宅配便の「再配達」問題、2026年の現状は?

通販で注文した荷物が、外出中で受け取れず「不在票」が入っていた——誰もが一度は経験したことのある光景でしょう。実はこの「再配達」、物流業界にとってはドライバーの負担を増やす大きな課題であり、2026年現在も政府を挙げた削減の取り組みが続けられています。最新の状況を詳しく見ていきましょう。

📋 この記事でわかること

  • 再配達率の現状:令和7年で約8%台
  • 再配達がなぜ問題なのか
  • 数字で見る環境への影響
  • 「多様な受取方法」の普及目標
  • 「再配達削減PR月間」という取り組み

再配達率の現状:令和7年で約8%台

国土交通省が定期的に実施している宅配便の再配達率サンプル調査によれば、令和7年4月時点の再配達率は約8.4%、同年10月時点では約8.3%となっています。かつては再配達率が2割近くに達していた時期もあったことを踏まえると、大きく改善してきたとはいえ、依然として宅配便のおよそ12個に1個は、一度で受け取ってもらえていない計算になります。

再配達がなぜ問題なのか

再配達1件あたりには、ドライバーの再訪問にかかる走行時間・燃料・人件費が新たに発生します。全国規模で見れば、再配達の削減は輸送に使える労働力・車両を効率的に活用することに直結し、2024年問題・2026年問題への対応としても重要な意味を持ちます。国土交通省の試算では、再配達によって発生する年間の労働力ロスは、トラックドライバー数万人分の労働力に相当するとも言われており、再配達の削減はドライバー不足対策の一環としても位置づけられています。あわせて、再配達のために走行するトラックが増えることは、CO2排出量の増加にもつながるため、環境面での課題としても捉えられています。

数字で見る環境への影響

再配達の問題は、ドライバーの労働負担だけでなく、環境面でも無視できない影響を及ぼしています。国土交通省の試算(令和2年度)によれば、再配達のトラックから排出されるCO2量は年間で約25.4万トンにのぼるとされ、これは杉の木1790万本が1年間に吸収するCO2量に相当する規模です。また別の試算では、宅配便配達車の年間総走行距離のうち、約25%が再配達のために費やされているとする分析もあります。荷物を一度で受け取ってもらえるかどうかは、単なる利便性の問題にとどまらず、走行距離・燃料消費・CO2排出量に直結する、環境負荷の大きさそのものを左右する要素なのです。

「多様な受取方法」の普及目標

政府は再配達削減の切り札として、宅配ボックス・置き配・コンビニ受け取り・宅配ロッカーといった「多様な受取方法」の普及を進めています。2026年3月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)」では、多様な受取方法の利用率を、2025年2月時点の25.6%から、2030年度までに50%程度まで引き上げるという具体的な数値目標が掲げられました。これは、荷物を受け取る消費者の行動変容を、数値目標として明確に位置づけた点で注目される取り組みです。

「再配達削減PR月間」という取り組み

国土交通省は毎年4月を「再配達削減PR月間」と位置づけ、関係省庁、地方自治体、宅配事業者、EC事業者などと連携したキャンペーンを継続的に実施しています。具体的には、置き配や宅配ボックスの利用を呼びかける広報活動や、EC事業者のサイト上での受け取り方法の選択肢提示の推進などが行われています。単発のキャンペーンではなく、毎年繰り返し実施することで、消費者の受け取り行動そのものを変えていこうという狙いがあります。

置き配は本当に安全なのか

再配達削減の代表的な手段である「置き配」については、盗難やいたずらへの不安から利用をためらう声もあります。実際には、宅配ボックスの設置や、玄関前に置く場合でも配達完了時に写真を撮影して利用者に通知する仕組みを備えたサービスが広がっており、こうした仕組みの普及とあわせて、置き配への心理的なハードルを下げる取り組みが進められています。マンションなど集合住宅では宅配ボックスの設置率も上昇傾向にあり、個人宅では玄関前に専用の宅配ボックスを後付けで設置するケースも増えています。

後付け宅配ボックス・置き配バッグという選択肢

マンションなど宅配ボックスが標準装備された集合住宅が増えている一方、戸建て住宅ではそうした設備がもともと備わっていないケースも多くあります。こうしたニーズに応える形で、玄関先に後付けできる簡易型の宅配ボックスや、荷物をすっぽり覆って雨や盗難から守る「置き配バッグ」といった商品も広く普及してきました。数千円程度から購入できる製品も多く、大掛かりな工事をしなくても、置き配を安心して利用できる環境を整えられる点が支持されています。自治体によっては、こうした宅配ボックスや置き配バッグの購入費用を補助する取り組みを行っているところもあり、再配達削減を地域ぐるみで後押しする動きも広がっています。

EC事業者に求められる対応

再配達の削減は、宅配事業者や消費者だけの課題ではありません。EC事業者側にも、配送日時指定のわかりやすい提示、置き配指定のデフォルト化、ポイント付与などのインセンティブを通じた受け取り方法の多様化促進といった対応が期待されています。配送側・受け取り側・EC事業者側という三者が連携して初めて、再配達率の実質的な低減が実現するという構図です。

過去との比較で見える改善の跡

再配達率は、2017年の宅配クライシス以降、業界を挙げた課題として認識され、コンビニ受け取りサービスの拡充や、宅配ボックスの標準装備化が進んだマンションの増加などを背景に、緩やかな改善傾向をたどってきました。もっとも、8%台という水準は依然として大きな数字であり、政府が2030年度までに掲げる「多様な受取方法利用率50%」という目標を達成するには、消費者一人ひとりの行動変容がこれまで以上に必要とされています。

私たちにできること

再配達を減らすためにできることは、決して難しくありません。荷物の配送日時をできるだけ在宅できる日時に指定する、置き配や宅配ボックスでの受け取りを積極的に選ぶ、外出が多い人はコンビニ受け取りや宅配ロッカーを活用する、といった小さな選択の積み重ねが、再配達の削減、ひいては物流業界全体の負担軽減につながります。通販で注文する際に表示される受け取り方法の選択肢を、一手間かけて見直してみることが、2026年問題への身近な貢献になるといえるでしょう。

海外の再配達・受け取り事情——ドイツ・アメリカとの違い

再配達への向き合い方は、国によって大きく異なります。ドイツでは、郵便・宅配事業がドイツポスト(Deutsche Post)とその配送部門であるDHLにほぼ一元化されており、日本のように複数の宅配業者が競い合う環境とは事情が異なります。不在時に荷物が届いた場合、日本のように何度も柔軟に再配達を依頼できるとは限らず、「Packstation」と呼ばれる街中の宅配ロッカーに荷物を取りに行くスタイルが広く定着しています。利用者はあらかじめ会員登録しておくことで、24時間好きなタイミングでロッカーから荷物を受け取れる仕組みで、そもそも「再配達をお願いする」という発想自体が、日本ほど一般的ではありません。一方アメリカでは、玄関先に荷物を置いていく置き配が主流ですが、その代償として「ポーチパイレーツ(porch pirates、置き配泥棒)」と呼ばれる荷物盗難が社会問題化しています。調査によって推計に幅はあるものの、アメリカでは年間数千万件規模の置き配荷物が盗まれ、被害総額は数十億ドル規模にのぼるとする報告が複数存在します。配達トラックを尾行して荷物を奪う組織的な犯罪グループの存在も指摘されており、単なるいたずらでは済まない規模の問題になっています。

なぜ日本の置き配は比較的安全とされるのか

アメリカのような深刻な置き配盗難が、日本ではまだ社会問題化するほどの規模には至っていない背景には、治安水準の違いに加えて、配達完了時に写真を撮影して利用者に通知する仕組みや、宅配ボックスの普及、住宅密集地での人目の多さといった要因が組み合わさっていると考えられます。とはいえ、置き配を狙った盗難がゼロというわけではなく、実際に置き配の標準化が進むアメリカの事例を踏まえ、日本でも今後の普及拡大にあわせて防犯面への目配りが必要だという指摘もあります。置き配を選ぶ際は、人目につきにくい場所を避ける、配達完了通知が届いたら早めに荷物を回収する、といった基本的な注意を怠らないことが、安全に置き配を活用し続けるための前提になります。

まとめ

宅配便の再配達問題は、2026年時点でも再配達率8%台という形で残り続けている課題です。政府は多様な受取方法の利用率を2030年度までに50%程度へ引き上げる目標を掲げ、再配達削減PR月間などの啓発活動を継続しています。再配達の削減は、物流の2024年問題・2026年問題全体を下支えする、消費者に最も身近な対策のひとつだといえるでしょう。

出典: 国土交通省「宅配便の再配達率サンプル調査」「再配達削減PR月間」関連資料、総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)、海外の置き配盗難・宅配ロッカー事情に関する各種調査記事を参考に構成

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