われ、2026年度からは、交差点で直進してくる二輪車の前方を自車が右折した場合と、自車の直進時に右から四輪車が進入してくる場合が加わりました。これらの機能について詳しく知りたい場合は、当サイトの関連記事もあわせて参考にしてください。カタログには「衝突被害軽減ブレーキ搭載」としか書かれていなくても、実際の検知性能・作動条件には車種ごとに差があるため、JNCAPの予防安全性能評価を確認することで、その性能差を客観的に把握できます。
試験は、実際の交通環境を模した専用のテストコースで行われ、模擬的な歩行者・自転車・車両を再現したダミーターゲットを使って、様々な速度域・接近角度でシステムが正しく作動するかを検証します。昼間だけでなく夜間を想定した試験条件が設けられている項目もあり、カタログスペックだけではわからない「実際の作動精度」を客観的な数値として比較できるのが、この評価の強みです。同じ「自動ブレーキ搭載」という表記でも、作動する速度域や検知できる対象は車種ごとに異なるため、評価結果で確認する意味があります。なお、ナスバの「よくある質問」によると、試験方法には路面や気象条件などの試験条件が定められていますが、雨・雪などの気象条件での評価はしておらず、後付けの安全装置も自動車アセスメントの評価対象ではありません。
星の数だけで判断してはいけない理由
⚠️ 注意
JNCAPの評価基準・採点方法・満点の点数配分は、年度ごとに見直されることがあります。たとえば、ある年度に「ファイブスター」を獲得した車種が、翌年度以降の基準で同じ試験を受けたら同じ評価を得られるとは限りません。異なる年度で発表された結果同士を単純に星の数だけで比較するのではなく、できるだけ同じ年度・近い時期に発表された結果同士で比較することをおすすめします。また、評価はあくまで試験時の特定グレード・仕様に基づくものであり、購入予定の車が試験対象と全く同じ仕様とは限らない点にも注意が必要です。
メーカー間の切磋琢磨がもたらしたもの
JNCAPが果たしてきたもうひとつの重要な役割は、メーカー間の健全な競争を促してきたことです。ある年度に他社が高評価を獲得すると、翌年度以降、競合他社もこぞって安全性能の向上に力を注ぐという流れが、これまで繰り返し見られてきました。結果として、消費者は年々進化する安全技術の恩恵を、比較的手頃な価格帯の車種でも受けられるようになっています。かつては高級車の専売特許だった衝突被害軽減ブレーキが、今では軽自動車にも標準装備されるようになった背景には、こうした評価制度による健全な競争があったといえるでしょう。カタログスペックの数字だけでは見えてこない、こうした業界全体の努力の積み重ねを知っておくと、車選びの視点もまた少し広がるはずです。
自動車保険の割引との関係
保険会社の中には、衝突被害軽減ブレーキなどを備えた車に割引を設けているところ(ASV割引などと呼ばれるもの)がありますが、対象となる型式や条件、割引率は、保険会社や時期によって異なります。当サイトでは、JNCAPの評価と保険料の割引との関係を示す一次資料を確認できておらず、割引の条件がJNCAPの星の数や評価結果に基づいているとも確認できていません。以前の記事には、JNCAPの評価が保険料に反映されるかのような記述がありましたが、根拠を確認できないため削除しました。契約・更新の際は、自車の安全装備が割引の対象かどうかを、保険会社に直接確認するのが確実です。
試験対象車種はどう選ばれるのか
ナスバの「よくある質問」によると、JNCAPの試験対象となる車種は、販売台数の多い車種などを勘案して、国土交通省が開催する自動車アセスメント評価検討会で選定されます。自動車メーカーからの評価の申し出による選定も可能です。すべての新型車が発売と同時に試験を受けるわけではなく、どの車種を試験しているかは、結果の公表まで公開されません。そのため、発売されたばかりの最新モデルについては、まだJNCAPの結果が存在しないケースもあります。そうした場合は、フルモデルチェンジ前の旧型モデルの評価結果や、同じプラットフォーム・安全装備パッケージを共有する姉妹車種の評価結果を参考にするという方法もあります。ただし、車体構造や搭載される安全装備が異なれば評価結果も変わるため、あくまで参考程度にとどめ、正式な結果が公表され次第、あらためて確認することをおすすめします。
また、試験をする車種の数は、予算やメーカーからの申し出の数によって年度ごとに変わります(ナスバ)。そのため、マイナーチェンジ(部分改良)を受けた車種でも、必ずしも再試験が行われるとは限りません。気になる車種がマイナーチェンジを受けた場合は、変更内容が安全性能に関わるものかどうかも含めて、メーカーの発表を確認してみるとよいでしょう。
結果はどこで確認できるのか
JNCAPの評価結果は、NASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)の公式サイト内にある「自動車アセスメント(JNCAP)」のページで、誰でも無料で確認できます。サイト内の検索機能を使えば、ブランド名や車種名、車種区分(乗用車・軽自動車・商用車)などから、該当する車種の評価結果を探すことができます。結果ページでは、総合得点や星の数だけでなく、実際の衝突試験の様子を撮影した映像が公開されている場合もあり、文字や数字だけでは伝わりにくい試験の迫力や、車体の変形具合を実際の映像で確認することができます。新車購入を検討している車種があれば、契約前に一度、公式サイトで結果をチェックしてみることをおすすめします。
また、資料ダウンロードのページでは、過去に実施された試験の結果一覧をまとめたファイルも公開されています。現在販売中の車種だけでなく、過去に生産終了となったモデルの結果も参照できるため、中古車選びの際にも活用できます。スマートフォンからでも問題なく閲覧できるため、ディーラーでの商談中や、中古車販売店の店頭でその場で検索して確認する、という使い方も現実的です。気になる車種名をメモしておき、後日じっくり自宅で確認するという使い方もおすすめです。
海外の同種制度との違い
自動車の安全性能評価制度は、日本のJNCAPだけでなく、世界各国・地域で独自に運用されています。代表的なものに、ヨーロッパの「Euro NCAP」やアメリカの「US NCAP」などがあり、それぞれ試験条件や評価基準が異なります。同じ車種であっても、販売される地域によって仕様(ボディ剛性や安全装備の標準搭載範囲など)が異なる場合があるため、海外の評価結果をそのまま日本仕様車の評価として参考にすることはできません。日本国内で販売されている車の安全性能を知りたい場合は、必ずJNCAPの結果を参照するようにしましょう。
試験速度や衝突角度、使用するダミー人形の種類・体格といった細かな条件が国ごとに異なるため、単純に星の数だけを国際比較することはできません。ナスバによると、各国とも交通事故の実態を調査して、死傷者数の削減につながる事故形態の評価試験を導入しており、国ごとの交通事情や事故実態が異なるため、試験の内容も異なっています。そのため、結果を単純に比較することはできません。輸入車を検討している場合は、その車がJNCAPの試験を受けているか、あるいは海外の評価結果しか公表されていないかを確認しておくと、より正確な安全性能の把握につながります。
車選びでの具体的な活用法
JNCAPの結果を車選びに活用する際は、単に星の数だけを見るのではなく、予防安全性能・衝突安全性能それぞれの内訳スコアまで見比べてみることをおすすめします。たとえば、小さな子供を乗せる機会が多い家庭であれば、側面衝突や歩行者保護の評価が高い車種を重視したり、高速道路での長距離移動が多い場合は予防安全性能(自動ブレーキやレーンキープアシストの性能)を重視したりと、自分のカーライフに合わせた見方ができます。同価格帯・同クラスの車種で迷っている場合、こうした客観的なデータを比較材料に加えることで、より納得感のある1台選びにつながります。
また、家族で複数の候補車種を検討している場合は、それぞれの評価結果を一覧表にまとめて比較すると、違いが視覚的にわかりやすくなります。総合得点だけでなく、「予防安全性能は高いが歩行者保護はやや低い」「衝突安全性能は満点に近いが予防安全性能はまだ発展途上」といった、車種ごとの得意・不得意の傾向を把握できると、単純な星の数比較よりも一歩踏み込んだ判断材料になります。ディーラーの営業担当者に「この車のJNCAP評価はどうですか」と質問してみるのも、有効な情報収集の方法のひとつです。担当者が即答できない場合でも、公式サイトで一緒に確認してもらえば、その場で客観的なデータをもとに話を進めることができます。こうした小さな一手間が、後悔のない車選びにつながります。
チャイルドシートの評価も別途行われている
意外と知られていませんが、JNCAPを運営するNASVAは、車そのものの安全性能評価だけでなく、「チャイルドシートアセスメント」という、市販されているチャイルドシート製品の安全性能評価も別途実施しています。前面衝突を模した試験によって、幼児を模したダミー人形への衝撃をどれだけ緩和できるかを評価し、結果を公表しています。小さな子供を乗せる機会が多い家庭では、車本体の安全性能評価とあわせて、こうしたチャイルドシート単体の評価結果もチェックしてみることをおすすめします。同じNASVAの公式サイト内から、どちらの結果も確認することができます。
チャイルドシートアセスメントでは、使用性(取り付けやすさ・使いやすさ)の評価もあわせて行われており、いくら保護性能が高くても、正しく取り付けられていなければ本来の性能を発揮できません。評価結果には、実際の取り付け作業のわかりやすさに関する採点も含まれているため、初めてチャイルドシートを選ぶ家庭にとっては、車の安全性能評価と同じくらい参考になる情報源といえます。
点数配分の変遷から見るJNCAPの進化
JNCAPは1995年度の運用開始以来、評価項目や配点を段階的に見直しながら、時代の変化に対応してきた制度です。1995年度は、フルラップ前面衝突試験とブレーキ性能試験から始まりました。その後、2014年度に事故を未然に防ぐ「予防安全性能」の評価が始まり、2018年度には事故自動通報装置の評価も加わるなど、評価の対象は広がってきました(ナスバ「沿革」)。これは、自動車の安全技術そのものが「衝突時にいかに乗員を守るか」という受動的な安全性能から、「そもそも事故を起こさない・被害を最小化する」という能動的な安全性能へと重心を移してきた、業界全体の技術トレンドを反映したものといえます。今後も新しい運転支援技術の普及にあわせて、評価項目や配点は継続的に見直されていくと考えられます。
実際、近年では自動駐車機能やドライバーの状態監視システムなど、新しい種類の運転支援技術も次々と登場しており、こうした最新技術をどのように評価に組み込んでいくかも、JNCAPを含む世界各国のアセスメント機関にとって共通の課題となっています。制度そのものが完成形ではなく、今も進化を続けているという点を理解しておくと、毎年発表される評価結果のニュースも、より深く読み解けるようになるはずです。
よくある質問
Q. 軽自動車もJNCAPの評価対象になりますか?
A. はい、軽自動車も評価対象に含まれています。ナスバの車種検索では、乗用車・軽自動車・商用車の区分で車種を探せます。星の数は車格ではなく試験結果で決まりますので、軽自動車も、予防安全性能と衝突安全性能の両方の内訳を確認してみてください。
Q. すべての新車がJNCAPの試験を受けているのですか?
A. 販売されているすべての車種・グレードが必ず試験対象になるわけではありません。試験対象車種の選定は年度ごとの計画に基づいて行われるため、気になる車種の評価結果がまだ公表されていない場合もあります。その場合は、同一メーカーの類似車種や、同じプラットフォームを使う姉妹車の評価結果を参考にするのもひとつの方法です。
Q. 輸入車もJNCAPの評価対象になりますか?
A. はい、輸入車も評価の対象になる場合があります(ナスバの車種検索には、フォルクスワーゲンやMINIなども並んでいます)。ただしナスバによると、試験対象は国内の販売台数の多い車種から順に選定されるため、輸入車が選ばれることはあまり多くありません。輸入車の購入を検討している場合も、まずはNASVAのサイトで評価結果が公表されているか確認してみるとよいでしょう。
Q. 中古車を選ぶ際にもJNCAPの評価は参考になりますか?
A. はい、中古車選びでも参考になります。過去に発表された評価結果はNASVAのサイトで確認できるため、購入を検討している年式・グレードの安全性能をチェックする際に役立ちます。ただし、年式が古いほど、当時と現在で評価基準・試験方法自体が異なる場合がある点には注意しましょう。
Q. JNCAPで低い評価を受けた車は、公道を走ってはいけないのですか?
A. いいえ、JNCAPの評価は法律上の販売可否や車検の合否には直接関係ありません。国が定める最低限の安全基準(保安基準)を満たしていれば、JNCAPの評価に関わらず車を販売・運行することができます。JNCAPはあくまで「基準を満たした上で、どれだけ優れた安全性能を持っているか」を相対的に評価し、消費者の選択の参考にするための制度である、という位置づけを理解しておきましょう。
Q. 評価結果は英語でも公開されていますか?
A. NASVAの公式サイトには、評価結果の概要を英語で紹介しているページも一部用意されています。海外からの駐在員や、日本の中古車を海外へ輸出する事業者にとっても参考になる情報源となっています。ただし、詳細な試験データや最新の個別車種結果については、日本語版のほうが情報量が充実している場合が多いです。
まとめ
JNCAP(自動車アセスメント)は、メーカーの自己申告ではない、国による客観的な安全性能評価制度です。予防安全性能・衝突安全性能・自動緊急通報装置という3本柱から算出される星の数は、車選びの強力な判断材料になりますが、年度ごとに評価基準が見直されることがある点には注意が必要です。カタログの謳い文句だけでなく、NASVAの公式サイトで実際の評価結果・試験映像を確認する習慣をつけることで、より安全で納得感のある1台選びができるようになるはずです。
次に新車・中古車を検討する際は、価格や燃費、デザインといった一般的な比較ポイントに加えて、ぜひJNCAPの評価結果もチェックリストに加えてみてください。数分間の検索で、大切な家族を乗せる車の安全性を客観的なデータで確認できるという意味で、これほど手軽で信頼性の高い情報源はなかなかありません。星の数の裏側にある評価項目まで理解しておくことで、カタログの表面的な情報に惑わされない、賢い車選びができるようになるはずです。大切な家族や自分自身の命を守る車だからこそ、こうした客観的なデータをしっかり活用していきましょう。
出典・参考情報: 独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)「守る(JNCAP)」公式サイト、NASVA「予防安全性能アセスメントの概要」「衝突安全性能評価の概要」「衝突試験(前面・側面・後面)の試験方法及び評価方法」「歩行者頭部保護性能試験の試験方法及び評価方法」、国土交通省・NASVA自動車アセスメント関連資料、NASVA「自動車アセスメントのご案内」「よくある質問」「事故自動緊急通報装置の試験方法及び評価方法」、国土交通省・NASVA「自動車安全性能2025」パンフレット(2026年6月発行)。点数・評価項目の確認日は2026年10月26日です。
本記事は一般的な制度の解説を目的としたものであり、評価基準・点数配分・対象車種・試験方法は年度によって変更される場合があります。最新かつ正確な評価結果、および個別車種の詳細データは、必ずNASVA公式サイトにてご確認ください。
アイキャッチ画像出典: Crash-test-with-airbag-and-safty-belt.jpg by Transport For NSW (CC BY-SA 4.0), via Wikimedia Commons


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