モバイルバッテリーやスマートフォン、電動アシスト自転車などに使われるリチウムイオン電池は、繰り返し充電できて便利な一方、可燃性の電解液を含み、事故が増えています。この記事では、NITE(製品評価技術基盤機構)や経済産業省などの公開情報をもとに、発火・破裂につながる原因、安全な選び方と使い方、異常時の対応を整理します。クルマの12Vバッテリー(鉛バッテリー)との違いにも触れます。
📋 この記事の要点
✔ NITEに通知された「リチウムイオン電池搭載製品」の事故は、2021〜2025年の5年間で2,140件。製品別ではモバイルバッテリーが最も多く、8月にピークを迎える(NITE、2026年7月15日発表)
✔ 2020〜2024年の5年間の事故1,860件のうち、約85%(1,587件)が火災につながった(NITE)
✔ 事故の原因には、高温下(暑い日の車内など)への放置、強い衝撃、リコール対象品の使用、非純正バッテリーの使用などがある(NITE)
✔ 経済産業省は、2018年2月1日にモバイルバッテリーを電気用品安全法の規制対象とし、経過措置は2019年1月末に終了。購入時は丸形PSEマークを確認
✔ 万一発火したら、煙や炎が出ている間は近づかない。小型のものは、火花が収まってから大量の水をかけ、可能な限り水没させた状態で119番通報(NITE)
1. 事故の実態と、発火・破裂につながる主な原因
📊 リチウムイオン電池搭載製品の事故の推移(集計の期間・定義が異なるため、単純な比較はできません)
| 期間 | 事故の状況 | 出典 |
|---|---|---|
| 2013年度〜2017年度(5年間) | リチウムイオンバッテリー搭載製品の事故582件のうち、402件(69%)が火災を伴った。原因の71%が製品の不具合で、そのうち36%がリコール対象製品によるもの | NITE(2019年1月発表) |
| 2020年〜2024年(5年間) | 「リチウムイオン電池搭載製品」の事故1,860件のうち、1,587件(約85%)が火災事故。6〜8月に事故が多い。リコール対象製品による事故は360件以上 | NITE 製品安全情報マガジン Vol.481 |
| 2021年〜2025年(5年間) | 事故2,140件。製品別ではモバイルバッテリーが最多。8月にピーク | NITE(2026年7月15日発表) |
📊 発火・破裂につながる主な原因(出典:NITE 製品安全情報マガジン Vol.481)
| 原因 | 公的資料の説明(NITE) | 事故事例(NITE) |
|---|---|---|
| 高温下での放置 | 高温環境下では熱の影響で異常な反応が起き、発熱・破裂・発火するおそれがある。直射日光の当たる場所や暑い日の車内に放置しない | 2023年8月(熊本県)。夏場に高温の自動車内に放置したモバイルバッテリーが発火 |
| 強い衝撃・圧力 | 外部からの衝撃で内部に傷が付くと、内部ショートが生じ、発煙・発火につながる。膨張を元に戻そうとして強い力が加わり出火した事故もある | 2021年9月(沖縄県)。膨らんだモバイルバッテリーを押し込んで元に戻そうとして発火 |
| 内部ショート(劣化・湿気など) | 正極板と負極板が電気的につながる内部ショートが、異常発熱・発火につながる | 2022年6月(愛知県)。電動アシスト自転車用バッテリーの内部に湿気が浸入し、劣化等で内部ショートして発火。リコール対象製品だった |
| リコール対象品の使用継続 | リコール対象の製品を持っている場合は、不具合がなくても直ちに使用を中止し、販売店・事業者に相談する | 2020〜2024年で、リコール対象の製品による事故が360件以上 |
| 安価な非純正バッテリー | 設計に問題があり異常時に安全保護装置が作動しない場合がある、品質管理が不十分、事故時に事業者の補償を受けられない場合がある | — |
2. 安全に選ぶ:「3つのC」とPSEマーク
NITEは、経済産業省・環境省などの関係省庁が連携して呼びかけている、リチウムイオン電池の「3つのC」を紹介しています。
📊 「3つのC」(出典:NITE、2026年7月15日発表)
| 3つのC | 内容(NITE) |
|---|---|
| 賢く選ぶ(Cool Choice) | 購入前に、販売事業者の連絡先や製品情報、リコール情報を確認する。表示マークが適切か確認する |
| 丁寧に使う(Careful use) | 高温となる場所では使用・保管しない。強い衝撃や圧力を加えない。異常を感じたら使用を中止する |
| 正しく捨てる、そして資源循環(Correct disposal with better recycling) | 家電製品を廃棄する際は、リチウムイオン電池の使用の有無を確認する。メーカー回収や自治体の回収区分などの廃棄方法を確認する |
📊 購入時のチェックポイント
| 確認するポイント | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| PSEマーク(モバイルバッテリー) | 経済産業省は、2018年2月1日の通達改正でモバイルバッテリーを電気用品安全法の規制対象とした。経過措置期間は2019年1月31日まで。以降は基準に適合した製品でなければ販売できない。購入時はPSEマーク(丸形)の確認が推奨されている | NITE(2019年1月発表) |
| 販売元の連絡先 | 連絡先が確かなメーカー・販売店から購入する。日本語のサポート、電話番号・住所が実在するかを確認する | NITE |
| リコール情報 | 購入前と購入後に、NITE SAFE-Liteや消費者庁のリコール情報サイトで確認する | NITE |
| 純正品かどうか | 機器メーカーが設計・品質管理に関与していない非純正バッテリーには、高リスクのものが潜んでいる | NITE |
⚠️ 注意
海外の認証マーク(CEマークやUL認証など)の有無だけで安全と判断せず、国内で販売されるモバイルバッテリーは、電気用品安全法のPSEマークと、販売元・リコール情報をあわせて確認してください。
3. 安全に使う・異常に気づく
📝 日常のチェックリスト
☑️ 暑い日の車内・直射日光の当たる場所に置いていない
☑️ 落とす、ぶつける、無理な力をかけるなどしていない
☑️ 膨らみや変形、充電中の異常な熱さがないか、ときどき確認している
☑️ リコール対象になっていないか、定期的に確認している
☑️ 充電・使用中に異常を感じたら、すぐ止める習慣がある
📊 異常のサインと行動(出典:NITE 製品安全情報マガジン Vol.481)
| 異常のサイン(NITE) | 取る行動 |
|---|---|
| 充電できない | すぐに充電・使用を中止し、お買い求めの販売店や製造・輸入事業者に相談する |
| 充電中に以前よりも熱くなる | 同上 |
| 膨らんで変形している | 同上。膨らんだ電池には可燃性ガスがたまっているため、強い外力を加えない |
| 落とす・ぶつけるなどで、一部が変形している | 同上 |
| 不意に電源が切れる | 同上 |
4. 万一、発火・発煙したときの対応
🧭 発火・発煙したときの対応(出典:NITE 製品安全情報マガジン Vol.481)
煙や炎が出ている間は、近づかない
煙や炎が噴き出しているときは、絶対に近寄りません(NITE)。
小型のものは、火花が収まったら大量の水をかける
モバイルバッテリーのようにポケットに入る小型サイズのものは、火花が収まったら、大量の水をかけることで消火できます(NITE)。
可能な限り水没させた状態で、119番通報する
リチウムイオン電池は、消火後も熱をもっています。冷却しないまま可燃物に接触させると、新たな火災につながるおそれがあります(NITE)。
対処が難しければ、身の安全を第一に119番通報する
大きな製品や、対処が困難と判断した場合は、身の安全の確保を第一に119番通報します(NITE)。
⚠️ 注意
実際の消火・避難の判断は、製品の大きさや周囲の状況で異なります。安全を最優先にし、119番通報で消防の指示を受けてください。
5. クルマの12Vバッテリー(鉛バッテリー)との違いと注意
📊 クルマの12Vバッテリーとの違い(出典:NITE、JAF、国土交通省、JBRC)
| 項目 | スマートフォン・モバイルバッテリー等 | クルマの12Vバッテリー |
|---|---|---|
| 種類 | リチウムイオン電池(NITE) | 一般的なガソリン車は鉛バッテリー(補機バッテリー)。ハイブリッド車・EVにも12Vの補機バッテリーがある(JAF) |
| 事故を防ぐ目安 | リコール確認、高温下に放置しない、衝撃を与えない、異常時は使用中止 | 交換の目安は2〜5年(アイドリングストップ車は2〜3年)。膨らみ・端子周りの白い粉・始動性の低下に注意(JAF) |
| 液の注意 | 電解液は可燃性(NITE) | バッテリ液は腐食性が強い。液量がLOWER以下で使用すると破裂(爆発)のおそれがあり、精製水を補充する(国土交通省 日常点検) |
| 廃棄・回収 | JBRC協力店・自治体の回収(破損・膨張品は対象外) | 自動車用電池は、JBRCの回収対象外。JAFは廃バッテリーの引き取りを行っていない |
💡 ポイント
JAFによると、バッテリー付近から異臭がする場合は、バッテリー内部や配線のショート、過充電などが考えられます。使用を控え、点検を受けてください。
6. よくある質問
まとめ
リチウムイオン電池の事故は増えており、原因には高温下への放置、強い衝撃、リコール対象品、非純正バッテリーなどがあります。購入時はPSEマークと販売元、リコール情報を確認し、暑い車内に置かず、異常があればすぐ使用を止めて事業者に相談しましょう。万一発火したときは、煙や炎が出ている間は近づかず、身の安全を第一に119番通報してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。制度・料金・基準・製品仕様は変更されることがあるため、最新の内容は、公的機関・メーカー・各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点)。
アイキャッチ画像: Close up to a car battery by Shixart1985, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons


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