足のにおいは、洗っても気になる、靴に染み付く、家族に指摘される、と悩みの多いテーマです。この記事では、論文の要旨、日本皮膚科学会の「皮膚科Q&A」、同学会の多汗症診療ガイドライン、環境省のシンポジウム資料で確認できることだけを整理します。当サイトは医療機関ではなく、ここに書いたことは診断や治療の代わりにはなりません。
💡 子どもの足・靴のにおいに使うグッズ(靴スプレー・除湿剤・インソール・靴下・足洗いソープなど14製品)を、価格と商品ページ・メーカー公式の表示で比べた記事は、こちらです。
この記事で分かること
- においの直接の成分はイソ吉草酸で、ロイシンという材料と細菌が関わる(ただし、材料と菌の説明は論文によって違う)。
- 足のにおいを訴えて皮膚科を受診した患者には、多汗・点状角質融解症・足白癬が合併することが多いと、皮膚科の論文の要旨に書かれている。
- 汗が非常に多い場合の診断基準と、足の裏の治療の選択肢は、ガイドラインに整理されている(医師が選ぶもの)。
- 「子どもは汗っかきだからにおう」とは、環境省の資料からは単純に言えない。
- 水虫(足白癬)は、かゆみの有無では判断できない。診断は真菌検査で確定する。
- 日本皮膚科学会は、水虫の予防として、靴は洗って乾かし何足かで回すこと、公共の浴場などの後は足を乾いたタオルで拭いてから靴下・靴を履くことを挙げている(においの対策としての記述ではない)。
足のにおいの正体:2本の論文の要旨を並べる
足のにおいの主な成分は、どちらの論文の要旨でもイソ吉草酸とされています(「〜と考えられる」という書き方の箇所を含みます)。違うのは、その材料と、関わる菌の説明です。
| 出典(要旨で確認) | においの成分 | 材料 | 関わる菌 |
|---|---|---|---|
| Ara Kら、Canadian Journal of Microbiology、2006年(PubMed 16699586) | イソ吉草酸 | 汗に含まれるロイシン | 皮膚の常在菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)が分解する。足のにおいが強い人の足裏の皮膚から枯草菌(Bacillus subtilis)も検出され、においの増加と密接に関係していた |
| 宮本真由美・坪井良治「足の悪臭の原因は?」臨床皮膚科 68巻5号、2014年 | イソ吉草酸(特定悪臭物質の1つ。においの強さは濃度に依存する) | 角質の分解産物から生じるロイシン | 繁殖したCorynebacterium属などの細菌が持つプロテアーゼ(たんぱく質を分解する酵素) |
2本を並べると、「ロイシンからイソ吉草酸ができる」という道筋は共通していますが、ロイシンのもとが汗なのか角質の分解産物なのか、中心の菌が表皮ブドウ球菌なのかCorynebacterium属なのかは、要旨の書き方が違います。どちらの論文も、ここでは要旨(抄録)だけを確認しており、全文は読んでいません。また、Araらの要旨には調査対象者の年齢が書かれておらず、子どもに限った研究かどうかは分かりません(PubMedの索引語には「Adult」が付いており、子どもを対象にした研究ではないとみられます)。なお、この論文の著者の所属は花王で、要旨の後半は、においの生成を抑える香料成分(シトラール・シトロネラール・ゲラニオール)を探した結果の報告です。
皮膚科の論文が挙げる「合併しやすいもの」
宮本・坪井の要旨には、足の臭いを訴えて来院する患者は、高頻度に多汗を合併し、点状角質融解症(pitted keratolysis)や足白癬をしばしば合併すると書かれています。足白癬の患者でにおいが強いのは、2次的に細菌が増殖してイソ吉草酸の産生が増えるためと考えられる、とも書かれています。治療については、Corynebacterium属に対する抗生物質の外用薬や、グラム陽性菌に抗菌作用があるイミダゾール系の抗真菌外用薬が有効、とされています。
これは皮膚科を受診した患者についての記述であり、においがある人全員に当てはまるとは書かれていません。また、ここに出てくる外用薬は、診断のうえで医師が選ぶものです。においの原因を自分で判断して市販薬を選ぶことは、勧めません(当サイトの考え)。
汗が非常に多いとき:多汗症の診断基準と、足の裏の治療
日本皮膚科学会と日本発汗学会の委員による「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」(日本皮膚科学会雑誌 133巻13号 3025-3056頁、2023年12月一部改訂)は、基礎疾患のない原発性局所多汗症の診断基準を次のとおり示しています。
診断基準(ガイドラインの記載)
局所的に過剰な発汗が、明らかな原因のないまま6か月以上みられ、次の6項目のうち2項目以上があてはまる。
- 発症が25歳以下である
- 左右対称に発汗がみられる
- 睡眠中は発汗が止まっている
- 1週間に1回以上、多汗のエピソードがある
- 家族歴がみられる
- それらにより日常生活に支障をきたす
同じガイドラインには、2020年に行われた国内のweb調査(60,969人)で、原発性局所多汗症の有病率が10.0%(腋窩5.9%、頭部・顔面3.6%、手掌2.9%、足底2.3%)だったこと、医療機関の受診経験率は4.6%だったことが紹介されています。また、局所多汗症の治療は、患者本人が困らなければ行う必要はなく、患者自身の希望により始めるべきだとも書かれています。
足底多汗症の治療アルゴリズム(ガイドラインの図4)に挙げられている選択肢は、次のとおりです。
| 治療 | 推奨度 | 保険 |
|---|---|---|
| 水道水イオントフォレーシス療法 | B | 保険請求できる治療(ガイドライン本文) |
| 20〜50%塩化アルミニウムの外用(単純外用またはODT) | C1 | 保険適用外(処置薬として) |
| A型ボツリヌス毒素の局所注射 | C1 | 足底への投与は保険適用外 |
| 内服抗コリン薬、精神(心理療法) | C1 | 本記事では確認していません |
推奨度は、ガイドラインの付表1の基準で、B=行うよう勧められる、C1=行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がないを意味します。つまり、足底多汗症では、水道水イオントフォレーシス以外の選択肢は、十分な根拠があって勧められているわけではありません。
これは医師が重症度や状況に応じて選ぶ治療の一覧で、濃度の調整や手順は、自己判断で真似するものではありません。一方でガイドラインは、汗を直接減らす治療とは別に、汗をかいても生活がしやすくなるような衣類や生活用品を適宜取り入れることにも触れています。この文は、治療を行っても十分な効果が得られない場合の補足として汗の多い人に向けて書かれたもので、においのグッズが含まれるかどうかは書かれていません。靴下や靴のグッズを選ぶことは、その範囲の工夫と考えることもできます(当サイトの解釈)が、グッズに汗やにおいを治す根拠があるという意味ではありません。
「子どもは汗っかき」と言えるか:環境省のシンポジウム資料から
子どもの足のにおいを、「子どもは汗っかきだから」と説明する文章を見かけます。環境省の熱中症対策シンポジウム(2022年7月7日)で、井上芳光氏(大阪国際大学名誉教授)が示した資料「子ども(幼児・園児)の暑熱反応特性と熱中症予防策」には、次の内容があります。
- 7〜16歳の男子の運動時の総発汗量(体表面積あたり)は、低強度の運動では年齢差がみられなかったが、中強度・高強度では思春期を境に大きく増加した。思春期前の児童は発汗機能が未発達とされる。
- 約11歳の子どもと若年成人を比べた自転車運動の実験(測定部位は前額・胸・背・前腕・大腿)で、子どもの発汗量は少なく、とくに多量の発汗が求められる条件で差が目立つとされている。その少なさは、活動汗腺の数ではなく、単一の汗腺あたりの汗出力の低さに起因するとされている。
- 資料の13ページ目のスライドには、子どもは生理学的には「汗っかき」ではないこと、真っ赤な顔をして汗っかきに見えるときは温熱ストレス(深部体温の上昇)が大きくなっていると捉えるべきことが書かれている。
ただし、この資料は熱中症予防の資料で、題名は「幼児・園児」ですが、示されている実験の対象は7〜16歳の男子と約11歳の子どもで、運動時の結果です。足の裏の汗の量を測ったものではなく、足のにおいの原因を説明する資料でもありません。ですから、「子どもの足は汗が多いからにおう」とも、「子どもは汗が少ないから汗は関係ない」とも、この資料からは言えません。言えるのは、資料が、子どもの発汗量の少なさを汗腺の数の違いでなく、1つの汗腺あたりの出力の低さで説明していることまでです。なお、デオナチュレの紹介ページ(deonatulle.com/lp/kids/、2026年10月27日確認)には、生まれたときから汗腺の数は変わらないため子どもも大人と同じ量の汗をかく、という趣旨の説明がありますが、上の資料の内容(運動時の発汗量は、子どものほうが少ない)とは合いません。
においと水虫:日本皮膚科学会の「皮膚科Q&A」から
皮膚科の論文では、においのある足に足白癬(水虫)が合併することがあるとされていました。日本皮膚科学会の「皮膚科Q&A」(白癬)で、足白癬について確認できることを整理します。
症状と病型(Q10・Q11)
| 病型 | Q&Aの記述(要約) |
|---|---|
| 小水疱型 | 足の裏に小さな水ぶくれが生じる。暖かい季節に、はじめは一方の足から症状が出て、悪化するタイミングで強いかゆみが出る。水ぶくれは乾いて角質がむけ、そのころかゆみはなくなる。むけた角質には菌が多く含まれる |
| 趾間型 | 足の指の間の角質が白くふやけ、厚くむけて、赤みやびらんが出る。時に水ぶくれをともなう。擦りすぎて痛みが出ることもしばしば |
| 角質増殖型 | 足の裏全体が硬く、時に亀裂を伴う。両足に生じ、季節変動がなく、年中かゆみがなく、冬は亀裂で痛いことがある。通常、爪白癬を合併している |
Q11は、「毎年暖かくなる頃に症状が出て、秋〜冬に自然に治る」「片方の足にひどい、または左右非対称」といった場合は足白癬の可能性が高い、としつつ、自覚症状はあまり当てにならないと述べています。症状が似た皮膚疾患はいくつもあり、皮膚科専門医でも皮膚を見ただけでは診断がつかないことが多く、真菌検査をして診断を確定する必要があると書かれています。
かゆみでは判断できない(Q12)
- かゆみがあれば足白癬、とは言えない。医院を受診した「自称水虫」の患者の約3割で白癬菌が見つからなかったという研究があり、そのような人は足白癬の治療をしても良くならない。
- 足白癬の患者でかゆがるのは10%程度。全くかゆみのない患者も多く、自覚症状のない患者は、他人へうつす最大の感染源になる。
裸足で過ごす子どもは少ない(Q17)、うつり方(Q13)
Q17は、足白癬は家庭内の誰にでもうつるが、白癬菌が長時間足に付着していないと発症しないこと、裸足で走り回る子どもでは白癬菌が脱落しやすく、角質の新陳代謝も盛んなので、足白癬が少ないのが普通であること、成長して1日中靴下・靴を履くようになると増えてくることを書いています。つまり「子どもは水虫が少ない」は裸足で過ごす場合の話で、1日中靴下・靴を履く子どもにそのまま当てはまるとは限りません(当サイトの補足)。Q13は、温泉場・銭湯・シャワールーム、足白癬の患者がいる家庭の床・マット・スリッパなどには、ほぼ100%白癬菌が存在するが、乾いたタオルで払う、あるいはそのまま15分素足で過ごすだけでも付着した菌は減ること、付着したまま靴下・靴を履き続けて長時間付けていると足白癬になる可能性が高まること、角質に傷があると菌が侵入しやすいことを書いています。ただし、片足だけの患者も多く、すごく感染しやすい疾患ではなさそうだとも述べています。
市販薬・民間療法・かぶれ(Q21・Q18・Q19)
- 市販薬(Q21):足白癬であれば市販の水虫薬でも治すことができ、病院で処方する外用薬と同じ主成分のものが多い。ただし、市販薬にはかゆみを止める成分も配合されているため、病院で処方される薬よりかぶれる頻度が高い。十分な治療には、症状がないところを含めて両足に外用する必要があり、市販薬は保険が効かず高価なので、症状のある部分だけの中途半端な治療になりやすい。足白癬と似た皮膚病の鑑別を含め、皮膚科専門医で診断を確かめてから十分な治療を行うよう書かれている。この説明は一般的な足白癬についてで、子どもに使えるかどうかは書かれていないため、子どもの場合は、自己判断せず医師・薬剤師に相談してください(当サイトの補足)。
- 民間療法(Q18):民間療法は効果が不明なうえ、かぶれを起こす人も少なくない。民間療法で良くなったという人の多くは、足白癬の症状の自然な経過(秋には治まる)を治療の効果と錯覚している、と書かれている。個別の民間療法の名前は挙げていません。
- かぶれ(Q19):水虫の薬の使用中に症状がひどくなった場合は、薬のかぶれ(接触皮膚炎)を疑い、皮膚科を受診するよう書かれている。趾間型で指の間が湿ってふやけ、びらんや浸出液があるような病巣は、かぶれを起こしやすい。
靴の手入れと足の洗い方:日本皮膚科学会が挙げること
Q26は、足白癬にならないための靴のケアを説明しています。においの対策ではなく白癬の予防の文脈ですが、靴まわりの基本として参考になります。
- 洗える靴は、可能な限り頻回に洗って、しっかり乾燥させる。水でゆすいだだけでは靴の中の菌は除去しきれない。
- 何足か用意して、毎日同じ靴を履かないようにする。
- 洗えない革靴などは、中を雑巾で拭き取って、その後しっかり乾燥させる。
- 長靴・安全靴など長時間履く足に合わない靴は、足の皮膚が蒸れて擦れ、足・爪白癬が治りにくくなる要因になる。足によく合った靴を選ぶ。
- サンダルなどで足の湿度を下げられる場面では、靴から履き替える。ただし、イボイボのついた健康サンダルは避ける。
足の洗い方について、Q25は、石けんをよく泡立て、なでるように洗うこと、軽石などで擦りすぎて角層に傷をつけるとかえって足白癬になりやすくなるので、ゴシゴシ洗いは禁物であることを書いています。Q28は、銭湯・サウナ・共用のシャワーなど大勢が裸足で使う場所では、入浴後にきちんと水気をふき取り、足を乾いたタオルなどで拭いてから靴下・靴を履くことを勧めています(乾いたタオルで拭くだけで付着した菌量を随分減らせるデータがある、とされています)。いずれも足白癬の予防の文脈です。
皮膚科に相談したほうがよい状況(当サイトの考え)
以下は、上記の資料を踏まえた当サイトの考えで、医学的な診断基準ではありません。
- 足の皮膚に変化があるとき(赤み・皮むけ・水ぶくれ・指の間のふやけ・亀裂・痛み・かゆみなど)。足白癬や似た皮膚病は、見ただけでは専門医でも診断がつかないことが多く、真菌検査で確定すると、日本皮膚科学会が述べているためです。市販薬を使う前に診てもらうのが安全です。
- においが強く、対策をしても続くとき。皮膚科の論文には、においを訴えて来院する患者に、多汗・点状角質融解症・足白癬の合併が多いと書かれています。原因によって、使う薬が違います。
- 汗が非常に多く、日常生活に支障があるとき。上の診断基準に当てはまるかどうかを含め、医師に相談できます。治療は患者自身の希望により始めるものだと、ガイドラインに書かれています。
製品を選ぶなら
靴スプレー、除湿剤・靴乾燥機、インソール、靴下、足洗いソープなど、実在する14製品の価格・メーカー表示・使用上の注意は、子どもの足・靴のにおい対策グッズの比較記事で、確認日つきで比べています。そこでも書いているとおり、効果を保証する根拠が公開されている製品は、確認した範囲ではほとんどありません。グッズは、靴の手入れや足の洗い方に加える工夫として考えてください。
この記事の更新について
- 2026年10月28日:2026年10月27日に書き直した版に、皮膚科の論文(宮本・坪井2014)、多汗症診療ガイドライン、環境省のシンポジウム資料、日本皮膚科学会Q&Aの追加の項目(Q10・Q11・Q13・Q17・Q18・Q19・Q21・Q28)を加えて、補強しました。各資料は2026年10月27〜28日に原文(論文は要旨)を確認しています。
- 2026年10月27日:全面的に書き直しました。以前の版には、実在しない製品名と根拠のない評価を並べた表、出典の示されていない口コミの引用、自然療法を効果的と言い切る記述などが含まれていたため、すべて削除しています。
出典
- Ara K ほか「Foot odor due to microbial metabolism and its control」Canadian Journal of Microbiology(2006年)、PubMed 16699586(要旨)
- 宮本真由美・坪井良治「足の悪臭の原因は?」臨床皮膚科 68巻5号 156-158頁(2014年4月、医学書院)、DOI 10.11477/mf.1412103992(要旨)
- 原発性局所多汗症診療ガイドライン策定委員会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版(2023年12月一部改訂)」日本皮膚科学会雑誌 133巻13号 3025-3056頁(2023年)。日本皮膚科学会サイトで公開されているPDFの本文を確認
- 公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 白癬」Q10・Q11・Q12・Q13・Q17・Q18・Q19・Q21・Q25・Q26・Q28(qa.dermatol.or.jp/qa10/)
- 環境省 熱中症対策に係るシンポジウム(2022年7月7日)井上芳光「子ども(幼児・園児)の暑熱反応特性と熱中症予防策」


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