子供が車のレーシングゲームに夢中になっているのを見て、「ただの遊びなのか、それとも何か学びになっているのか」と気になったことはないでしょうか。車のゲームと子供の発達の関係について、わかっていることと、まだはっきりしていないことを整理して解説します。
📋 この記事でわかること
- 「知育効果」という言葉には注意が必要
- 空間認識能力とは何か
- ゲームと空間認識能力の関係:慎重な見方が必要
- ゲーム全般について分かっていること
- 知育効果よりも大切かもしれない視点
- 「アクションゲーム」研究が示すもの、レーシングゲームとの違い
- 年齢レーティング(CERO)を確認する習慣を
「知育効果」という言葉には注意が必要
結論から先に述べると、「レーシングゲームが子供の知育に効果がある」ということを直接裏付ける確立された研究は、現時点では限定的です。世の中には「ゲームは知育に良い」「ゲームは発達に悪い」という、両極端な意見がそれぞれ存在しますが、車のレーシングゲームに絞った専門的な研究成果は多くありません。この記事では、レーシングゲームそのものについての断定は避けつつ、関連する分野で分かっていることを踏まえながら、バランスよく考えていきます。
空間認識能力とは何か
子供の発達を語るうえでよく登場する概念のひとつが「空間認識能力」です。これは、三次元空間における物体の位置・形状・方向・大きさ・位置関係などを、素早く正確に認識する能力を指し、スポーツや数学、地図の読み取りなど、日常生活のさまざまな場面で必要とされる基礎的な能力とされています。積み木遊びや外遊びを通じてこの能力が育まれるとする専門家の見解が多く見られる一方、テレビやゲームなど、平面(二次元)の画面に向き合う時間が増えることで、空間認識能力の発達が阻害されるのではないかという懸念も、教育の専門家から指摘されています。
ゲームと空間認識能力の関係:慎重な見方が必要
ここで注意したいのは、「ゲーム=画面に向き合う時間が増える」という側面だけを見れば、外遊びの機会が減ることへの懸念にもつながるという点です。実際に、外遊びの機会が減り、テレビやゲームなど二次元の世界に没頭する時間が増えた現代の子供は、空間認識能力の低下が心配されているという指摘も存在します。一方で、レーシングゲームのような3D空間を移動する内容のゲームは、単純な平面パズルとは異なり、奥行きやコースの立体的な形状を把握しながらプレイする要素を含んでいます。ただし、これが実際に空間認識能力の向上につながるかどうかを、車のレーシングゲームに限定して科学的に検証した確立された研究は、現時点では十分に見当たらないというのが正直なところです。
ゲーム全般について分かっていること
視野を車のゲームに限定せず、ビデオゲーム全般に広げると、手と目の協調動作(ハンドアイコーディネーション)や、反応速度、集中力の持続といった要素について、一定の関連を示唆する研究報告が存在します。ただし、こうした研究の多くはゲームのジャンルや年齢、プレイ時間、プレイの仕方(一人で黙々と遊ぶか、親子で会話しながら遊ぶかなど)によって結果が大きく異なるとされており、「ゲームをすれば自動的に能力が伸びる」という単純な話ではない点には注意が必要です。
知育効果よりも大切かもしれない視点
車のレーシングゲームを子供と一緒に楽しむ際、知育効果の有無だけにこだわるよりも大切な視点があるかもしれません。ひとつは、親子で一緒に遊ぶことによるコミュニケーションの機会です。ゲームの中でどのコースを選ぶか、どんな車を使うかを親子で相談したり、うまく走れたことを一緒に喜んだりする時間そのものが、知育効果とは別の意味で子供の情緒的な発達に良い影響を与える可能性があります。もうひとつは、車や運転、交通ルールへの興味の入り口になるという側面です。ゲームをきっかけに実際の車や、将来の運転免許取得への関心を持つ子供も少なくなく、こうした「興味の種をまく」効果は、数値化しにくいものの、見過ごせない価値だといえます。
画面との付き合い方のバランス
教育の専門家の間では、デジタル機器・ゲームとの付き合い方について、内容そのものの善し悪しよりも「時間のバランス」を重視する意見が多く見られます。外遊びや体を動かす時間、家族との会話の時間とのバランスを取りながら、ゲームをひとつの遊びの選択肢として適度に取り入れることが、現実的で無理のない付き合い方だと考えられます。車のレーシングゲームも、これ一本に頼るのではなく、実際にミニ四駆を組み立てたり、レンタルカートで実車を運転したりといった、他の体験と組み合わせることで、より幅広い学びや興味につながる可能性があります。
WHOが示すスクリーンタイムの目安
「バランスが大切」と言われても、具体的にどの程度の時間を目安にすればよいのか迷う保護者も多いでしょう。世界保健機関(WHO)は、2歳未満の子供にはスクリーンタイムを推奨せず、2〜4歳の子供については1日1時間未満にとどめることが望ましいとするガイドラインを示しています。また国内の小児科関連機関の見解でも、スクリーンは子供を静かにさせておくための「子守り」として使うのではなく、親子で一緒に見たり遊んだりする時間として活用することが望ましいとされています。車のレーシングゲームを子供に与える際も、こうした年齢別の目安を踏まえたうえで、食事中や就寝前の時間帯を避けるなど、生活リズムとのバランスを意識することが、専門家が共通して推奨するポイントだといえます。
「アクションゲーム」研究が示すもの、レーシングゲームとの違い
「ゲームと認知能力」というテーマで、実は最も研究が蓄積されているのは、レーシングゲームそのものではなく「アクションゲーム」というジャンルです。スイス・ジュネーブ大学の認知神経科学者ダフネ・バヴェリエ氏らの研究グループは、主にシューティングゲームのようなアクションゲームのプレイヤーを対象に、視覚的注意力や複数の対象を同時に追跡する能力(マルチプルオブジェクトトラッキング)が、非プレイヤーに比べて高い傾向にあることを、複数の実験で報告しています。非プレイヤーにアクションゲームを一定期間トレーニングとしてプレイさせたところ、視覚的注意力に改善が見られたという因果関係を示す実験結果も存在し、この分野では2019年にバヴェリエ氏がヤコブ財団の研究賞を受賞するなど、一定の科学的評価を受けています。ただし、これらの研究の多くはシューティングジャンルを対象としたものであり、車のレーシングゲームに特化した同様の研究は、前述の通り確立されたものが少ないという点には、改めて注意が必要です。
年齢レーティング(CERO)を確認する習慣を
子供に車のゲームを与える際、実用的な目安として活用したいのが、日本のゲームソフトに表示されている「CERO」レーティングです。CEROはコンピュータエンターテインメントレーティング機構が2002年から運用している制度で、ゲームの表現内容に応じてA(全年齢対象)からZ(18歳以上のみ対象)まで5段階の区分をパッケージに表示しています。人気の高い「グランツーリスモ7」はCERO A(全年齢対象)に区分されており、実写に近いグラフィックのシミュレーターであっても、暴力表現などを理由に対象年齢が引き上げられているわけではありません。ゲームを選ぶ際は、内容の見た目の印象だけで判断せず、パッケージやストアページに表示されたCEROレーティングを確認する習慣をつけることが、安心してゲームを選ぶための第一歩になります。
まとめ
車のレーシングゲームに、確立された「知育効果」があると断言できる研究は、現時点では十分ではありません。空間認識能力への影響についても、慎重な見方が必要です。一方で、親子で一緒に楽しむコミュニケーションの機会や、車・モータースポーツへの興味を育むきっかけとしての価値は、数値化しにくいものの見過ごせません。知育効果の有無にとらわれすぎず、他の遊びとのバランスを取りながら、親子で楽しむ時間そのものを大切にする姿勢が、車のゲームとの上手な付き合い方だといえるでしょう。
出典: 子供の発達・空間認識能力に関する各種教育系メディアの解説記事を参考に構成
アイキャッチ画像: Children playing video games.jpg by Gamesingear, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
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