ホワイト物流推進運動とは?企業が取り組むべきこと

物流業界の課題解決に向けて、国土交通省が主導する「ホワイト物流」推進運動をご存知でしょうか。法律による義務化とは異なるアプローチで、企業の自主的な参加を通じて物流の労働環境改善を目指すこの運動について、内容と参加企業の広がりを解説します。

📋 この記事でわかること

  • 「ホワイト物流」推進運動とは
  • 参加企業数は3,500社を突破
  • 自主行動宣言の必須項目
  • 参加の3つのステップ
  • 参加することで企業が得られるメリット

「ホワイト物流」推進運動とは

「ホワイト物流」推進運動は、国土交通省が主体となり、経済産業省・農林水産省と連携して2019年から進めている社会運動です。トラックドライバーの人手不足という社会課題に対し、荷主企業や物流事業者が「自主行動宣言」という形で取り組みを宣言し、実践していくことを促す仕組みになっています。「ホワイト」という名称には、長時間労働や低賃金といった、いわゆる「ブラック」なイメージを払拭し、物流を働きやすい「ホワイト」な業界に変えていくという狙いが込められています。

参加企業数は3,500社を突破

運動開始当初の令和元年12月末時点で744社だった賛同企業数は、着実に増加を続け、令和7年12月25日時点で3,395社、令和8年4月30日時点で3,517社、同年6月30日時点では3,574社に達しています。卸売業・製造業・小売業など、業種を問わず幅広い企業が賛同しており、荷主として物流に関わる企業にとって、参加のハードルが比較的低い取り組みとして定着してきたことがうかがえます。

自主行動宣言の必須項目

参加企業は、「自主行動宣言」という形式で、必須項目への賛同を表明する必要があります。主な内容には、事業活動に必要な物流の持続的・安定的な確保を経営課題として認識すること、生産性の高い物流と働き方改革の実現に向けて取引先や物流事業者と相互理解・協力のもとで改善に取り組むこと、そして法令違反が生じるおそれがある場合には契約内容や運送内容の見直しに適切に対応するなど、取引先の物流事業者が労働関係法令・貨物自動車運送事業関係法令を遵守できるよう必要な配慮を行うことなどが盛り込まれています。

参加の3つのステップ

企業が「ホワイト物流」推進運動に参加する手順は、大きく3段階に分かれています。まず、自主行動宣言の必須項目への賛同を表明すること。次に、必須項目に加えて、自社としてさらに取り組む項目(荷待ち時間の削減、パレット化の推進、モーダルシフトの検討など、複数の選択項目から自社に合ったものを選ぶ)を選定すること。そして最後に、これらをまとめた自主行動宣言を作成し、運動の事務局に提出することです。法的な義務ではなく、あくまで企業の自主性に委ねられた仕組みである点が特徴です。

参加することで企業が得られるメリット

「ホワイト物流」推進運動に参加することの直接的なメリットとしては、まず自社の物流を安定的に確保しやすくなることが挙げられます。荷待ち時間の削減やパレット化の推進といった取り組みは、運送会社との関係改善にもつながり、荷物を運んでもらいやすい荷主として選ばれやすくなる効果が期待できます。また、社会課題の解決に取り組む企業として対外的にアピールできる点も、近年重視されるようになったESG経営やSDGsへの取り組みという文脈で評価されやすくなっています。

法律による義務化との違い

「ホワイト物流」推進運動は、2026年4月から本格施行される改正物流効率化法とは異なり、法的な強制力を伴わない自主的な取り組みです。改正物流効率化法が一定規模以上の「特定事業者」にCLOの選任や中長期計画の提出を義務付けるのに対し、ホワイト物流推進運動は、規模を問わずどの企業でも参加できる、より裾野の広い枠組みとして位置づけられています。法律による義務化が「守るべき最低限のライン」を定めるものだとすれば、ホワイト物流推進運動は、それに加えて「自主的にさらに一歩進んだ取り組みをする企業を増やす」ための仕組みだといえるでしょう。両者は対立するものではなく、補完し合う関係にあります。

「働きやすい会社」を選ぶ基準としても機能

近年、就職・転職活動においても「ホワイト企業」という言葉が広く使われるようになっていますが、「ホワイト物流」推進運動への参加は、荷主企業にとって、こうした「働きやすい会社」であることを対外的に示す指標のひとつとしても機能し始めています。求職者や取引先が企業を評価する際、賃金や労働時間といった従来の指標に加えて、サプライチェーン全体の労働環境にどれだけ配慮しているかという視点が重視されるようになってきており、ホワイト物流推進運動への参加は、こうした評価軸の変化に対応するための、比較的取り組みやすい第一歩としても位置づけられています。

今後の課題

参加企業数は着実に増えている一方、宣言を提出すること自体が目的化し、実際の取り組みが形式的なものにとどまってしまうケースがないか、という懸念も指摘されています。自主行動宣言の実効性を高めるためには、宣言内容の実施状況を継続的にフォローアップし、好事例を他社にも広げていく仕組みづくりが今後の課題になると考えられます。

具体的にどんな改善が実現しているのか

「ホワイト物流」推進運動の取り組みは抽象的なスローガンにとどまらず、現場レベルで具体的な成果につながった事例も報告されています。例えば、レタスなどの青果物をトラックからばら積みのまま手作業で積み下ろししていた現場では、パレット化を導入した結果、1,200ケース規模の荷役作業にかかる時間が2〜3時間から20〜30分程度にまで短縮され、荷待ち時間を含めた全体のリードタイム短縮にもつながったという報告があります。また、トラック輸送の一部を船舶や鉄道に切り替える「モーダルシフト」に取り組み、モーダルシフト化率を約50%にまで高めた荷主企業の例もあります。このほか、土曜日や祝日の輸送依頼を縮小する、輸送依頼を出荷日の前々日までに行うよう努めるなど、荷主企業側が発注のタイミングや頻度そのものを見直す取り組みも進められています。こうした事例に共通するのは、「運送会社に無理を強いる」のではなく、荷主企業自身の発注の仕方や現場のオペレーションを見直すことで、結果的に物流全体の負担を減らしているという点です。

なぜ2019年に始まったのか——働き方改革関連法との関係

「ホワイト物流」推進運動が2019年に始まったタイミングは、偶然ではありません。2018年6月に成立した働き方改革関連法により、2019年4月から改正労働基準法が全産業を対象に施行されましたが、トラック運送業などいくつかの業種は、時間外労働や休日労働がもともと多く、労働環境の改善に時間がかかると判断され、5年間の猶予期間が設けられました。この猶予期間が明ける2024年4月に向けて、運送業界が労働時間の上限規制に対応できる体制を、業界内だけでなく荷主企業を巻き込んだ形で早めに整えていく必要があるという問題意識のもとで、2019年にスタートしたのが「ホワイト物流」推進運動です。つまりこの運動は、後の「2024年問題」への対応を、法規制が本格適用される前から自主的に前倒しで進めておくための布石という性格も持っていたといえます。

混同されやすい「グリーン物流パートナーシップ会議」との違い

「ホワイト物流」と名前が似た響きを持つ取り組みに、経済産業省が国土交通省などと連携して平成17年(2005年)4月に設立した「グリーン物流パートナーシップ会議」があります。どちらも荷主企業と物流事業者が連携して取り組む社会運動という点は共通していますが、目指す目的ははっきりと異なります。グリーン物流パートナーシップ会議は、荷主企業と物流事業者が単独では実現が難しい「CO2排出量の削減」に向けて協働することに焦点を当てた枠組みで、環境負荷の低減が主眼です。一方、ホワイト物流推進運動は、トラック運転者の人手不足という社会課題の解決を目的とし、女性や60代以上のドライバーも含めて誰もが働きやすい労働環境を実現することに主眼が置かれています。同じ「物流」「荷主・物流事業者の連携」というキーワードで語られることが多いため混同されがちですが、「環境(グリーン)」と「労働環境(ホワイト)」という、異なる社会課題に対応する別々の枠組みだと理解しておくと整理しやすいでしょう。なお、両方の枠組みに同時に参加している企業も少なくなく、互いに排他的な仕組みではありません。

まとめ

「ホワイト物流」推進運動は、法律による義務化とは異なるアプローチで、企業の自主的な参加を通じて物流業界の労働環境改善を目指す取り組みです。参加企業数は3,500社を超え、着実に裾野を広げています。改正物流効率化法による法的な義務化と、ホワイト物流推進運動による自主的な取り組みという2つのアプローチが両輪となって、物流の持続可能性を支えていく構図になっているといえるでしょう。

出典: 国土交通省「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト、報道発表資料、働き方改革関連法の施行スケジュール解説資料、各種物流業界解説記事を参考に構成

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